【SPICE対談】ラジオの中の人[関西編] FM802・DJ飯室大吾×ディレクターたっちゃん
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飯室大吾(写真、左)・たっちゃん(写真・右)
メディア(media)とは、情報の記録、伝達、保管などに用いられる物や装置のことである。媒体などと訳されることもある。(wiki参照) 筆者はこの「エンタメ特化型情報メディア SPICE」という媒体で、ライターや編集をやり出して“伝える”ということに意味を感じ、やりがいを覚えた。テレビや雑誌、ラジオ、またうちのようなwebメディア、それぞれいろんな手法で様々な情報を提供しているが、ライブハウスにいたときに一番バンドマンやお客さんと近い存在なメディアはラジオだった。そして、現場で出会ったとあるラジオDJのおかげで、自分自身もラジオを聞くようにもなった。そこで尺という“伝える”時間の枠をとっぱらったテキスト形式で、ラジオという媒体で“伝える”人や裏方の気持ちや想いを改めて知りたいと思い、SPICEでも以前からある「ラジオの中の人」シリーズという企画もあったので、公私共に付き合いも深いFM802でDJをつとめる飯室大吾と、出会った頃はAD(アシスタントディレクター)、で現在は飯室大吾の看板番組『RADIO∞INFINITY』(毎週木曜日 24:00ー27:00)のディレクターをつとめる龍田こと、たっちゃんへインタビューを敢行した。
――まずはラジオDJになろうと思ったきっかけを教えてもらってもいいでしょうか。
飯室大吾(以下、飯室):もともとはFM802(以下、802)のリスナーで、聞き始めたのは小学校の高学年、中学校くらいからかな。親父が朝食の時とかテレビをつける人じゃなかったから、毎朝聞いてましたね。その頃は局にこだわりはなくて、たまたま家でかかってたのが802で。その後、オーディションに受かってやることになりました。
――それは聞いていた番組の人(DJ)みたいになりたいっていう気持ちから?
飯室:そう。最初は802を聞いたら最新のイケてる音楽がわかる!っていう感じで聞いていたんですけど、そのうちラジオって時間によって内容違うやん!ってなって。深夜は深夜で朝とは違うテンションのものがあったりして、徐々に前のめりで聞くようになったんです。深夜番組を聞き始めた高校の頃には何となくじゃなくて、この時間に聞くぞ!ってなってましたね。最初は音楽に興味があって聞いたけど、だんだんしゃべってる人に興味が移り、ラジオDJというものを職業として意識し始めて、「なりたいかも」って思うようになりました。そしたらオーディションがあるということを知ったので、自分でデモテープを作って送りました。
――自分でデモテープを作ったんですか?
飯室:そう。自分で30分のデモテープを作るんです、1つの番組みたいに。そのテープを作って送るのが一次選考だったんです。初めて送ったのは大学の時だったんですけど、その時に周りにヒップホップやってる奴らが多くて。ヒップホップやってる人たちはミックステープを自分で作るから、ターンテーブルもあり、CDもかけられるし、マイクもつないであって……だからそういうことができる友人に頼んで作ってもらったりしてました。右も左もわからんから、とりあえずやってみよ!って感じで。そら、そんなんじゃ受かるわけもないですよね(笑)。
飯室大吾
――ということは、落ちてしまったと。
飯室:2、3回は落ちてます……。
――ちなみに、受かったのは?
飯室:25歳の時。大学卒業して2年間フリーターしてたんですけど、当時は埼玉に住んでて、東京のイベンターで働いてたんです。その時に送ったデモテープで、26歳になる年に受かりました。ちょうど10年前ですね……ちなみに今日で10年目です。
――今日!? すごい偶然(取材日は10月1日)。改めておめでとうございます!
飯室:ありがとうございます! 2006年の10月に初めて番組をもたせてもらったんです。その番組は今はもうないんですけど『FUNKY JAMS 802』っていう番組で、今は名前が変わって『LNEM』という番組になってますね。オーディションに受かった人が最初にやる深夜枠なんですけど、最初は「FUNKY JAMS 802 Tuesday」って言えなくて、「エイトーチューチューズデイ!」って言ってました(笑)。
――(笑)。1回目はどんな感じだったんですか?
