電波少女 日本のラップの可能性に新たな火、ぼくりり等客演も招いたリリースパーティー
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電波少女/撮影=新倉映見
電波少女 E.P 『パラノイア』 Release Party
2016.5.22(Sun)clubasia
日曜日の、渋谷の夜はパーティータイム。ここclubasiaで行われたのは、電波少女の最新EP『パラノイア』のリリースパーティーだ。ハシシの1MCスタイルになり、新たなフェイズへ突入した彼らのリアルを見せる最高の舞台。ネットラップつながりの仲間が客演することは予想済みだったが、オープニングはまさかのロックバンド、MINAMI NiNE。電波少女と同郷の宮崎県出身スリーピースが、てげアツい演奏をぶちかます。シーンの先輩格として慕われつつ、同時にジャンルを超えた影響力を持つ、電波少女らしいナイスな人選だ。
MINAMI NiNE/撮影=新倉映見
おまえら全員バカばっか。そう言い放って歌い始めたぼくのりりっくのぼうよみは、自他ともに認める電波少女のファン。「早く終わって、電波見たいんで」と、すっとぼけたセリフを吐きつつ、思春期の複雑な心の迷路を明確なリリックに置き換え、クールでメロウなラップを決める。この普通の少年のどこからこんなエナジーが? すでにメジャーデビューを果たした恐るべき10代が、メインアクトへのつなぎ役をしっかりとこなしてくれる。
ぼくのりりっくのぼうよみ/撮影=新倉映見
19時30分、いよいよメインアクトのお出ましだ。どピンクの髪のハシシがステージに駆け込み、猛烈な濃度で呪いの言葉を撒き散らす。DJブースの後ろでnicecreamが、煽るようにコーラスを入れる。『パラノイア』の1曲目を飾る「拝啓」は、世にはびこるオリジナティのないフェイクやフォロワーを糾弾する、猛烈に攻撃的な曲だ。
「電波少女です。リリースパーティーに来てくれてありがとう。MINAMI NiNEとぼくのりりっくのぼうよみにも出てもらって、華やかなめでたい1日になりそうです。おまえら、おとなしいって噂なんで、盛り上がっていってください!」
電波少女/撮影=新倉映見
毒々しいリリックの切れ味とは真逆の、あくまで明るくゆるいMC。この不思議なギャップが電波少女の流儀だ。続いてはNIHA-Cと共に「オーバードーズ」「MO」の二連発。EDMスタイルのビートに身を任せて踊るオーディエンスに、“いい調子、その調子!”とハシシが呼びかける。変わってJinmenusagiが登場すると、今度はディープでメロウなビートに乗せて「RY」と「Earphone」を。ビートにジャストで乗るNIHA-Cと、甘い声質で流れるように歌うJinmenusagi。適材適所もばっちりだ。
「ふざけてるんで、俺ら。ふざけた曲をやります」
「Mis(ter)Understand」は、『パラノイア』の中でも特にハシシのパーソナリティが強く出た曲だ。“勘違い男”の哀愁を、自虐と自信をクロスさせながら抉り出すリリック。メロディアスなせつない曲調だが、ライヴでは裏打ちのビートが強調され、ハシシのラップも想像以上にエモい。
電波少女/撮影=新倉映見
さぁここで、がらりと場面が変わる。nicecreamと5人の屈強なダンサーが繰り広げる“dance showcase”。パントマイム、ブレイクダンスなど、様々なダンスの一糸乱れぬコンビネーション。nicecreamも見事なウィンドミルを披露するなど、大車輪の活躍ぶり。ボタンを押す係? いやいや、とんでもないパフォーマーだ。CDでは伝わらない、電波少女の多層的な魅力には、驚かされずにはいられない。
ハシシが戻り、後半が始まる。曲は「INTRO」。電波少女のロゴを染め抜いた旗を大きく振りかざしたのは、次に歌う「INVADER」の一節“旗を掲げな”の前振りだ。フィーチャリングはRAq。へヴィな電子音トラックに、ふわりと宙を舞うようなラップが映える。
