20周年のT.M.Revolution 西川貴教が語る「面白いことをまじめにやる」流儀とは
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T.M.Revolution
T.M.Revolution、20周年である。20年間「クスッと笑えてじんわり心に残る」もの、話題を提供し続けてきた“さすがの”アーティストである。20周年という大きな節目ということもあり、その動きはさらに激しくなり、「株式会社 突風」という、真剣なのか冗談なのかわからない会社を設立したり、突然、人気ガールズグループAOAとコラボをしたり、『おかあさんといっしょ』の中のアニメの声優にチャレンジしたり、とにかく動きまくっている、露出しまくっている。中でも一番大きなトピックスは20周年を記念した、全シングルを完全網羅したアールタイムベストアルバム『2020-T.M.Revolution ALL TIME BEST-』が5月11日に発売され、ランキングで1位を獲得したことだ。新聞紙を顔面で受け止めているジャケットが印象的だが、アニバーサルのタイミングでそれをやるのがT.M.Revolution西川貴教だ。人を惹きつける自己プロデュース力で、このアーティストにかなう人はいないだろう。なぜ西川貴教ばかりがモテるのか、ロングインタビューした。
――西川さんは基本的には来たお話しをまずは一度受けて考えるタイプですか?先入観や思い込みだけで断るみたいな感じではなく。
やらなくていいものも受けてしまいます(笑)。そこで一番肝になってくるのが、ご覧になってくださった方とか、聴いてくださった方が面白いと思ってくれるか、これ聴いたことないな、観たことないなというもの、自分が飽き性ということもあって「他の人でも良くない?」とか、どこかで観た気がするものには、正直あまり惹かれないかもしれないです。それよりは、これ観たことないなとか、誰かは少しやっているかもしれないけど、僕がやると違うかもしれない、そこに何か自分の中で新鮮なものを与えることができるかもしれないと思うもの、そこのエッジはすごく大事にしているかもしれないです。誰がやってもいいものとか、毒にも薬にもならないものはやりたくないです。結果、毒にも薬にもならないかもしれないけど、これ観たことないとか、聴いたことないというものの優先順位が高いですね。
――まさにサービス精神の塊という感じです。観ている人、聴いている人を楽しませたい一心でしかない。
そうですね、一つの企画をいただいてやり遂げた段階ではまだ満足はしていないですね。皆さんからリアクションをもらったときに、初めてやってよかったと思います。自分がどう映るかよりも、その人が面白いなとか、耳に残るとか言ってもらえることで納得するので、一番はやっぱり面白いかどうか。そうじゃないと20周年記念のベスト盤をこんなジャケットにしないでしょ(笑)。
「T.M.Revolution ALL TIME BEST」
――ですよね、記念すべき20周年なのに…(笑)。
ほかのアーティストのベスト盤のジャケットはカッコいいんですよ。車に乗っていると色々なビルボードが目に入ってきますが、10周年、15周年、25周年を迎えたアーティストのジャケットは、なんか趣があるというか、歴史を感じさせてくれるというか……それを見ると考えさせられますよ(笑)。
――でもこのジャケットを見て、ここに至るまで色々な露出や発言がつながって、むちゃくちゃハッピーで面白いミュージシャンという、いいイメージだと感じる人が多いと思います。
そうなのかなあ(笑)。
――最近TVへの出演も多く、Yahoo!ニュースの常連にもなり(笑)、世間に話題を提供しすぎじゃないですか?
