世界一運の悪い「浦島太郎」の愛と冒険のミュージカル!『TARO URASHIMA』池田鉄洋・木村了インタビュー

2016.7.30
インタビュー
舞台

木村了・池田鉄洋


たまて箱を開けると何故おじいさんになってしまうのか? 何故浦島太郎は海の底の竜宮城にたどり着けたのか? 数千年ものあいだ語り継がれてきたおとぎ話、「浦島太郎」に潜む多くの謎を、作・演出家として活躍中の池田鉄洋が、コミカルかつシュールに、そして感動的に描くオリジナルファンタジーミュージカル『TARO URASHIMA』が、8月11日から15日まで、明治座の舞台を彩る。

【物語】
昔、むかし。 世界は2つの国に分かれた。1つは、地上に都をつくり、1つは海の中に国を造った。地上の都は京の都と呼ばれ、貴族たちが政治を行っていた。 海の国は竜宮と呼ばれ、海の王が治める国となった。浦島太郎は、ある日漁の最中に出会ったカメと意気投合し、カメの話に出てくる乙姫に恋をする。乙姫は、義兄の甲太子殿下たちにいじめ抜かれながら育ち、そしてカメが嘘と本当を混ぜて作る浦島太郎のお話の中の太郎に焦がれるのだった。海の中では、継母の策にはめられ追放させられていた深海王子がクーデターを起こし、竜宮は混乱のまっただ中で……

アクの強い登場人物たちが勢ぞろいする中、とことんツイてない主人公を演じるのは、多彩な活躍を続ける木村了、脚本家の池田鉄洋とは初のタッグとなる。この2人がミュージカル『TARO URASHIMA』について語り合った演劇ぶっく8月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

木村了・池田鉄洋

木村了が演じるからこそ広がった浦島太郎

——誰もが知っている「浦島太郎」の物語ですが、今回のミュージカル化に当たって、どう構築しようと?

池田 お話を頂いた時には「大変だな」と思ったのが最初でした。ちょっと怖い物語でもありますし、辻褄の合っていない部分もたくさんある。でもそういう余白があるからこそ、面白くなる可能性もあるかなと。海の中の物語といえばすぐ浮かぶ『リトル・マーメイド』や『ニモ』、それに今とても人気のCMなどとは重ならないように、独自の広がりのあるものにしようと、楽しみながら書き進めることができました。

——脚本を読んで木村さんはどうでしたか?

木村 すごいな、めちゃくちゃだなと(笑)。太郎は何しろ最初から最後まで、全くツイてない主人公で(笑)。

池田 ヒロインの乙姫もずっといじめられっぱなしだしね(笑)。でもプロデューサーも演出の板垣(恭一)さんも、発想の豊かな方でそういう面白がり方の方向が同じだったから。

木村 ハリウッドのラブコメディみたいなイメージもありますよね。

池田 巻き込まれ系の主人公としては、かなり壮大なスケールで巻き込まれていくからね。

木村了

木村 それに対してあまり悩まないところがいいなと。ツイてない状況に慣れているから、ずっとポジティブなんですよね。ただ、ここどう表現するのかな? できるのかなと思うシーンもあって(笑)。

池田 いつNGが出るかと思っていたんだけど、板垣さんは「うん、OK、OK」って、どんどん通っていって。でも何よりも太郎役に木村君が決まってくれたことで、より書き進められた部分が大きかった。『帝一の國』を観て木村君の大ファンになっていたから。耽美だけどちょっとヌケてもいて、という複雑な役どころを見事に演じていて、木村君をテレビで初めて認識した5、6年前とは一皮も二皮も剥けていた。木村君が出てくれるならできることがもっと増える、厚くなると思って筆が進んだよね。

木村 ありがとうございます。僕はイケテツ(池田)さんは、新感線の『IZO』(08年)で坂本龍馬を演じられていた時のイメージをずっと持っていて。

池田 俳優の僕だね。

木村 そうです。今回、脚本家の池鉄さんと初めてお仕事させて頂きますし、板垣さんとも初めてなので、稽古場から何が生まれていくか。乙姫役の上原多香子さんはじめ共演の方達もとても豪華な顔ぶれなので、その中で自分の立ち位置を計りながら、一緒に作って行けるのが楽しみです。

