フラワーカンパニーズ 夏木マリと「深夜高速」のカバーも披露、“鼓舞する”バンドとしてのステージ

2016.7.8
レポート
音楽

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

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47都道府県ワンマンツアー「夢のおかわり」
2016.7.2(SAT)恵比寿LIQUID ROOM

去年12月には26年間のキャリアで初となる日本武道館ワンマン公演を見事にソールドアウトさせ、大成功を収めたフラワーカンパニーズ。彼らが今年に入ってからスタートさせた47都道府県ワンマンツアー『夢のおかわり』の30ヵ所目、東京公演が恵比寿LIQUID ROOMにて行われた。この東京公演は2デイズで行われたのだが、この記事では1日目、7月2日公演をレポートする。

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

そもそも何故、フラカンは今年1年をかけて47都道府県を回るのか? その理由のひとつは、この日のMCでも鈴木圭介(Vo)が言っていたように、“お礼”である。去年のフラカンは、“助け、支え合う”――そんな関係性のなかにいた。去年の彼らには“武道館ワンマンを成功させる”という明確な、そして一部から無謀とも思われた目標があり、それを成し遂げるにはバンドだけではなく、ファン、そして日本全国のライブハウスも含めた仲間たちの協力が必要だったのだ。そして実際に、彼らはやり遂げた。それに対する“お礼”の意味合いが、このツアーには込められている。

だが、それだけではないだろう。鈴木は「あと1年は武道館の話を引っ張るから」と冗談めかして言っていたが、今のフラカンにとって武道館はもはや“通過点”であり、むしろ新たな“出発点”になっていることは、このリキッド2デイズ1日目の演奏を観ても明らかだった。

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

1曲目は「馬鹿の最高」。あの軽快なイントロとコーラスが鳴り響くかと思いきや……間違えた! 初っ端からのミス。これは痛いかと思ったが、まるで躓いた小石を踏み潰すようにもう一度SEからやり直し、今度は完璧な演奏で一気に会場を飲み込んでいく。続く「この世は好物だけだぜ」を挟み、3曲目の「恋をしましょう」でも若干、鈴木の歌詞が飛ぶような瞬間があったのだが、“細かいことはどうでもいい! 今は鳴らしたくて歌いたくてしょうがない!”と言わんばかりの強靭なパフォーマンスで突破。この時点で、この日のフラカンからは傍若無人なほどのエネルギーを感じたのだが、この種のエネルギーは、実は武道館を目指していた去年のライブでは、あまり感じられないものだった。むしろ去年のフラカンにあったのは、メンバー4人の間で、そしてオーディエンスとの間で、自分たちが共有する大切な宝物の存在を丁寧に確認するような、あたたかく親密な空気だった。この親密さが、去年のフラカンのライブを素晴らしいものにしていたのだが、どうやら今は違う。見つめ合うのではなく、全員が同じ方向を向くことで生まれる一点集中の前のめりなパワーが、今のフラカンを押し進めている。確実に、“武道館以降”のフラカンがいる。

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

セットリストに関しても、「はぐれ者讃歌」や「元少年の歌」のような定番の名曲はもちろんだが、去年リリースされたフルアルバム『Stayin’ Alive』に収録された「感じてくれ」や、同じく去年リリースのミニアルバム『夢のおかわり』に収録された「唇」など、成熟したソングライティングと詩情を響かせる“今”の名曲たちもしっかりと披露。さらに、20年前にリリースされたミニアルバム『恋をしましょう』から、少し異色なレゲエ調ナンバー“薄い影”もしっかりと演奏し、過去を背負い、今を生きるバンドとしての姿を見せつけた。また、さらに付け加えるなら「発熱の男」が演奏されたことも少なからず驚きだった。「発熱の男」は去年の武道館公演の際、その研ぎ澄まされたバンドの演奏と鈴木の絶唱で、誰もが認めるハイライトを飾った1曲。その曲を直後のツアーのセットリストに盛り込むのは、あの日、武道館に来ることができなかった人たちにも、今のフラカンが鳴らす「発熱の男」を届けたいという思いもあるだろうが、それ以上に、武道館ワンマンをただのメモリアルなライブで終わらせない、この先のバンドの血肉としていくための選択だったのではないだろうか。

