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熊本の演劇人が「街や人の再生・復興」を掲げて動き出す

2016.7.1
ニュース
舞台

 

熊本に笑顔を!アトリエ花習舎でちっちゃな演劇祭を開催したい!

昨年、熊本市東部、健軍商店街そばのアトリエ花習舎(熊本市東区東本町1-62-3F)を会場に、「カシューナッツ 12帖演劇祭」という小さな演劇祭が誕生しました。県内外から参加した5団体が約1カ月にわたって、23ステージの公演とワークショップを開催し、ご近所のお客さんを中心に温かな交流が行われる場となりました。

ゼロソー「嫉妬」(2015年の演劇祭より)

ぶらぶら人形ものがたり(2015年の演劇祭より)

メイク講座

ところが、先の熊本地震により、花習舎がある熊本市東区は大きな被害に遭い、商店街のスーパーが完全に倒壊したのを筆頭に、現在も営業を再開できていないお店がたくさんあります。また公共ホールや民間のホールも被災したり、避難所になっており、もちろん閉館状態。昨年度まで熊本県立劇場の職員で、演劇祭を主催するSulcambas!の松岡優子さんは自身が公共ホールに被災者として身を寄せる立場ながら、「被災された方々のつらく苦しい気持ちが少しでも軽くなったり、前向きになれるように、この演劇祭を絶対に諦めたくはありません」と決意を語ります。

幸いアトリエ花習舎は大きな被害を免れたものの、昨年の「12帖演劇祭」を採択した熊本県による「新たな芸術文化発掘事業」が地震の影響で募集を行う目処が立っていないのだとか。そこで、松岡さんはクラウドファンディングによる支援を呼びかけています。

改めて、松岡さんからコメントをいただきました。

カシューナッツ 12帖演劇祭クラウドファンディング協力のお願い

「前震の時、劇団の稽古のためアトリエ花習舎にいました。想像もしていなかった出来事に、その瞬間、地震とは思えませんでした。何かとてつもない状況にさらされていることだけはわかって、壁に立てかけた大道具につぶされないようにメンバーみんなで部屋の真ん中に集まって抱き合いました。ほうほうの体で花習舎を飛び出し、メンバーを送り届けその夜は車中泊。その疲れもあって15日の夜は両親と居間でウトウトしていました。その日の夜中、前震の時とは全く違う身体が飛び上がるほどの下からの突き上げに『やばい』と死を覚悟しました。家はガラガラという音を立て、何もすることができない無力感、『頭を隠して!』と叫び身を伏せるのがやっとでした。停電で真っ暗、道は陥没し、車は陥没した穴に落ちパニック状態になった人が声を上げる中を近くの中学校に避難。グラウンドを埋め尽くす人たちと一緒にラジオの声だけを頼りに空が白んでくるのを待ちました。

前震までは無事に見えた我が家は本震で致命的なダメージを受けて、そこから避難生活が始まりました。劇団のこと、花習舎のこと、気になりながらも日常生活さえままならず、地元を離れることができなかったため、花習舎の無事を自分の目で確認できたのは前震から1週間後のことでした。倒れているのではないか、いや、倒れているに違いない。そう思っていた花習舎が立っていて、それはもう私たちに『あなたたちが頑張りなさい』と言われているようにも思えました。

初めて花習舎に入ったのは、この5年間、東日本大震災の取材を続けていらした朝日新聞の記者さんと電話中のことでした。『こういう時にアートの力は大きいのだ』と繰り返し言ってくださった言葉を忘れません。

熊本はまだ2カ月前とほぼ変わっていません。まだまだ熊本の復興までの道のりは長いです。『カシューナッツ 12帖演劇祭』は今年だからこそ、こんな時だからこそやりたいのです。実行委員メンバーもそれぞれの事情を抱えながらも、『カシューナッツ』を通して熊本でひとつでも多くの笑顔を作ることを日々考えています。今回のクラウドファンディングにはアトリエ花習舎の3日間提供というリターンも含まれています。どうか私たちと一緒に熊本を盛り上げてください!」

今年の演劇祭は、10月にゼロソー『竜宮都市ゴーヘイ』(熊本)、11月に演劇関係いすと校舎『草、のびて、家。』(北九州)、劇団天然木(熊本)、劇団だらく舘『贋作・一条さゆり』(東京)が参加を予定しています。

クラウドファンディング

「熊本に笑顔を!アトリエ花習舎でちっちゃな演劇祭を開催したい!」(7月31日まで)
https://readyfor.jp/projects/8241

 

熊本の劇団が「街や人の再生・復興」を掲げて『SARCK』結成

そして松岡さんが同様に教えてくれたのが、早くも行動を始めた熊本の演劇人たちのことです。熊本を拠点にする劇団「市民舞台」、劇団きらら、ゼロソーといった劇団に所属する演劇人たちが、「平成28年熊本地震により被害を受けた熊本でアートによる街や人の再生・復興に寄与する」ことを目的とする団体『SASHIYORI Art Revival Connection KUMAMOTO』を立ち上げたのです。彼らは「何かここから元気を発信したい」と思いを一つにしているそうです。

『SARCK』は下記のことを謳っています。

(1)学校等での子どもたちの心のケア、心身の解放に寄与する事業
(2)避難所、仮設住宅の集合住宅地にある集会所等での被災者の心身の解放のための事業
(3)震災によって失われたコミュニティの再形成のための事業
(4)防災のためのプログラム作成と、防災意識の啓発事業
(5)その他、目的を達成するための一切の事業

6月4週目からは地震の被害がひどかった益城町にある広安西小学校で「えんげきのじかん」という活動をスタートしたそうです。アートを通して地震によって緊張した心と身体をほぐすことを目指した「えんげきのじかん」は、その後、熊本市東区にある避難所で希望のあった8カ所で開催。ひとまず広安西小学校は1学期中の毎週、避難所は閉鎖されるまで訪ねていく予定だとか。そのほか仮設住宅の団地内にある集会所で身体を動かしたり、コミュニティの再形成のための活動をしていくこと、地震による心のケアが必要な子どもさんたちのところにいくことなどを検討しているそうです。またその先にも、防災のための演劇的プログラム作成を目指しています。


最後に自分のまとめをつけようとは思ったけれど、何を書いても遠いところに存在している人間のものになってしまう気がする。そういえば、映画『うつくしいひと』後のトークショーで行定勲監督が同じようなことをおっしゃっていた。被災したからこそ、本当の地震後の映画が描けると。そうかもしれない。だったら僕は、「演劇」という共通項ある、被災した仲間の言葉を拾っていく。