青木豪×柳下大インタビュー! Dステ19th『お気に召すまま』
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『ヴェニスの商人』『十二夜』に続くDステシェイクスピアシリーズ第3弾は、シェイクスピア史上最も幸福な喜劇として知られる『お気に召すまま』。前2作同様、演出に青木豪を迎え、俳優集団・D-BOYSが抱腹絶倒のロマンティックコメディにオールメール(すべての役を男性が演じること)で挑戦する。そこで今回は青木に加え、Dステシェイクスピアシリーズには初参加となるD-BOYSの柳下大に『お気に召すまま』へ臨む心境を聞いた。
――まず『ヴェニスの商人』『十二夜』と来て、今回、『お気に召すまま』を選ばれた理由からお話を聞かせてください。
青木:そもそもどうしてD-BOYSで喜劇をやりたいと思ったかと言ったら、群像劇だからというのがあるんですね。シェイクスピアの悲劇はどうしてもタイトルロールとその周辺しか目立たない。喜劇の方が登場人物みんなが目立つ印象があって。D-BOYSでやるなら喜劇がいいなというのがまず前提としてあるんです。その上で、今回、『お気に召すまま』を選んだのは“一点の曇りもない喜劇”だから。
――“一点の曇りもない喜劇”というのは。
青木:この『お気に召すまま』という作品は、兄・オリヴァーから疎まれているオーランドーと、現公爵・フレデリックから追放を命じられたロザリンドがそれぞれ逃げ込んだアーデンの森で巡りあい、森ではいろんな登場人物が恋をし合って、最後は強引なくらいにハッピーエンドの結末を迎えます。宮殿にいた頃はみんな社会的な縛りに囚われていたのに、森へ行けばその縛りから解き放たれて、自由に誰かを好きになれる。この物語には、排斥される人が一人もいないんです。そこが、“一点の曇りもない喜劇”だなあ、と。暗いニュースが多い今の時代だからこそ、こういう“一点の曇りもない喜劇”がやりたかったんです。
――確かに今はテレビをつけても先行きが不安になるような話題ばかりです。そんな時代に、こうした喜劇をやることにやっぱり強い意味を感じますか。
青木:やっぱり演劇というのは非日常ですから。芝居を見ている2時間だけは日常のことを忘れて楽しく過ごすというのも、日常から非日常に来る大切な意味。ここに来たときだけはいろいろ忘れて、とにかく楽しめるものをつくりたいなと思っています。
――何だかその感覚は、オーランドーたちが森へ行き着いたときの感覚に近いのかもしれないですね。
青木:そうですね。2013年にイギリスへ留学していたとき、市街地からシェイクスピアの生地を巡るバスの中からアーデンの森のモデルになった場所を見かけたんですよ。もうすっかり伐採されてたんですけど、かつてシェイクスピアはこの森を抜けて奥さんの家へ通っていたそうで。きっとこの森を通るときは相当ワクワクしてたんだろうなって思ったんです。何かそういう高揚感を作品に持ち込みたいなという気持ちはあります。
――柳下さんはDステシェイクスピアシリーズはもちろん、シェイクスピア作品自体が初めてなんですよね。
柳下:そうなんです。正直、シェイクスピアって難しいものだと思っていたし、台詞も聞き慣れていない言葉が多い。だから昔は見ていても理解できないまま終わることが多かったんです。けど、Dステのシェイクスピアはわかりやすくて見やすくて、出ている俳優たちもみんな楽しそうだなあっていう印象が強くて。自分がシェイクスピアをやるなら最初は豪さんとがいいなと思っていました。だから、このシリーズに参加することは、ずっと楽しみにしてたんです。
――今回、柳下さんは作品の中心的なキャラクターであるオーランドーです。柳下さんにオーランドーをあてられた理由は。
青木:まず声質ですね。わりと低めの声じゃないですか。だから、大事な台詞がしっかりと客席に届くんです。何本か出演作を見させてもらっていますが、そこがいちばん印象に残っています。そういう伝わる声を持った柳下くんに、真ん中を突き抜けてほしいなあ、と。あとオーランドってカッコいいんですけど、ちょっとおまぬけな役。その二面性が、柳下くんが演じることで出ればいいなあと期待しています。
柳下:僕、今までカッコいい役ってあんまりやったことがないんですよね。ひたすら二枚目というキャラクターって、どうしても逃げちゃうところがあって、堂々と向かっていけない。そこが今回の僕の課題です。
――コメディ自体、結構珍しいですよね。
柳下:そうですね。オーランドーはとにかくまっすぐで、恋人に対して一生懸命な男。狙って笑いを取りに行くというよりも、ひたすら一生懸命にやっている姿が滑稽に見えれば面白くなるのかなって今は考えています。この二枚目の王子様というキャラクターを、堂々とカッコよく演じることで、逆に可愛らしく見えたり人間味が出てくると思うし、おのずと笑いも生まれてくればいいなって。
――本に関してはどんなアレンジを加えているんですか。
青木:だいぶ修正を加えて、尺も短くなっています。シェイクスピア作品というのは大体そうですけど、喋りすぎなんです(笑)。それだけ喋られると枝葉末節に目が行って、何が言いたかったのかわからなくなる。だから、まずこれはさすがにと思う枝葉末節はバッサリと削りました。あと、今回の作品は宮殿にいるときと森にいるときで二面性を出したいなと思っていて。原作では、序盤のうちは宮殿と森の場面が行ったり来たりするんですけど、今回はもっと整理をして、宮殿と森ではっきり分けてやろうと考えています。
柳下:本を読んだとき、すごく台詞が短くなっててビックリしました(笑)。その分、物語も人間関係もわかりやすくなりましたよね。
青木:あと、今回の目玉は一人二役ですね。オーランドーやロザリンドを除いて、大半の役が宮殿の場面と森の場面でそれぞれ一人二役になっています。そうすることで、より二面性がクリアに出るんじゃないかなと。