今回ベスト盤を発売するということもありますし、色々タイミングが合致しているという感じで、毎日トピックスがある状況にはなっていますね。
――デビュー当時から自分の見せ方というか、すごくしっかり見せつつも楽しませるという部分が、西川貴教たる所以だと感じていて、いつも感心しています。20年間第一線を走り続けることができているのは、もちろんコアファンはついてきてくれているのと同時に、新規ファンの開拓がしっかりできているということです。
そうだといいですね。ただ特別に狙っていることをしているわけではなく、こちら側が楽しめるものというか、平たく言うとスタッフ受けがいいものは、自分が思っている以上に遠くに飛んでいく感じはしているので、そういうものは意識しているかもしれません。もちろんボツになるものもたくさんあるので、全部が全部みなさんの目に触れているわけではないですが。
'96年5月、西川貴教のソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁-monopolize-」でデビュー以来、「HIGH PRESSUER」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」などミリオンヒットを含む数々のヒット曲を連発して、一躍音楽シーンのトップランナーになった。その圧倒的なボーカルパワーとパフォーマンスで常に注目を集め、特にそのライヴはまさに圧巻。20周年を迎えた今も新規ファンを開拓、獲得できているのはライヴの良さも大きな要因だ。
――20年という時間の中で、音楽マーケットも刻々と変わっていき、CDが70万枚、80万枚、100万枚売れていた時代もありましたが、今はなかなか厳しい状況ではあります。それはどのアーティストも同じで、そういう時代の流れを感じながらも西川さんは常に第一線で活躍されています。その順応力というか、こう来たらこう手を打とうとか、こう来たらこう返そうみたいな跳ね返し方というか、その判断力の速さが抜きんでていると思います。
いや、はなから真ん中、メインストリームにいないからですよ。華々しいど真ん中の道を進んでいないから、もしくはそこを目指してやっていないからですよ。ちょっと端っこの方で頑張っているというか……。
――いやいやそんなことないですよ。
考えてみると色々なアーティストの方や表現者のかたがいて、それに影響を受けたフォロワーもいて、そこで席を奪い合うような状況が続いているわけじゃないですか。でも僕のいる席は誰も取りにこないんですよね(笑)。座りづらいのかなあ(笑)。僕的にはT.M.Revolutionと西川貴教のなかで、傍から見たらそれやる?みたいなこともあったかとは思いますが、さっきも言いましたが、大笑いじゃないけどクスッと笑えてずっと心に残るものがたくさんできたらいいなというイメージで、今までひとつひとつのことをやってきました、なるべくまじめに。面白いことをまじめにやることが肝かなと。先日も「突風」という会社を立ち上げまして……。
――事業発表記者会見に行きました。
ありがとうございます。正直ああいう記者発表だと、ちょっとご挨拶して、囲み取材して、ワイワイやって終わりでも、ある程度記事にしてもらえそうと思うじゃないですか。でもそれは違うよと。ちゃんとやりたいし、最終的に色々な人に面白いねって思ってもらえるかもしれませんが、こちら側がいかに真剣に取り組んでいるのかを伝えたくて、その結果があのスクリーンに映し出したパワーポイント(資料)の枚数です(笑)。何度もリハーサルして、パワーポイントのページをめくるタイミングも打合わせをしました。でも記者のみなさんニヤニヤして見ていたでしょ?あれでいいんですよ。最初から僕があれをニヤニヤしながら面白いでしょってやってはダメなんです。僕はまじめにやっていても、みなさんからするとバカバカしいことかもしれない、でももしよかったら応援してくださいということでいいと思うんです。
――クスッと笑えるのって、まじめにやっているからクスッと笑えるんですよね。
だってまじめだもの(笑)。今でこそ「HOT LIMIT」がみなさんに面白がられていますが、当時はこれはスタイリッシュだと思っていたんですよ。これでいくかって決めたものの、まさかこれじゃないだろっていうところにいくという面白さです。今はこんな宴会芸みたいになってますけど(笑)。
――ゴールデンボンバーのみなさん、高橋みなみさん、レイザーラモンRGさんほかが出演している「HOT LIMIT」踊ってみたミュージックビデオ、最高です。
