the peggies・北澤ゆうほがバンド結成から3人のキャラ、今後の野望まで奔放トーク
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the peggies・北澤ゆうほ 撮影=大橋祐希
キュートでありながら、一聴しただけで一気に“持っていく”存在感のある歌声。3ピースの編成から繰り出されるポップなギターロックサウンドは、シンプルな中にしっかりとしたフックとメロディセンスを感じさせる。昨年11月にフルアルバム『NEW KINGDOM』をリリースして以降、俄然その注目度を増しているバンド・the peggies。7月には自身2度目のワンマンを控える彼女たちだが、そもそもどのように結成され、何を目指しているのか。SPICE初登場の今回は、作詞作曲にくわえてプロデュースまで務める北澤ゆうほ(Vo/G)を迎え、“ペギーズとは?”を徹底的に訊いてみた。バンドの歴史や現在地点はもちろん、彼女の魅力と天性のフロントマン気質も垣間見える奔放トークをどうぞ。
――今回は初登場ということで、the peggies(以下、ペギーズ)とはどんなバンドなんだ?という部分を紐解いていきたいと思っています。
お願いします!
――本格的に活動を開始したのは高校生のときですよね。
そうですね、高校生からやってます。元々は中学校からの同級生で、中学校のときにわたしが軽音楽部に入ったらたまたま出会って。中学2年生のときに二人を「バンドしよう」って誘いました。中学校の間は計5人くらいでコピーバンドをやっていて、その頃から「高校生になったら自分たちの曲をやりたいね」って話してたんですけど、高校生になってからは実際に曲を作り始めて、高校一年生からライヴもやり始めて……って感じです。
――中学で軽音ってあるんですね。
珍しいですよね。大体高校からが多いから。
――部活で軽音楽部をチョイスするくらいだから、当時から音楽は好きだったと。
そういうわけでもなかったんですよね。でも歌うのは好きだったんです。あとは人前に立つのが好きだったので。目立ちたがり屋で。
――ボーカルに打ってつけの人材じゃないですか(笑)。
そう(笑)。文化祭とかで人前に立てる部活がいいなと思って。他にもそういう部活はあったけど、舞台とかだったら主役になれなかったときに周りと馴染んじゃうんじゃないかと思ったんです。だから最初はあまり「音楽が好き!」っていうわけではなかったですね。
――もともと歌うこと自体が好きだったっていうのは、音楽の授業とか?
音楽の授業は小学校のときからすごくイキイキ歌ってました。音楽会のときとか、ビデオで見返したらわたしだけすごい動きながら歌ってるみたいな(笑)。あとは家族でカラオケによく行っていて、それがすごく楽しくて。チューリップとか歌ってました。
――わりと昭和な選曲ですけど(笑)、その頃の体験は今でも生きてますか?
そうかもしれないです。聴いてきた曲が、わたしたちの世代よりもお父さんお母さん世代の曲の方が多かったから。長く聴いてきた曲が自然と染みついているっていうのがあるとしたら、昭和のポップスの方が自分の中にはあると思う。
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=大橋祐希
――どこかのタイミングでバンドものにガッツリハマったとかは無かったんですか。
中学で自分がバンドを始めてからはハマりましたけど、それまではバンドとかうるさい!くらいに思ってたから、あまり好きではなかったですね。なんか怖いなって思ってました(笑)。
――でも、人前に立ちたいだけだったら、他の方法もあったわけじゃないですか。アイドルを目指すとか、モデルさんになるとか。そういう意味ではたまたま軽音楽部のある学校だったのが大きかったんでしょうね。
そうですね。軽音が無かったら、他の部活に入っていたと思うし。ミュージカル部とかに適当に入ってたかもしれない(笑)。
――ミュージカル部まであったんですね……!
ありました(笑)。色々あったんですよね。でも人前に立つのは好きだけど、みんながやっていることはあまり好きじゃなくて、他の舞台に立つ系の部活は入部希望者がいっぱいいたから入りたくなかったんだと思います。軽音部はめっちゃ人気無かったから。わたしたちの入学した次の年にアニメの『けいおん!』が流行って、めちゃめちゃ増えたんですけど、わたしたちはギリギリ放映される前だったので。
――男子にも不人気?
あ、ずっと女子校だったんですよ。だからたまたま女の子だけのバンドになっていて。故意にガールズバンドを組んだわけじゃなくて、女の子しか居なかったから必然的に。
――あぁ、なるほど! そこで結成して、そこからはどんどんハマっていって?
