SAKAI MEETING 彼らの想いと望むものとは
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SAKAI MEETING2016の様子 撮影=Nariaki Ueda
5月21日(土)大阪南部に位置する堺市にて音楽フェス『SAKAI MEETING2016』が開催された。
『SAKAI MEETING』とは、堺市出身のGOOD4NOTHING(以下G4N)とTHE→CHINA WIFE MOTORS(以下TCWM)が音楽イベントをきっかけに「地元に恩返しをしたい。」という強い想いを持ち、全国各地から集まってくる多くの人に堺という街が活性化するようにと、音楽のみならず文化や商業、またニューカルチャーを巻き込んだ、バンド主催の大型イベント。2013年より始動し、今回で4回目の開催となる本イベントは、先日大阪で行われた『METROCK』と同じ場所に位置する「堺市海とのふれあい広場特設会場」という野外での開催となった。
ステージは4つ設営され、堺STAGE、仁徳STAGE、利休STAGE、鉄砲STAGEと、地元に縁のあるワードを各ステージに名付けてある他、メンバーに縁のある飲食ブースはもちろん、スケートランプやフェスでお馴染みとなりつつある、ライブキッズのファッションをリードする各アパレルブランドが軒を連ねている。開催当日は快晴。気温も30℃前後と絶好の野外フェス日和。照りつける太陽で日焼けした人も少なくなかっただろう。
timetable
そんな中、10:45仁徳ステージにて主催であるG4NとTCWM面々の司会によるオープニングセレモニーが始まった。地元の有志「大阪府立大学 環境部エコロ助」チームがごみの分別や活動内容を踏まえた挨拶をしたあと、竹山堺市長をステージに招き入れ、お客さんを交えて「堺っ子体操」が行われた。市長の「若い人が元気になってる」という言葉が、両バンドの今まで積み重ねてきた行動や一つ一つの想いが伝わっている証拠と言えるだろう。
オープニング 撮影=Nariaki Ueda
そして、オープニングセレモニー終わりと共に、各ステージから音が出始める。
鉄砲ステージではハードコア・パンクバンド・RAZORS EDGEが、エッジの効いたライブで攻め攻めスタイル。KENJI RAZORS(VO)のライブパフォーマンスでキッズが湧き上がり、キッズファッションで身を固めたご年配の方までクラウドサーフする始末。初っ端から圧巻のライブを見せつけられた。
RAZORS EDGE 撮影=JON
そして鉄砲ステージの隣にある利休ステージに視線を移すと、今回初参戦のNOTHING TO DECLAREが今か今かとRAZORS EDGEのライブを横目にセッティングを進める。ステージがたくさんあるフェスでは、ライブ本番中に次のバンドがセッティングをするというのが基本となっている為、普段は拝めない本番前のアーティストの表情を伺うことができた。そしてインストから始まったNOTHING TO DECLAREは、初めて彼らの音に触れる観客も多かったのか序盤の反応は薄かったものの、 洋楽を彷彿させるストレートな楽曲で、ラストの曲の頃には初見のオーディエンスを巻き込んでいた。
NOTHING TO DECLARE
仁徳ステージに移ると、九州長崎発SHANKがスリーピースとは思えないパワーで、キッズを盛り上げている。彼らもまた去年の話となるが、地元長崎で自主の野外フェスBLAZE UP NAGASAKIを行っている。
SHANK 撮影=Nariaki Ueda
SHANKに続いて04 Limited Sazabysのライブが堺ステージで始まった。彼らもまたつい一か月ほど前に自身のフェス『YON FES 2016』を『SAKAI MEETING』と同じく、地元に恩返しをしたい、盛り上げたいという地元愛から生まれたフェスを終えたばかり。G4N、TCWMの今日までの道のりや気持ちを一番新鮮に肌で感じているのは彼らかもしれない。自ら名古屋代表と名乗り、大阪のロックシーンに光が差すようにと、気持ちが伝わるライブでオーディエンスを盛り上げていた。
04 Limited Sazabys 撮影=Nariaki Ueda
