藤山直美主演『笑う門には福来たる』製作発表レポ&二代目喜多村緑郎インタビュー!
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「笑う門には福来たる ~女興行師 吉本せい~」主演の藤山直美
「笑いは生きる力!」と、人生をかけて笑いを愛した女興行師、吉本せい。創業104年を誇る”笑いの王国”吉本興業の創始者を、藤山直美が演じる波瀾万丈の人生ドラマ『笑う門には福来たる ~女興行師 吉本せい~』。一昨年に博多座、新橋演舞場で上演された涙と笑いの感動作がついに笑いの本場大阪にある大阪松竹座で、一部キャストも新たに上演される。8月上旬に行われた製作発表の模様と、後半には吉本せいの弟・林正之助役に再び挑む喜多村緑郎(現・市川月乃助)の単独インタビューをお届けする。
<製作発表レポート>
「吉本せいという人は、笑いの神<様に首根っこを掴まれた人やと思います」(藤山)
「今年は藤山寛美先生の27回忌でもあり、劇中でもその存在を感じ取って頂けるのが初演との一番の変更点」と脚本の佐々木渚。再演にあたり大筋での変更はないものの細かなブラッシュアップは施される。笑いの本場での再演に緊張気味という演出の浅香哲哉は「劇中には地理的に芝居の嘘がありますが、そこは喜劇の勢いで乗り越えられれば。当たって砕けろ精神で頑張りたい」
今回、同じ喜劇界の双璧とも言える松竹が、吉本興業の草創期を舞台化することでも注目の本作。昭和を代表する喜劇俳優で往年の松竹新喜劇スター、藤山寛美を父親に持つ主演の藤山直美は、父と吉本との関係についてこう語る。「うちのお父さんは吉本新喜劇がすごい好きやったんですよ。休みの日に劇場へ観に行ったり、家でも谷茂さんの『は(あ)、忙し』とか『ごめんやして、おくれやして、ごめんやっしゃ~』のギャグをやってました」
興行的にはライバルでも、芸人同士は互いにリスペクトし合い仲が良かったようだ。実際、直美は平参平が座長時代の吉本新喜劇に子役として出演している。「お父さんが『お前、出れて良かったな~』って、自分は出られへんから(笑)」。そして、今回『笑う門には~』を大阪で再演することについて直美は「嫌やな~」と苦笑いを浮かべつつ、気合いを込める。「遂に来たかという感じです。(大阪人は)みんな自分が吉本興業の会長やと思って道頓堀を歩いてますから、吉本は大阪人の専売特許。傷つけず、大事に演じていきたいなと思います」
その話ぶりから、役への深い理解も伝わってくる。「世の中には神様に首根っこを掴まれた人がいると思うんですね。美空ひばりさん、王貞治さん、長嶋茂雄さん、今やったらイチローさんとか。吉本せいさんもその一人で、君はお笑いを創っていくために必要だよと、歴史に必要な役割を担ってきた方やと思います。そのためには、女性であり母としての一面を何パーセントかは泣く泣く捨てなければならなかった。そこのところを腹くくって、自分はこのために生を受けたんかなと、覚悟された方やなと凄く思います」
本作は、吉本興業の社員や芸人にこそ観て欲しいとも話す。「やっぱり笑いは一日にしてならず。本当に苦労の積み重ねの上にいまの自分たちがあることを恩着せがましくではなく、少しでも感じ取って貰えたら。お客様には、いつもテレビやラジオで見聞きしている吉本はここから始まったんやと観ていただけたら嬉しく思います」
明治期の大阪船場を舞台に、三代続く荒物問屋「著吉(はしきち)」に嫁いだ米穀商の娘・吉本せい(藤山直美)が、夫・吉本泰三(田村亮)の夢に寄り添い、一念発起で興行師となる物語。夫が急逝後も遺志を受け継ぎ、実弟・林正之助(喜多村緑郎)や息子・頴右(西川忠志)と共に事業を拡大させていく。
