涼風真世が大人の愛憎劇『貴婦人の訪問』で再びヒロインの復讐心を熱唱する!

2016.9.30
インタビュー
舞台

『貴婦人の訪問』取材会にて(撮影/石橋法子)

映画化もされたスイスの名作小説を原作に、2014年ウィーン初演。2015年には山口祐一郎ら豪華キャストによる日本版初演として上演されたミュージカル『貴婦人の訪問』が、2016年秋早くも再演される。アルフレッドとクレアの濃密な愛憎劇を軸に、金や欲、名声のためなら容赦なく他人を蹴落としていく(!)誰もが身につまされるような人間心理の暗部を面白いほどに描ききり、シニカルな大人のミュージカルとして話題を集めた本作。中でも、涼風真世は圧倒的な歌唱力でヒロインの復讐心を歌い上げた。そんなクレアを「人生最高の役」という涼風が大阪で取材会を開き、再演への意気込みを語った。

「これほど大変な楽曲は初めて。喉を鍛え、毎回命懸けで歌っていました」(涼風)

ーークレアは人生最高の役だそうですね。

ここまで強い信念を持ち復讐を成し遂げていく女性を演じたのは、35年(の芸歴)を振り返っても初めてでした。とてもやり甲斐のある役だなと思いました。これだけ大変な楽曲にチャレンジしたことも初めてで、一曲を歌い上げるのに非常に体力がいるため、最初の歌稽古では途中で息が切れてしまったほど。初演では喉の筋肉を鍛えることから始めました。中でも『正義』『世界は私のもの』と言う2つの楽曲は、毎回命を懸けて歌っていました。

ーー宝塚歌劇団ではトップスターとして男役を極められました。その経験が生かされた部分はありますか?

そうですね。クレアは低く抑えた感じで歌っていますので、男役のトーンに似ているかもしれません。そもそも宝塚と出合っていなければ今の涼風真世はいなかったので、まずは宝塚に感謝しています。そこで学んだ時間は男役としてはもちろん、人間として成長できた時期だったように思います。その後十数年を経て、今だからこそ出会えたクレアだったのかなと思っています。

ーークレアとはどういう女性だとお感じですか?

復讐を果たすためには自分の命をも懸ける、魂の強い女性だと思います。私だったらあそこまでは考え付かない。やはりクレアはアルフレッドにはそばにいてほしかったのではないでしょうか、あんな結末を迎えてもなお最後まで。

億万長者の未亡人クレアを演じる涼風真世

ーー演じるにあたりアプローチの難しい役柄だと思います。

去年は必死にクレアを理解するところから始まり、大変な楽曲をクリアすることに重点を置いていたかもしれません。今年はクレアの人生をもっと歩いてみたい。去年の資料映像を観て思ったのは、生まれてきた時は誰もが純真無垢な赤ちゃんで、生命を受けた時点で奇跡として周囲に受け入れられる。そんな一人であったはずのクレアが、ここまで復讐心に燃えてそれを実行してしまう。その過程をもう一度考え直したい。初演からとてもクオリティの高い作品でしたが、きっと共演者のみなさんも違うアプローチを試されると思うので、より見応えのあるステージになると思います。

ーーちなみにウィーン版はご覧になりましたか?

観させて頂きました。物凄くて、どう表現したらいいんでしょう。クレアには凄まじさというか、狂気を感じました。全体としては、大人のミュージカルを共演者のみなさんと作っていけることに幸せを感じました。やはり新しい作品をお見せするときは、お客様に受け入れられるのかという不安を抱きがちですが、初演では演出の山田和也さんを始め共演者の方々も全くそんなことはなく、迷いなくみんなで初日に突き進むことができました。ただ、私は楽曲がすごく難しかったのでドキドキしていました(笑)。

ーー(笑)。集団心理の怖さなど、本作のテーマや劇構造の面白さについてはいかがでしょう。

キャッチコピーは「運命を決めるは 金か友情かそれとも愛か――」ですからね。例えば、私も宝くじを毎年買っていますが、当たらな~い(笑)。でも、当たることが果たして幸せなのか。当たったことで悲しいことが起こっている人もいるかもしれない。色んな意味で人生って分からないなと思うんですよ。この作品でも、もしも自分が町の市民だったら? もしもアルフレッドや警察署長だったらどうするだろう?と、観た方が色んなことを感じていただける作品だと思います。

ーー共演には、アルフレッド役の山口祐一郎さんを始め、ミュージカル界の主要キャスト陣が揃いしました。

長いオープニングをご覧いただくと分かるのですが、アンサンブルの方々もプリンシパルとして看板を背負われているような実力者ばかり。本当にプロ意識の高い方々ばかりなので。初演では私もみなさんに助けられながら、稽古場から安心してクレアに集中することができました。

ーーこれまで数多くのミュージカルにご出演ですが、本作はどういう位置付けに?

ターニングポイントだと思います。宝塚時代は、オスカルを演じたトップお披露目公演『ベルサイユのばら』や『PUCK』、退団公演『グランドホテル』。退団後は、主演ミュージカル『マリー・アントワネット』、タイトルロールを演じた『エリザベート』、そして昨年の『貴婦人の訪問』。去年の時点では、クレアを演じることができれば、もうほかにどんな役が来ても大丈夫だと思っていたのですが、今『エリザベート』でゾフィー役を演じていて、「こんなに大変な役だったのか!」と実感しています。これから巡り会うどの役も、私にとっては大切な役になっていくような気がしています。

ーー今後挑戦してみたい役柄は。

これは昔から変わらないことですが、「涼風真世にこの役をやらせたらどうなるんだろう」と思っていただけるような女優でいたいですね。

ーー再演の今年は秋からクリスマスシーズンにかけての上演ですね。

スタッフを含めみんな仲が良いので、私が企画してみんなでプレゼント交換をしたいなと思っています。お客様には友達、恋人、ご夫婦、親子、それぞれにご覧いただいて、この作品を観た感想などを話し合いながら素敵なクリスマスを迎えていただけたらと思います。

億万長者の未亡人クレアを演じる涼風真世

 
公演情報
ミュージカル『貴婦人の訪問』
 
■原作:フリードリヒ・デュレンマットの戯曲「老貴婦人の訪問」烏影社刊
演出:山田和也
出演:山口祐一郎、涼風真世、瀬奈じゅん、今井清隆、石川 禅、今 拓哉、中山 昇ほか
 
<東京公演>プレビュー
2016年11月3日(木・祝)~11月5日(土)
会場:シアター1010
 
<東京公演>
2016年11月12日(土)~12月4日(日)
会場:シアタークリエ
 
<福岡公演>
2016年12月9日(金)~12月11日(日)
会場:キャナルシティ劇場
 
<名古屋公演>
2016年12月17日(土)~12月18日(日)
会場:中日劇場
 
<大阪公演>
2016年12月21日(水)~12月25日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

■公式サイト:
http://www.tohostage.com/kifujin/

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