ありがとうございます。でもあれも本人が喜んで受けてくださっているのがすごく嬉しいです。やらされている感ではなく、やって良かったと言ってくださったのを聞いて、すごく良かったと思いました。やっぱりお互い気持ちよくできる関係でやったものは、結果、“残る”んですよね。
――お互いの“想い”がつながらないとだめなんですよね、全てにおいて。
そこなんだなと思いました、片想いでもダメだし、本当に相手のことをちゃんと思うことができれば、自ずと形になっていくんだなと感じました。
T.M.Revolution西川貴教の“仕掛け”の流儀は「近くの人を喜ばせることができたらそれが広がっていく」とうこと。滋賀県出身の西川は初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、2009年から毎年「イナズマロックフェス」を開催しているが、このフェスを立ち上げた理由も、実は意外な理由だった。
――前に何かのインタビューで読んだことがあるのですが、西川さんが「イナズマロックフェス」を立ち上げたのも、お母様が入院されて、滋賀に頻繁にお見舞いに行きたいのでその口実ができるからと。社会云々よりもまずは近くの人に喜んでもらって、それが広がっていく感じが理想ということをおっしゃっていました。
もちろん世のため人のために何かができればいいのですが、自分が切羽つまらないと、何が本当に必要か、何をすべきかという部分を意外と見落としがちで。「きっとこうでしょ」とか「たぶんそうだよね」とか、ぼんやりしたモノになってしまうので、それよりは近しい部分も含めて、本当に自分が必要だと思えるもの、自分がこれをすべきだなと思うことをきちんと丁寧にやって、それが最終的には、ひいてはみなさんのためになるようなことになっていくのではと、いつも思っています。そして続けていくことが大切だなと。見切り発車すると、結局一過性のものになってしまいがちなので。正直いうと自分が飽き性なので、そういう意味ではいかに楽しんで、予想の斜め上にいけるかという部分は、いつも考えています。
イナズマロックフェスより
――そんな『イナズマロックフェス』は、今年も9月17,18日に地元・滋賀で開催されますね。
イナズマもそうですけど、イベントやフェスが年々増えて、それはリスナーにとってもアーティストにとっても、またその地域にとっても素晴らしいことだと思います。よく対比されるのですが「イナズマロックフェス」もフェスと名乗っているので仕方ないのですが、はなから“地域のお祭り”を作っているつもりで、他のフェスとは全く別のものなんです。観た事がない方はロックフェスなんでしょ、田舎でやっているんでしょって思われると思いますが、ふたを開けてもらうと、「あ、これ他のフェスとは違うな」って思ってもらえると思うんですよね。
――ステージ転換の間にお笑い芸人が出演したり、サービス精神旺盛な地域のお祭りですよね。エリア内にはとにかく滋賀県を知ってもらう、感じてもらう施策がいたるところにあって、確かに完全に地元のお祭りです。
もっともっとそういうものを、たくさん作ることができたらいいなと思っています。こんなものがあったらいいな、でも無理かなと思っているものを、ひとつでも多く作っていきたいです。
T.M.Revolution西川貴教の自己プロデュースの極意は、メディアの向う側にいる人達に対してその接し方、見せ方を変えていることだ。ラジオでは“我らがアニキ”的な存在、ライヴではオラオラ系で盛り上げ、テレビでは面白い存在というように、メディアによってその見せ方、伝え方を微妙に変えているところが西川にしかできない自己プロデュース力だ。
――何周年とか、周年だと色々なアイディアが集まって、一番盛り上がる状況にもっていけると思うのですが、西川さんの場合、毎年面白いことを仕掛け続けていて、“更新”している感じがすごくします。そしてメディアの“向う側”にいる人に対して、ラジオでの接し方、テレビでの接し方、ライヴでの接し方を切り替えてやっていて、それがファンを飽きさせない秘訣なのかなと思ったりしています。
いや、でも100人の方がいて100人の方に好かれているわけでは絶対にないですから。もちろん発言は気をつけなければいけないですが、最初からそれを気にしすぎても、結果、ぼんやりした角のとれたものしか提供できなくて、なんとなくで終わってしまっていた時期もありましたね。ここにきて、みなさんに面白いなと思ってもらえる部分でいうと、大笑いじゃないけど、でもクスッと笑えて、じんわり心に残るものをいかにたくさん提供できるかということが大切だと感じています。
――それすごくいいスタンスですね。