飯室:まったく記憶にないですね!(笑) 1曲目にかけた曲だけ覚えてて、ビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」でしたね。今考えたら渋いよな~(笑)。あとの3時間は……(記憶がない)。
――いきなり1人でしゃべったんですか?
飯室:そう。俺、大丈夫かな?って思いました。何か月か研修があるんだろうなって思ったら、発声練習とかもまったくなくて。番組がスタートする1週間くらい前に、約3時間の通しのリハーサルを1回やったけど……おかしいですよね(笑)。今思えばそれが局の方針で、まだ何にも染まってない素材そのものをお召し上がりいただく!みたいな。だから周りもあまり作り込まないんですよね。新人枠の番組をやりながら練習していきましょうって感じです。
――番組の構成とかはどうなってたのでしょうか。
飯室:ディレクターさんと相談しながらですね。ディレクターさんが「飯室くんはどんな音楽好き?」って聞くところから始まってすり合わせしつつ。ディレクターさんも、この子にはこんなことさせたら面白いなとか考えがあるから、そこから企画が始まったりして。だから構成はディレクターさんが考えてました。最初はイントロ紹介とかアウトロ紹介できへんかったから、全部書いてありましたね。イントロの何秒でこれを言って、アウトロ何秒あるからこれを言うっていう感じで。ゆっくりした曲はこんな感じで紹介すると気持ちいいよ!っていうことを言われて練習していくという。
――やりながらだったんですね。終わった後、自分のオンエアを聞いたりするんですか?
飯室:してましたね。「やりなさい」ってめっちゃ言われました、新人の頃は特に。同録(オンエアの録音)を渡されてね。でも自分のしゃべってるのを聞き直すって地獄なんですよ。それが得意な人もいるだろうけど……。他の同期のDJとかはちゃんと聞き込んでる人もいたし、それを他の番組のディレクターさんやプロデューサーさんに渡してアドバイスもらったりする人もいてました。でも、俺は自分で自分のしゃべってるのを聞くのが嫌だから、聞いてはいたけど耳には入ってない状態だったな。正直きつかったです……(笑)。
――ちなみに同期DJで今もやってる人は?
飯室:昼に『FLiPLiPS』(月曜~木曜・11:00~15:00)をやってる内田絢子さんが同期ですね。他にも何人かいたけど、もういなくなっちゃいました。
――やってきた番組としては、今やってる『RADIO ∞ INFINITY(以下INFINITY)』と『AWESOME FRIDAYS』の2つ?
飯室:自分のカラーを出してやってきたのは『INFINITY』が最初ですね。2010年にスタートしました。
――改めて、『INFINITY』はどんな番組なんでしょうか?
飯室:メジャー・インディーの垣根はなく、でも基本的にはリスナーとインディーズの邦楽ロックを発掘して探して行こうっていう番組です。でもスタート時は違っていて、ロッキン(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』)のGRASS STAGEでやっている邦楽メジャーロックの人たちの曲がかかる番組でした。それがある日、この番組はいろんなロックをガンガン紹介してくれるなって嗅ぎ付けたリスナーが、全然知らないバンドを「こんなバンドがいるんで、かけてもらえませんか?」ってリクエストしてきて……。でもそのバンドのCDが802にはほとんどないから、実際にバンドとコンタクトをとってCDを送ってもらってかけようぜ!ってなったところから、インディー特化番組に変わっていきましたね。
――802にそういう番組は他にないんですか?
飯室:土井(コマキ)ちゃんの『MIDNIGHT GARAGE』が近いかもしれない。インディーに光を当てる番組だけど、スポットを当てる音楽のシーンが違うというか……。こっちはもっとうるさいロックですね。
――ラウドロックとかも?
飯室:ラウドに限らず、ハードコアとかパンクとか幅広くやってました。どのシーンがくるかわからなかったから。
――やっぱり、リスナーが一番敏感なんですかね。
飯室:そうですね。だからリスナーに変えられていったっていうところはあります。
飯室大吾
――おもしろいですね。では、『AWESOME FRIDAYS』の方は?
飯室:始まって3年半くらいなんですけど、最初はガッツリ毎週公開生放送という感じでスタートしました。毎回ゲストが来るのが一番の強みでもありましたね。
――確かに豪華なイメージです。ジャンルも広いし。
飯室:やっぱり観客の前でやる番組だから。サテライトじゃなくオープンスペースでラジオをやるっていうね。
――サテライトってなんですか?