吉本泰三役の田村は「泰三さんは、せいさんに対して熱いものがあるんですが、ちょっと道楽が過ぎてしまい、非常に苦労をかけるんですけど。いま思えば早死にですが、好き勝手にやらせていただきまして、幸せな人生を送った一人じゃないかな。男の色気や大人になりきれない子供の無邪気さを持って演じたい」
初演に引き続き、林正之助を演じる喜多村は「これぞ、ザ・関西!というお方で、新潟出身で江戸弁もろくにしゃべれない僕が演じていいものかと、初演時は足がすくむ思いでした。今回は大阪での上演でもあり、9月には喜多村緑郎として一生に一度の襲名披露公演が控えておりますが、今はこの11月公演の方が非常に重くのしかかっております(笑)。早速、関西弁の特訓も始めたいと思います」
その他、吉本の芸人、落語家らも出演し、作品を盛り上げる。法善寺横丁や通天閣など、劇作の世界がそのまま残る街で、観劇後の余韻も楽しめそうだ。
前列左より、西川忠志、喜多村緑郎、藤山直美、田村亮
<喜多村緑郎インタビュー>
「林正之助は縁の下の力持ち。”真面目に”笑わせます!」(喜多村)
ーー大阪松竹座11月公演『笑う門には福来たる ~女興行師 吉本せい~』で演じるのは、主人公・吉本せいの実弟・林正之助役です。
やり手中のやり手という印象もありますが、若い頃の正之助さんは、姉の吉本せいさんを支える縁の下の力持ち。時代に合わせて志を受け継ぐなかで、姉との確執が生まれたりもするんですが、それはひとえに愛情ゆえのことだったのだと思います。主演の藤山直美さんは間違いなく喜劇を背負っていかれるお一人ですし、喜劇のルーツを知っているからこそ、吉本せいの役をあれほど見事に演じられる。お客さんはその姿に泣いて笑って、これが本当のお芝居なんだなと、いつも直美さんとご一緒すると大変勉強させて貰うんです。
林正之助役を演じる喜多村緑郎
ーー正之助はライオンという異名でも名を馳せた豪放磊落なイメージですが、知られざる姉弟のドラマも描かれそうですね。
そこは一つの見所だと思います。また、芸人さんなどは感情をむき出しにする発散場みたいなものがあるんですけど、僕はただ必死に舞台を回すのが役目です。冷静沈着な受け身の芝居が多いんですよ。
ーーそのコントラストで笑わせるんですね。
そうなんです、喜劇では真面目にやればやるほど面白いってことがありますよね。そこは徹底的にガチガチの芝居でやっていきたいと思います。でも(周囲が)笑わせに来るんですよ(笑)。
林正之助役を演じる喜多村緑郎
ーーまた、関西人としては大阪に吉本があることは当たり前でしたが、当然そこには始まりの物語があったのですね。今回改めて気づかされた思いです。
関西の方にはぜひご覧いただきたいですね。多分みなさんのDNAには、ほんの隙間にでも吉本興業が入っていると思うので、お芝居を観ることで、お一人おひとりが自分は誰なのかというルーツが、良く分かるんじゃないかな(笑)。
ーー本作は、二代目喜多村緑郎として襲名後初めて迎える舞台ですが、タイトル含め素敵なスタートになりそうですね。
襲名後初の公演で、いつもお世話になっている藤山直美さん、子供の頃から大好きな吉本の芸人さんたちとご一緒できることは大変光栄でございます。個人的にも大変良いスタートが切れるのではないかと思っています」
林正之助役を演じる喜多村緑郎
■日程:2016年11月4日(金)~25日(金)
■開演時間:昼の部:11:00~/夜の部:16:00~
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■出演:
藤山直美
田村亮
林与一
石倉三郎
仁支川峰子
いま寛大
鶴田さやか
東千晃
松村雄基
大津嶺子
西川忠志
喜多村緑郎
■公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/play/shochikuza/schedule/2016/11/post_297.php#tab01