マネジメントスタッフもそうですけど、レコード会社のスタッフや近いスタッフの意見はたくさん聞きたいですし、その歯車がきちんと合ってくると、周りも自然と色々回ってくるし。でも最初からこういう状況ではありませんでした。僕はレーベル移籍もしていますし、スタッフの入れ替わりもありました。そういう中で全員で何かをやって達成できると、オリンピックやワールドカップに出るような選手やチームを束ねる人の感覚に近いと思いますが、勝てることとか勝つことに対する感覚をみんなで共有できて、次の勝ちにも貪欲になれたり、それをいかに導きだすかということに熱心になります。でも負け続けていると、みんなの発想も面白くなくなったり、正直そういう時期もあったと思うし、僕自身もなかなかスタッフと意志の疎通が取れない時期もありました。でもそれは常にいい風だけが吹いているわけではないからこそ、今の状況を楽しめたり、純粋に嬉しいと思えると思いますし、これができたのだからこれもできるのでは?と考えられるのだと思います。前にスタッフに「本当に100万枚、200万枚売れていくのかは分からないけれど、それを信じられる気持ちを我々がきちんと持てているかが大切だ」という話をしたのですが、これ無理なんじゃないのって思いながら出したものなんて、やっぱり結果を残すのは難しいと思うんですよ。そういう意味では、何でもその商品や物事に関係する人たちが、それを信じられるものかどうかが一番基本になることですし、大事だと思います。あとは例えば最近のことでいうと、縁もゆかりもなかったAOAとのコラボレーションも、突然降ってきたものではありますが、「そういうのできません」といえばそれで話は終わっていたのですが、タイミングもそうですし、面白いのかもしれないと思ったので、純粋にお受けすることが出来て。で、結果的にすごくいい形になって、関わった人たちみんなが幸せになれたプロジェクトだったと思うんですよね。
AOA「愛をちょうだい feat.TAKANORI NISHIKAWA(T.M.Revolution)」
――もともとAOAってチェックしていたんですか?
たまたま後輩がやっているバーのようなところで、カラオケでAOAを歌っている人がいて、「へえー最近こんな感じが人気なんだ」って思ったんです。周りの女の子たちがAOA大好きで、絶対人気になるという話をされて、「へ~」と思っていたら今回の話がきて、ビックリしました。
――やっぱりタイミングってありますよね。
本当にそうです。これってコラボレーションの依頼が来る1週間ぐらい前の話ですよ。「イナズマロックフェス」に出ていただいたアーティストが、彼女達と同じ事務所だったということもあったりはしましたが、正直、女性グループは自分が今まで全く触れてきていない部分ですし、そこは同じようにK-POPが好きで、特にAOAが好きで応援しているファンの方達からしたら、「なんで西川なの?」と思ったと思いますし。逆に僕のファンも、「20周年でバタバタしているのに、そんなことにうつつ抜かして」、みたいに感じている人もいたと思いますが(笑)、実際ふたを開けて曲を聴いてみたら、「なんだ悪くないじゃない」って言ってくれる人も多くて、「ね、良かったでしょ」って思っています。これも何かのタイミングだったと思うし、前から色々な流れがあった中で、一番ベストなタイミングでこのプロジェクトがスタートしたからだと思っています。
――全く想像できない組み合わせでした。水樹奈々さんとのコラボの時もびっくりしましたが。
あのコラボレーションも同じで、好意にしてくださっているテレビ局のプロデューサーの方が、これが本当に実現したら業界辞めてもいいぐらい、辞めてはないですけどね結果的に(笑)――のお願いがあると。それが水樹さんと一緒に歌って欲しいということでした。最初は先方の気持ちも分からないですし、歌番組でご一緒する機会はありましたが、一緒に歌ったこともありませんでしたので、大丈夫かなという気持ちが大きかったです。でも結果的にはそのまま「紅白歌合戦」まで行くわけですから、何があるかわからないですよね。
――そこで面白いと思えるか思えないか…タイミングもありますけどね。
みんな「どうします?」って聞いてはくれますが、基本は誰も決めてくれませんから。みんな平気で色々ボンボン投げてきて、良くも悪くもお前任せみたいな状況なので、自分で決めるしかないです。
――自己プロデュース力に長けていることが、20年間やってこられている大きな理由のひとつだと勝手に解釈しています。20年第一線でやり続けること自体すごいことですが、ソロアーティストで20年続いている人って少ないですよね。
