オルタナティヴを更新するバンド・odolが新作リリース記念ライブで見せたもの

レポート
音楽
2016.7.23
odol 撮影=はまいばひろや

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odol 2nd Album 『YEARS』release party 「Center Lesson」 2016.7.17 新代田FEVER

ピアノが重要なエレメントでありつつ曲の背景をシューゲイズ的にギターサウンドが埋める、カテゴリー不能な、しかしロックバンドとして素直に思いを音に落とし込むバンド、odol。より遠回しな表現を排し、モラトリアムな季節の終焉を自覚し、その中で自然と立ち上がってきたものがテーマになった2ndアルバム『YEARS』。そのリリース記念の3マン・ライブがこの日行われた。相手は彼らと世代的にも音楽的にも通底するものを感じさせるTaiko Super Kicks、そしてアコギと歌で圧倒的な情景を喚起させるPredawn。どこか皆、独立国家の元首のようなアーティストばかりだ。

Taiko Super Kicks 撮影=はまいばひろや

Taiko Super Kicks 撮影=はまいばひろや

一番手で登場したTaiko Super Kicksは、伊藤暁里(Vo/Gt)の高音でよく通る声が紡ぐ情景と心象が交差するような歌、日本語ロックの連綿と続く端正さが軸にありつつ、2本のギターが作る深いディレイや、時として壁のように迫ってくるシューゲイズ感やサイケデリアに気を抜くと、ふらふらしてしまう。主に目下の最新作『Many Shape』から選曲し、真夏の通り雨のあとのように埃が洗い流されいくような空気感すら作り出すバンド・アンサンブルが見事だ。厳選された音数で作る音楽のミラクル。ヨ・ラ・テンゴのような本来的な意味でのオルタナティヴ感と平熱感のある演奏に”複数の人間が一つの曲を鳴らす”有機的な楽しさを堪能した。

Predawn 撮影=はまいばひろや

Predawn 撮影=はまいばひろや

そしていつの間にかアコギを携えてステージに“いた”感じのPredawn。いつも彼女は音楽そのものといった印象でそこにいる。ひとたび弦を爪弾き歌い始めるとガラリと季節も情景も塗り替えてしまう天性の音楽家。今そこで話すぐらいの音量でヴィヴィッドに歌い始めた「Keep Silence」もあれば、弾き語りとは思えないパースペクティヴを感じさせる「Universal Mind」、珍しい日本語詞の「霞草」など11曲を呼吸するように歌い、弾き、いつものように唐突なMC(この日は晴れて三十路になったものの蒙古斑が消えていないことを知ったと。でもどんなことも隠さず言っていきますというもの)すらも、Predawnにしか作り出せない空間となってオーディエンスを魅了するのだった。

odol 撮影=はまいばひろや

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そしてこの日の主役のodolがピアノを軸にしたイマジナティヴなSEに乗って登場する。皆、シャツにネクタイ、メンバーによってたサスペンダーというトラディショナルな出で立ちも新鮮だ。1曲目は1stアルバム『odol』からピアノとシューゲイズな音の壁が混ぜ合わさったライブの始まりを告げるようなショートチューン「あの頃」。そのままアルバムの曲順通り、「飾りすぎていた」。激流のようなアンサンブルでありながら、どこかシティポップ的なコード進行、フィッシュマンズらにも通じる緩やかなタイム感も併せ持つ彼らの音楽性のユニークさにフロアもすっかり浸りきっている。そして何よりミゾベリョウ(Vo/Gt)のまっすぐで少年性を残す歌声が、odolの音楽性のジャンルを無化しているように思う。

odol 撮影=はまいばひろや

odol 撮影=はまいばひろや

3曲目にニューアルバムからアップテンポで疾走感のある「退屈」が披露されるのだが、スピード感はありながらShaikh Sofian(Bs)と垣守翔真(Dr)が打ち込む8ビートは重い。そして新曲の中でもジャジーなコード感とつまずきながら進むようなユニークなリズムに乗せて<逃げてしまおう 二人を知る人のない場所へ>と、歌われる「逃げてしまおう」で聴くことのできた削ぎ落としたアンサンブルは明らかな新機軸。緊張感のある演奏なのだが、醸し出される逃避への誘惑というか、20代前半の彼らが置かれた自由なようで宙ぶらりんな居場所に、リスナーの年齢を問わず思いを寄せてしまう強さを持った演奏だった。

