森 悠子(長岡京室内アンサンブル音楽監督/ヴァイオリン)~メンバー全員が「気」を感じあって弾いているんです
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森 悠子
メンバー全員が「気」を感じあって弾いているんです ヴァイオリニストの森悠子率いる長岡京室内アンサンブルが結成20年を迎え、宝塚、長岡京、松江、東京を巡るツアーを行う。曲は、チャイコフスキーの「弦楽セレナード」、ヴィヴァルディの「四季」、グリーグの「ホルベルク組曲」。
「曲目はオーソドックスですが、毎回、新しいことに挑戦して、今までどおりということはまずありません。演奏するたびに違うのです。2014年に東京文化会館でヴィヴァルディの〈春〉を演奏したときには、通奏低音にタンブリンを入れて、大きな反響がありました。私は演奏で“安定”してしまうことは罪だと思います。不安定の中から音楽をつくり上げる方が楽しい。だから私は練習の際に音楽づくりをあえて仕上げません。仕上げるのは本番だけ」
独自のアンサンブルを生み出す秘訣について。
「私はこのアンサンブルを若いメンバーにとっての修行の場としてやってきました。塾のようなものですね。私は弾き振りをしているのではありません。メンバー全員が同等なんです。自主性が大切なんですね。指揮者がいなくても、お互いが見えなくても、『気(呼吸)』を感じあってアンサンブルを行っています。『気』の感覚って日本人ならわかるのです。今回の『四季』も新しい演奏になると思います。プログラムに『ホルベルク』を加えましたが、『ホルベルク』はもともとピアノ曲。聴いたことのない『ホルベルク』をやりたいですね」
20年のなかで特に印象に残っている曲や演奏会とは。
「ヒナステラの『弦楽合奏のための協奏曲』ですね。難曲中の難曲で、指揮者なしでは不可能と思っていました。でも凄い演奏ができました。2度と弾けないでしょうね。それから、2013年の東京・春・音楽祭のバレエ公演で、東京文化会館の舞台に3メートルの櫓を立てて、その上でストラヴィンスキーの『ミューズを率いるアポロ』を弾いたこと。まるで夜空から音楽が降り注ぐような光景だったと思います。16歳の頃からの夢が何十年も経って実現したのです。フランスでは、ナントのラ・フォル・ジュルネにも出演しましたし、お菓子の名前の語源であるサブレという街でも演奏会をしました。シカゴでは、フランク・ロイド・ライト設計によるユニティ・テンプルで弾いたことが忘れられません」
20周年を越えて、長岡京室内アンサンブルの活動は発展を続ける。
「来年2月には、大阪と京都で、高木和弘さんのソロでメンデルスゾーンのニ短調のヴァイオリン協奏曲を演奏します。私の最後の夢は、モーツァルトの初期の交響曲です。指揮者なしでもできる初期の交響曲をオーボエとホルンも加えて本気でやりたい」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
問合せ:ヒラサ・オフィス03-5429-2399/音楽への道 CEM 075-351-5004
http://www.musiccem.org
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