僕にとってツアーの在りかたとか、ライヴというものの醍醐味が、全国津々浦々に自分のパフォーマンスを届けるということにあって。いかにどの会場にも同じクオリティのものを届けられるかが大切なんです。ツアーを行いましたが、そんな中でも何年も行くことができていない土地もあったりしたんです。そういうところでは極端な話、半分くらいの方が僕のライヴを観るのが初めてだったりするんですけど、なんかそれってすごく嬉しいなと思いました。これが続けていくということなんだなと思いましたね。もし10年とか15年で終わっていたら、この人たちと出会えなかったわけで、今そういう出会いができるというのは、続けてきたご褒美みたいなものだと思っています。でもこればかりは水ものですからね、聴き手の心の移り変わりも早いですし、難しいですよね。
オリコンアルバムランキングで1位を獲得したオールタイムベスト『2020-T.M.Revolution ALL TIME BEST-』は、アンティノスレコードから現在所属しているエピックレコードまでの全シングル曲をニューヨークでリマスタリングし、さらに配信限定シングルやコラボレーションシングルも完全収録した、まさに“T.M.Revolutionヒストリー”。全曲を聴いて感じるのが、T.M.Revolutionの歴史は人に元気を与え、勇気を与え続けてきた歴史だということ。しかしその裏では、人知れず苦悩の日々を過ごしていた西川の姿があった。そんな、忘れられないあの時の事を、赤裸々に語ってくれた。「20年間全然順風満帆じゃなかった。あの日々があったから今がある」――と。
――今回改めてベスト盤で作品をタップリ曲を聴かせていただきましたが、西川さんのライヴに来ている人たちは、元気をもらいたいというか前向きな気持ちになりたいという想いで足を運んでいるんだなということを再認識しました。
嬉しいですね。
――いつも元気なイメージで、ファンの皆さんに元気を注入している西川さんですが、逆に気持ち的に落ちるときはあるんですか?この20年で一番落ちた時のことは覚えていますか?
何度もありました。1999年から2000年をまたぐ形でT.M.Revolutionというプロジェクトを「封印」して、T.M.R-eとして活動したり、またT.M.R.として再始動したり…あの時は精神的に厳しい時期でした。その後移籍して、今のレーベル、エピックになるのですが、今思うと20年続けている中では、あのあたりから色々な歯車が噛み合わなくなっていったのかなと。今はもちろんあれも必要だったと自分では解釈していますが、自分で会社を立ち上げて、自分のことを一人でやり始めて、その時は本当にどうなるかとか、どうやっていくかとか、そんなことさえ遠くのことのように思える状態で、どうしたら事態が打開できて、いい方向に物事が向かうとか全くわからない状態でした。正直レーベルのスタッフ、周りにいるスタッフとの間に軋轢ができてしまい、味方がゼロに思えるような状況の中で、果たして活動が出来るのだろうかと不安でした。僕が音をあげるの待ちみたいな感じでもあったし…。そんな中でレーベルを移籍することを決めて、そこから新しいスタッフと一から関係性を築いていきましたが、最初はお見合いのような探り合いの時期もあったし。だから本当に順風満帆な時期なんて全然なかったです。でもそれをもし西川楽しそうにやっているな、西川いいねって思ってもらえていたのであれば、それが一番幸せです。音楽って、難しいことをやっているなと思われながら聴かれているうちは、だめだと思うんですよ。メロディと詞を気に入ってもらえて、自分でも歌えそうとか、自分でも出来そうとか思ってもらえて、で、いざ本当にカラオケで歌ったり、実際演奏してみたら「こんな難しいことやっているの?」って、そこで思わせることができたら勝ちで、そこがよくも悪くもポピュラーミュージックの肝なのかなと思っています。
――西川さんは頭のスイッチの切り替え方がすごいですよね。いつも即断、即決、即行動、です。
なぜそういう判断をしたのか、全てを説明できているわけではありませんし、以前にこうしようって言っていたものが、全部が全部すぐに形にできていたわけでもないんです。でも概ね自分がこうしようって言っていたことは、ものすごく時間はかかっても必ず実行するようにしていますし、自分も粘着力のある性格なので(笑)、ずっとどこかに抱えているんですよね。だから最終的に、よくも悪くもああは言うけどちゃんと形にはするんだなと思ってもらえることが大事で、そうやって結果を積み重ねていけば信じてもらえるのではと思っています。これまでの様々な活動のことは当然忘れていませんし、きちんと形にするために、少しずつ進めているつもりです。でも、周りから見ると、言ったのに実現出来ていないじゃないかという人もやっぱりいますよね。でもそれを、だったらもういいよ、面倒くさいからやめよう、ではなくて、いつかその人たちが、あの時あんな言いかたしてごめんなさいって言ってくれるまでやろうということです(笑)。