飯室:局外にあるガラス張りのスタジオのことをサテライトスタジオって言います。普段のスタジオじゃない所で番組のオンエアをやるから、来たらラジオをやってるのを覗くことができますという。ただ『AWESOME FRIDAYS』は、壁も何もない所にお客さんを入れて生放送するっていう番組だから、そこがまったく違う。外でやるけどサテライトではないんです。
――それまではそういうものはなかったんですか?
飯室:なかったと思う。単発のイベント的なものはよくあったけど、それを毎週レギュラーでやるのは初めてでした。最初は面白味を見出すのに時間がかかりましたよ。むちゃくちゃ緊張したし、外でラジオを成立させることに必死でした。オンエアされてるものを聞いてるリスナーもいるけど、目の前にも人がいるからオフエアのトークもあって。ずっと出ずっぱりで、曲がかかってる間はマイクを持ち替えてお客さんとしゃべって、曲が終わるなと思ったらまたマイクを替えて「お届けしたのは……」ってやってて。最初は難しかったです。そこから3年やって、そこで得られる面白味に気付いた頃には、公開生放送のスタイルが終わってしまいました……(笑)。
――その面白味はなんだったんでしょう?
飯室:ラジオって普段は何かしながら聞くものじゃないですか。でも、番組のために毎週のように来てくれる人たちがいるんですよね。ラジオは聞くために時間を作らなあかんもんじゃないのに、その番組のためにわざわざ時間を作って来るという現象が起きて……。ラジオって俺もそうだったけど、スタジオの中でこのDJどんな感じでしゃべってるんだろう?って妄想するのが面白いところだったりするんですけど、それを全部見せるという点でも面白がってもらえるし。こっちの人間味みたいなものを出せば出す程、みんな来てくれる。例えば、DJがノリノリでしゃべってる時、もう踊りながらしゃべってるんちゃう?とか想像するのが面白いわけだけど、行ったらほんまに踊ってた!っていうのがわかるじゃないですか。だから、そこをどんどん見せていくことと、想像で聞いてくれてる人と目の前のお客さんとのミックスをやったら面白いんだ……っていうのに気付いたら終わりました(笑)。
飯室大吾
――それは残念……(笑)。さて、それぞれの番組の構成を聞いたところで、裏で番組を支えるたっちゃん(龍田)の出番です。ディレクターになろうと思ったきっかけはなんでしょう?
たっちゃん:たまたまです。音楽の専門学校に行ってたんですけど、そこにラジオコースみたいなのがあって。
飯室:ラジオコース?
たっちゃん:厳密にラジオコースっていうのはないんですけど、音楽ビジネス科っていうのがあって、そのなかでマネジメント、ライブ、ラジオって学科が分かれていて、楽しそうというか……ただ興味があって、そのラジオコースにいました。
飯室:今後自分がラジオに携わる職業につきたいからとかでは……。
たっちゃん:……なくて、楽しそう!っていう。 学校にちゃんとしたラジオブースがあって、その中に入ってみたかったんです(笑)。
飯室:じゃラジオに興味がわいたのは、専門学校に入ってから?
たっちゃん:そうですね。それで、その時に講師をやってらっしゃる方がいて。バリバリ(ラジオの仕事も)やっていらっしゃったんですけど、その方の紹介で(802に)入りました。
飯室:ちなみにラジオを聞き始めたのは?
たっちゃん:働き始めてからだと思います。
たっちゃん
――当時からディレクターの仕事を勉強していたんですか?
たっちゃん:チームでやるんですけど、しゃべる人とアシスタントディレクターとディレクターで。その時はアシスタントディレクターをやりました。
――仕事は学校を卒業してから?
たっちゃん:専門学校の時からやってました。『INFINITY』のディレクターは私で5代目なんですけど、最初の研修から『INFINITY』の代々のディレクターさんの下でアシスタントをやらせて頂きました。その時は、番組でかけるためのCDの準備とか、原稿の準備をやってましたね。ディレクターさんが作った番組の原稿をコピーしたり。
――以前番組に出させてもらった時、出演者の情報をすごく細かく調べてくれたのを今でもはっきり覚えています。
飯室:それも番組によって違って。どこまでの情報を吸い上げて準備しておくのかは、番組のカラーとディレクターさんのやり方によって変わります。例えばこの情報あるけど、今回やりたいのはこれじゃないから、この情報はいらないよってすることもありますし。『INFINITY』は細部まで拾おうぜ!っていうタイプの番組ですね。
――たっちゃんは、アシスタントディレクターを経ていつディレクターになったんですか?
