舞台『真田十勇士』再演!主演・中村勘九郎が語るその舞台裏とは!?

2016.6.11
インタビュー
舞台

中村勘九郎

団結の九度山、怒涛の大坂城を舞台に、猿飛佐助たち真田十勇士が大暴れする大迫力のスペクタクル時代劇『真田十勇士』。2014年に初演された本作が、満を持して2016年再演される。しかも今回は、9月22日(木・祝)に公開される映画『真田十勇士』と舞台のメディアミックスがなされるという、一大プロジェクトだ。
 
両作品で主人公・猿飛佐助を演じるのは中村勘九郎。渋谷・コクーン歌舞伎 第15弾『四谷怪談』の上演に向けて稽古が大詰めというなか、勘九郎に話をきいてきた。

――まずは『真田十勇士』再演決定のときのお気持ちから教えてください。

舞台と映画と小説というプロジェクトでやると聞いて、「…大変だろうなあ」と素直に思いました(笑)それでも初演のときにこのような作品に出会えて、出演者も本当に気のいい、熱いハートを持った人たちだったので「またこの人たちと一緒にやりたい」という気持ちを強く持っていました。嬉しかったですね。

――初演、映画、再演と、どれだけ猿飛佐助という人物を深めていくんだろうと思うのですが。

いや…深められるような役だったら深めていくんですが、この役、本当にコレくらい(写真の勘九郎さんの指の幅にご注目!)しかないキャラなんで。浅い役をこんなにやることはそうそうないですよ!

中村勘九郎

――今、NHK大河ドラマでも真田幸村を扱っていることもあり、舞台を観にいらっしゃるお客様の理解度が初演のころより格段に深まっていると思うんです。そんなお客様にどんな舞台を見せていきたいですか?

舞台で描かれている幸村像が、イメージを裏切らざるを得ない「ヘタレ」なので。大河ドラマを観て舞台を観に来る方は、びっくりしちゃうんじゃないかな。そんな人が本物の武将になる、僕らが本物の武将にさせるというところがこの作品のおもしろさなんです。

――「実はヘタレ」な幸村殿という設定はすごくおもしろいと思ったんです。

演じる雅也さん自身がおもしろい人なんで…ド天然の人なんです。雅也さんの天然という部分が役に活かされていますね。

――佐助としてはそんな殿をお守りしたいと思いながら日々接していたんですか?

いや、それが…いろいろ仕掛けてくるんですよ、雅也さん。それをどう拾うか見捨てるかというチョイスが大変で。初演の楽日なんて「そのとおり」という殿のセリフを「そのとおり、松坂桃李」って言ってて。これ、ツッコんだら俺も怪我するぞと思ってサッと流しました(笑)

雅也さんは根が関西の方なので、こういうのが大好きなんですよ。幸村殿自体はヘタレだけどドンと構えていないとならない、佐助のようにアクティブに動いたりツッコんだりしたくてたまらないんでしょうね。

中村勘九郎

――勘九郎さん自身は、佐助のようなツッコミとかはお好きですか?

好きですね。でもどこまで言っていいのかという線引きは苦手なんです。ちょっとダークなほうに…毒舌とか放送禁止な事をいっちゃうんです。稽古中にそっちに走りすぎて監督に「やりすぎ」って止められています。

――再演に向けての大きな変化の一つが、佐助の相棒・霧隠才蔵役を加藤和樹さんが務めることだと思います。これまでは由利鎌之助役をやっていた和樹さんが才蔵をやるというのはなかなかない展開ですね。

おもしろいことになりました。和樹が演じることで全然違う才蔵像になると思います。今は早く稽古をして彼の才蔵を見たいですね。

――舞台の稽古はいつ頃から始まりそうですか?

8月の頭からですね。でも僕、8月は歌舞伎もあるので…歌舞伎座の楽日が8月28日(日)なので、そこから舞台の稽古に入ります。

中村勘九郎

――初演時で印象的だったのが激しい立ちまわりなのですが。身体づくりはどうされているんですか?

何にもしてないんですよ。

――何もしていなくてあんなに動けるんですか?持久力はもちろんお持ちだろうと思っていましたが、運動能力という点では?

やはり、日々の歌舞伎の舞台に出ていることで、それが筋肉になっているんだと思います。むしろ歌舞伎の踊りを踊っているときのほうが辛いときもありますよ。まあでも「見せ方」だと思いますね。役の上でも「嘘つき」なので、「飛んでいるように見える」「走っているように見える」術をちょっとずつ使っています(笑)でないとぶっ倒れちゃうんで。

――とはいえ、映画と比べると、ナマで上演する舞台のほうが体力的に大変だったりするんですか?

それが、どちらかというと、映画の方が大変でした。舞台だと舞台上に動きが限られる。袖にひっこめば何か飲めたりもする。でも映画で描いた大坂夏の陣は、和歌山の広大な敷地を馬と一緒に走って、何百人といる徳川軍の中に突っ込んでいかなければならなくて。それは本当に大変でしたね。

――映画のクランクアップ会見の時にも他のキャストさんが口々に「馬と並走がきつかった」っておっしゃっていましたしね。

舞台だとそこまではないので安心なんですが、とはいえ「初演よりは大変になるよ」と監督がおっしゃっていました。まだ詳しい話はこれからなんですが。

中村勘九郎

――連日舞台稽古が続く、忙しい日々となりそうですが、その中で癒しになることはなんですか?

やっぱり子どもたちの存在ですね。癒しにならないときもあるんですが(笑) 仕事で昼の部、夜の部をやってきて、帰宅して子どもたちと遊ぶ「深夜の部」をやらないとならないので、それがキツイんですけど。でも癒されますね。おもしろいので。

――二人の息子さんも含め、徐々に後輩を育てていく年齢になってきましたが、「育成」という点でやっていることはありますか?

彼らの「意識」。芝居に対する意識を高めないといけないよ、という話はしています。ただ、役者個人が持っているキャラクターだったり味だったり色だったりもあるので、それをあえて染めようとは思わないです。間違った方向に行きそうなときにはちょっと言いますけど。後輩が外の舞台に出てみたい、と言ったらもちろん応援しますよ。

――では、最後に今回の舞台を観たいと思っているお客様にメッセージをお願いします!

初めて見る人は度肝を抜かれると思います。舞台ではありますが、映像を観ている感覚にもなれますし、サーカスを観ているような感覚にもなれます。エンターテイメントってこういうことなんだなと思える舞台になると思います。ぜひ楽しんでほしいです。

中村勘九郎

<スタッフ>
ヘアメイク:宮藤誠(Feliz Hair)
スタイリスト:寺田邦子
撮影:こむらさき+SPICE編集部
インタビュアー・文:こむらさき

 
<衣装>
ジャケット ¥30,240
パンツ ¥17,280
カットソー ¥9,180
ストール 参考商品
以上 すべてTAKEO KIKUCHI 03-6324-2642

 
公演情報
舞台『真田十勇士』
 
■日時・会場:
<東京公演>
2016年9月11日(日)~10月3日(月)
新国立劇場 中劇場
横浜公演
2016年10月8日(土)~10月10日(月・祝)KAAT神奈川芸術劇場
関西公演
2016年10月14日(金)~10月23日(日)兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
 
■脚本:マキノノゾミ
■演出:堤幸彦
■出演:中村勘九郎、加藤和樹、篠田麻里子、高橋光臣、村井良大、駿河太郎、荒井敦史、栗山航、望月歩、青木健、丸山敦史、石垣佑磨、山口馬木也、加藤雅也、浅野ゆう子 他
■公式サイト:
http://sanadajuyushi.jp/​