鉄砲ステージに戻るとSUNSET BUSが誰よりも楽しそうにライブしている。3.6MILK時代から使っているヤシの実をステージ左右に並べ、明るく軽快なメロディーや即興のラップで曲を繋いで場を沸かせ、会場はすっかり夏模様。彼らの夏はいつも早い。(笑) そんな夏気分を一足先に味わいたい方は、来月の6月26日(日)に大阪の服部野外音楽堂で行われる自身のフェス『BUSTRIP2016』があるのでこちらも要チェック。http://www.caffeinebombrecords.com/bustrip/2016/
そして堺ステージに戻ると、今や世界基準といっても過言ではなく、地元堺への凱旋となるCrossfaithが、圧倒的なパフォーマンスと演奏スキルでキッズを煽り、キッズも負けじとモッシュの嵐。途中メンバーHiroki(Ba)が誕生日ということで、堺のアホな兄ちゃんと紹介されて出てきたのはG4NのTANNY(Vo/G)。キッズ達と一緒にバースデーソングを歌い、シャンパンを開け、ゴリゴリサウンドからは想像しにくいアットホームな一面を見せてくれた。
Crossfaith 撮影=Nariaki Ueda
次に仁徳ステージに登場したのはロック界の奇行師アルカラ。セッティング中の音出しでお客さんがその場から離れていくのはこういったフェスではつきものだが、「Xの紅の高いとこ今から歌うから歌えたら拍手~!」などと呼びかけ、その場から離れていこうとするお客さんもなんだなんだと足止めをくらう。そして曲でさりげなくサウンドチェック。サウンドチェックすらも演出にしてしまうのはさすが奇行師の面目躍如といったところか。最近の曲から「半径30cmの中を知らない」といった昔の曲を織り交ぜたライブで会場を盛り上げた。彼らもさきほど紹介したSUNSET BUSのイベントと同日の6月26日(日)なのだが、地元神戸のライブハウスシーンの魅力を伝えたいという思いから立ち上げた神戸のライブハウス9箇所を使ったサーキットフェス『ネコフェス2016』を開催。どちらのイベントも魅力満載なので、是非チェックしてみて欲しい。http://nekofes.net/
アルカラ 撮影=Nariaki Ueda
そして、冒頭にも紹介したが、『SAKAI MEETING』はさまざまなカルチャーがクロスオーバーしているイベント。アルカラが終わるとG4N/TCWMメンバーがステージに登場し、仁徳ステージ対面にあるスケートランプを紹介。 街中では滑っている姿はたまに見かけることもあると思うが、スケートランプで滑る姿はあまり観ることもなく、ここぞとばかりにスケーター達は楽しそうに様々なトリックを披露してくれた。
SKATE SHOWCASE 撮影=Yamamoto
一方、アパレルブースの裏へ行くと、出演を終えたバンドマンとショップ店員が和気あいあいとしていた。彼らもまたバンドマンをサポートしたり自らも企画を行ったりと、様々なカルチャーを発信している。
オフショット
そして、堺ステージではスキャットマンジョンのSEと共に、話題沸騰中のWANIMAが登場。「リベンジ」から長渕剛のモノマネMC。からの「THANX」と続き、キッズのテンションは序盤から最高潮へ達していた。
WANIMA 撮影=Nariaki Ueda
この頃からイベントも後半戦とあってかお客さんも余力の残さないテンションに。利休ステージへ移動すると、結成20年を迎え盟友SABOTENとの共同野外フェス「MASTER COLISEUM」を主催し、何かと話題に欠かないPANがキッズのテンションと交わってすごいことになっているし、仁徳ステージに戻ると、新譜『STOP THE WAR』を発表し、6月から12月まで半年に及ぶリリースツアーを控えているHEY-SMITHが個人的にも好きな曲「Endless Sorrow」でフロアを沸かせている。彼らもまた大阪泉大津フェニックスにて『HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2016』を9月10日(土)・9月11日(日)を開催するので要チェックだ。http://haziketemazare.com/2016/index.html
HEY-SMITH 撮影=Nariaki Ueda
