間もなく開幕! 『ジャージー・ボーイズ』中川晃教インタビュー
中川晃教
トニー賞最優秀ミュージカル賞、グラミー賞などを受賞した伝説のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の日本初演が、シアタークリエで7月1日に初日を迎える。(7月31日まで。6月29日、30日プレビュー公演)
その作品でリードヴォーカルのフランキー・ヴァリ役を演じるのは中川晃教。彼が「日本のフランキー・ヴァリ」として舞台に立つことになったのは、今も現役のプロデューサーで、「ザ・フォー・シーズンズ」の名曲の数々を書き下ろした作曲家、ボブ・ゴーディオが実力を認めてくれたからだ。その経緯と、作品や楽曲の魅力、REDとWHITEの2チームへの向き合い方など、意気込みを語ってくれた演劇ぶっく6月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
中川晃教
出会いの運命に導かれて踏み出した新しい1歩
──まず、『ジャージー・ボーイズ』という作品について、どう感じているかを聞かせてください。
実在するアーティストである「ザ・フォー・シーズンズ」の音楽がミュージカルとなって舞台上から飛び出てくる、その感覚にはライブやコンサートに近いものを感じます。かつストーリーがちゃんとあって、メンバーの友情やそれぞれが抱えている人生の中から、時代を作る名曲が生まれてきたことがきちんと伝わる。ミュージカルならではのストーリーの感動とライブのエモーションが共にある、とても良い作品だなと感じました。
──そんな作品で、主演のフランキー・ヴァリを演じるまでには、歌の審査などもあったそうですが、臨まれた時の気持ちは?
僕の周りには『ジャージー・ボーイズ』のファンの方が多かったんです。その方達が日本で『ジャージー・ボーイズ』を上演したいという、強い熱意を持って携わっていて、その中で「中川に『ジャージー・ボーイズ』を演らせたい」という期待を持ってくださっているのが、伝わってきたんですね。それを感じるにつれて、僕自身、「本国からNGをもらってはいけない」という気持ちも高まりました。「ザ・フォー・シーズンズ」の名曲はよく知っていましたから、その名曲を自分が歌えるチャンスが訪れたことも嬉しかったので、短期間でしたがかなり本腰を入れて練習してテープ審査に臨みました。そのデモテープがOKをもらえたことからすべてが始まったんです。
──ということは、作品や役柄への思い入れや意気込みもひとしおでしょうね。
まず、「OK」を頂けるまでに大きなプレッシャーがありましたし、実際にフランキー・ヴァリのあの特徴的な声、単にキーが高いというだけではなくて、今でもあの声を聞いただけで皆が立ち上がって踊りたくなるほど愛されている、あの個性的な声の方を自分が演じるわけですから。しかもポピュラリティな要素を持ったグループのリードヴォーカルですから、ただ声が高ければ、また歌が上手ければできるというものではないんです。その中で、自分が新しい声を取得する機会を得たのは大きいと思います。僕は今年がデビュー15周年で、その記念のアルバムでは、『ジャージー・ボーイズ』と出会ったからこそ生まれた声で歌っていますし、またミュージカルと出会ってからの声やそれ以前の声も含まれています。そういう意味で、僕にとってもこの出会いには運命とやり甲斐を感じています。『モーツァルト!』の音楽に出会ったことからミュージカルへと進んできたように、『ジャージー・ボーイズ』の音楽に導かれて、新しい第1歩を踏み出せています。
中川晃教
両チームのメンバーに尊敬の念を持ちながら
──役柄や作品、また音楽的な魅力についてはいかがですか?
やはり4人でコーラスを聞かせるというのが「ザ・フォー・シーズンズ」の特徴で、コーラスグループだというところと、『ジャージー・ボーイズ』の魅力は切り離せないものがあると思います。その中で、フランキーはリードヴォーカルではあるのですが、コーラスやアンサンブルも担っていて、例えばボブ・ゴーディオがメインヴォーカルで、フランキーが完全にコーラスに徹しているナンバーもあるんです。ですからこの物語はコーラスグループのアンサンブル、ハーモニーを描いているので、メンバーそれぞれの想い、それぞれが主張したいことももちろんありつつ、アンサンブルの為にメンバーがどんな選択をしたか、それが作品の要だと思います。1人が大きな借金を背負った時に全員で肩代わりをして、仲間が仲間を支え、その先にヒット曲が生まれていった。そういう彼らの人生の変化と共に、絶えず音楽、ヒット曲が光と影のように在るので、4人の存在そのものが大きな作品なんです。
──その4人の仲間がチームRED、チームWHITEとある中で、中川さんは両方に出演しますが。
とても楽しみです。プロモーションビデオの撮影の時に、福井晶一さん、吉原光夫さん、矢崎広君とは「はじめまして」でしたが、藤岡正明君、中河内雅貴君、海宝直人君はよく知っている仲で、気心の知れた、色々な作品に果敢にチャレンジしている仲間たちが一緒なのが心強いですね。福井さんは大先輩という印象だったのですが、カヴァーライブなども結構なさっていて、多岐に渡る曲を歌われているところに親しみを持ちました。矢崎君は若手の中でもちょっと個性的な印象があるのが僕はとても好きですし、それはボブ・ゴーディオという役柄にもよく合っていると思います。(吉原)光夫さんとは『グランドホテル』の現場でよく顔を合わせるようになりました。2チームありますが4人で1つの物語ですから、両チームに尊敬の念を持ってフランキー・ヴァリ役としての仕事が出来たらと思っています。演出の藤田俊太郎さんが、出演者から何を引き出し、どう球を投げてくるか、それにどう応えるかもすごく楽しみなところです。両チームで全く違う体験ができると思うので、自分自身が決してブレないことを心掛けて挑みたいです。
──是非、両チームを観たいと思っている方達が多くいらっしゃると思います。では、改めて楽しみにされている皆さんにメッセージを。
「ザ・フォー・シーズンズ」のステージや世界中で広く愛されている楽曲に詰まっている、キラキラした、エンターテイメントを体現させてくれる時間が『ジャージー・ボーイズ』の中にはあると思います。更に、そのステージを降りたところにある人生、それぞれが生きている時間もまた物語としてちゃんとあります。そんな二つの楽しみ方ができる作品です。僕自身、初めての歌唱に挑むフランキー・ヴァリ役でもあります。「ザ・フォー・シーズンズ」4人のそれぞれの挑戦、その先にあるハーモニーが、日本初演の『ジャージー・ボーイズ』の感動につながっていってくれたらと思っています。観にきてくださった方に音楽と共にある人生って楽しいなと思って頂けるように、頑張りたいです。
中川晃教
■日時:2016/7/1(金)~2016/7/31(日) ※プレビュー6/29(水)30(木)
■会場:シアタークリエ (東京都)
<フランキー・ヴァリ>中川晃教
<トミー・デヴィ―ト(Wキャスト)>藤岡正明/中河内雅貴
<ボブ・ゴーディオ(Wキャスト)>海宝直人/矢崎 広
<ニック・マッシ(Wキャスト)>福井晶一/吉原光夫
<ボブ・クルー>太田基裕
<ノーム・ワックスマン>戸井勝海
<ジップ・デカルロ>阿部 裕
綿引さやか、小此木まり、まりゑ、遠藤瑠美子、
大音智海、白石拓也、山野靖博、石川新太
■音楽:ボブ・ゴーディオ
■詞:ボブ・クルー
■翻訳:小田島恒志
■訳詞:高橋亜子
■演出:藤田俊太郎
■音楽監督:島 健
■音楽監督補・歌唱指導:福井小百合
■振付:新海絵理子