ダンサーを通り越したエンターテイナーたちの新たな挑戦の舞台! 『BOLERO』東山義久・風花舞・星奈優里・原田薫 座談会
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東山義久、原田薫、星奈優里、風花舞
2013年のシリーズ第1作に続き、第2作Entertainment Dance Performance Show『BOLERO 2016 -モザイクの夢-』が、11月2日から6日まで銀河劇場で上演される。BOLERO シリーズを熱い思いで立ち上げた東山義久と、初参加の風花舞、星奈優里、振付も担当する原田薫の4人の楽しく熱い座談会を、稽古場写真とともにお届けする。
東山義久、原田薫、星奈優里、風花舞
■ BAR BOLEROに集まる人々の人間模様
──東山さんは女性メンバーの皆さんにどんなことを期待していますか?
東山 星奈さんとは『シェルブールの雨傘』『CLUB SEVEN』に続いて3回目の共演です。宝塚を卒業されてからも精力的にダンス公演にも出演されているんだなと拝見していました。今回は、風花舞さん、星奈さん、原田さんと、辻本(知彦)くん、島地(保武)くん、僕の6人が中心メンバーで、星奈さんは僕の相手役と言いますか。
星奈 関係が濃いというか、関わり合うことが多いんです。
東山 この作品は、お互いの夢や、超えていけない壁がテーマ。BAR BOLEROに集まってくる人々の人間模様が色々と交錯していきます。それぞれがそれぞれの壁を乗り越えるために助けてくれたり、助けなかったり…という感じです。僕の役どころは人を愛すことが出来なくなっていて、「好きな人をなくすことが怖いから」という壁があり、「好きな人を得て一緒に暮らしたい」という夢がある。その僕の相手役「Y」が星奈さんです。
──「Y」という役名なのですか?
東山 女性メンバーの役名は名前のイニシャルで、星奈さんが「Y」、風花さんが「M」、原田さんが「K」です。星奈さんとは何年ぶりかに共演させて頂くので、緊張していたんですが、僕にとってのキーパーソンのひとりなんです。普段、僕はあまり女性と組んで踊ることがないので、そこは少しリードしてもらいながら(笑)。
──星奈さんがリードするのですか!?
星奈 しません(笑)。無理です(笑)。
東山 女性だから細いし、力がないから、乱暴になってしまうんじゃないかと心配ですが、優しくできるように頑張ります。
星奈 振り回していただけるように頑張ります。
東山 風花さんとも3回目の共演です。『CLUB SEVEN』と『夏の夜のロミオとジュリエット』以来、本当に久しぶりで、10年近く経つんじゃないでしょうか。風花さんは全部出来るんですよね。
風花 え!?
東山 歌も、お芝居も。そのなかでもダンスに特化している方なのかなと思っています。『CLUB SEVEN』のときも、妖怪と町娘のような役で。
風花 ロミジュリのような悲恋だったんですよ。
東山 結ばれないという役が多かったですね。
──今回はどんな?
風花 全く関係がない…。
全員 (笑)。
東山 関係がないことはないんだけれどね(笑)。お花畑が咲いているような感じの役なんですよ。
風花 私自身が誰とも関係がない役なんですよ。一応恋人はいて、相手役は島地さんなのですが、私は違う世界に生きているので、本当に他の人のことを見ていないですし、自分のことだけを考えていていい役なんです。
東山 風花さんはご自分で教えもされていたり、精力的に色々なことを、舞台人ではないところでもされていると伺っています。稽古場で見ても、僕がいうのも恐縮ですが、お上手になっていて、すごくラインが美しくて。まだ成長されるんだと刺激を受けています。
風花 ありがとうございます。
東山 薫さんとはダンスを始めた頃からの付き合いですよね。23歳だったかな、『DECADANCE』でご一緒しました。今回振付で入ってくれる木下菜津子さんとふたりで銀河劇場の上手袖に体育座りをして、薫さんとYOUYAさんがふたりで「ハバネラ」を踊るのを見ていたんです。あれから共演はしていなかったですよね?
原田 そうですね。
東山 その後、『DANCE SYMPHONY』という企画があり、ほぼ毎回参加して頂きました。僕のソロの振付をして頂いたりしましたね。前回の『BOLERO』でも最後の大団円のところのBOLEROの振付をしてくださいました。振付としての関わりはたくさんあったのですが、今回まさか一緒にやらせて頂けるとは思っていなかったので、頼もしいというか、大丈夫だなと思っています。
──満を持してという感じですね。
東山 そうですね!また勉強させて頂いています。
原田 いやいやいや……。
東山 すごく楽しみにしています。
■ どちらかというといつもとは逆の役
──前回の『BOLERO』は皆さんご覧になっていますか?
原田 私は振付で入らせて頂きました。
風花・星奈 残念ながら拝見していないんです。
──今回キャストとして参加されてどんな印象を持っていますか?
