9mm Parabellum Bullet ツアー佳境、Zepp Tokyoはサポート武田将幸所属のHEREと異色対バン
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9mm Parabellum Bullet
9mm Prabellum Bullet TOUR 2016 "太陽が欲しいだけ"
2016.10.10 Zepp Tokyo
6月19日の日比谷野外音楽堂でのライブ以来、今の9mm Parabellum Bulletを目撃しにZepp Tokyoに出かけた。つまり、滝 善充(Gt)が左腕の不調をきたしたその日以来ということだ。彼らは『TOUR 2016”太陽が欲しいだけ”』を一部中止するという道を選んだ。頭の6公演はバンドでのライブは叶わず、菅原卓郎(Vo,Gt)と中村和彦(Bs)とかみじょうちひろ(Dr)でのアコースティックライブを“行かずにいられない”心境で行ない、それ以降は以前から繋がりのあるHEREの武田将幸がサポートギタリストとしてツアーに帯同。時にはHEREと9mmの掛け持ちで1日に東京と九州の2ステージを踏むことも。そんな武田の情熱と実力が共有されているせいか、この日はゲストアクトとしてHEREが口火を切ったのだが、ど頭からオーディエンスはフロアにみっちり待機していた。
そこへ卓郎と和彦がMCとして登場。滝の状態を勘案してライブが可能な時間が限られていること、そして「ここまで命がけ出やってきて、今日も命がけでやるんですけど、真っ白になりきれなかったとか思って欲しくないんで、最初から楽しんで欲しいなと思います」と、ファンへのメッセージでもありHEREへの激励でもある言葉とともにHEREを呼び込んだ。
HERE
ド派手な衣装をまとったメンバーに、この日はサポートでハジメタル(Key)と女性ダンスユニット・IN-pishも従えた8人編成。往年のロックスター風の尾形回帰(Vo)の歌謡がかったボーカル、ツインギターと辣腕のリズム隊が醸す大マジなラウドロックやダンスロック。尾形がMCで「今、インディーズシーンで最も米米CLUBに近いバンド、HEREです!」と自己紹介していたが、まさにそれ。音楽性こそ違えど、エンタメ道を極めるためにもメンバーのスキルの高さは必須とばかりに、武田をはじめとにかく巧い。しかも武田と三橋隼人(Gt)のスレンダーで似たルックスが、また華があってフロントに散ってフロアを煽るカタチが美しいほど。ダンサブルな「アモーレアモーレ」ではダンサーやオーディエンスにフロアタムを支えさせて大太鼓よろしく叩きまくる尾形。ラストはフロントの5人が組体操よろしく合体、そして崩壊……笑いとプロレス的な要素を持ち込んだロックバンドといえばいいだろうか。そりゃ楽曲も難しい展開やフレージングも多くなるわけだわ、とこのなんとも形容しがたいエンタメ集団に9mmのファンも拳を突き上げ、大きな歓声で力演を讃えた。
HERE
9mmへの転換中にシンセのサウンドチェックがあるのは当然なのだが、ちょっとワクワクしてしまう。果たして5人編成の9mmって? とステージを凝視するなか、暗転。これまでのざわめき程度のテンションからは想像もつかない歓声と悲鳴が上がる中、ステージが明るくなり現れた巨大なバックドロップにさらにテンションが上がる。オープナーからいきなり「太陽が欲しいだけ」。リードギターは滝がプレイしている。変な話、それだけでグッとくるものがあるのだが、演奏は容赦なくタイトに絞り上げられる限り絞った印象で、まさに弾丸=9mm Parabellum Bullet弾だ。卓郎の「お前の瞳の中にある太陽が欲しいだけ」という、9mmファンの肝を握るキラーフレーズも異様に明瞭に聴こえる。演奏の手中力が半端ないのだ。1曲入魂を120%の熱量で現実に見ることなんてなかなかない体験だ。立て続けに「Supernova」、ギターソロを滝、武田がユニゾンで弾く
9mm Parabellum Bullet
アルバム曲「湖」も鳥肌が立つような集中力。立て続けにテンポの速い3曲がしっかりZepp Tokyoに刻み込まれ、フロアは単に盛り上がるというより、1曲1曲の濃度を受け止めながら応えている。様々なシチュエーションやキャパシティで見てきたつもりだが、この日ほどフロアも引き締まった応酬を展開しているのは珍しいかもしれない。ファンはバンドを映す鏡だが、お互いに真面目な資質が全開している。
「東京! 東京! 今日は来てくれてありがとう。武田くんがサポートしてくれてるのはもちろん分かってると思うけど、今日、ここに立ててるのはみんなのおかげだから」と、今の状況下の9mmのライブに足を運んでくれたファンに最大限の感謝を告げる卓郎。ファンとしては9mmに、そして何より滝に生で会いたい、せめて名前を呼んだりしたい、全快して欲しいという気持ちが溢れているんだと思う。その思いに今できる最大限で応える滝はいつものように暴れることはできないが、その分、確実にプレイし、時には溢れるアイディアでギターとはまた違う音色をシンセで表現する。定位置で弾く滝を見て、逆に動き回っている時に同様にそのプレイができていることに改めて驚いたり、なかなか稀有な体験だ。