odol 撮影=はまいばひろや

odol 撮影=はまいばひろや

人を励ますようなメッセージや怒りはなく、淡々と過ぎていく日常を歌詞だけでなく楽曲全体でリリカルに表現する「ベッドと天井」は、ニューアルバムのテーマであるモラトリアムな季節の甘く苦い“まどろみ”のような感覚を少ない音数を効果的な音色で鳴らしていく。一転、井上拓哉(Gt)が作る気が遠くなるようなディレイが効いたフレージング、Sofianのイーヴルなベースの音色がまさにオルタナティヴな「綺麗な人」でグルーヴを加速させていく。もはやストレートなロックとカテゴリ分けのためにしか使われなくなった“オルタナティヴ”ではなく、異なるニュアンスを選んで融合するスタンスという意味で、odolにはまだオルタナティヴが生まれた頃の匂いや意思が存在している、それが分かる演奏だった。

odol 撮影=はまいばひろや

odol 撮影=はまいばひろや

ラストのブロック前に森山公稀(P)から、結成2年余を経てついに実現したワンマンライブを、12月10日に下北沢GARAGEで行うことを発表。ライブのタイトル『Variation』を井上がそのまま“ヴァリエーション”と読んだことに森山が「フランス語のバリアシオンのつもりで付けたんだけど(笑)」と、突っ込んだことや、MCも特段言うことを決めていない様子で、いい意味、予定不調和だ。演奏を聴いてもらえたらいい、そんな潔さを感じた。

odol 撮影=はまいばひろや

odol 撮影=はまいばひろや

ポピュラリティの高いメロディのピアノと歌で始まるアルバムのタイトルチューン「years」は、まさに“時間”や“この1年”を呼び起こす歌詞。ミゾべの訥々とした歌声がエモーションの色を濃くしていくのと同時に、久しぶりに会う誰かのことや、大人になって四六時中、友達や恋人と他愛のない話をしていた頃を思い出してしまう。アンサンブルは独特だが、こうした普遍性のある曲を持っているところがodolの強みになっていくのだろう。ラストはパルスのようなピアノの単音に透明なギターサウンドが重なる「夜を抜ければ」。おしゃれなコードやローズピアノを使った90年代の再定義もシティポップかもしれないが、車で走っていたら窓に映る空の色が変わっていたような、時間が前に進む感覚があるこの曲も、今のodolにとってのcityのpopなんじゃないかと思えた。

odol 撮影=はまいばひろや

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バンドとしての貪欲なジャンル吸収力、そしてミゾべのどこか心もとなくもまっすぐな歌声。音楽に明確な答えを求めるのではなく、音楽がなっている状態の中で五感を揺さぶってくれる、そんなライブをodolは実現してくれた。共演陣も近いスタンスで貴重なリリースパーティ、そして3マン・ライブだった。


撮影=はまいばひろや レポート・文=石角友香

セットリスト
odol 2nd Album 『YEARS』release party 「Center Lesson」 2016.7.17 新代田FEVER

Taiko Super Kicks
1.霊感
2.ラフ
3.水
4.低い午後
5.夜
6.景色になるまで
7.夏を枯らして
 
Predawn
1.Keep Silence
2.Don't Break My Heart
3.Free Ride
4.Autumn Moon
5.Universal Mind
6.Sky High (Marble Sounds cover)
7.Milky Way
8.Kinds of Knot
9.霞草
10.Hope & Peace
11.Suddenly
 
odol
1.あの頃
2.飾りすぎていた
3.退屈
4.逃げてしまおう
5.17
6.グッド・バイ
7.ベッドと天井
8.綺麗な人
9.years
10.生活
11.夜を抜ければ

 

ライブ情報
ワンマンライブ「Variation」
2016年12月10日(土)東京・下北沢GARAGE
OPEN 19:00 / START 19:30
前売 ¥2,500 / 当日 ¥3,000(ドリンク代別)
<チケット>
・Livepocket-Ticket-(7月17日(日)22:00~販売開始)
http://t.livepocket.jp
・e+(7月18日(月)10:00~販売開始)
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002197154P0030001
・GARAGE店頭(15:00~22:00)

 
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