電波少女/撮影=新倉映見
おっと、ここで想定外の“釈明会見”だ。2月に行われた『解散&復活ワンマンライブ“茶番” 』で発せられた“次のライヴで何かがわかる”という重大発表予告は、“諸事情により発表できません”。一斉に笑い含みのブーイングを飛ばすオーディエンスに、“前向きな事情だから!”と必死に弁解するハシシとnicecream。電波少女とオーディエンスとの、親密な関係を象徴するワンシーン。“29歳無職、頑張っていきます!”と、強引に締めくくる姿に明るい笑いが巻き起こる。
曲に戻ろう。「オルタネート」と「オルタネートエラー」の2曲には、トップハムハット狂をフィーチャリング。苦み走ったラップが、猛スピードのドラムンベースによく似合う。nicecreamが華麗なブレイクダンスを決める。「オルタネートエラー」の、青春の残骸を描くあまりにロマンチックな歌詞がズシリと胸に染みる。言葉のすべてが生きている。
電波少女/撮影=新倉映見
「ここからが勝負だと思ってます。いろんなフィールドに行きたいし、いろんなフィールドでヤバイと言われたいんで」
メランコリックなロックサウンドにトライした「笑えるように」は、大いなる彼らの未来への布石として。そしてJinmenusagiとNIHA-Cが再登場した「COMPLEX」は、ずっと変わらぬ電波少女らしさの象徴として。「これからも最高の仲間と一緒に上がっていけたら」と語るハシシに、あたたかい拍手が贈られる。そう、上がっていけるはずだ。電波少女のクルーには、すでに揺るぎない一体感がある。
電波少女/撮影=新倉映見
アンコールは明るく楽しく。ではなく、シリアスにじっくりと。「Re:カールマイヤー」「Munchii Bear Cookiis」は、どちらも3年前の1stアルバム『BIOS』からの人気曲で、後者は2015年の再録バージョンだ。フロアの全員が完璧にリリックを歌う。ラストはJinmenusagi、NIHA-C、トップハムハット狂、RAqと共に、6人が笑顔でフロントに並ぶ。曲はシリアスだが、漂う空気はあくまで柔らかい。拍手、歓声、大団円。最後にMINAMI NiNEとぼくのりりっくのぼうよみを呼び込み、みんな揃って“はい、ちーず”。約3時間に及ぶリリースパーティーの、明るく前向きなハッピーエンドだ。
さて、延期された“重大発表”の行方やいかに? まぁ、良い知らせならば気長に待とう。これだけのCDを作り、これだけのライヴをやったのだから。電波少女の未来は明るさでしかない。そのリリックとそのビートで、日本のラップの可能性に新たな火をつけてくれ。電波少女にはそれができる。
撮影=新倉映見 文=宮本英夫
電波少女/撮影=新倉映見
>>【電波少女 インタビュー】シリアスもジョークも全部混ぜ込んで、グループの今をしゃべりまくる
2016.5.22 clubasia
◆MINAMI NiNE
1. 雨
2. Buddy bye
3. ビム
4. 南九節
5. Lax
6. 酔いどれの夜
7. 花
◆ぼくのりりっくのぼうよみ
1. Venus
2. Black Bird
3. CITI
4. Sub / objective
5. Collapse
6. Sunrise(re-build)
◆電波少女
1. 拝啓
2. オーバードーズ feat. NIHA-C
3. MO feat. NIHA-C
4. RY feat. Jinmenusagi
5. Earphone feat. Jinmenusagi
6. Mis(ter)Understand
-dance showcase-
7. INTRO
8. INVADER feat. RAq
9. オルタネート feat. トップハムハット狂
10. オルタネートエラー feat. トップハムハット狂
11. 笑えるように
12. COMPLEX feat. Jinmenusagi, NIHA-C
<アンコール>
13. Re:カールマイヤー
14. Munchii Bear Cookiis 2015