「中津川ソーラーってどんなフェス?」太陽光でやるだけじゃない、音楽フェスとしての姿に迫った体験記
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中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016 Photo by Taiyo Kazama
9月の10日と11日、岐阜県は中津川市、『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016』に行ってきた。
このフェスが他のフェスと決定的に異なるポイントは、なんといってもステージで使用する電源を太陽光発電でまかなうという点だろう。オーガナイザーの佐藤タイジ(シアターブルック)はじめ、このフェスを愛し出演する各アーティスト、集うファンにとっても、太陽光でロックする!というスローガンは、間違いなくある種のアイデンティティであり、誇りである。そのことはこれまでの記事でも触れてきた。個人的にもおおいに賛同している。
メインステージとその周辺
だが、あまりにもインパクト大な「太陽光発電」というキーワードと、原子力発電や地球温暖化へのカウンターたるメッセージ性を有するがゆえに、その側面ばかりがクローズアップされていて、「実際、いち音楽フェスとしてどうなの?」というイベントの全体像がいまひとつフワッとしている気がしなくもない。そこで。
SPICE編集部から、僕と総合編集長が限りなくリスナー目線で『中津川ソーラー』を体感するべく、実際に参加することにした。今から書くのは普段のライブレポートではない。「太陽光のことは一度置いておいて、中津川ソーラーはどんなフェスなのか?」をお伝えする文章としてお読みいただきたい。
この気球、乗ることもできますが、編集部は2人とも高所恐怖症
一日目。東京駅に集合し、売店でシウマイ弁当とスーパードライを購入してから、新幹線で名古屋へ。車で向かうという選択肢もあるが、中央道で4時間くらいかかるため、今回は新幹線にしてみた。荷物を絞らなければならないのが難点だが、時間的にも体力的にも新幹線は楽ちんだ。「のぞみ」の車内でもスーパードライを1本追加投入し、1時間半ほどで名古屋駅に到着。10分ほどの乗り換え時間で特急「しなの」に乗車すれば、50分ちょっとで中津川駅に到着する。会場までのシャトルバス乗り場は徒歩5分くらい離れており、そういうことを事前に調べておかないタイプの我々は案の定ウロウロするハメになったが、駅を背にして真っ直ぐ行くだけなので知っていれば迷うことはないだろう。バスに15分ほど揺られると、東京駅を出てから3時間少々で会場到着。あ、そうそう。駅からバス乗り場へ向かう間、全然コンビニが見当たらなかったので、「忘れ物したけど現地のコンビニで買えばいいや」は禁物です。
青空と山並み、自然豊かな会場内
バスを降りるとすぐにゲートが見えてくる。フジロックとかだとバス乗り場や駐車場からゲートまでたどり着くのにそこそこカロリーを消費するハメになるが、その点『中津川ソーラー』は全く問題ない。しかもゲートを越えてすぐ左手にはREALIZE STAGEがあるため、入場直後からいきなり音楽を浴びられる。我々が到着した際にはDJダイノジがプレイしていて通路まで人が溢れる大盛況ぶりであった。そこから右手側に進むと最大のREVOLUTION STAGEと2番目の規模となるREDEMPTION STAGE、さらにキッズエリアや休憩所、各種出展ブースが入った建物と、フードエリアがある。当然、こちらの2ステージには動員の大きなアーティストが多く出るため、それらがお目当ての人はこちら側のエリアで過ごす時間が多くなりそうだ。
フェス飯は外せない! 比較的並ばずに買える印象でした