そうですね。やっぱり楽しいし、同年代のバンド――わたしたちがバンドを始めたくらいに『閃光ライオット』(高校生バンドのコンテスト)が始まって、同年代のバンドが大きいところでやってたりCD出したりしているのを知って。めっちゃカッコいい!と思ってライヴハウスに行くようになって……毎週行ってましたね。ベース(石渡マキコ)と二人で通って、いろんなバンドのライヴを観に行って、「高校生になったら絶対自分たちも出たいね」って話をしてました。
――その頃観たバンドってどのあたりですか?
中学生のときによく観てたのは、SuchmosのボーカルのYONCEさんが当時やっていたバンドとか、挫・人間とかThe SALOVERSとかですね。もっと上の年代だと、わたしたちはブランキー(BLANKEY JET CITY)とかミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)とか好きだったけど、もう解散しちゃってて観に行けなかったから、いっつもみんなでライヴ映像だけ観てました。
――いやぁ、いい感じの音楽に触れてるなぁ。そして高校生になり、『閃光ライオット』を目指したわけですか。
そう。もう一年生の早い段階からライヴをして。最初のうちは高校にも軽音部があったので入ってたんですけど、あまりにもわたしたちが真面目に部活に行かなくて、「辞めてもいいよ」って言われたから「じゃあ、辞めます」ってすぐ辞めて(笑)。高校生のときは世に出れないぶん色々やろうということで、自主盤も結構作った方じゃないかなぁ。4枚ぐらい出してますね。
――それだけの曲数を書いてきたわけですが、作曲はすんなりできました?
4月に入学して3人になって。そしたらうちのドラム(大貫みく)に「7月にライヴ決まったから、それまでにオリジナルを5曲作ってくれる?」って言われたんです。曲なんて作ったことないのに(笑)。それで「わかった」ってすごい急いで作ったんですけど、最初はあまり知らない状態だから、逆にパッといつの間にか出来て、あまり大変じゃなくて。
――それすごいですね。普通みたいに言ってますけど(笑)。
ふふふ(笑)、どうなんだろう? なんとなく弾いて歌って、「出来たー」ってメンバーに聴かせて、「いいねー」ってなって。そこにベースやドラムを乗せて「あ、出来た!」みたいな感じです。
――それ以来ずっと北澤さんが作曲してるんですよね。
うん、自然の流れでわたしが作るようになりました。
――石渡さんも大貫さんも、それだけ北澤さんの作ってくる曲に納得して。
そこは大丈夫だと思います。わたしが作ってきて、「それ微妙」みたいなことは言われたことないですね。基本「すごく良いね」「感動した」って感じで言ってくれるので「……ありがとう!(ドヤ顔)」って(笑)。
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=大橋祐希
――段々と3人の人間模様が見えてきました(笑)。ライヴを突然決めてきたりしたという大貫さんですが、彼女はアクティブですか。
最初はすごいアクティブでした。『閃光ライオット』にも勝手に応募してて。わたしは「まだバンドとして全然出来上がってないから、応募したって通らないしもう1年待とうよ」って言ってたんですけど、「そんなこと言ってたら永遠に成長しないよ!」みたいに怒られて(笑)。……うん。アクティブでしたね、確かに。
――「でした」っていうことは、最近はあまり?
段々とそこは消え失せていきましたね(笑)。
――石渡さんは普段どんなキャラなんですか。
うーん、一番自分の感情に素直な気がする。いい意味であまり物事を深く考えないみたいな、最初の直感通りに動けるタイプだから。スタジオとかでも、明らかに負のオーラを漂わせて4時間くらい何も喋らなかったりしてて、あとから聞いたら「あの時すごいお腹空いちゃってたんだよね、ごめんね」とか言ってきて「え!?」って(一同笑)。
――そこだけ書くとすごいヤバいやつみたいになっちゃうけど(笑)。
あはははは! でも一番喜怒哀楽がはっきりしてるし、一番ハッピーな感じが強い人かもしれないです。同年代の友達も多いし社交的ですね。
――そんな3人のバランスはどう思いますか?