――粘着力というよりも執念に近い……。
いまも正直色々な想いがある中でツアーやリリースを迎えているのですが、今の判断が、次にまた皆さんから信じてもらえたり、疑わないという気持ちにつながると信じて、今できることをきちんとやっていこうと思っています。
――サービス精神旺盛ということは、芯がクソまじめということなんでしょうか。
そうなんですかね。邦洋問わず、他のアーティストのライヴを観に行くと、悔しいなと思ってしまう素敵な音楽がたくさんあって、だからこそ自分に何ができるのかとか、自分にしかできないことが何なのか、ここから先の30年とは何なのかを考えていきたいです。プラス、ここから先は、確か10周年迎えたときも同じことを言っていたと思いますが、望まれる人になりたいと思いますね。こういう人でいて欲しいと思われるような存在。つまり期待されたり任されたり、少なからずこいつだったら何かやってくれるんじゃないかと思ってもらえる人。こいつに任せても無理でしょって思われたら話も何もこないですし。
――確かに、今もう色々な話が殺到していますもんね。
まだまだです。やっぱり『イナズマロックフェス』もそうですけど、最初はこんなに続けるなんて誰も思っていなかったはずですし。
T.M.Revolutionは海外のファンも多い。それはこれまで「機動戦士ガンダムSEED」シリーズや「BLEACH」ほかアニメのテーマソングや、「戦国BASARA」シリーズなど、ゲームのテーマソングを数多く歌っていることも大きい。だからこそ海外でウケることがどんなに難しいことかも熟知している。だからこそこれからはもっとアジアを中心に世界に打って出るべきだと説く。次の10年を見据えて、T.M.Revolutionの向う先とは?
――これからは海外での戦略も活動の中で大きなものになってくると思いますが、T.M.Revolutionはすでに多くの海外ファンから支持されています。といっても日本の音楽が受け入れられているというよりも、アーティスト単体でしか受け入れられていないのが現状で、そんな中で西川さんは海外での活動についてはどう考えていらっしゃいますか?
例えば僕が台湾でライヴやりますとか、台湾で仕事があるんですというと、台湾って親日だからねと言う人がいますが、そういう人は台湾に行って実情を見て欲しい。CDショップでは海外の音楽のコーナーの8割はK-POPに独占されていて、日本の音楽はポピュラーミュージックも演歌も全部混ぜて1割程度です。この状況に危機感を持たないと、そうやって親日だからと高をくくっている間に、他の国の音楽に、ファンを持っていかれるということです。もっとみなさんと一緒に繋がりたいという気持ちを、直接届けに行かないとダメなんだと思います。そういう意味でもせめて東京から北海道や九州に行く感覚と同じように、台湾やシンガポール、マレーシアなどには足を運べるようにしていきたいです。今年は、韓国のAOAとコラボさせていただいたり、7月からは『サンダーボルト・ファンタジー』という台湾で30年続いている人形劇を、日本のプロダクションと台湾のプロダクションが合同で映像化するということで、その主題歌をやらせていただいたりもします。こうやって近い地域や国のみなさんと、できればバラバラではなく“アジア圏”の者同士としてモノ創りができたらいいなと。今回AOAとのコラボで思ったのですが、トラックは韓国で歌詞は日本語、歌っているのも韓国のアーティストと日本のアーティストで、なんかもうぐちゃぐちゃになっていて、どこの国の音楽でもないもの、こういう無国籍なものをもっと創れないかなと思いました。J-POP、K-POPとかではなく、そういうカテゴリーに収まらないおもしろいものを、もっと創ることができるのではと、それを次の楽しみとして力を入れていきたいです。
――すごく意義があるし、楽しそうですよね。もうすでに始まっています。
AOAとのコラボも、みんなが一緒に作りたいと言って声をかけてくれて、台湾の『サンダーボルトファンタジー』に関しても、関係者の方と一度も接点がなかったのに、総監督の虚玄淵さんに主題歌は西川で、と言ってもらえた事がすごく嬉しかったです。色々なものを期待してもらえることが、僕にとって今一番嬉しいことですし、20年やってきたことの財産だと思っています。
