蘭乃はなが語る「元・娘役がついやってしまうこと」とは? A NEW MUSICAL『CROSS HEART(クロスハート)』
蘭乃はな(撮影:こむらさき)
2007年1月に『CLUB SEVEN SP(4th)』内で30分上演されたミニミュージカル『ワン・ハート』」が、ファンの要望に応え、1本のミュージカル『CROSS HEART』として生まれ変わることとなった。
愛と友情に包まれた登場人物たちが、神のいたずらによって時代と環境を超え、その関係が交錯してしまう運命をたどるストーリー展開。本作に出演する一人が、現在ミュージカル『エリザベート』でタイトルロールを務める蘭乃はなだ。中山優馬、屋良朝幸の2人を軸に、玉野和紀によるオリジナル作品で蘭乃が務める役とは? そして宝塚歌劇団を退団して2年、今思う事など、時間の許す限り話を聞いた。
蘭乃はな(撮影:安藤光夫)
――まずは『CROSS HEART』のお話がきたときのことを教えてください。
『CROSS HEART』という名前が出るより前に、「中山さんか屋良さんのお姉さんの役で」というお話をいただいたんです。宝塚時代も今もですが、どちらかというと妹の役をいただくことが多かったので、ようやく本来の持ち味を活かせる役ができるのかもしれない!と感じました。私には双子の妹(元宙組娘役のすみれ乃麗)がいるので、普段はお姉さんぶってしまうことのほうが多いんです。
――その後、作品のプロットが固まってきて、屋良さん演じる役の姉であり、中山さん演じる役の恋人役になったんですね。
贅沢ですよね(笑)。私、自分が演じる役が「戦う女戦士」であるという設定にとても心惹かれました。というのは、宝塚時代は立ち回りが好きなのに、ヒロイン役だとなかなかそういう設定が回ってこなくて。女役でも戦国物だと立ち回りがあるのですが、「蘭ちゃんは(立ち回りはやらなくて)いいです」って言われるばかり。周りがやっているのをうらやましく思いながら観ていました。それが今回、ようやく剣を持ってできるのが嬉しくて!
――それは意外でした! ……ということは、実は子どもの頃からやんちゃな方だったんですか?
子どもの頃は女の子らしい遊びが好きだったのですが、その一方で運動神経が良いほうだったので、本当は身体能力を活かせる役を演じたい気持ちもあって。走るのも速いほうでしたし、結構筋肉もあるんですよ。
――現在『CROSS HEART』は、まだ脚本製作中という段階ですが、(作・演出・振付・出演の)玉野さんとはどんな話をされていますか?
この前、玉野さんに「立ち回り、得意?」って聞かれて「得意だと思います!」と答えたら「おっ、言ったねー!」と(笑)。
蘭乃はな(撮影:安藤光夫)
――共演者についての印象は? 過去にお会いしたり、出演作をご覧になったことってありますか?
中山さんとは、TVの収録でご一緒したことがあります。その時はおっとりとした素直な感じの方という印象です。私、中山さんよりだいぶお姉さんなんですけど大丈夫でしょうか?(笑) まあ、今も『エリザベート』で15歳からお婆さんになるまで演じているので大丈夫だと思いたいです。
屋良さんは『SHOCK』(ヤラ役)を拝見したことがあります。宝塚では、二番手の男役さんは主演さんを支える大事な役割だと思うし、私もトップさんと二番手さんの関係をよく見てきました。同じように屋良さんは、主役である堂本さんを思いやりながらも自分の持ち場を守り、自分の魅力を最大限に打ち出していらっしゃる印象でした。ジャニーズは男性社会で、宝塚とはまた違う上下関係もあると思いますが、どんな環境下でも本人の心持ちが舞台に表れるので、素敵な方なんだなと。今回はその屋良さんがW主演のお一人なので、私も主演さんを支えられる共演者でいたいと思います。
――今回は元宝塚の大湖せしるさんも共演されるんですね!
大湖さんは4年上の先輩だったんです。一緒に共演したことはないのですが、『ロミオ&ジュリエット』の愛役のイメージがあって、物腰が柔らかい方という印象がありました。
蘭乃はな(撮影:安藤光夫)
――宝塚退団から2年、外の生活には慣れましたか?