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

さらに特筆すべきは、スペシャルゲストの存在。本編も半ばを過ぎたころ、MCでグレートの口からPUFFYへの楽曲提供や、ラブリーサマーちゃんによる「また明日」のカバーなど、今年に入ってからの他アーティストとのコラボレーションが紹介されたのだが、そのMC後に披露された名曲「深夜高速」の演奏中、なんとステージ上に夏木マリが登場! その魂の底から響くような歌声で鈴木とデュエットを果たした。実は夏木も去年、ライブハウスツアーにおいて「深夜高速」をカバーしていたのだ。もともとフラカンのライブにも通っていたという夏木。オーディエンスに向かって「ごめんねー! お邪魔してまーす!」と言いながらステージ上で誰よりもパワフルに立ち回り、フラカンとも絶妙なトークを繰り広げる無邪気な姿を見ていたら、“本当にフラカンが好きなんだなぁ……”と心の底から理解できた。そして、今年リリースされた夏木のミニ・アルバム『朝はリンゴを食べなさい』に収録されている鈴木が作曲を担当した「マグダラのマリア」もフラカンの演奏のもとに披露された。

夏木マリ×フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

MCで鈴木が何気なく時事ネタに触れたり、今年、九州で起こった熊本地震にも触れつつ、被災地支援のためのキーホルダーが物販で販売されていることが告げられるなど、少なからず社会の動きを意識しながら活動するフラカンの姿も、この日は見て取ることができた。被災地支援のためのグッズ制作の理由については、グレート前川(B)が「東北での震災のときは“自分たちがやることではない”と思っていたけど、やっぱり俺たちは、日本全国のライブハウスを回ることで食べているバンドだからね」と語っていたが、ここ数年間で大きく変わり続ける社会の動きや、“助け、支え合う”ことで武道館を成功させたバンド自身の状況も含めて、フラカンの目線は、どんどんと“外向き”になっているのではないだろうか。ダブルアンコールで演奏された「Good Morning This New World」と「サヨナラBABY」では、そんなフラカンの現在地にオーディエンスも呼応するかの如く、会場中を巻き込んだ大合唱が巻き起こった。

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

特に、竹安堅一(G)がギターをマンドリンに持ち替えて演奏されたマーチングバンド風の1曲「Good Morning This New World」は、フラカンらしいシニカルな視点が入りながらも、絶対的にポジティブであろうとする力強い1曲。この曲を、会場にいる皆を先導しながら歌い鳴らすフラカンは、“助け、支え合う”のではなく“与え、鼓舞する”ロック・バンドとしてステージに立っているように思えた。その姿は本当に本当に頼もしかった。

撮影=柴田恵理 レポート・文=天野史彬

フラワーカンパニーズ 撮影=柴田恵理

 
ライブ情報
フラワーカンパニーズ 47都道府県ワンマンツアー「夢のおかわり2016」
7月9日(土)    沖縄    那覇桜坂セントラル
9月11日(日)    大分    大分T.O.P.S Bitts hall
9月13日(火)    奈良    奈良NEVERLAND
9月17日(土)    富山    富山フォルツァ総曲輪ライブホール
 ※「フォークの爆発編~座って演奏するスタイルです~」
9月28日(水)    東京    渋谷duo MUSIC EXCHANGE
 ※「フォークの爆発編~座って演奏するスタイルです~」
9月30日(金)    大阪    味園ユニバース
 ※「フォークの爆発編~座って演奏するスタイルです~」
10月2日(日)    広島    福山グランドソウルカフェガンズ
 ※「フォークの爆発編~座って演奏するスタイルです~」
10月8日(土)    北海道    札幌サンピアザ劇場
 ※「フォークの爆発編~座って演奏するスタイルです~」
10月10日(月・祝)    山形    山形ミュージック昭和セッション
 ※「フォークの爆発編~座って演奏するスタイルです~」
10月29日(土)    福島    いわきSONIC
10月31日(月)    宮城    仙台MACANA
11月3日(木・祝)    岩手    盛岡CLUB CHANGE WAVE
11月5日(土)    青森    青森Quarter
11月12日(土)    福井    福井CHOP
11月13日(日)    滋賀    大津U★STONE
11月16日(水)    鹿児島    鹿児島SR HALL
11月18日(金)    熊本    熊本Django
11月20日(日)    島根    松江AZTiC canova
11月26日(土)    埼玉    さいたま HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
11月27日(日)    千葉    千葉LOOK
12月9日(金)    新潟    新潟CLUB RIVERST
12月11日(日)    愛媛    松山W-studuo RED
12月14日(水)    京都    京都磔磔
12月15日(木)    京都    京都磔磔
12月18日(日)    和歌山    和歌山CLUB GATE