我々は一度入り口まで戻って逆側、ゲートを背にして左側へと進み、キャンプエリアに向かう。ちなみに会場全体が山肌の斜面に沿っているため、こっち側に向かうと基本的に山に登っていくことになる。するとすぐにRESPECT STAGEがあって、聴こえてきたのは跳ね回るピアノの音色。H ZETTRIOだ。異次元のテクニックとアクロバティックなプレイスタイルで展開される、サビ感のある高速ピアノジャズはやはり唯一無二で、しばし足を止めてしまったことは言うまでもない。もう少し登っていくと、床下に照明やスピーカーを備えたRESILIENCE STAGEがあって、これとREALIZE STAGEは今年からの新設ステージである。
H ZETTRIO 撮影=三浦麻旅子
そこから物販スペースを経て(なぜか男2人で色違いのTシャツを購入)さらに登っていくと、最後に結構な段数を誇る階段があるのだが、そこさえクリアすればいよいよキャンプエリアだ。今日はここに泊まることとする。こうして実際歩いてみると、のんびり歩いても端から端まで30分もかからない、比較的コンパクトな規模感であることがわかる。サマソニ(東京)のマリン⇔メッセみたいに、すぐそこに見えている会場に意外とたどり着けない、という罠もない。キャンプエリアにはお子さんを含む家族連れがたくさんいたが、ファミリーでの参加でもこのくらいの移動距離なら安心だ。
小さなお子さま連れも多数
で、悪戦苦闘しながらテント設営する。キャンプエリアは本来サッカーコートであるため、硬い砂地で真っ平ら。緑こそ無いが、キャンプフェスにありがちな、斜めの土地にテントを張らなければならないということはない。背後が山なのでときおり涼しい風も吹く。が、晴れると日陰は無いのでタープテントを持っている方は持参した方が良さそうだ。編集部は今回、Colemanのテントをお借りし、スタッフのお兄さんに設営を手伝ってもらったのだが、キャンプエリア内にはColemanのブースがあって、ランタンやシュラフなどキャンプ用品の販売もしていた。売店もいくつか存在し、お酒やおつまみ、軽食、ペットボトルなどが買えるのだが、深夜にはほとんど閉まってしまいお酒以外の飲み物を入手できなくなるので、早めに買っておいた方が吉(もっともこの点は来年には改善されるかもしれないが)。他にコインシャワー(そこそこ混む)とトイレ(混む)、仮設トイレ(空いてる)もある。翌朝用にわりとリーズナブルな弁当の予約もできる。
ワイルドな見た目と裏腹にテントの立て方に戸惑うSPICE総合編集長
なんとか完成
ちょっと多国籍な雰囲気のショップエリア
テントに荷物を置いてライブ会場まで戻りながら、出店しているお店をリサーチしていると、まず目につくのがオフィシャルやアーティストグッズ以外の服飾や雑貨を置いているお店。数も結構出ており、それぞれ個性的でオーガニックテイストのアイテムが多い印象だ。マッサージ店の体験取材と称して極楽へと旅立った総合編集長を置き去りにし、さらに見て回ると、けん玉や大道芸の体験と販売をしているブースがあったり、中津川名物の栗きんとんと抹茶で一息つけるお店があったりと、非常にバリエーション豊かなラインナップで、家族連れやカップルが多く楽しんでいる。転換に余裕をもたせたタイムテーブルなこともあり、ライブの合間に色々な楽しみ方ができるのもポイントが高い。子供に大人気のロングなローラー滑り台やトランポリン、透明な風船の中に入って水上を歩くやつ、人生の道に迷った方向けの占いコーナーまであった。これなら普通にキャンプしに来るだけでも面白いかもしれないなぁ。
駅の近くには栗きんとんの名店もあって、栗きんとん推しな中津川
総合編集長「あれ、入ってみてえよなぁ」
各地のフェスでオーディエンスの身体をほぐしまくっているとのこと
