AA= ただ“熱い”という形容では足りない深さと重さを感じさせる演奏

2016.6.18
レポート
音楽

AA=/撮影=浜野カズシ

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AA= TOUR #5
2016.6.11(土)恵比寿リキッドルーム

これだけの轟音の裏に、果たしてどれだけの想いが、怒りが、そして希望が潜んでいるのだろう? 3作連続のコラボ配信、BABYMETALやBiSへの楽曲提供、さらにSCHAFTへの参加と新たな刺激を経てリリースされた最新アルバム『#5』を掲げてのツアー最終日。恵比寿リキッドルームのステージから放たれたものは、ただ“熱い”という形容では足りない深さと重さを感じさせるものだった。

ノイズアレンジされたベートーヴェンの「第九」が荘厳に鳴り、アルバムを幕開けるSE「?erusrofyzarcuoyera」をバックにメンバーがステージへ。2曲目「INEQUALITY」の爆音とフラッシュライトが交互に場内を満たすと一挙に大歓声が湧き、重戦車のように獰猛なビートが、瞬く間にフロアをモッシュの海へと変える。サビで繰り返されるタイトルのInequality――即ち“不平等”の大合唱から「DOWN」でテンポダウンして、その名の通りグッと深部へ落ちゆくと、ギター、ベース、シンセとヒステリックに唸った後に美メロが広がるカオティックな展開は、いっそ神々しいほど。さらに「それじゃブッ壊れていきましょうか。かかってきなさい、リキッドルーム!」という首謀者・上田剛士(B,Vo)の煽りからの「憎悪は加速して人類は消滅す~Hatred too go fast, Vanishing all human~」では、凶暴なインダストリアルビートにダイバーが大量発生。アルバムと同じ並びで畳みかけられるセットリストは実にハイボルテージで、その目眩く熱量に序盤から圧倒されるばかりだ。

AA=、MASATO(coldrain)、Koie(Crossfaith)/撮影=浜野カズシ

しかも、この日は上田曰く「このリキッドルームを灼熱にするために、たくさんの刺客を用意しました」とのことで、配信シングルでコラボレートしたアーティスト陣が、続々ゲスト参加したのだから堪らない。その一番手が「FREE THE MONSTER」のMasato(coldrain)とKoie(Crossfaith)で、現在のラウドシーンをリードする若獅子2人がシャウトバトルするという素晴らしく贅沢なシーンで魅せた果てに、なんとKoieはフロアへダイブ! 中盤の「M SPECIES」ではDragon AshのKjが登場し、アタックの効いたラップを放ちながらも全身で跳ね、続々向かってくるダイバーたちに手を伸ばし、自らもサーフしかけて、リスペクトする大先輩と同じ舞台に立てた喜びを表す。これだけのビッグネームが一堂に会するのも、絶えずシーンの一線で活動し続けてきた上田の功績あってのことだが、彼の生む音楽の真髄はそのキャリアやダイナミックな音塊だけにあるのではない。「この狂った時代、俺たちだけはしっかり繋がっていようぜ!」と、トランスを招く音像の中で“We know you! We find you!”の大合唱を繰り広げた「Such a beautiful plastic world!!!」が示すように、その根底に強い願いがあってこそ、AA=の音楽は音量以上の説得力を得るのだ。

AA=、Kj(Dragon Ash)/撮影=浜野カズシ

ZAX(Ds/pay money to my pain,The BONEZ)が放つダンサブルなビートに拳があがる「WARWARWAR」に反戦の、白川貴善(Vo)の低音ラップから上田のハイトーンへの転換が世界を変える「posi-JUMPER」に反逆の意志を湛え、デジタリックな「3.600.000.000=62」のクールなパフォーマンスで歓声を呼んで以降、さらに彼らのパフォーマンスは生々しいものに。「ドギついヤツ行きます」の言葉通り容赦ない音の銃弾が降り注ぐ「GREED」、赤ライトでの爆発的な轟音から一転、青ライトから壮大な旋律が広がって拍手が湧く「The Klock」と続いて、シンプルなロックチューン「HUMANITY2」では上田のボーカルが切なさを滲ませる。そこから一転、児島実(G)の先導で手拍子を招いての「divide~プレイングカードは分離壁の夢を見るか?~」へ。ステージ上で演者同士も見合い、跳ねる躍動的なインストゥルメンタルにフロアは揺れ、上田の放つブレイクビーツと輪郭の鋭いZAXのドラムが戦い、重なる「BATTLEFIELD TvsZ」に雪崩れ込めばオーディエンスは沸騰。そしてハードコアな「I HATE HUMAN」、陽性のダンスチューン「FREEDOM」を挟んでのラスト曲「→MIRAI→(ポストミライ)」で、“最後の刺客”として紅一点のJ.M.(0.8秒と衝撃)がキュートなリフレインを振りまけば、一斉に大きく腕を振る。蛍光イエローのウィッグにクラウンを載せた彼女は幸運の女神のようにも、はたまた未来からの警鐘を鳴らす天使のようにも見えて、CMでもお馴染みのポップなナンバーに穏やかならぬイメージを付加。しかしAA=の場合、それで正解なのだろう。