たっちゃん:今日(10月1日)から3年目です。
たっちゃん
――これもまた偶然! アシスタントディレクターの仕事は、さっき言ってたCDと原稿の準備や資料集めがメインになってくるんですか?
たっちゃん:ほかには、曲の尺を計ったりもします。
飯室:イントロが何秒、全体の尺が何分何秒って。番組によってはアウトロも計りなさいっていうこともあるし、その曲がどうやって終わっていくのかを記号で書いておかないとダメなんですよ。
――確かに曲によって終わり方は様々ですもんね。
飯室:そう。それにCDの尺って、実際とカウンターとが違う時があるから、聴いてメモするのがアシスタントディレクターの仕事です。カットアウトなのかフェイドアウトなのか、イントロもどう始まるかを書いておく。それを見て、ディレクターがDJのしゃべるタイムを決めます。
――それは重要ですね。曲を決めるのはディレクター?
たっちゃん:『INFINITY』は、大吾さんと私でやらせていただいてます。
飯室:それもいろいろありますが、802はけっこうディレクターが選曲してます。
たっちゃん:(802に)入った時、めちゃびっくりしました。ディレクターさんも選んでるとは思ってなかったので。
飯室:海外とかだと選曲だけするセレクターっていう仕事もあるけど、802はちょっと特殊ですね。
たっちゃん:選曲して構成も演出も考えてっていう。
飯室大吾・たっちゃん
飯室:あと802はタイムキーピングもディレクターがやります。
――ちなみに、構成って大まかには決まっていたりするんですか?
たっちゃん:どうでしょう。決まってるようで決まってないような……。
飯室:もちろんある程度決まってます。ただ、当初予定していたタイム感とずれ込むのが生放送だから。週によって、3時間のオンエアのなかでこれが肝みたいな……それがゲストなのか企画なのかは時と場合で変わるけど、そこにどれくらい時間を割いて後の時間でどういう風にしてっていう、進行のバランスは本番中にけっこう変わりますね。
――たっちゃんは、そういったことは学校で教えてもらったりしたんですか?
たっちゃん:専門学校の時ではないですね。入った時は専門用語が全然わからなくて、現場で学んできました。
飯室:例えば?
たっちゃん:ふりきりとか。
飯室:ふりは曲ふりのことで、曲紹介のこと。ふりきるっていうのは、曲紹介をし終わってから曲が始まることですね。
――そういえば、ラジオを聞いててよく思うけど、途中から曲を聞き始めて最後に曲紹介がないと曲がわからないことが結構あります。
飯室:ラジオあるあるやな。俺もそうでした。いわゆる、エアチェックっていうやつですね、DJの曲紹介を聞いてメモするっていう。エアチェック世代っていう言葉もあるくらい。でも、それもまた考え方はいろいろあって、それも演出だから、イントロで紹介、アウトロで紹介、紹介を入れないって、その曲を際立たせる演出方法になってくるわけで。この曲はアウトロをしっかり聴いてこそええねん!ってなったら、絶対に(紹介をアウトロに)乗せちゃダメみたいなディレクターさんのこだわりもあったりします。『INFINITY』は無名のバンドの曲が流れたりするからしっかり紹介するけど、これが洋楽のゴールデンヒッツの番組なら、もはや紹介はなくていい!みたいな。
――なるほど。やはりそういった流れを汲んでいるんですね。ところで、ディレクターの仕事とは改めてなんでしょうか?
飯室:802のディレクターはそれを一番言い難いと思うけど、全国的に見ても、802のディレクターってビックリされることが多いと思います。これがAMだったら構成作家さんていう構成と演出を考える人がいます。もともとディレクターは、その番組の終わるまでのどちらかというと基礎となる部分の仕事をする人で、中身をわちゃわちゃ面白くするのは構成作家さんっていうベースの人。本来、ラジオは分担が細分化されているけど、802は昔から作家さんが入らない。特殊だと思います。だから、ラジオを作るうえでの全部やります!ってのが802のディレクターですね。
たっちゃん:それしか見てこなかったんで、それがスタンダードですね。
――たっちゃんは、2年間ディレクターをやってきて、今後やりたいこととかってありますか?