一日目のヘッドライナーはシアターブルック。これは観ておかないと、と再びキャンプエリアから山を降り、会場まで向かったのだが、途中のRESPECT STAGEでOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのライブをやっていたため、しばし観ていく。狙ったのかどうか不明だが、このRESPECT STAGEは大人な年齢層にクリティカルヒットするアーティストが多く出演する上に、キャンプサイトからREVOLUTION STAGE側へ向かう途中にあるので、家族連れにとっての“お父さんホイホイ”的な役目を果たしている。
シアターブルック 撮影=岡村直昭
REVOLUTION STAGEに到着すると、シアターブルックがプリンスの「Purple Rain」をカバーしていた。もともと日本人離れしたグルーヴ感が歌にも演奏にも滲み出ている佐藤タイジだけに、このカバーは至高だ。トレードマークのモジャモジャといいヒゲの感じといい、見た目的にもちょっとプリンスっぽくて泣ける。他にも、Dragon Ashのkjも登場した「とんだ太陽の人」、このフェスのテーマ「もう一度世界を変えるのさ」、名曲「ありったけの愛」などが夜の中津川に響き、ピースフルな空気に包まれてメインの会場はこれで幕を下ろした。が、夜はまだ長いんです。
オーディエンスが一斉に掲げたピースサインは壮観でした
ところどころに光るオブジェやミラーボールが設置され、昼間とはまた違った顔を見せる夜の中津川。一旦キャンプサイトに戻ろうとすると、VILLAGE OF ILLUSIONという夜専用のステージで水着のお姉ちゃんたちが踊っているではないか。今日一番のテンションで「写真を撮ってこい」と指示を出す総合編集長。言われる前にファインダーを覗く筆者。色彩キツめの照明に照らされて歓喜の声を上げる周囲の野郎ども。おひねりをねじ込もうとするオジさん……大自然がキャバレーになった瞬間である。そう、男はバカなのだ。
ミラーボールとオブジェに興味津々
かと思えば、SAのNAOKIと怒髪天の上原子友康によるフォークソング部が往年の名曲を披露したり、ハマック柳田がマジックショーを繰り広げたりするのがVILLAGE OF ILLUSION。基本ゆるめの雰囲気なので、深夜に差し掛かってお酒の入った身体に心地良く、とりわけ藤井一彦のギタープレイと歌声は沁みた。そして、そのステージの脇に入ると、もしかしたらこのフェスで一番僕の心を惹きつけたかもしれない「スナックよしこ」がある。徹底して場末感のある佇まい、形ばかりのドアには“ホステス募集中”の張り紙。外から様子を伺ったところ、綺麗だったりボリューム感があったりオネエ(じゃなかったらマジでごめんなさい)だったりするホステスさんが各テーブルやカウンターで接客している。なにこれ、超楽しそう。大盛況で入れなかったのが悔やまれるが、ドリンク代も他とほとんど変わらず、その日一日の思い出話を肴に呑めるスナックって、最高じゃないだろうか。他のフェスにも波及したらいいと思う。
観る者の心を捉えて離さない「スナックよしこ」はコチラ
「絶対載せてくださいね」と言っていたお兄さんたち 約束、果たしました
そこからすぐの位置、昼間はRESILIENCE STAGEとして運用されているステージで、深夜帯にMIDNIGHT ILLUSIONが行われる。こちらは平たく言えばDJによるクラブ。一段高くなったフロアに上がると、中央にDJブースが備えられており、そこを360°取り囲むようにオーディエンスが踊っている。床下に照明があるので足元が様々に色を変え、外側からは曲の高揚に合わせてフラッシュなどの特効で盛り上げる仕組みだ。ループするエレクトロサウンドのビートにくわえ、前が見えなくなるほど容赦ないスモークも床下から噴出するので、かなりの倒錯感が味わえた。このステージ作り、都内のクラブイベントなんかでやったら相当流行りそうな気がする。そのまま早朝5時の終演まで滞在したいところだったが、その気持ちをグッとこらえて、深夜2時前にテントに帰還。するとあることに気づく。
深夜にこの雰囲気はたまりません(良い意味)
フロアの真下はこんな仕組みに
星、綺麗!