3人とも性格が全然違うので。パッと見、わたしがすごい自由にやっていて2人がガッチリ支えてくれてるみたいに見えると思うんですけど、各々個性が強くて全然違うタイプだし……同じタイプが集まると自然と力関係ができちゃう気がするんですけど、そういう上下関係も全然なくて。こういう取材の時はわたしが曲も作ってるから前に立つけど、3人でいるときはそれぞれ超フリーダムに、自由に生きてるし、それが良かったと思います。元々が友達同士で組んだバンドではなくて、たまたま部活で出会ってバンドを組んでから友達になったから、ちょうど良い距離感というか。なんか不思議な関係です。
――その湿度のない感じは珍しい気がします。
女の子同士でそういう関係は珍しいかもしれないですね。でも仲良しなので不思議なんですよ。
――仲は良いけど個を認め合って干渉しすぎず、ってなんだかオトナですね。
えへへへ(笑)。言われてみればそうかもしれない。うん。
――3人の間では、活動が本格的になっていくところで「こういう風にやっていこうよ」っていうビジョンを共有したんですか。
割と序盤の、高校1年生くらいのときにはもう「どういう曲をやっていきたいか決めよう」って言ったんですよ。じゃないと方向性が定まらないし、それは嫌だからみんなどういう曲をやりたいのか、それぞれ教えてってメールして。わたしはスピッツとかくるりみたいな音楽で、歌がよく聞こえるものをやっていきたいと言って、他の2人も大体同じ感じで。自分のよく聴くジャンルとはまた違うかもしれないけど、私たちがやるのはそういう方向性で良いと思う、みたいな話を高校1年生のときにしてからは、全く変わってないです。ずっとそのまま。
――今後の我が社は~みたいな話をかなり早い段階で。
そうそう。わりと早めに決まりました。それもわたしが曲を作ってるからかもしれない。わたしの歌、歌詞に一番重きを置いて、そういう曲を作っていこうっていう話になって。普段聴いてるジャンルは本当にみんな違うんですけど。
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=大橋祐希
――それをペギーズでやるかどうかは別として、どんな音楽が好きなんですか?
わたしは結構そのままで、歌ものとか歌詞が良いと思えるものが好きなんですけど、バンドがめちゃめちゃ好きなので、ジャンルというよりもバンドの音楽はカッコいい!って思って聴いちゃう。だからあまり偏りはないんですけど、一番好きなのはやっぱりスピッツ、くるりと、海外だとウィーザーが好きで、その3バンドは絶対にずっと好きかなと思います。でもカッコいいなと思ったらなんでも聴いちゃいます。
――その「カッコいいな」って思うポイントは。
えー、なんだろう。同年代やインディーズのバンドだとライヴがちゃんとしてるバンドに憧れるから、ライヴを観て良いと思ったら聴きますね。それ以外だとやっぱり歌詞かなと思います。わたしは歌詞が入ってきたら、カッコいいなと思っちゃう。
――スピッツにしてもくるりにしてもストレートな表現ではないですよね。難しい言葉ではないけど、意味はよく分からなかったり。
そういうところが好きなんだと思います。本を読むのも好きだったし、歌詞を改めてブックレットで読んだりするのが好きなんですよ。で、考えるみたいな。色々な人が聴いて、色々と解釈できる方がカッコいいなって思う。自分でもそうできたら良いなって思うから、なるべくそういう方向性で歌詞を書いてます。
――他の2人はどんな曲が好きなんですか。
ベースはもう、ロックンロール!みたいな。ミッシェルが一番好きで、ライダース!みたいな、ちょっとワルっぽいのがすごい好きらしいです。全体的にそういう雰囲気の子なので……でもずっと中学校から趣味変わってないですね。ドラムは、はっぴいえんどとかオアシスが好きで。一番意外な感じはあるかもしれない。
――そうですね。
一番いろんな音楽を聴いてるかもしれない。いつの間にかどこかのタイミングで聴きだすようになって、一番ライヴとかも行ってるし。わたしの知らない海外のアーティストのライヴとかにも行ってますね。
――プレイングにもフィードバックされてますか?
はっぴいえんどとか好きなのはすごく分かる気がします。良い意味でドラムの感じが今っぽくないから、わりとシンプルで男らしくてみたいな。
――タムは一個で、みたいな。
そうそう! 音数で勝負みたいな感じではなくて「ずっと8ビートを叩いてるだけでもカッコいいドラマーになりたい」っていうタイプです。そのあたり、それぞれの好みのちょうどいい落とし所を3人で見つけながら作っていく作業です。
――3人の好みがバラバラなのは良いことかもしれないですね。最近そういうバンドが多いです。
みんな好みが一緒だと、そのバンドに寄っちゃうんじゃないですかね。
――もし全員ミッシェルが好きだったら……
絶対ミッシェルになってます(笑)。それはそれで素敵なんですけど。
――確かに。そんな3人は今、どんなモードで曲作りをしているところですか?
