インタビュー〜マイケル・スパイアーズ(ファウスト役)その2
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マイケル・スパイアーズ
●オペラ歌手への道のり
——子供の頃、ご家庭では音楽は身近にありましたか?歌うようになったきっかけについて教えてください。
スパイアーズ(S):うちの家族は類を見ないほどの音楽一家です。両親は私の音楽の先生であり、芝居やバンドの先生でもありました。弟も妹も歌手になり、妹のエリカはブロードウェイの歌手で、最近パリのシャトレ座のミュージカルでナタリー・デセイと共演しました。また2014年にはブロードウェイ・ミュージカルの「Once」の来日公演にも出演しました。
私たちは子供の頃から、母が作曲したミュージカルを歌って育ちました。母と父は友人たちと一緒に地元マンスフィールドにオザーク・マウンテン・プレイヤーズというコミュニティー劇団を設立し、そこで毎年、母が作ったローラ・インガルス・ワイルダーの生涯を扱ったミュージカルを上演しており、そこには世界中からファンが集まってきます。このように私は音楽のあふれる環境に育ち、しゃべれる前から歌っていました。
——声楽はどちらで学ばれましたか?
スパイアーズ(S):ミズーリ州スプリングフィールドで二年半声楽を学びましたが、就いていた先生がニューヨークに移ったために学校を辞め、以後独学で学んできました。その後、オペラ歌手になるためにはどうしてもヨーロッパに行かなければならないと悟り、貯金をすべて引き出して片道の航空券を買い、26歳から二年間、ウィーン音楽院で学び、すばらしい声楽コーチたちの指導を受けました。
——私がスパイヤーズさんを初めて聴いたのは英国ロイヤル・オペラのロッシーニの「湖上の美人」のロドリーゴ役で、その後Opera Raraのドニゼッティの「殉教者」(演奏会形式)でその驚異的な技巧に圧倒されました。これまでペーザロのロッシーニ音楽祭でもレアな作品をいくつも歌っていらっしゃいます。こうしたベル・カントの難役を敢えて専門にされてきたのでしょうか?
スパイアーズ(S):知られざるオペラの役を多く歌ってきたのは、率先して引き受けた部分もありますし、必要に迫られて引き受けた部分もあります。歌手になった最初の頃は、他の多くの歌手と同様に、ヴェルディやプッチーニのオペラの役のオーディションを受けていましたが、何年も失敗し続けた末、他の歌手とは違った道を歩もうと思い、以前から関心のあった、技巧的に難しいけれどやりがいのあるベル・カントの役を歌おうと思うようになったのです。
私自身、かなり極端な性格なのでこうしたレアな役にとても惹かれます。実際、こうしたレパートリーのほうが、ヴェリズモ・オペラのストーリーや登場人物よりもずっと複雑で奥が深いと思います。
——いちばん影響を受けた歌手はどなたですか?
スパイアーズ(S):私がもっとも憧れた歌手はニコライ・ゲッダとマリオ・ランツァです。ゲッダの芸術性、言語能力、音楽性、そして洗練されたスタイルが大好きでした。でも、私がテノールを目指したのはランツァのおかげです。18歳の時にランツァのベスト・ヒット曲集のCDを買い、この時なぜか自分はテノールになるべき運命にあると感じたのです。実際には大学ではバリトンとして訓練し、本格的にテノールになったのは25歳の時だったのですが。私にとってランツァは今日に至るまで、歌うことの喜びと音楽への純粋な愛を象徴する存在です。
——日本にいらしたことはありますか?
スパイアーズ(S):はい、2006年と2007年にオーストリアのバーデン市立劇場の来日ツアーのメンバーとして全国20以上の都市を訪れました。2006年は「フィガロの結婚」のドン・クルツィオ役、翌年は「椿姫」のアルフレード役でした。
日本のオーケストラと共演するのは今回が初めてで、マエストロ・スダーンのもとで歌うのも初めてになります。
過去二回の日本での滞在はたいへん楽しいものでしたし、日本の歴史や文化にもとても興味があるので、再び訪れるのを心待ちにしています。和食も大好きですし、最近では日本は世界最高峰のウィスキーの産地ですからね!
取材/文=後藤菜穂子
●インタビュー〜マイケル・スパイアーズ(ファウスト役)その1
●東京交響楽団
指揮:ユベール・スダーン
ファウスト:マイケル・スパイアーズ
メフィストフェレス:ミハイル・ペトレンコ
マルグリート:ソフィー・コッシュ ブランデル:北川辰彦
合唱:東響コーラス、東京少年少女合唱隊
第644回 定期演奏会
9/24(土) 18:00 サントリーホール
S¥10,000 A¥8,000 B¥6,000 C売切
第57回 川崎定期演奏会
9/25(日) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
S¥10,000 A¥8,000 B¥5,000 C¥4,000
問 TOKYO SYMPHONY
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