AA=、0.8秒と衝撃/撮影=浜野カズシ

アンコールはAA=のシンボルとも言える「ALL ANIMALS ARE EQUAL」からスタート。「俺たちの名前はAA=。すべての動物は平等だぜ! すべての存在は平等だぜ!」と、その名に込められた理念を叫ぶと、会場中がバンド名を大合唱し、ブチ上がる勢いのまま児島はオーディエンスへと突っ込んでゆく。シーケンサーを操っていた上田が、曲中でベースを受け取ろうと後ろを向くと、そのTシャツの背中には大きく“平等”の二文字が。音楽は奏でる者の訴えるメッセージとリンクしたときにこそ最強の力を生む――。その実例を、まざまざと見せつけられたような想いがした。

ZAX(pay money to my pain,The BONEZ)/撮影=浜野カズシ

「この世界は暴力、不平等で成り立っています。そして俺らは、それを解決できる手段を持っていません」と贈られた「PEACE!!!」でも、“Save the screams!!!”の大合唱が湧いて、ピースサインがフロアを埋め尽くすことに。それを最後に白川、児島、ZAXが去り、ステージ上は上田と、彼が「俺が唯一師匠と呼ぶ人」と言うマニピュレーター・草間敬と二人だけになる。上田は客演してくれたゲストへの感謝を語り、「ただでさえ歳食って説教臭くなったから、彼らが参加してくれなかったらもっと重苦しいアルバムになったかも」と笑わせると、そこで自身の核心を述べた。

AA=/撮影=浜野カズシ

「世の中、人生にはどうにもならないことがいっぱいあります。震災もそうだし、世界中に蔓延っている暴力、不平等もそう。最近だと唯一無二のアーティスト、パフォーマーの森岡賢さんが、二度と会えない人になってしまいました。実は父親も、アルバムが完成する10日くらい前に、二度と会えない人になってしまいました。でも、こんな風に思ってます。会えなくなったことを嘆くより、出会えたこと、同じ時代に泣いて、笑えたことを誇りに思いたい。だから、みんなの信じるものを大事に思って、少しでも前に進めたらいいんじゃないかと思ってます。ブッ倒れるまで、この音鳴らし続けていく覚悟なんで。倒れるときも前に倒れるんで、それまでついてきてください!」

AA=/撮影=浜野カズシ

最後に贈られた「Shine 輝」でスポットを浴び、上田が呟くように歌った短いフレーズは、まるで讃美歌のような神々しさで胸に沁み入った。全てのものに終わりはあっても、今、息をしている限りは全ての人間に未来を見据える価値が、むしろ義務がある。ストイックな志で奏でられるAA=のカオスなミクスチャーは、これからも真っ直ぐな輝きを放ち続けてゆく。

写真=浜野カズシ 文=清水素子

セットリスト
AA= TOUR #5
2016.6.11 (Sat)恵比寿LIQUIDROOM

01. ?erusrofyzarcuoyera
02. INEQUALITY
03. DOWN
04. 増悪は加速して人類は消滅す
05. FREE THE MONSTER_#5ver.
06. Such a beautiful plastic world!!!
07. WARWARWAR
08. posi-JUMPER
09. M SPECIES
10.  3.600.000.000 = 62
11. WORKING CLASS
12. GREED...
13. The klock
14. HUMANITY2
15. divide~プレイングカードは分離壁の夢を見るか?~
16. BATTLEFIELD TvsZ
17. I HATE HUMAN
18. FREEDOM
19. →MIRAI→ (ポストミライ)
<アンコール>
20. ALL ANIMALS ARE EQUAL
21. LOSER
22. PEACE!!!
23. Shain 輝

 

ライヴ情報
Xmas Eileen Presents 暁ロックフェス
2016年6月25日(土)渋谷 O-EAST
w/ Xmas Eileen、Dragon Ash、ヒステリックパニック
AA=(Takeshi Ueda and Takayoshi Shirakawa,Minoru Kojima,ZAX)

SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY
2016年8月10日(水)新宿LOFT
w/ 9mm Parabellum Bullet
AA=(Takeshi Ueda and Takayoshi Shirakawa,Minoru Kojima,ZAX)

J 2016 LIVE <10 days of glory -10 counts for destruction->
11月20日(日)恵比寿LIQUIDROOM
w/ J
AA=(Takeshi Ueda and Takayoshi Shirakawa,Minoru Kojima,ZAX)

 

 

リリース情報
5th ALBUM『#5』
2016年5月18日発売
【CD+DVD】VIZL-971 ¥4,644(tax in)
【CD】VICL-64574 ¥3,024(tax in)
<収録曲>
01. ?erusrofyzarcuoyera
02. INEQUALITY
03. DOWN
04. 増悪は加速して人類は消滅す ~Hatred too go fast, Vanishing all human~
05. FREE THE MONSTER_#5ver.
06. Such a beautiful plastic world!!!
07. BATTLEFIELD TvsNK
08. M SPECIES_#5ver.
09. 3.600.000.000 = 62
10. divide ~プレイングカードは分離壁の夢を見るか?~
11. BATTLEFIELD TvsZ
12. →MIRAI→ (ポストミライ)_#5ver.
13. Shine 輝