前の『NEW KINGDOM』を出したときに、今まで出してきた中で一番反応が良くて。それが自分たちにとってすごく自信になったんですよ。こういう方向性で間違ってないな、わたしたちはって。だから今はあまり新しいものに手を出そうとしている段階ではないかもしれないですね。今は固まりつつある方向性をベーシックに、いかにいろんなアプローチで曲ができるか。
――引き出しですね。
はい。……でもわりと何でもやるタイプなのかな? その中でできることの精度を磨いていこうみたいな。曲はバンバン作っていって個々のスキルアップに繋がったら良いねっていう段階です。
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=大橋祐希
――そして7月28日にはワンマンライヴも控えてます。
2回目のワンマンなんですけど、今まではあまり自分たちの中で「良いライヴをしよう」っていう方向に向いていなくて。何が正解なのかとかどういう風にしたら良いのかとかあまり分かってなかったんです。「これ」って決まった曲順とか盛り上げ方が決まったらずっとそれに沿ってやってる感じだったんですけど、去年のワンマンあたりからMCだとか曲順とか……まずはライヴに対する気持ちを変えようみたいな。毎回違った課題が出るように、良い意味で毎回違うライヴをしていこうっていう気持ちにみんなの気持ちが切り替わったから、今年はやっと自分たちはどういう風にライヴをやったら一番魅力を伝えやすいのかを試行錯誤し始めてます。今はちゃんと毎回違う楽しさと違う課題が出てきて、次はこうしてみようとか、スタジオでも全然充実度合いが違ってきていて。その意識になってから初めてのワンマンだから、今までの曲をやっているかもしれないけど、ペギーズのライヴ変わったなって思ってもらえる内容になっているんじゃないかなと思っております。
――見せ方の部分では他のバンドを参考にしてますか? それとも自分たちなりの方法を突き詰めていってますか。
多少は「そういうの良いな」って思ったりもするけど、あまりそれは大きい要素にはなってないかもしれない。まず、どこが足りないか、どういう動きが良いのかとかを、自分たちのライヴを見返して考えてますね。そこにプラスアルファとして、「この間このバンドがこういうことしててカッコ良かったからやってみようよ」みたいなことはありますけど。
――その「ペギーズとしてどうするのか」みたいな意識は、曲作りから一貫している部分ですよね。では最後に。あえてここで聞いておきますけど、最終的な野望はありますか?
わたしは絶対に有名になりたいと思って最初からやっているので、バンドを始めたときから。世に出てなくても良いバンドがたくさんいるのは知っているし、それが基準じゃないことを知った上で、それでもわたしは有名になりたいと思ってバンドをやっていて。小さいときから目立ちたがり屋っていうのもあるんですけど(笑)。
――そうでした(笑)。
音楽は楽しいしやりたいことなのは当たり前だけど……わたしは音楽に詳しくないときにパッと耳に入ってきたバンドを好きになったから、やっぱりそういう音楽に詳しくない子とかが音楽を好きになる入り口ぐらいの、音楽を知らない子も知ってる子も「良いな」って思えるようなバンドになりたいです。具体的に言えば、高校生の女の子が大体みんなペギーズをコピーしてる、憧れ!みたいな。大体みんなペギーズやるじゃん、他のやろうよ!っていうくらいみんながコピーするとか(笑)。
――文化祭で取り合いになるバンドだ。
そうそうそうそう! あとよくわたしが言っているのは、学校の休み時間にクラスの中でペギーズ好きな子とペギーズ好きじゃない子で言い合いをして欲しいんですよ。嫌いな子がいるぶん好きな子もめっちゃ頑張って推すから。わたしも_中学校のときに隣の席の子と好きなバンドについて「こっちの歌詞の方が良いじゃん!」みたいに言い合ってたし(笑)。それぐらいの存在になりたいですね。あとは年代的にも若い子だけじゃなくて、お父さんお母さん世代でも良いなと思えて、子供と一緒にライヴ行こうかな、みたいなバンド像にもすごく憧れます。若い子だけをターゲットにしていこうみたいにはあまり思っていなくて、むしろ色んな年代の人が良いなと思ってくれて、年配の人でもちょっと懐かしんで聴いてもらえたら嬉しいと思う。
――そういう本当の意味でポピュラーなもの。
自分が音楽を聴く側として好きなのはそことは違っているかもしれないけど、わたしが行く道はポピュラーでキャッチーなところに行きたいなって思ってます。あとは……野球の始球式に呼ばれるくらい有名になりたいです! ふふふ(笑)。
――それは相当目立ちますからね(笑)。やはり根っからのフロントマン気質!
謙虚な気持ちと協調性は忘れずに生きていきたいなと、今から心がけてるんですけど(笑)。親にもそれだけは注意されてて、昔から。小学校一年生のときの日記帳とか見返してもすごいんですよ。「すごい人気者すぎて困ります」とか書いてたから(一同爆笑)。
――あはははははは!!
わりとそういうフシが、根っこの部分にあると思うから。いつそういう部分が目覚めてしまうか分からないからギュッと抑えて、生きていきたいと思ってます(笑)。
――良いですね、初登場で何故かちょっと反省して終わるインタビュー(笑)。
ふふふふふふ!(笑)
撮影=大橋祐希 インタビュー・文=風間大洋
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=大橋祐希
2016年7月28日(木) 渋谷club asia
OPEN 18:15 / START 19:00
スタンディング ¥3,000 (1ドリンク別)