楠本桃子のゲームコラムvol.11 夏が舞台の和風怪奇ADV『アカイイト』
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※画像は製品紹介サイトより引用
【和風伝奇アドベンチャー『アカイイト』】
今回紹介するゲームは『アカイイト』。
2004年10月21日にPlayStation 2用ソフトとして発売されました。現在はPS2アーカイブスとしても配信されています。"和風伝奇アドベンチャー"というジャンル名を持つ今作は、夏の田舎が舞台。まさに今、残暑の時期にぴったりな作品となっています。
<ストーリー>
この夏、わたしはたったひとりの家族だったお母さんを亡くして――。
遺産として残されたお父さんの実家を見るために、長い道を行く電車に乗り――。
とても不思議な夢を見た
思い出せない赤い記憶
群れ飛ぶ蒼い光りの蝶
そして、悲しい目をした懐かしいあのひと――。
わたしの生まれ故郷でもある経観塚
そこでわたしは誰かと出会い、そこでわたしは誰かと別れる過去と現在(いま)、夢と現(うつつ)、わたしの記憶とわたしの血――。
縁(えにし)の糸が絡まりあい、寄り合わさってひとつの絵を成し――。
運命の輪が廻りだす。
(公式サイトより引用)
上記のように、物語のあらすじもどこか不思議な伝奇を連想させるものとなっています。
ゲームはアドベンチャー形式で進み、多くのルートへ分岐をしていきます。物語は伏線が巧妙に張り巡らされていて、繰り返しのプレイも苦になることはありません。むしろ、プレイをするたびに新しい発見が生まれてくるはずです。
エンディングは全32種類とたくさんあるため、物語の結末も多彩。バッドエンドも含めたすべての物語を見たい!と、たくさんの選択肢を総当たりした人も少なくないはず。バッドエンドもどこか儚く切ない耽美さを持つものが多いため、エンディングを見るたびにアカイイトワールドに引き込まれてしまいます。
【少女を取り巻く女性たちの物語】
※画像は製品紹介サイトより引用
本作の主人公は16歳の少女であり、主人公を取り巻くヒロインたちも全員女性。女性中心のストーリーは、どことなく百合的な雰囲気……。とはいえ、恋愛要素の色濃い百合が中心の物語ではなく、あくまで女の子同士の強い"絆"がメインに描かれているため、完全な"百合ゲー"というわけではありません。女の子同士の心情が緻密に描かれているため、感情移入もしやすい物語となっています。
本作を象徴するキーワードとして、「夏」、「田舎」、「血」、「鬼」、「妖怪」、「怪奇」、「和風」、「百合」といったものが挙げられます。上記キーワードにピンときた方は、プレイをして損はないと思います。登場人物たちは皆、一癖も二癖もある個性的な女性ばかり。トゥルーエンドは各ヒロインごとに用意されています。彼女たちの物語を是非、最後まで見守ってあげてください。
個人的には夢の中に現れる少女、ユメイさんがお気に入り。儚げな美少女ですが、とある行動からファンの間では"変態ユメイさん"と呼ばれることも……。ユメイさんがどんな行動をとってしまうのかは、プレイしてみてのお楽しみ!
【淫靡なCGに心奪われる出血ゲージシステム】
本作の目玉として、出血ゲージシステムというものがあります。このシステムは他のアドベンチャーゲームにはない、唯一無二のシステム。主人公である桂は自身に"贄の血"という特殊な血を宿しており、それを各ヒロインたちに飲ませる事で、そのヒロインたちの力を強化することが可能となります。そうして物語の途中、桂は度々血をヒロインたちに分け与えます。しかし、大量に血を飲ませすぎると桂が失血死してしまい、バッドエンドに……。桂が何らかの形で出血すると出血ゲージが減っていき、現在の失血量がゲージで視覚化されます。血が無くなってしまったらバッドエンド。自分の血を守るためにはどうしたら良いのか?ということを考えながら、プレイヤーは物語を進めていくこととなります。
吸血シーンはどれも妖美な雰囲気となっています。淫靡なCGとボイスが交わり合い、そのエロティックさは見ているこちらがドキドキしてしまう程! 女の子同士の禁断の花園を覗き見している気分になってしまいます。
【快適なプレイを手助けする機能の数々】
※画像は製品紹介サイトより引用
アドベンチャーゲームでありながら、かゆいところに手が届く親切設計も搭載されている本作は、どの選択肢のルートを通ったのかが一目でわかる"分岐図"や、複雑な用語が丁寧に解説されている"用語辞典"といった便利機能のおかげで、プレイ中はストレスを感じません。プレイ中の画面もすっきりしていて、無駄な情報がないため、絵や文字に集中することができます。本作のすっきりとしたインターフェースは、物語により入り込みやすいと実際にプレイをしていて感じました。
【残暑の夜と『アカイイト』】
※画像は製品紹介サイトより引用
本作で描かれている"夏"は、田舎という舞台と合わせて、どこか懐かしい気持ちにさせてくれます。夏の描写も丁寧で、丁度今の様な時期にのんびりとプレイすると感情移入もしやすいのではないでしょうか。他のアドベンチャーゲームと比べてもシナリオ量が多く、プレイのやりごたえがある本作。『アカイイト』は夏が来る度にふと思い出して必ずプレイしてしまうほど、中毒性が高い作品です。本作をプレイしながら、「今年も夏が来たなぁ」と呆けるのが毎年の恒例行事となっています。
また、本作と同じ世界観を舞台とした姉妹作『アオイシロ』というアドベンチャーゲームも2008年に発売されています。こちらも併せて、女の子たちが織り成す不思議な世界をお楽しみください。