――Dステならではの演出というのはありますか。
青木:やっぱり俳優が若いので、実年齢より高い配役のときに、どうしたって“なんちゃって”になるわけです。けど、そんなことを言い出したら、そもそも日本人が外国人の役をやっている時点で“なんちゃって”なんですよね(笑)。だから最初から“なんちゃって”であることを強調しておくことで、お客さんがちゃんとそれを受け入れられる空気というのはつくるようにしています。たとえば『十二夜』のときはみんなエリザベスカラーをつけてましたけど、あれなんて時代考証を考えれば合ってはいないんです(笑)。でも、シェイクスピアと言ったら何となくこんな感じって勝手に誤解しているところがあるじゃないですか。
――確かに。何かそういうイメージがあります(笑)。
青木:そういうところで遊んでいけば、お客さんも受け入れてくれるし、これは芝居なんだって思ってくれる。厳密にやることが面白いとは思わない。せっかくD-BOYSでやるならもっとポップに楽しく遊ぶことが大事かなとは思っています。D-BOYSの稽古場というのは、好きに遊ばせてもらえるというか、「こんなこともやってみたい」って言ったらみんなが一緒に遊んでくれる感じがあるんですよ。あらかじめ完成形をしっかり持つというよりは、おぼろげに考えていたことをみんなで試せる場。“楽しい実験室”っていう感じです。
――柳下さんとっても、他の現場とDステでは居方というのが異なるところはありますか。
柳下:ここ何年か他の舞台に出させていただくときは、まずその座組みに溶け込もうというのをいちばんに考えるんですけど、Dステの場合は引いて客観視しているところはありますね。毎公演、いろんな方が演出してくださっていますが、まずは演出家の方の心を掴めないと面白い作品に導いてはもらえないと思うんです。だから、自分たちがちゃんと魅力的に見えているかどうか。そこに向かって一生懸命できているかどうかという意識は、僕だけに限らず、特に先輩になるほどみんな持っているんじゃないかと思います。
――そこは外部の舞台とD-BOYSでやることの意識の違いがある。
柳下:意識に関して言えば、年々変わってきていると思います。初期の頃は個々でなかなか活動できなかったですし、とにかく与えられたものをD-BOYSとして必死にやろうっていうことが強かったんです。だけど、10作品目くらいからそれぞれの仕事が増えてきて、全員が出られなくなった。そこからまた考え方が変わりましたね。僕はD-BOYSの固定のお客様を増やしたいと思っていて。誰が出ていても出ていなくても、D-BOYSなら見に行こうと思ってもらえる公演にしたいと強く考えるようになりました。だからこそ単に呼ばれたから出るんじゃなくて、Dステという大きな枠の中でどうすればもっと面白くなるか、どうすれば一人でも多くの人に伝わるか、認知してもらえるかというのを考えるようになったし、みんな少しずつそういう方向に意識が変わっているんじゃないかと思いますね。
――あと、注目はやはりオールメールという点ですね。この配役の理由もお聞かせください。
青木:オーディションをやったんですけど、そこでは女形を中心に見てたところはあって。中でも、遠藤(雄弥)くんと山田(悠介)くんは露骨に面白かったんです。それで、遠藤くんに田舎娘のオードリー、山田くんに女羊飼いフィービーというのがすぐに決まりました。前山(剛久)くんに関しては結構悩んだんですよ。ただ、すごく真面目にやっていたので、いろんな挑戦をした方がいいなと思って、ロザリンドをお願いしました。
柳下:Dステ自体、15年の『GARANTIDO』以来で久々なんですけど、D-BOYSの中でも久しぶりに一緒にやりたいなというメンバーが揃った印象はあります。遠藤さんや山田悠介の女形はヴィジュアルだけでも強烈なインパクトがあるし、どうやるのか楽しみ。加治(将樹)くんはすごく両極端な役だし、牧田(哲也)さんはこの中でも一番難しい役だと思う。前ちゃん(前山)は体つきがいいから、どうやってロザリンドを演じるのか注目したいですね。
青木:この話ってどう読んでもオーランドーっていうのはロザリンドの顔が大好きなんだろうね。だって、宮殿にいた頃に一目ぼれして、森へ入ってロザリンドが男性の格好をしててもまた恋に落ちるわけじゃない? とにかく前山の顔が好きでたまらないわけでしょう。そこは性差は問わない(笑)。
――柳下さんは、前山さんの顔、好きですか?
柳下:前山の顔は好きではないですね(笑)。でも僕も顔から入るタイプなので、共感はできます。この人だという人が現れたら性格とか無視しちゃう(笑)。
青木:いや、性格はいいよ。でも性差だよ。
――乗り越えられますか?
柳下:そ、そうですね…(苦笑)。
青木:そこは「違います」って言っていいよ(笑)。
柳下:いや、でもわかんないんで、何があるかは(苦笑)。
◆翻訳:松岡和子
◆音楽:笠松泰洋
◆出演:柳下大、石田圭祐、三上真史、加治将樹、西井幸人、前山剛久、牧田哲也、 遠藤雄弥、松尾貴史、鈴木壮麻、大久保祥太郎、山田悠介 ※台本の登場順
◆公式サイト:http://okinimesumama.dstage.jp/
◆日程:2016年10月14日(金)~30日(日)
◆会場:本多劇場
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<山形公演>
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<兵庫公演>
◆日程:2016年11月19日(土)~20日(日)
◆会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
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