池田鉄洋

ミュージカルのスピード感に乗せられて

——ラストにあっと驚く大逆転も用意されていますね。

池田 「浦島太郎」の物語は遡ると神話の、古墳時代からあって、いくつかの文献に載っているバージョンが少しずつ違うんです。でも大切なところは「なぜ乙姫がたまて箱を渡すのか?」で、これは、乙姫は太郎にまだ帰って欲しくなかったんだなと。やっぱりラブストーリーなんだと思った時に、ガッツリキスシーンも入れたり、七夕のような、会いたくてもなかなか会えない設定が燃えるなと思って、組み込んだりしました。それはミュージカルだからこそできたことで、普通なら照れてしまって書けないような台詞もミュージカルの歌詞だと簡単に盛り込める。歌うってすごいことだよね。

木村 1曲歌ったらもう仲良しとか、展開も早いですよね。

池田 出会いから恋に落ちるまでが1曲で済むし、勘違いのケンカから仲直りも1曲で済む(笑)。でもそういうスピード感って今の時代にもすごく合ってる。

木村 子供さんにもきっとノッてもらえますね。

池田 初めにプロデューサーから「ディズニー映画にも宮崎アニメにも負けないものを!」と言われた時には「いやいや、それは荷が重いよ」と思ったけど(笑)、音楽の伊藤靖浩さんが本当に良い曲を書いて下さったし、板垣さんもキャストもすべて本気の布陣なので、僕も本気出して書きました。絶対に面白いものになると思います。

木村 たくさんある「浦島太郎」の物語の中で「これが定本だ!」と言われるようなものに育っていって欲しいし、観て損はなかったと思ってもらえるものを、全員で創り上げていきたいです。

木村了・池田鉄洋

きむらりょう○東京都出身。02年第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞して芸能界入り。若手演技派俳優として、数々の映画、ドラマ、また舞台に出演。活躍の幅を広げている。主な出演作品に、映画『ワルボロ』『赤い糸』『東京島』『サンブンノイチ』、ドラマ『ウォーターボーイズ2』『花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス~』『絶対零度』、舞台『弱法師』『蜉蝣峠』『赤と黒』『浮標』『舵切丸』『虹とマーブル』『桜の園』『花より男子』『帝一の國』などがある。
 
いけだてつひろ○東京都出身。93年より猫のホテルに参加。04年には猫のホテル内でコントユニット「表現・さわやか」を立ち上げ、全作品の脚本・演出を手掛けている。テレビドラマ『TRICK』『医龍』『警部補・矢部謙三』、舞台作品では、新感線プロデュースいのうえ歌舞伎☆號『IZO』阿佐ヶ谷スパイダース『少女とガソリン』、『労働者M』などに出演。また映画『行け! 男子高校演劇部』の脚本、舞台『パブー・オブ・ザ・ベイビー』『GO WEST』の脚本・演出などでクリエイターとして多方面で活躍中。9月より舞台版『こちら葛飾区亀有公園前 派出所』に出演予定。

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

公演情報
『TARO URASHIMA』​
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■日時:2016年8月11日(木・祝)~15日(月)
■会場:明治座

■脚本:池田鉄洋
■演出:板垣恭一
■音楽:伊藤靖浩

■出演:
浦島太郎=木村了
乙姫=上原多香子
カメ=斉藤暁
ムサシ=崎本大海
甲太子=滝口幸広
ダイオウグソクムシ参謀= 辻本祐樹
深海王子=原田優一
アンコー=土屋シオン
ヒラメン=碕理人
丙姫=森田涼花
クロダ氏/アイ鯛=竹内寿
ダテ氏/キスシ鯛=中村太郎
ウエスギ氏/ツメタクシ鯛=月岡弘一
カワイ氏/チョーネク鯛=桝井賢斗
タケダ氏/ウバイ鯛=香山佳祐
シタスギ氏/ヘン鯛=塩川渉
海豚妃/ムサシの彼女=角島美緒
貴族ヒダリ麻呂=二瓶拓也
コバンザ=高木稟
貴族ミギ麻呂=大堀こういち
タカアシガ二将軍=舘形比呂一
竜王=坂元健児
帝=和泉元彌(特別出演)
鯱妃=とよた真帆

【第二部】
鯛や平目の舞踊りショー
司会:三上真史

■公式サイト:http://www.meijiza.co.jp/info/2016_08_urashima/special-special/​

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