大山真志×毛利亘宏(少年社中)にインタビュー!「ここは自分の成長を確認できる場所」舞台『英雄の運命』

2016.9.17
インタビュー
舞台

大山真志、毛利亘宏

大山真志林剛史小林且弥鎌苅健太による「英雄」シリーズ第3弾となる『英雄の運命』が9月17日(土)から上演される。

今度の英雄は、ベートーヴェン。耳が聞こえないというハンディキャップがあるにも関わらず、数ある名曲を世に送り出し喝采を浴びてきた作曲家ベートーヴェン。が、彼のプライベートは奇行ばかり。スーパー自己中と噂されるベートーヴェンの実態と、けれどその才能にほれ込んだ周囲の人間たちによるコメディ作品。

これまでの4人に八神蓮も加わっての芝居となる本作で、ベートーヴェンを演じる大山と、演出の毛利亘宏(少年社中)に話を伺ってきた。

――英雄シリーズ、ついにベートーヴェンがきましたね!

毛利:英雄らしい英雄(ナポレオン)を一番最初にやっちゃったからね。

大山:あの時はあれ1作で終わるはずだったんですよね。

――何故このシリーズが続いたと思いますか?

毛利:やっぱりチームワーク、組み合わせが最初からすごく当たりだった!

大山:他でない稽古場の空気感がここにはあって。自分たちが芝居をやってて思っていることをすぐ毛利さんに伝えて「ここはこうしていこう」って決める。みんなで芝居を作っている感じがありますね。みんなで作っている現場はもちろんたくさんありますが、その中でも役者同士で「こここうすればいいんじゃない?」そして個々の得意とするところを表に出しながら作品に落としていく……こんな現場は他にないですね。

毛利:「演劇をやっている」という実感を凄く感じる現場です。

大山真志

――題材にベートーヴェンを選んだ理由を改めてお伺いしたいのですが。

毛利:前回の公演の時にすでにプロデューサーに「次やるなら何にしようかね?」という話をしていて、ベートーヴェンをいちばんやりたいよね、という話になっていたんです。

――出るべくして出てきた人なんですね。

大山:一応「英雄の」までは揃っているですよ。『英雄のうた』『英雄のうそ』『英雄の運命』って。あとは「馬」とか「海」とかも候補になってて……(笑)。

毛利:「海」はありましたねー。「全員が海賊」という設定でって。結構食いつきいいと思いますけどね。『英雄の馬』…『ウォー・ホース ~戦火の馬~』みたいだけど。

大山:よくよく考えると『英雄のうた』のときにナポレオンが題材で、そのナポレオンに『英雄』という曲を作って贈ったのがベートーヴェンで。そういう繋がりもあったんですよね。

大山真志、毛利亘宏

――とはいえ、ベートーヴェンってこれまで様々な人が様々な形で描いてきたキャラクターですよね。手塚治虫は漫画で『ルードウィヒ・B』(未完)を描いていたし、小学校の音楽室といえばあのモジャモジャ髪のベートーヴェンの肖像画が飾られていたり…ある程度、ステレオタイプのイメージが出来上がっている偉人の一人、という印象があったんです。
でも、今回はコメディなんですね? 先ほど稽古を拝見したときはシリアスな感じでしたが。

毛利:ちょうどやっていた場面がシリアスなところなんです。

大山:こういう場面もあるんです(笑)。

毛利:今日稽古していたのは物語のかなり後半ですね。ちょいちょいシリアスの中にも笑いを入れていこうとしているんです。クスッとくるような。笑いを前面に出しつつもその中での人間模様とか英雄の悩みを描いていきたいんです。等身大の人間なんだというところを描きたいというのはシリーズ共通して言えることなんです。

大山:今回初めての展開ですが、ベートーヴェンである僕が他のキャラクターと二人きりになる場面が出てくるんです。だいたい三人とかでステージに乗っていることが多いんですが、二人だけのシーンがつながっていくのは今回初めてなんです。あと他のメンバーにぼくは見えてないんです……。これ以上は言えませんが。

毛利:三作目ともなると、もう一通りやってきちゃったことが多く、過去の作品とかぶるところも出てくるので、できるだけ違う角度で、ということは意識していました。その中でやったことがないことを、できるだけ群像劇に、一人一人の顔が立って人間性が出てくるお芝居にしたいと強く思いました。ベートーヴェンに翻弄された人たち、という芝居にしたいと。

大山:一人ひとりが物語を持ってますしね。

毛利亘宏

――登場人物で個人的に注目したのがツェルニーで! ピアノを少しでも習った人にとってツェルニーの練習曲といえば、地味でつまらなくて早く終わらせてメインの曲を弾きたいと思わせるくらい疎まれているイメージが……(笑)

大山:そりゃ「中の下」って呼ばれるよ!(笑) ピアノをやったことがある人はこの舞台を観たら面白いだろうね。

毛利:ベートーヴェンが厳しく指導しすぎたせいで、ツェルニーは練習曲の金字塔を打ち立ててしまったんですよ、彼の曲はたくさん弾かれているのにね。

――でも、心に全然響かないんですよ……。

毛利・大山:残念ですねー(大笑い)

毛利:他の登場人物、シンドラーも「音楽史の汚点」と呼ばれる男ですしね。嘘八百の男だから。

大山:結構クセのある登場人物にクセのある役者がマッチしているという。

毛利:こう見えてシューベルトがいちばんマトモな人でね……でもマトモじゃない役者がやっているからね

大山:アッハッハ。

――シューベルト役の林剛史さんは、4年くらい前、別件で取材をしたことがあって。その頃はシュッとしたイケメン俳優だと思っていました。……いつの間にマトモじゃないと言われるような人になったんですか?

