松田凌×伊達暁 本番直前インタビュー 朗読劇『クロードと一緒に』
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松田凌、伊達暁
『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』が再々演となる。本作は、1985年にルネ=ダニエル・デュボワによって書かれた戯曲で、2014年5月に青山円形劇場にて初演され、2015年4月にはシアタートラムにて再演、いずれも大きな話題を呼んだ。
7月4、5日(月、火)に新国立劇場 THE PITで上演される今年は、パフォーミング・アートの要素であるサウンド、映像などを加えた“Lecture-Spectacle(Reading-Show:読み聞かせ)”という形式で催される。
「彼」を演じるのは再演に出演した松田凌、「刑事」役は、初演時に出演した伊達暁。同じ作品に出演してはいるが、「共演」とはなってなかった二人が、今回どのような世界を描くのだろうか。
――従来の動ける芝居から「朗読劇」という形になりましたが、最初、どう思われましたか?
松田: 最初にお話をいただいたときは「?」でした。朗読劇にすることでどんな新しいことを生み出していくんだろうって。でも自分が前回の稽古で葛藤し、苦戦していたときに、あえて本を読むだけの稽古をしてみたんですが、その時プロデューサーが「読みきかせという形も面白いかも」って言ってまして。自分たちが体現するだけでなく、言葉だけで想像させる「クロードと一緒に」…おもしろそうだなと。一見窮屈になりそうだけど、その窮屈さを武器にして演じられたらなと思います。
松田凌
伊達: 僕は…お芝居をふつうにやるより楽かなと思いました(笑)単純に「本を持っていいんだ」という安心感がね。それで、楽かなあと思いきや、稽古をしてみるとこれは大変だと。朗読劇に対するイメージって人それぞれだと思うんです。お客さんもそうだし僕も2回くらいしかやったことがないし、毛色も違う話だし。今回どうなるかイメージがつかないまま稽古に入りました。思っていた以上に「普通に芝居したほうが楽だったんじゃないかな」と。
――特にしんどいのはどのあたりですか?
伊達: 身体全体で声を発するのが普通ですが、突っ立ったままだと声が出ないんです。
――椅子に座ってやる形ではないんですね!
伊達: 基本的には立ったままです。しかも、台本を手に持ってマイクの前から動けないので思ったより大変ですね。口先だけでは芝居はできないんだな、って改めて感じています。
伊達暁
――舞台版では二人ともものすごく動きがありましたし。
松田: 舞台版のほうは、身体とモノと心情がリンクしていて、観る側も視覚的な情報が得られたと思うんですが、朗読劇だと読んでいるほうも自然と活字が浮き出てしまい、変に組み立ててしまいそうになるんです。かといって、聞こえ心地がいいセリフ回しで演じるのもまた違うだろうし。伊達さんが言う通り口先だけではできないですね。自分が役と連動していると考えた上で読み進めると、もちろん先読みなんでできないし、戻って読むこともできない。それが煩わしく、難しいなと思います。
――そもそもお二人が共演することは…
伊達: 初ですね。だからそこがいちばんの挑戦かも。「クロードと一緒に」という同じ作品で同じ出演者を演じていますが、「同時」には立ってないので。
――役を通してのお互いの印象は?
伊達: 初演と再演は同じ演出家だったので、基本的に路線は同じですが、稲葉(友)くんはああだったけど松田くんはこうきますか、とか、もちろんありますね。
松田: 刑事としては伊達さんが3人目なんですよ。スイッチキャストでやっていたときは、自分の中では「二人の『彼』がいる」という感覚だったんです。それが今回は伊達さんとだけ正面から向き合って刑事と彼を重ねていける。前回以上に刑事の凄みを感じますね。前回のお二人とも戦いましたがどちらかというと自分が支えてもらっていたと思っていたんです。
――「彼」の30~40分くらいの独白は、今回も変わらずあるんですか?
松田: あるけど、同じものではないと思いますね。音楽も生演奏で入りますし。「彼」が最後に吐露してしまった…「それしかなかった」と吐き出す。「彼」自身、衝動的に感じていることが最高潮になって、考えていることはバラバラだけどバラバラのままでもいいから「刑事」に全部ぶつけていって…その結果、自分が真っ白、空っぽになっちゃうんですけど。前回、前々回と意図は変わらないけど、まったく別の字間になると思います。
これまで「彼」を演じたのは初演の相馬圭祐くんと稲葉友くんと僕の3人。それぞれに最後が違うと思うんですが、僕自身は教卓の上でわけわからないまま終わって、こんなことを言っていいのかわからないんですが、「ここで今、命がなくなるんじゃないか」と思ってました。そのくらい変な状態になっていましたね。
松田凌
――「彼」という役は、やっていて魅力的ですか?前回の公演を観たときに、役に対する並々ならぬ熱い思いを感じたんですが。
松田: そんな束縛欲はないんですが、自分個人で言うならこの役は離したくないです。もういいや、ってまったく思えないし。自分が役者として続けていけるなら続けていける分だけ「彼」をやり続けていきたいです。他の人がやるのは置いといて、「自分は」この役をやりたいという気持ちです。
やりがいは感じますね。本番が終わったその先に何が自分に加算されているのか。この作品に出会えないと巡り合えないものがあると思いますし。
――伊達さんは「刑事」という役について思うことは?
伊達: 他人が演じるのを観てみたいという気持ちはあります。これまでなら、僕と唐橋充さんと山口大地さんが「刑事」をやってますが、もっと年配の人が刑事役をやるとどうなるんだろう、50代くらいの人がやってもおもしろいなって感じています。「刑事」はこれまで何人もの問題ある子どもたちを見てきた、たたき上げの刑事という設定ですし。「刑事」は、やっぱり面白いですね。遅々といて捜査は進まないけれど、お客さんと同時進行で物語を追っていける。最後まですっきりはしないけど、だんだん情報が積み重ねていく面白さがある。「刑事」としての生きがいがありますね。
僕の場合、「刑事」として「彼」に感情移入はしていたけど、「彼」の話を全部聞いても「やっぱりわからん」と思っていましたね。「お前はそうなんだ」というちょっと離した感覚でしたね。
伊達暁
――今回挑戦したいことって何かありますか?
伊達: 生演奏や映像を取り入れるなど、新しい試みをしようとしているので、実際それがどうなるのかですね。上演台本も新たに杉本さんが手掛けてますし。
松田: あ、でもいちばん挑戦しているのは鈴木ハルニさんかも。役が大きく変わっているから。警護官役から速記者役になったし!
伊達: ハルニくん、「俺がいちばん『クロードと一緒に』を知っている」って言ってたじゃん。でも、俺たちは一度演じたことある役だけど、ハルニくんは初めての役なんだよね。
松田: そういわれてみれば(笑)
伊達:シロウトじゃん、アイツ!「俺、全部出てるから」とか言ってたけど
(笑)
松田: それも含めて、「鈴木ハルニ節」ですからね!
――ハルニさんがこの座組みのムードメーカーになっているように思いますが、そうですか?
松田: 「でしかない」(笑)
伊達: (笑)
松田凌、伊達暁
■会場:新国立劇場 THE PIT
■上演台本・演出:杉本 凌士[劇団 男魂(メンソウル)]
■出演者:
松田 凌 鈴木 ハルニ 岩尾 祥太朗
伊達 暁
ライブ・ミュージシャン
水永 達也
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■公式サイト:http://www.zuu24.com/withclaude2016/