たっちゃん:ずっと動いていきたいですね。番組が止まらないというか、いつも何かやってるなっていう。周りに頑張ってるアーティストとかバンドとかデザインとかをやってる人が多いので、その人たちが面白いことをやろう!って、がちゃがちゃやってる現場の様子を、私はラジオで出したいです。
たっちゃん
――お二人に訊きたいんですが、ラジオの仕事で苦労した点や、大変な点は?
飯室:しんどかった部分になるんですけど、俺は駆け出しの頃。思ったようにしゃべれないし、人によって言われることが違うし!とか(笑)。どこを目指していいのかもくわからない。やってやりたい気持ちはあるけど、それを具現化する力もなくて。あの頃が大変でしたね。
たっちゃん:私は……コミュニケーション(一同笑)。
飯室:全面に出てるからな(笑)。
たっちゃん:あら(笑)。
――大吾は今後、番組や自分はどうしていきたいっていうのはありますか?
飯室:何やろうね。意外とどうしたいとかは明確にないかな。やってくなかで作られていくっていうのがあるし、番組はリスナーが育てるものやから。
――それは『INFINITY』だからということ?
飯室:いや、ラジオっていう生ものは人が育てるもんだと思います。だから、ちゃんとリスナーの気持ちがわかる番組やったらどうしていってもいいと思う。それは番組としてもDJとしても。人の気持ちがちゃんとわかることをしていればやり方は何であってもいいし、テーマが変わってもいい。
――現場を大事にしてるって感じがしますね。それは前に大吾と毎月一緒にイベントをやってて感じてた部分でもあって。今回ああやったから次こうしようみたいな。何か面白いことやれたらいいなっていうのをやりながらどんどんできて……そういうのがラジオにもあるんでしょうね。
飯室:あると思う。ライブハウスのブッキングでも、やってたら上辺だけじゃなくちゃんとバンドのことを考える。何なら家族構成のこととかまで。そいつらの人生としてこんなことがあったから、今はこうやって応援したろ!みたいなことになってくるじゃないですか。そういう目線を無くさないでいたいよね。それはミュージシャンに対してもリスナーに対しても。イべントなら、お客さんがどう思うかな?ってのを考えて作りますよね。こんな気持ちで帰ってもらいたいから、こんなイベントをやるみたいな。番組もそうで、こんな感じになってほしいから、こんな番組を作るっていう。そういう努力を怠らない番組でありたいなって思います。だから究極、インディーズ特化番組でなくてもいい。テーマは何でも。J-POP20でもよくて、そういうことが考えられるかどうかが大事なことなんじゃないですかね。
飯室大吾
――たっちゃんは、ディレクターをやってて、喜びを感じるのはどういう瞬間?
たっちゃん:いっぱいありますよ。反省みたいなものも一緒に付いてはくるんですけど、ゲストの人が企画にのってくれて、それにリスナーものって楽しんでくれてるっていうのも嬉しいし、インタビューでゲストの暗部とかコンプレックスみたいなのが出る時があるじゃないですか。そういう普段見えないものが見えた時は面白いですね。急にその人が気になってしまう。
飯室:それは、たっちゃん個人が、その人のパーソナルな部分が見えたことが嬉しいの?
たっちゃん:「『INFINITY』だったら……」って、そういうところまで話してくれるっていうのが嬉しいです。それは自分がラジオを聞いててもうれしいと思います。こういう人やったんやなって。普通のプロモーションじゃないっていうか。
飯室:たっちゃんと同じようにリスナーも思ってくれてるやろうなって?