普段都内で見ることのできる星とは段違いの数で、34歳と37歳のおっさん2人が「星が綺麗」というロマンチックな話題でひとしきり盛り上がってしまったくらい、見事に星がみえた。売店やトイレ、遠くのステージの明かりが無ければどれだけ凄かったのだろう。都市部から遠征してくる参加者にとっては、フェスそのもの以外にもこういう自然を感じられるポイントは嬉しい。あと多分、探そうと思えば虫捕りとかもできると思う。翌朝カマキリがテントに止まってて、摘んでどかそうとしたらものすごい反りながら攻撃してきて挟まれたから。
羊の皮をかぶった狼「メーテレ」のウルフィくんも
取り止めなく書いてきた『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016』体験記も、ようやく2日目。すでに施設周りは大体書いてきたのでもうすぐ終わります。もうちょっとだけお付き合いを。
テントを網戸状態にして寝たらちょっと肌寒かったくらい、夜は涼しい中津川だったが、朝8時にはもう結構暑かった。2日目も晴れだ。外では妙にトークスキルの高いお姉さんがインストラクターを務め、みんなで朝ヨガをやっている。これ、本当は体験してみる予定だったのだけど、二人とも朝が弱すぎて無理でした。
2日目後半にやっと会えたウルトラマン
右側の椅子、脚が宙に浮いてます すごかった
山から降りていくと毎回気になるRESPECT STAGEでKenKen率いるLIFE IS GROOVEが演っていて、やっぱりそこで足止めを食らってから、フードコートでとりあえずビールと朝飯だか昼飯だかわからないご飯を食べ、この日は各自観たいライブを観ながら自由行動で過ごすことにした。個人的に気になりまくっていたゼロノミクマというゆるキャラと写真を撮ったり、ウルトラマン(初代)と記念撮影を出来るコーナーに並んでいるのが大きいお友達ばっかりだったり、普通に楽しむ筆者。ライブはNothing’s Carved In Stoneとthe HIATUS、それからBimBamBoomを観た。これまで恥ずかしながらチェックできてなかったのだけど、BimBamBoomは女子5人組のインストバンド。基本的にファンクで、サックスの前田サラが男子顔負けに吹きまくるホーンを主体にしたサウンドながら、ギターの岡愛子(ex.BAND A)がファズギターのカッティングでロックテイストをふんだんに撒き散らしてくるので、オシャレなだけには留まらない。今後注視したいバンドだ。
Nothing’s Carved In Stone 撮影=平野大輔
the HIATUS 撮影=岡村直昭
と、ここで我々は時間切れ。翌日が平日なため東京に戻らなければならず、後ろ髪を引かれながら帰路に着く。こればかりはどうしようもないが、首都圏から電車で向かった場合、最終アクトまで観て余韻に浸りながら帰ろうとすると、その日のうちに帰り着くのがギリギリになってしまう。せっかく参加するならのんびり観た方が良い、むしろそうしてほしいタイプの「隙間も楽しめる」フェスだけに、できれば翌日に有休を取ったり、体力に自信のある方は車で参加するのも良いだろう。その場合飲めないのが難点ではあるが。
ここまで時系列に沿って、観たものや感じたことを書いてきたが、ただの旅行記みたいになってしまった。まとめなければ。結局、『中津川ソーラー』とはどんなフェスだったのか。
昔ながらの玩具が時代を超えて大人気
左手がそれっぽい
まず参加者の年齢層。これは比較的高めでファミリーも多い印象だ。激しめのバンド自体は一定数いるものの、ゴリゴリなラウド勢や所謂フェスロック勢が出ておらず、代わりにインストやアコースティックなどの玄人好みなアクトが目立つ。だからか、あまりパリピ属性がいない。20代半ば~40歳くらいとその家族が一番多いのではなかろうか。つまりそのド真ん中世代である筆者には、とても居心地が良かったわけだ。あと、僕らへんの世代になると、「このバンド3曲観たらあっちのステージであのバンドを観て……」みたいなカツカツなタイムテーブルは正直ツラい!という方も少なくないはずだが、その点、ステージ間の距離が短めなうえライブのインターバルが長い『中津川ソーラー』は、のんびり楽しめるのでありがたい。散策しながら気になったライブを観るもよし、1ステージに腰を据えて転換中にお昼寝するもよし。くわえて加藤登紀子や八代亜紀、加山雄三といった、うちの母親……下手すると亡き祖母が喜びそうな大ベテランまで出ているので、親御さんでも普通に楽しめると思う。親孝行がてらの参加もアリだ。