――次の30周年に向けて、楽しみもたくさんあるし、まだまだ上がっていくばかりですね。
いやいや、こんなむちゃくちゃなバイオリズムの持ち主だから、そういう意味ではこれからはCDを何十万枚売りたいとか、こんな大きな会場でライヴをやりたいとか、数値化されているものではない、まだ誰も見たことのないものを創るほう、生み出すほうにたくさん関われたらいいなと思います。
インタビュー・文=田中久勝
5/21 (土)和歌山県 会場: 和歌山市民会館 大ホール
5/22 (日)奈良県 会場: なら100年会館開場
5/28 (土)山梨県 会場: 東京エレクトロン韮崎文化ホール
5/29 (日)茨城県 会場: 茨城県立県民文化センター 大ホール
6/04 (土)大阪府 会場: フェスティバルホール
6/05 (日)大阪府 会場: フェスティバルホール
6/11 (土)滋賀県 会場: 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
6/12 (日)兵庫県 会場: 神戸国際会館 こくさいホール
6/15 (水)埼玉県 会場: 川口総合文化センター リリア メインホール
6/18 (土)山口県 会場: スターピアくだまつ
6/19 (日)広島県 会場: 上野学園ホール
6/25 (土)沖縄県 会場: 那覇市民会館 大ホール
7/16 (土)香川県 会場: サンポートホール高松 大ホール
7/17 (日)徳島県 会場: 阿南市市民会館
7/18 (月)高知県 会場: 高知市文化プラザかるぽーと大ホール
7/23 (土)福井県 会場: 越前市文化センター 大ホール
7/24 (日)石川県 会場: 本多の森ホール
7/30 (土)佐賀県 会場: 鳥栖市民文化会館 大ホール
7/31 (日)長崎県 会場: 諫早文化会館 大ホール
8/06 (土)栃木県 会場: 栃木県総合文化センター メインホール
8/07 (日)千葉県 会場: 松戸・森のホール21 大ホール
8/14 (日)鹿児島県 会場: 霧島市民会館
8/20 (土)東京都 会場: 両国国技館
8/21 (日)東京都 会場: 両国国技館開場
8/26 (金)北海道 会場: わくわくホリデーホール (札幌市民ホール)
9/03 (土)宮崎県 会場: メディキット県民文化センター 演劇ホール
9/04 (日)熊本県 会場: 熊本県立劇場 演劇ホール
9/22 (木)青森県 会場: 八戸市公会堂
9/24 (土)岩手県 会場: 奥州市文化会館
10/01 (土)三重県 会場: 四日市市文化会館 第一ホール
10/02 (日)静岡県 会場: 静岡市民文化会館 大ホール
10/15 (土)新潟県 会場: 新潟テルサ
10/16 (日)富山県 会場: 新川文化ホール 大ホール
10/23 (日)長野県 会場: まつもと市民芸術館 主ホール
10/29 (土)福島県 会場: 郡山市民文化センター 大ホール
10/30 (日)秋田県 会場: 秋田県民会館
11/03 (木)京都府 会場: ロームシアター京都 メインホール
11/05 (土)愛媛県 会場: 松山市総合コミュニティセンター 文化ホール
11/12 (土)大分県 会場: エイトピアおおの (豊後大野市総合文化センター)大ホール
11/19 (土)島根県 会場: 出雲市民会館
11/20 (日)鳥取県 会場: 米子市公会堂
11/23 (水)岡山県 会場: 岡山市民会館
12/03 (土)岐阜県 会場: 土岐市文化プラザ・サンホール
12/04 (日)愛知県 会場: 名古屋国際会議場 センチュリーホール
12/11 (日)福岡県 会場: 福岡サンパレス
12/18 (日)群馬県 会場: 桐生市市民文化会館 シルクホール
12/23 (金)山形県 会場: やまぎんホール (山形県県民会館)
12/24 (土)宮城県 会場: 仙台サンプラザホール
日程:2016年9月17日(土)、18日(日)
会場:滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場 (滋賀県琵琶湖博物館西隣 多目的広場)
■お問い合わせ:
キョードーインフォメーション 0570-200-888 (10:00-18:00)
■Official HP
http://inazumarock.com/
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