たっちゃん:はい。そう思ってくれてたらうれしいですね。曲だけじゃわからない人となりが見えて、こういう曲をやってるんだ!みたいな。だから気負わずに話してもらえる番組をやっていけたらいいなって思います。
――大吾は空気をほぐすのが得意だしね。
飯室:俺もそうだし、台本を書くのはこの人(たっちゃん)だから。その台本からミュージシャンに伝わるものがあって、我々の番組はあなたのどこに興味があって、どこをリスナーに伝えたくて来ていただいてるんですっていうのが、言葉で書いてなくても台本からも出るんですよ。それをするのがたっちゃんの仕事で、その空気を実際しゃべって作るのが俺の仕事。たっちゃんの私の知りたいのはここであり、それをリスナーも知ることによって、もっと音楽が深く聴こえると思うから、この番組ではこういうことを聞くんですっていう。そうじゃない作り方もあって、例えば「最近のマイブームは何ですか?」とか、それはそれで成立するけど、でもどっちがいい?って言われたら、俺は完全に前者で、音楽を入口に音楽を作っている人間の方に興味がいく。人間に対する興味ですよね。そういうのが常に出るのがいいよね。人の機微に触れる番組でありたいです。
――それが伝わっているのか、『INFINITY』という番組に曲をかけてほしいみたいなところがバンドマンには特にありますよね。大吾に対して、みんなどこか親近感を持ってる部分があるのも感じます。
飯室:でも、その考え方とかは教えてもらってきました。自分でそうなろうって思ってなったというより、この番組に育てられてアーティストの見方を身に付けたというか。バンドマンの向こう側を見るんじゃなくて、個人として見なさいって言われて……。
――ライブハウスと感覚が似てますね。
飯室:「お前のそっち側まで見たいねん。だから教えてくれ!」っていう姿勢をこっちが見せるから、向こうも一歩踏み込んできてくれるんです。ただのラジオの人じゃなくて、『INFINITY』の飯室大吾として見てくれるし。もしこの番組やってなかったら、俺めっちゃ嫌な奴やったかもしれない(笑)。「え、ワンマンやったことないの? 動員なんぼ、30? もうちょっと頑張ってから来い」みたいな。
――そのケタの動員数をパっと出すって、やっぱ感覚が近いね(笑)。ライブハウス目線というか。
たっちゃん:私もここ一年くらいで、(その近さは)大事だと思うようになりましたね。
――何かきっかけがあった?
たっちゃん:私大勢でしゃべることが苦手で……でも1対1やったらしゃべれることもあって。しゃべってみた時にステージはああやったけど実はこういう人やったんやって思うことが結構あるんです。
飯室:すごいラジオ的。ラジオは1対1のメディアやから、対大勢じゃなくて。ラジオのリスナーもそういう人が多いかもしれないね。ラジオって不思議で、本当は一つの番組を大勢で聞いてるんやけど、自分だけが聞いてる感がある。DJと1対1になれる。テレビは対大多数になげるけど、ラジオは違うんです。だからDJになって最初に「皆さんって言いなさんな」って言われました。「あなたって言いなさい」って。あなたって呼びかけられるメディアってラジオですよね、やっぱり。
――確かに。
飯室:だから俺、『ROCK KIDS 802』をやっている落健(落合健太郎)さんとディレクターさんにそこを聞いてみたい。それは『ROCK KIDS 802』は、みんなで聞こうぜ!っていう演出をしてるから。ラジ友って企画があって、メッセージに○○市立○○高校の○年○組のラジオネーム○○ですって書いてきてねってしてる。それでラジ友の輪を作って、みんなで楽しもうっていう演出なんです。1対1から、その演出方法にどうやって行き着いたのかを聞いてみたいです。
――それは確かに聞いてみたいですね。
たっちゃん:OK!
――出ましたよオッケー。大吾が番組中にガラス越しに見るいつものやつ。
飯室:ガラス越しにいつも俺のこと……見てないね(笑)。見てないし、聞いてない!
たっちゃん:ちょっといっぱいいっぱいになってる時があるんで。
飯室:一番見て聞いていてほしい人なんですけどね(笑)。
飯室大吾・たっちゃん
“伝える”側の人間に興味を持って生まれた今回のこのインタビュー。彼も他のDJが改めて気になるということで、今後は飯室大吾をアンバサダーにたてて、電波に想いをのせて“伝える”色んなラジオDJへスポットを当てていくこととなった。さて次回は誰になるのか!? 乞うご期待!
取材・撮影=K兄 文=服田昌子
放送日時:毎週木曜日24:00〜27:00
AWESOME FRIDAYS
放送日時:毎週金曜日18:00〜21:00