the HIATUSの登場待ち
次に出演者。シアターブルックは当然のこと、上でも触れている通り、20台半ば〜40歳くらいが喜ぶということは、つまりその世代の憧れ=少し上の世代のアーティストもこのフェスのステージの中心を担っている。今年で言えば、Dragon Ash、the HIATUS、ナッシングス、ストレイテナー、10-FEET、TOSHI-LOW――彼らは皆ともに戦い抜いてきたライバルであり、『中津川ソーラー』のマインドに賛同してこのフェスに集っている同志でもあるので、とても空気が良い。広島カープ優勝の瞬間、ウエノコウジをケータリングスペースに居合わせたみんなが祝うくらい、空気が良い。そして彼らは、今なおロックシーンの最前線を走り続けている存在でもある。これは勝手な想像だけど、社会人になってからもうそこそこ時間が経って、気づけばまわりは音楽を聴かない人間が多くて、人によっては結婚したり子供ができたりして、なんだか人生に対して「つまんねえなぁ」「こんなもんかなぁ」などと思いながら過ごしていて、それでも好きなバンドがいくつも出ているもんだから久々にロックフェスに足を運んでみたら、そいつらが昔と変わらずかっこ良くて、あぁ、もう最高だよ!……みたいなストーリーが、多分いたるところに存在していたんじゃないかな。the HIATUSのとき、ダイブしたあと横の通路から戻っていった女の子なんか、泣きながら笑ってたしな。
ライブの醍醐味を全身で楽しむ
最後は立地だ。中津川市は岐阜県の中では長野よりに位置する都市で、盆地なのでかなり暑い。会場自体は盆地の縁のようなポジショニングで、山深くは無いが平地でもなく、昼間は暑いが夜は涼しい。アクセス面については、名古屋在住という参加者曰く、名古屋から車で1時間半だそうなので、東海・中部在住の人にとっては充分参加圏内といえるだろう。高速のインターからもかなり近いし。ただ正直、先にも書いたが首都圏からのアクセスは良いとはいえず、1組2組のお目当てのために遠征するには時間も予算もかなりかかってしまうので、やはり『中津川ソーラー』というフェスそのものを空間ごと楽しめる方にお勧めしたい。幸い、毎年一本筋の通ったブッキングがなされているため、年ごとに大きく雰囲気や装いが変わってしまうこともないし、そういう意味ではフジロックの楽しみ方に近いのだけれど、自然があるわりにそこまで人里から隔絶されてもいないため、ファミリーキャンプや家族旅行を兼ねて参加するならばフジロックよりだいぶハードルが低そうだ。
将来有望な少年も多数
そしてアクセス面の課題は見えたものの、やっぱり中津川でやっている、ということに重要性があると思う。確固たるメッセージを持つフェスだから、フォークジャンボリー時代からの伝説の地である中津川で、という歴史的側面はもちろん外せないが、岐阜県という地理的にみても中部と東海の狭間の微妙な立ち位置の県(ごめんなさい)でやること自体にも多分に意義があると思うのだ。普段、バンドのツアーは名古屋までしか来ないし、名古屋もそこそこ遠い(長野県に隣接しているが、長野市や松本市までは遠い)、そんなことを話している人がいた。どうやらお子さんのいる主婦の方だったのだが、確かに家族がいたら名古屋のライブハウスまで行って22:00とかに終わるライブに参加するのは難しいだろう。仮にツアーで岐阜に来たとしてもきっと岐阜市とかだろう。そういう街に、年に2日だけ、何10組ものアーティストがやってくるのだ。参加者全体の中でみたら地元民の割合はそれほど高くはないかもしれないが、会場には中学生くらいのグループなんかもそこそこいて、彼らにとってこのフェスは直に音楽やアーティストに触れられるまたとない機会となる。地方型フェスとしての『中津川ソーラー』が果たす役割もまた大きい。
いかがだったでしょうか。明確なテーマと気骨ある精神を掲げながら、いちフェスとしての魅力もしっかりと備えた『中津川ソーラー』。これを読んだら行きたくなった!とまでは言わずとも、「ふーん、来年は誰が出るのかなぁ」くらいまで気になってくれたらとても嬉しい。
取材・文・=風間“太陽” 場内撮影=風間“太陽” ライブ撮影=写真ごとのクレジットを参照
シアターブルック 撮影=平野大輔