大山:いやあ、ここの現場だけですよきっと。

毛利:みんながみんな、いじり倒すんですよ。

大山:だいたい俺と(林)剛史さんがいじられるんです。今回は(八神)廉さんも入ってきたから小林且弥鎌苅健太が三人をいじり、さらには毛利さんまでいじられる(笑)。

毛利:そう、僕もいじられる。演出なのに!!(笑)

――毛利さん、一応、いちばん偉い立場じゃないんですか?

毛利:ケンケン(鎌苅)がいじるんですよ……。

大山:そんな感じがずっと続いているのに、いまだに稽古場の新鮮さがかわらずあるんです。しかも4人は変わらずやっていて。珍しい現場だな。おもしろいなあ。って

――劇団というほど縛りはないですが、ユニットという表現が合う雰囲気ですね。

毛利:しかもね、お芝居にガッツリ向き合って、割と硬派なことを積み重ねているんですよ。

大山:練習はキュッとしてますから! 休憩から戻ってきたら一気に空気が変わる。オンオフがはっきりしてますね。休憩中は休憩中で、稽古で煮詰まってた何かがほぐれて「あ、あそこはこうしよう」ってアイディアが出たりするんです。

毛利:だから結果的にずーっと稽古しているみたいなの、ここにくると。

大山:「うわあああ!」ってなったこともありますが、苦痛と思ったことは一度もないですね。

毛利:ここにいれば何か解決策が生まれるって思うし。悩むは悩むけど前向きに探っていく、いいものを作りに行こうとするんです。

――演出家としてこの現場はいかがですか?

毛利:やりやすいし楽しい。ここ専用のモードがありますね。普段あんまりコメディ寄りのものって書かないけど、ここは違うんです。

――そしてこの現場の牽引力となっている大山さんの存在も重要ですね。

大山:最初はどうなるかわからなかったです。『英雄のうた』をやっているときは自分のことでいっぱいいっぱい。ゲネプロの前に歌が飛び、セリフが出てこない。本番で無事に出てきたからよかったんですが、それまでになかった状態でした。そこから始まったいるので今となっては強くなったなあって感じます。自分がこれをやってどれだけ成長したかを感じる舞台ですね。まだ稽古に入って数日ですが、自分で俺この前よりまた成長しているな、って実感があります。

――自分の成長を確認する場所。

大山:そう。あとはレベルの高い笑いを取りに行ったりする人や(笑)、そういうことに貪欲な人たちが多い現場だから、そこでシノギを削れるって嬉しいことですね。

――本作の見どころを教えてください。

大山:この舞台では学校の教科書には書かれてない、ベートーヴェンの“変人”の部分も描きます。狂人ともいえるけど、音楽への情熱は本物で、そういうものを持ち合わせている彼に周りが翻弄されている。ベートーヴェンも天才として育て上げられた葛藤もあって。そういうのを楽しんでもらいたいですね。

大山:今回はそんなに悩んでない。むしろ『英雄の嘘』の栗野慎一郎のときは稽古の最終日くらいまで栗野の方向性が見えなくてかなりやばかったんです。自分の中でどうしようどうしようってなってしまって。今回は自分はこれでやってみる、と決めてやれているので、悩むことがない。ただ、奇人変人ってどこでキレたりするかがわからないから、今はそこを探っていますね。……B型かAB型なんじゃないかなって思いますけどね。

毛利:まあでも大山くん自体が狂人みたいなもんだから!

大山:ええー嘘でしょー!?(笑)

『英雄の運命』

――このPR用ポスター、すごく顔がシャープですね!

大山:削ってませんよ! 髪で顔の輪郭を隠しているだけです(笑)。

――大山さんといえば、「リバウンドの帝王」と思っていたりもするんですが(笑)。

毛利:なんでずっと痩せたままで維持することができないの?

大山:ずっとそのままでいることができないんですよねー。どこかで食に偏ってしまうんです。

毛利:その原因を探ればいいんじゃないの?

大山:原因……なんですかね。なんかストレスのハケぐちが食事になるんですよ。

毛利:そういうキャラクターだって認知されているのはいいことなんじゃないの?
むしろ今後は太る方向で役の方向性をつくっていくとか。

大山:ちょっと!まだ若いのでまだそれは避けたい……今回の舞台も盛りだくさんですよ。そういうネタも!(笑)

大山真志、毛利亘宏


ちなみにこの取材の数日前、大山がNHK大河ドラマ『真田丸』に出演することが発表されたばかり。
Yahoo!のトップニュースにも載るくらい、何かと注目される役どころを演じることになるが、この件について、喜びながらも「実力で残っていけるように頑張ります」と控えめにコメントしていた大山の姿が印象的だった。

 
公演情報
『英雄の運命』

■日程:2016年9月17日(土)~9月19日(月・祝)
■会場:よみうり大手町ホール
■脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)
■出演:
大山真志/ベートーヴェン
林剛史/シューベルト
小林且弥/ツェルニー
八神蓮/カール

鎌苅健太/アントン・シンドラー
●各公演 当日券は開演1時間前より発売致します。​
詳しくはhttp://le-himawari.co.jp/releases/view/00637をご確認ください。

 

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