「もっとカッコよくなります」進化を続けるバンドの現在地をみた yonige『かたつむりは投げつけないツアー』ハルカミライとの東京公演

レポート
音楽
2016.10.18
yonige photo by MASANORI FUJIKAWA

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yonige presents かたつむりは投げつけないツアー 2016.10.14 高田馬場CLUB PHASE

7月13日にリリースしたミニアルバム『かたつむりになりたい』を引っ提げた『yonige presents かたつむりは投げつけないツアー』。全国18ヵ所をまわったのちにはファイナルシリーズと題して、東京、大阪にてライブが行われる。以下のテキストでは、10月14日に開催されたハルカミライとのツーマンライブとなった東京・高田馬場CLUB PHASE公演の模様をレポート。ツアー中につきセットリストの掲載は省略しているため、10月29日の大阪・寝屋川VINTAGE公演に行く予定の方もぜひ読んでいただければと思う。

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先攻のハルカミライは、積極的な活動が実を結び、ライブハウス界隈では話題を集めているバンド。まだ全国リリースはしていないが、来年にはインディーズレーベル・THE NINTH APPOLOより音源を発表することが決定しているという。4人で息を合わせて一音鳴らしたあと、「yonige、呼んでくれてありがとう! お前だけ、お前だけ、お前だけ! ここにいるお前だけの歌!」と橋本学(Vo)がフロアへ呼びかけ、演奏が始まった。

畳みかけるように連投した冒頭のアッパーチューンもよかったが、中盤に披露されたバラードはヴォーカルの歌の上手さが際立っていたし、同じ呼吸を共有しながら歌うように演奏するバンドのアンサンブルは胸に響くものがある。現場で鍛え上げられたバンドというだけあって、単に勢い任せなわけではなく、音の中身がしっかりと詰まっているのだ。そんななか、「まだまだいける!俺らは歌える!ここはどこだ、ライブハウス、俺らが真ん中だ!」と橋本が叫んでいたのが強く印象に残っている。普段どんな生活を送っていたとしても、悲しみや苦しさ、孤独感や閉塞感を抱いていたとしても、今この瞬間はここが世界のど真ん中。こうやってロックバンドのロマンを信じているバンドを観ると、フロアから突き上がる拳の数がこれからもっと増えていくだろうなあとか、少し未来の景色をつい想像したくなってしまうし、どうしたってワクワクしてしまうものだ。

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yonigeよりカッコいいロックバンド、八王子・ハルカミライでした!」と彼らなりの言葉で感謝を伝えてからハルカミライがステージを去った数分後、いよいよyonigeの登場。「大阪・寝屋川のyonigeです。よろしく!」と挨拶してから演奏を始めると、最後の音が鳴らされるその瞬間まで、1曲1曲をまっすぐに届けていく彼女たちである。MCで熱いことを語り始めることもなく、無理にドラマティックなライブにしようとしているわけでもない。「いい演奏を届けられればそれ以外には何も要らない」と言わんばかりの、何にも媚びない潔さがひたすらに痛快だった。

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それができるのは、日常における感情の軋みだけに焦点を当てた曲を彼女たちが鳴らし続けてきたからだろうし、曲の密度が高いからそれを鳴らすだけでいい、ということなんだと思う。自分の武器をしっかり把握していて、その研磨に徹しているところがこのバンドのすごさ。そういうふうにして「軽やかに感情を揺さぶる」というこのバンド特有のサウンドは形成されていくのだ。

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五線譜の上を激しく上下するごっきん(B・Cho)のベースラインとサポートドラマーによるサウンドはセットリスト終盤に差し掛かるほど厚みを増していくが、それを飛び越えるように牛丸ありさ(Vo・G)があのハスキーボイスを放つ。3ピースが生み出す相乗効果が、聴き手の昂揚感を引き出していったのは言うまでもないだろう。序盤は少々固かったオーディエンスも、セットリストが進んでいくにつれ、自由に身体を揺らすようになった。

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「自分が主人公のライブに慣れてなくて……みんながキラキラした目でこっちを見るわけじゃないですか。だからどんなライブをしたらいいんだろうってドキドキしてました」と率直に語りながらも、一呼吸ついてから「私も楽しもう!」と言っていた牛丸。今回のツアーはソールドアウトが出るほどの勢いだったというし、yonigeの音楽を求めるファンが増えつつある現状を目の当たりにしてきっと彼女たちも思うことがあるのかもしれない。牛丸自身が「もっとカッコよくなりますので、またどこかのライブハウスで会いましょう」と言っていたとおり、彼女たちはこれから何度も進化を重ねていくことだろう。

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このツアーを終えたあと、彼女たちはどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか。成長期真っ只中のバンドの片鱗を目撃することができた、貴重な一夜だった。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=MASANORI FUJIKAWA

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