宝塚のときはあまりに仕事の切れ間がなく、レッスン、稽古、本番の繰り返しだったので、退団して、そうではない生活になったことに対して初めは戸惑いがありました。お仕事をしてないときは何をしていいのかわからず、不安にもなりましたね。そんなとき、元タカラジェンヌ(ひなたの花梨)で現在は写真家の四方花林さんと写真展を自主企画しました。普段撮られるポートレートとは違って、すごくストーリー性のあるアーティスティックな写真を撮ってもらえたことがとても楽しかった。自分たちが表現したかったこと、やりたかったことをやれたのは、そのときにお仕事がなかったからこそできたし、すごくいい期間だったなって思っています。
※四方花林によるイメージフォトに、蘭乃はな自身の声で語る物語をのせた「ささやく写真集」スマホ用アプリ はこちらでご確認を。
・Apple 蘭乃はな ささやく写真集
・android 蘭乃はな ささやく写真集
――退団してから自分自身で大きく変わったな、と思うことは?
昨年はプライベートでワンピースを一切着なかったんですよ。着てしまうと自分の中で娘役が出てきてしまうので。もちろん取材など仕事では着ていましたが、それ以外ではなるべくパンツスタイルをするように心がけていたんです。でも今年になって「これ、娘役の時から着ているワンピースだけど、もう着ても大丈夫かな」って思えるようになりました。
あとは、この1年で娘役のクセがちょっとだけ抜けたように思いますね(笑)。
――娘役のクセって?
舞台上の話ではないんですが……例えば男性と写真を撮るときに、娘役のクセでつい相手の胸というか、懐にぐっと入ろうとしてしまうんです。この左胸の辺りに! ある人から「過剰な愛情表現に見える」って言われて気がつきました(笑)。
蘭乃はな「この(左胸の)辺りに!」 (撮影:安藤光夫)
――確かに! トップさんはじめ、男役と娘役ってものすごく距離感が近いですよね。距離感ゼロどころか、マイナス圏内かと思うくらい近い。
それって女性同士だからできることだったのだと思うし、それが娘役として求められていることであり、また自分も娘役としてそうありたい、愛情あふれる娘役でありたいと思ってやっていました。そうすることで男役と娘役は「異性である」ことが成立していたと思うんです。でも、もう今は何もしていなくても「異性」なので、そこまでしなくていいんだなってわかりました(笑)。
――「娘役あるある」なんでしょうね、きっと(笑) さて『CROSS HEART』ですが、どんな作品にしていきたいですか?
同じ場面を2度やるような話なんです。ただ、2回目のときに同じことを繰り返すだけでなく、そこに至るまでの、過去が書き変わったことや、細かいニュアンスの違いを演じたいと思います。また、弟からも恋人からも大切にされる女性ですから、その女性としての魅力も含め、台本をしっかり読み込んで説得力のある人になりたいです。
前世を信じるとか信じないって話があるじゃないですか。「そういう話は全く信じない」という方もいますよね。そのような方がこの舞台を観ても、何か少しでも納得できる部分があるように思わせたいですね。ただのエンタテイメントではなくて、「こういうこともあるかもしれないな」とか、何かを感じて帰っていっていただけるような舞台にできればと思います。
蘭乃はな(撮影:安藤光夫)
――宝塚歌劇は歌・ダンス・芝居の総合芸術だと思っていますが、今後もずっとやり続けていきたいものとして、どれか一つだけ選べと言われたら3つのうちどれを選びますか?
私、在団中から歌が苦手で。でもこつこつと練習を続けてきて、今『エリザベート』をやることができました。今年、芸歴10周年なんですが、10年前の自分では想像できなかったことです。だからという訳じゃないけど、これからもどれか一つやり続けていたいという話になるなら、やはり歌ですね。
――今、ちょうど10周年という話が出ましたが、10周年記念として何かやりたいことはありませんか?
やりたいこと……『エリザベート』と『CROSS HEART』の稽古と本番で10周年は終わっちゃいそう(笑) 。実は小中学生の時に「JUDY AND MARY」から入ってロックが好きなので、いつか、そういう方向の事をやれたらなぁとは思います。……私、生まれ変わったらロックスターになりたいんです。今は「THE YELLOW MONKEY」の大ファンなんですよ(笑)。
蘭乃はな(撮影:こむらさき)
(取材・文:こむらさき)
【Live Version公演】2016年11月11日(金)~11月13日(日) EX THEATER ROPPONGI
【東京公演】2016年12月9日(金)~12月28日(水)ZEPPブルーシアター六本木
【大阪公演】2017年1月6日(金)~1月8日(日)森ノ宮ピロティホール
■作・演出・振付・出演:玉野和紀
■出演:
中山優馬 屋良朝幸
唯月ふうか 大湖せしる
中河内雅貴 大山真志
諸星翔希 寺西拓人
蘭乃はな
福井貴一
■演奏:the CrossHearts
■公式サイト:http://www.musical-crossheart.com/