山谷花純インタビュー 『手裏剣戦隊ニンニンジャー』でブレイクした19歳の女優が「息の長い女優」を目指す理由とは

2016.9.28
インタビュー
イベント/レジャー

山谷花純 撮影=原地達浩

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10月1日公開の映画『シンデレラゲーム』は新井淳平原作の同名小説を実写化した作品。一度は夢破れたアイドルたちが孤島に拉致され、トップアイドルの座をかけた命がけのサバイバルを繰り広げる。本作で主人公のアイドル・灰谷沙奈を演じる山谷は、特撮番組『手裏剣戦隊ニンニンジャー』のモモニンジャー役でブレイクした女優。映画『告白』、ドラマ『ファーストクラス』、連続テレビ小説『あまちゃん』などへの出演を経て、わずか19歳で映画初主演を果たしている。若くして「息の長い女優」を目指す山谷が、主演映画に込めた思いとは? 役作りの方法や女優としての課題までじっくりと語ってくれた。

 

「感情的な面で作りこむことは、現場に入るまでは全く考えていませんでした」

山谷花純 撮影=原地達浩

 

――かなりの数の作品に出演されてらっしゃいますが、今回が初主演ですね。演じてみていかがでした?

たくさんの主役の方の背中を見てきたぶん憧れも強かったので、お話を頂いたときはすごく嬉しかったです。キャストの方々全員とお芝居で絡むことができたので、それが主役の特権なんだと初めて知りました。

――やはり新鮮な経験だったんですね。演じられた主人公・灰谷沙奈は意志の弱いアイドルです。ご自身との違いを感じる部分や共感できるところはありましたか?

沙奈は気の弱い純朴な女の子なんですが、その部分はわたし自身とは違うと思いました。

――役作りでは何を意識されたんでしょう?

感情的な面で作りこむことは、現場に入るまでは全く考えていませんでした。現場で衣装を着て、実際にそこに立ったときに感じたことをカメラの前で表現できたらいいな、と思っていました。わたし自身は顔のパーツの印象とかで、結構気が強く見られがちなので、「どうやったら気の弱い印象を人に与えられるのか」を鏡を見ながら研究しました。

 

山谷花純 撮影=原地達浩


――「崖っぷちのアイドルたちがデスゲームを繰り広げる」というコンセプトは刺激的ですが、それぞれのキャラクターが自分たちが抱える弱さや葛藤をさらけ出していくのが印象的でした。何か意識しながら演じられたんでしょうか?

監督には最初に「最後の最後まで沙奈の“弱さ”を残してほしい」「だからこそ、最後のシーンの“強さ”が響くんだよ」と教えていただいて。そこは意識しながら演じました。

――アイドルについても研究されたんですか?

アイドルに関してはほとんど無知に近い状態だったので、お話を頂いた時に同じ事務所のアイドルのDVDを借りたり、友達のアイドルに事情を訊いたりして、役作りに活かしました。

――セクシーアイドルだったり、ロリータアイドルだったり、トランスジェンダーのアイドルがいたりとみなさん個性豊かでしたね。それ以上に、彼女たちをデスゲームに誘うタキモト(駿河太郎)のキャラクターが強烈でした。

非現実的な世界に入り込むきっかけを作ってくれたのが、駿河さんの冒頭のお芝居でした。同年代のキャストが集まっての現場だったので、駿河さんが現場にいて下さることで緊張感が生まれたり、現場がピリッと締まる瞬間があったのですごく感謝しています。

――すごいハイテンションの怪演でビックリしました(笑)。

駿河さんも「こういう役を演じたことはない」とおっしゃっていましたね(笑)。膨大な説明セリフがあるんですが、最後までタキモトとして現場にいてくださったことがすごく嬉しかったです。

 


――監督の加納隼さんはどういった演出をされたんですか?

わたしに関しては、現場では一切演出をされなかったので、結構自由にやらせていただきました。監督の思っていた沙奈と、私の思っている沙奈のイメージが一致していたから、たぶんそうなったんだと思います。もし違ったら何か言って下さるだろうなと思っていたので、初めての主演作を思うようにやらせてもらえてよかったです。

――信頼関係ができていたんですね。海辺で沙奈が凄まじい表情を見せるシーンでも、自由に演技されていたんでしょうか?

あのシーンは、カメラの横に監督がいて下さって、一緒に海の中に入ってずぶ濡れになりながら撮影したんです。本当にクランクアップ直前の最後に撮影したシーンで、日数を重ねて肉体的にも精神的にも自分の中で最高潮にきていたので、あの画が撮れたんだろうと思います。海に向かって歩いて行くところは、役と自分自身が一体化しているような状況だったので、マイクには拾われなかった言葉もたくさんありました。

――アドリブのような演技だったんですか?