そして90秒のあいだ、息を止めて全員がアンサンブルの緩急に神経を研ぎ澄ませる「インフェルノ」の一糸乱れぬ怒涛の音塊、差し込まれるようなかみじょうちひろのツインペダルの破壊力。そしてさらにギアアップが必要なファストな「Kaleidoscope」では、滝のシンセサウンドがイマジネーションを拡張する。シンセサウンドといってもキラキラしたダンスロックのそれとは全く違い、重厚でインダストリアルな、彼のギターサウンド同様、個性的なサウンドだ。
9mm Parabellum Bullet
曲を完遂しては卓郎が話す。話すことによって伝わるものがあるなら話す、最近の彼はそうしたニュートラルなスタンスが顕在化しているが、今回のようなツアーでは、さらに1日1日の大切さや、ライブが開催できていることが決して当たり前でないことについて思いを話してくれることが、結果的にフロアの温かい一体感に繋がっているように思う。太陽が欲しいだけ、なんてタイトルなのにすっきりした晴天にほとんど出会えていないのは、雨にちなんだ楽曲があるからかな?と、笑わせながら、その曲をプレイするかと思いきや「俺らには雨がやむ曲もあるんだよね」と、ラテンフレイバーもある「スタンドバイミー」を披露。武田の完コピぶり、卓郎のボーカルに重ねる滝のコーラス、何もかもが新鮮に響く。
中間部の膨張・収縮がダイナミックな「Lost!!」は、奇妙なエフェクトを使い、武田が滝のプレイを再現しつつ、滝はシンセでそのダイナミックな音像を作り出す。和彦は野音当日からそうだが、いつも以上に激しいアクションをせずにはいられないように映る。別に滝の分まで暴れるという印象ではなく、全員が自分のマキシマムを体現しているに他ならない。メインリフをシンセで表現して歓声が上がった「Black Market Blues」、ファンのハンドクラップの援護射撃もいつも以上にソリッドに決まる。続く「Talking Machine」では、リフを滝が弾き、ダンスを誘発するリズムギターを武田と卓郎が生み出すという組み合わせも。しかしやはり滝が弾くリードは野球でいえば1球目からホームランというか、打力が凄まじい。
そしてラストはここ1、2年の9mmの基調、生き方すら象徴するような「生命のワルツ」のイントロをなんと滝のシンセが! あのマンドリンのような音をシンセでまた別のものとして表現し、そしてあの9mmというモンスターがせり上がってくるような重厚なAメロがこの編成でも分厚く鳴らされる。高速2ビートを涼しい顔をしつつ凄まじい手数で叩くかみじょう、そしてソロを弾ききった武田には、巧さ以上にこの一歩間違うとファンやハコのムードに飲まれることなく、自分と対峙する姿勢が目に止まった。自身も9mmのファンである武田が変に萎縮することなく、ギタリストとして9mmの一部になっていたこと、つまりそれはそのまま9mm Parabellum Bulletの器の大きさでもある。
9mm Parabellum Bullet
そして、来たるファイナルの豊洲PITのゲストは意表を突く、大先輩GRAPEVINE。音楽性の違いや、曲を知らないといった事柄ははっきり言って瑣末なことだ。バンド演奏の最高峰たる2組の対バンがガチなものにならないわけはないのだから。そしてもちろん、9mmが歩みを止めない理由も、イレギュラーな形だからこそ見えてくる部分もきっとある。バンドという長い旅の途中をどうか目撃して欲しい。
取材・文=石角友香
Opening Act:菅原卓郎×田邊駿一(BLUE ENCOUNT)Special Acoustic UNIT
9/19(月・祝) 福岡 DRUM LOGOS [福岡]
Opening Act:菅原卓郎×田邊駿一(BLUE ENCOUNT)Special Acoustic UNIT
9/21(水) 松山 W studio RED [愛媛]
Opening Act:菅原卓郎×稲村太佑(アルカラ)Special Acoustic UNIT
9/22(木・祝) 高松 オリーブホール [香川]
Opening Act:菅原卓郎×稲村太佑(アルカラ)Special Acoustic UNIT
9/30(金) 広島 CLUB QUATTRO [広島]
Opening Act:菅原卓郎×山田将司(THE BACK HORN)Special Acoustic UNIT
10/02(日) 米子 AZTiC laughs [鳥取] ※SOUL OUT
Opening Act:菅原卓郎×村松 拓(Nothing's Carved In Stone)Special Acoustic UNIT
10/08(土) Zepp Sapporo [北海道]
Opening Guest:Wienners
10/10(月・祝) Zepp Tokyo [東京] ※SOLD OUT
Opening Guest:HERE
10/16(日) Zepp Nagoya [愛知]
Opening Guest:THE BOY MEETS GIRLS
10/22(土) 仙台 PIT [宮城]
Opening Guest:My Hair is Bad
10/30(日) Zepp Namba [大阪]
Opening Guest:フレンズ
9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”追加公演
11/5(土)豊洲PIT [東京]
Guest GRAPEVINE
Open 17:00 / Start 18:00
[Ticket]前売 ¥3,800(税込/Drink代別)