ふと我に返ると「え?もう!?」とフェスでは誰でも感じると思うが気が付けば終盤戦。改めて考えると間髪いれずにこれだけパワーやポテンシャルもったバンドのライブが次へ次へと続くと時間の感覚がマヒしてくるものだ。ここで堺ステージにはdustboxが登場。SHANKでも感じたことだが、ツアーで場数を踏んできたバンドはメンバーの人数に関わらず、出音、ライブ共にステージに何人いるとかまったく感じさせないライブでいつも圧倒されてしまう。
dustbox 撮影=Nariaki Ueda
すっかり太陽も傾き、海からの風が火照った身体を冷まし心地よい風が会場に吹きだした頃、いよいよ仁徳ステージの大トリ、主催のTHE→CHINA WIFE MOTORSが登場。 曲の合間のMCでは主催という立ち位置もあり、出演者、関係者そしてお客さんへの挨拶も忘れない。ただ、彼らはライブハウス上がりのバンドマン。ステージ照明はいつもと変わらず赤色一色。感謝の意を述べつつも、野外でも変わらず独自のスタンスを貫き、昨年の『SAKAI MEETING』終わりに作った曲をライブで初披露したりと、照明と自然の夕陽が織りなす赤い照明をバックにロックンロールを掻き鳴らした。
THE→CHINA WIFE MOTORS 撮影=Nariaki Ueda
そして、深紅に会場を染めた夕陽も海に沈み、演出をサポートする照明と夜空に輝く綺麗な満月が堺ステージを照らす。ラストのラスト、大トリGOOD4NOTHINGが登場だ。SEはライブハウススタンスと変わらず「河内のオッサンの唄」。ステージには共演したバンドマンがズラリと並び、みんながそれぞれの想いを胸にG4Nの背中を見つめる。細かくは触れないがここまでの道のりを近からず遠からずみてきた出演者たち、関係者たちはどんな気持ちで見ているのだろうか。そんなみんなの想いを背負い、前を見続けるG4Nメンバー。 会場は最後の力を振り絞って楽しむオーディエンスと、ステージ側の気持ちと熱量とがぶつかり合い、それぞれの楽しみ方をしてきた自由なフェスという空間が、気が付けば見事なまでに想いで一つとなっていた。
GOOD4NOTHING 撮影=Nariaki Ueda
最後まで自分たちのライブをやり切り、ステージ袖に捌けると出迎える出演者たちの拍手とねぎらいの言葉。メンバーみんなは体力を使い切ったせいか、ただ笑顔で言葉を発することも出来てなかったが、その表情だけで色んな気持ちが伝わってくる。そんな中鳴り止まないアンコール。やるつもり無くステージ袖へハケたようだが、1曲だけということで再びステージへ。アンコールはG4N鉄板の「Cause You're Alive」。そして大サビ前のMCでTANNY(VO/G)の、「なぁ、ここは海やけど、俺らで海作ろうなー!EVERYBODY HAND’S UP!!」という言葉で、セキュリティーの方も手をあげ、クラウドサーフするオーディエンス達。その光景に涙を流す出演者達。最後は「堺へようこそー!!」の叫びと共に堺ミーティングはこの日一番の沸点を迎えた。
そして、無事公演も終了し、協賛からのプレゼントタイムをTCWM/G4N両バンドは疲れをみせずしっかりこなし、OASISの「WHATEVER」が鳴り響く中イベントは終了した。
ending 撮影=Nariaki Ueda
『SAKAI MEETING 』は、第1回目からTCWM/G4N両バンドが、冒頭にある想いを胸に、ブッキングからポスター配りといった隅から隅まで自分達ができることはDIY精神で身を粉にし、想いに感化された色んな人達の協力もあって様々な壁を乗り越えてきた。当日に辿り着くまでのそういった行動や気持ちがアーティストに伝わり、言葉となって現場にいるオーディエンスへ辿り着く。その想いや気持ちが波のように広がり、時間が経つごとに大きくなって、最後には大きな波になって自分に返ってくる。そうやって生まれた感動が、またその場所に帰ってきたくなるという衝動を駆り立ててくれる。やはり来て肌で空気を感じないとわからないことばかりだが、感じてしまった人はきっとその感動を人に伝えていくだろう。そうやって広がっていく想いが、彼らがやってよかったと思える何よりも望むものなのかもしれない。
また来年も堺に帰ることを心から望むばかりだ。
レポート・文= K兄