坂東玉三郎が芸術監督を務める「鼓童」の35周年記念コンサート、今夏開幕

2016.5.31
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坂東玉三郎、鼓童


太鼓芸能集団の「鼓童」が三夜連続で創立35周年記念コンサートを開催するということで、その紹介も兼ねた記者懇親会が5月30日(月)都内にて催された。懇親会の場には、鼓童の芸術監督である歌舞伎俳優の坂東玉三郎、鼓童代表の船橋裕一郎、鼓童の太鼓奏者である石塚充坂本雅幸住吉佑太、そして「北前船」代表取締役社長の青木孝夫が姿を現した。

青木孝夫

25周年のときに「アマテラス」に出演し、2012年から鼓童の芸術監督という仕事をしてきた玉三郎は、歌舞伎と太鼓の関係について「両者は無縁と思われる方も多いが、実は歌舞伎は太鼓がなくては演じられない。大太鼓が波の音、風の音を表現してきたし、能楽では大鼓、小鼓を抜きにしては考えられない。ある種近しい存在だったと思う」と語る。そして、近しい存在だからこそ、「歌舞伎もある種、固定概念を持とうと思えば持ててしまう。鼓童に関しても“これで良し”としているがなんで良しなのか、を常に問い続けてきた」とこれまでの鼓童での活動を振り返った。

坂東玉三郎

そんな玉三郎からの教えの中で印象的なことを鼓童メンバーに問うと…

船橋「生き様すべてが舞台につながっているのだな、ということ。食事もそうだし日常生活もすべて舞台につながている。パフォーマンスをご覧になられて「前の日、何を食べたの?昨日は遅かったんですか?」と聞かれたり(笑)すべてをご覧になっているので一瞬たりとも気を抜けない。だがすべてが舞台につながっているので充実した時間になっている」

船橋裕一郎「鼓童」


石塚「この16年間ずっとおっしゃっていることだが『もっと小さい音は出せないのか?』私たちはこれまで大きな太鼓を力いっぱい叩いて強い音をどれだけ遠くまで飛ばせるかにこだわっていたが、もっともっと誰が聴いても聞き心地がよい音、音響が良すぎるホールでも音色の違いをしっかり聞き分けられるような小さい音を大事にしなさいと」

石塚充「鼓童」

坂本「『自信過剰と自惚れは芸の妨げになる』という言葉を玉三郎さんの経験と共にお話しいただいた。もう一つは『大きく、正しく、エレガントに』小さい演技をしていてはお客様に届かないし、だからといってむやみやたらに大きくなっても正しさや美しさがなくなったり。その言葉を通して物事を観ると自分の中ですごく腑に落ちることが多かった」

坂本雅幸「鼓童」

住吉「固定概念に対して、もう一度それを考え直す機会をいただいた。例えば『大きな太鼓は大きなバチで打つものだ』と思っているところに『それ、ドラムスティックで打ったらどんな音がするの?』と。当たり前のようにやっていてその理由を考えずにやってきたので。クレッシェンドで上がってきて最後の一発を思い切りドン!と打ちたくなる中で、あえて最後の一発を打たない…そういう“裏切り”で新しいニュアンスが生まれてくる。そういうことを学ばせていただいた」

住吉佑太「鼓童」

そんな4人の言葉に、微笑みを浮かべたり、メンバーたちと顔を見合わせて笑ったりしながら聴いていた玉三郎だった。

今回のコンサートの第一夜「出逢い」では、鼓童ではおなじみとなった石井眞木作曲の「モノプリズム」や先日亡くなった冨田勲作曲の「宇宙の歌」に加え、世界初演となる伊佐治直作曲の「浮島神楽」、同じく世界初演となる猿谷紀郎作曲の「紺碧の彼方」が上演される。

第二夜「螺旋」は、この公演自体が世界初演となり、この作品を持って世界ツアーを回ることとなる。演出を務める玉三郎は、「古い曲から新しい曲、古典的なものから未来的なものまでぐるぐると回っていきながら前に向かって進んでいくイメージ」と語り、最後には玉三郎が作った曲も演奏されるそうだ。

最終日となる第三夜「飛翔」は、男子新体操をルーツに持つBLUE TOKYOとストリートダンスをルーツにもつDAZZLEとのコラボレーションを披露する。

35年間の集大成であり、36年目、そしてさらに先を目指した第1歩となる「鼓童」の3日間にぜひ注目いただきたい。

坂東玉三郎、青木孝夫、鼓童

公演情報
「太鼓芸能集団 鼓童 創立35周年記念コンサート」
 
■日時:2016年8月18日(木)~20日(土)
■会場:サントリーホール
 
8月18日(木) 第一夜 ~出逢い~
出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也
 
8月19日(金) 第二夜 ~螺旋~
演出:坂東玉三郎
出演:鼓童
 
8月20日(土) 第三夜 ~飛翔~
演出:坂東玉三郎
出演:鼓童、ゲスト:BLUE TOKYO、DAZZLE

公式サイト:
http://www.kodo.or.jp/