Survive Said The Prophetの下北沢SHELTER2マンを観た 自信作とともにバンドはさらなる高みへ
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Survive Said The Prophet Photo by Phantom
8月26日、下北沢SHELTERにてSurvive Said The Prophetが自主企画『Survive Said The Prophet presents『MAGIC HOUR』』の東京公演を行った。東名阪の各地にゲストを迎えての2マンライブを3日間で完走するという弾丸スケジュールの本企画なのだが、その3日目となったこの日は、fox capture planとの異色のマッチング。fox capture planが繰り出すトリオ編成のピアノジャズサウンドを前に、みな思い思いに身体を揺らしながら、随所に差し込まれる高速のキラーフレーズには大きな歓声が上がっていた。すでに満員となった場内は、熱気もボルテージも非常に高い。
イベントタイトルの“MAGIC HOUR”とは、日没後のわずかな時間、光の効果によって写真などが美しく撮れる時間帯を指す言葉なのだが、それ以外に「1時間ずつのライブによって生まれる魔法の時間」という意味も込めたそう。なかなか洒落ている。fox capture planの余韻も冷めやらぬ20:40すぎ、雨音とピアノの音色による静かなSEの中Survive Said The Prophetのメンバーが登場。魔法の1時間の火蓋が切って落とされた。
Survive Said The Prophet Photo by Phantom
「下北沢、準備はいいか! Are you ready?」というYosh(Vo)のシャウトとともにヘヴィな音塊をぶっ放す5人。初っ端から惜しげなく最新MVも公開中の新曲「Fool's gold」を投下するあたりから、彼らの気合が見て取れる。show(Dr)による図太くパワフルなキックを土台に激しくも安定したアンサンブルを重ねながら、Yosh、Ivan(G)、Yudai(B)、Tatsuya(G)はステージ最前で身を乗り出すようにプレイ。そんなに広いステージではないので、視覚的にもかなりの迫力と圧を感じさせてくれる。「Let Us Party!!」ではYudaiがフロアに突入、そのまま演奏する一幕もあった。
サウンド面に目を向けると、軸は縦ノリのラウドよりな音なのだがごっついメタル色はあまり濃くなく、エモコア、スクリーモといったあたりに分類される音。もっとも、それ一辺倒というわけではなく、ドラマティックなコーラスパートがシンガロングを起こす「Ashes, Ashes」や「MIRROR」や、ソウルやファンクを消化したアメリカンポップス風の曲調が耳にも身体にも楽しい「IF YOU REALLY WANT TO」のような曲があったり、かと思えば、ちょっと懐かしい泣きメロのギターソロが差し込まれてみたりと、サウンド面での引き出しの多さも魅力的だ。邦楽シーンにおいて重要視される“歌”の部分においても、Yoshのボーカルは一聴して本物を感じさせるクオリティ。とりわけIvanのアコギ一本を傍らに歌いあげた「3AM」では、日本人離れしたソウルフルな歌声と歌唱力で、フロアを一気に引き込んでいった。
Survive Said The Prophet Photo by Phantom
MCでは何度も感謝の気持ちを届けていたYoshが、その背景を語る一幕もあった。10月にリリースとなる最新アルバム『FIXED』には、ネガティブな心境と向き合いさらけ出す楽曲が入っており、それはオリジナルメンバーが自分一人だけになったときにライブができなくなり、一瞬だけ孤独を感じたからなのだと。言葉に詰まりそうになりながら、最後は声を枯らし叫ぶように、今メンバーとステージに立てていること、集まってくれるファンがいることへの感謝を伝えるYosh。ここまで順風満帆とはいかなかった彼らであるが、メンバーが固まり、海外でのレコーディングも実現し、この日のライブもソールドアウトさせるなど、着実にその歩みを進めはじめた中でみせた、弱さと素直な感情の吐露。Survive Said The Prophetのサウンドの根底にあるエモーション、その一端を見た。
Survive Said The Prophet Photo by Phantom
ライブが進むにつれて、フロアからたくさんの手が挙がるなど会場の一体感もどんどん増していく。これにはステージ上のメンバーもときおり笑顔を見せながら、ヘヴィな楽曲はよりヘヴィに、メロディアスな楽曲はよりメロディアスに、メリハリの効いたパフォーマンスで応え、バンドとしての地力の高さをみせてくれた。アンコールではYudaiが謎のトークスキルを見せつけ、Yoshとひとしきりジャレあったりと笑いを誘ってから他メンバーが登場して「California With April」で締め。最後はダイブするTatsuyaを“受けとめたい人”がどこからともなく前の方へ集結したりと、ライブハウスならではのフィジカルな楽しさも感じさせてくれた。
10月5日のアルバムリリースを経て、10月28日からは来年3月までのロングツアーが控えているSurvive Said The Prophet。現状、彼らはラウドロックシーンで語られることが多いと思うが、この日のライブを観る限り、そこでの存在感は俄然増していきそうだ。そして、その歌の強さとサウンドの幅は、もっともっと広いシーンで聴かれるようになるのでは?という可能性も感じさせてくれた。ちょっと気が早いが、ラウドロックと邦ロックの間になんとなーく存在している隔たりに、軽やかに風穴を開けるのは彼らかもしれない。
取材・文=風間大洋 撮影=Phantom
Survive Said The Prophet Photo by Phantom
『FIXED』