そうですね。思ったことを言っていた気がします。監督が「行きたいとこまで行っていいよ」とおっしゃったので、結構深いところまで行っちゃって(笑)。膝をつくところなのに、「あれ?ヤバい、膝がつかない!」って。あのシーンでは(水の中で)ちょっと浮いてるんです(笑)。駿河さんも一緒になって、最後まで追い込んでくださいました。

――駿河さんの反応も凄かったです。

駿河さんがわたしにかけてくれた言葉も、ほぼほぼアドリブです。それを耳にしながらも、自分の精神状態だったり、心情も重なってできたのがあの表情なので。

 

19歳にして「息の長い女優」を目指す理由

 

山谷花純 撮影=原地達浩


――山谷さんはどちらかと言うと役が憑依するタイプの俳優なんでしょうね。

そうかもしれません。わたしは同じ役者さんどうしで意見交換するのがすごく難しいんです。演じてみないとわからないし、演じてるときは自分じゃない。舞台をやっているときに、男の子どうしで意見交換しているのを見ると、すごくうらやましいです。わたしも(意見を)聞かれるんですけど、それを具体的に「こうゆう要領で、今の間合いで言ったほうが伝わる」と口にするのが難しいので……。もうちょっと自分の中で上手くコントロールできて、人と一緒に共有できるようになるのが、次のステップでやりたいことです。

――試行錯誤されてるんですね。

(役について)話している方の目がすごくキラキラしているのを見ると、「その感情を一緒に共有できるようになりたい」という思いが強くなるんです。

 

山谷花純 撮影=原地達浩


――山谷さんは19歳とお若いんですが、実は芸歴9年目なんですよね。女優でいこう、と決心されきっかけはあるんでしょうか?

もともとはモデル志望でこの業界に入ったので、女優という職業をあまり知らなかったんですが、中島哲也監督の『告白』に出演させていただいて映画の面白さやモノづくりの楽しさを教えていただきました。その後に、「楽しいと思っているだけじゃこの仕事はできないんだな」ということを、先輩だったり演出家の方々に教えていただいて、今に至ります。

――中島監督の演出で特に印象に残っていることはありますか?

中島監督は面白いか面白くないかをはっきり言って下さる方なんです。監督がクタクタになりながらも現場で声を荒げてくださったことで生まれた緊張感だったり、10代のリアルな表情だったり……そういうものを切り取って下さったので、(『告白』は)たくさんの人に観てもらえる作品になったんだろうな、と思います。

山谷花純 撮影=原地達浩


――以前のインタビューでは「売れる女優じゃなく、息の長い女優になりたい」とおっしゃっていたので、お若いのに堅実な方だと思いました。なぜまた「息の長い女優」を目指そうと思われたんでしょう?

たぶん、人が好きだからだと思います。現場にいられることがすごく嬉しくて、なおかつ好きなことができる今の環境がわたしにとっては特別で。有名になれるならなりたいですが、それで失うものがあるならそれは違うのかな、と思うところもあって。もし自分の名前が売れたとしても、そのスタンスは変えたくないし、面白いものは「面白い」、面白くないものは「面白くない」と言えるような、そんな人でありたいと思っています。

――映画や舞台を観たり、本を読んだりしてインプットされるのもお好きなんですよね。デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』がお好きだとうかがいました。

ハッピーエンドがあまり好きじゃないので、「ひねくれてる」とよく言われます(笑)。特に洋画に多いと思うんですが、エンディングのシーンを最初に見せる(構成の)作品がすごく好きで。一周まわって最初の場面に返ってきて、「ああ、だからここに繋がるんだ!」「もとをたどれば最初に戻るよね」と思える、そういう物語がすごく好きです。先日まで出演させていただいていた舞台(『瞑るおおかみ黒き鴨』)も最初と最後がほぼ同じ(シチュエーション)なんですが、演者さんの位置や表情の見せ方が変わることで、伝わることが違ったり……それがすごく楽しいですね。

――最後にこれから映画をご覧になる方、なろうと思っている方にメッセージをお願いします。

『シンデレラゲーム』は、“アイドル”と“デスゲーム”という異色の二つのものからできている作品です。現役アイドルも出演していますし、逆にアイドルではない人たちがお芝居でバトルを繰り広げているところも観ていただければ。撮影期間も結構タイトで、キャストが追い込まれていくようすが表情やお芝居にすごく表れている素敵な作品でもあります。彼女たちが血みどろになって、汗をたくさん流しながら走り回っている姿を見て、熱いものを感じてもらえればいいな、と思っています。

 

山谷花純 撮影=原地達浩


映画『シンデレラゲーム』は10月1日(土) シネマート新宿ほか公開。
※公開初日は、シネマート新宿にて10:00の回終了後、舞台あいさつあり

取材・文=藤本洋輔 撮影=原地達浩

プレゼント情報
山谷花純直筆サイン入り『シンデレラゲーム』ポスターを1名様に
 

 
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作品情報
映画『シンデレラゲーム』

( 2016/日本/77分)
 

(C) 2016「シンデレラゲーム」製作委員会



出演:山谷花純 吉田明加 春川芽生 佐々木萌詠 清水あいり 阿知波妃皇 其原有沙 水木彩也子 / 駿河太郎 
監督:加納隼 
脚本:いながわ亜美 
原作:新井淳平「シンデレラゲーム」AMG出版刊
 企画・配給:AMGエンタテインメント 
制作:メディアンド
 (C) 2016「シンデレラゲーム」製作委員会 
公式サイト http://cinderella-game.com
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