原田 前回とは全く違う作品になっています。それぞれに役があり、風花さん、星奈さんとは、振付で関わったことはあるんですが、共演させて頂くのははじめてです。色んな曲や役で踊っていらっしゃるのを拝見していましたが、台本を見て、すごくぴったりの役だなと思いました。演出の小林(香)さんもおふたりのことを思って書いた役なんだろうなと思います。 風花さんが、最初のナンバーのときに、居方がもうすでにその役になりきっていて本当にびっくりして!
全員 (笑)。
星奈 いっちゃってるのね(笑)。
原田 座っている姿が、もう完全に入りきっちゃってるなって。ぴったりだなと思いました。星奈さんは、いつもは組んで踊るときも、一歩引いて踊っていらっしゃる感じで、今回の役は逆。新しい感じが見れるんじゃないかなと。
星奈 そうですね。今までにはあまりなかったかもしれないですね。(小林)香さんが「やったことないですよね」という楽しそうな目で見てくるんですよ。どういう風に仕上がるだろうかと楽しみです。
風花 私は台本を読んだときにこれは大変だと思いました。妄想の国でずっと生きていたいという心疾患を煩っている役なんです。ところが、私自身が目の前の現実をみて、常にその先を考えて生きるようなタイプなんです(笑)。
全員 (笑)。
風花 だから「しまった!この気持ちが理解できない」って。(星奈さんに)「ね!?」
星奈 私に振られても(笑)。今まででも一緒に出ることが多かったですが、確かにいつもはどちらかというと、逆の役が多いよね。
風花 求められるのが逆だよね。私が強くて、ゆりちゃん(星奈)がふわっとしてる。
星奈 最初は逆にしようと言っていても、作っているうちに結局そうなってしまうことが多かったですね。
風花 香さんがそれを変えてくださろうとしていて、「実は内面は逆なのではないか」とおっしゃって。でも、私の内面とは違うしどうしようと…。今まで自分の意志をすごく強く持っている人や、意思を見せる役柄ばかりやってきたので、出さないという人の感情の切り替えが難しくて。ダンスのダメ出しではなく、芝居のダメだしばかりされています。「その目の動きはそうじゃなくて」「入っていく感じがそうではなくて」とか、自分が思っていることと真逆のことを言われるので、真逆でやればいいのかと。もう、すごく頑張っているんです。
全員 (笑)。
原田 私は素晴らしいと思って感心しました。
風花 ダンス公演なのに、全然踊りのことを考えられないです(苦笑)。役柄で踊らないといけないので、同じ振りを踊っても、同じように踊る人は多分いない。そこが確立しないといけないですね。きちんと自分の内面を自分でわかっていないと、いつもの踊りになってしまうなと。
──また強い方に行ってしまう?
風花 そうなんです。だから、振りもちゃんとやらなければいけないんですが、私の今回の仕事は、内面を振りに通せるようにしたいと思っています。
──いつもと反対の役柄という点で、星奈さんはうまくいっていますか?
東山 ダメ出しで「人が良さげ、おおらかすぎる」と言われてましたよね。
星奈 「元々の雰囲気がおおらかな感じなので、もうちょっと違う方向で」と、絶妙なタイミングで言われて、しばらく笑いが止まらなかったんです。さすが演出家、すごいところに来るなと思いました。すぐに東山さんに言ったら大爆笑して(笑)。
──東山さんは感じていましたか?
東山 (笑)。
星奈 「不思議ちゃんやもんな」と(笑)。
東山 まだ作りながらやっている最中だから、振りも覚えなければいけないですし、役のことはとりあえず家に帰って…と思ったりするじゃないですか。とりあえずスケッチで動きだけ作ろうよという風にやるのかなと思っていたら、同時進行でやらなければいけなくて。結局そういう風にやらないと、スケッチも作れないんですよね。自分もダンス公演をやっているつもりはなかったんですが、歌と芝居がないということではどちらかというとダンス公演だという感覚でしたが、僕らが作りたい、目指したいものは違ったなと。前回の『BOLERO』とも違いますね。
■ スペインの女性になってしまった!
──原田さんはどういう役ですか?
原田 ジプシーで、3姉弟の長女です。一番下の弟が病気で、今にも死にそうな弟を抱え、その弟の手術代を稼ぐために踊っているんです。
──上の弟は?
原田 元気です!
全員 (爆笑)。
東山 ピンピンしてます!稽古場で一番ピンピンしてます(笑)。
──それはどなたがされるんですか?
原田 辻本くん。
──病気の方は?
原田 (長澤)風海くんですね。
──なるほど。とてもイメージが湧きました。
原田 私たちは姉弟の絆がテーマになっています。
──ジプシーで踊っているというのは、BAR BOLEROで踊っていて、集った皆さんがご覧になっているんですね?
原田 そうです。でも、なかなか相手にされないんですよね。ジプシーは下の下の人間なので。
東山 普段はトップオブトップでいらっしゃいます。そのギャップは女優心をくすぐるんじゃない?
原田 もう必死ですよ!
風花 ちょっとスカートをさばいただけで、後ろに背景が見えるというか。
東山 スペインの女性になってしまってます。
──『FLAMENCO CAFE DEL GATO』から続いていますね。
原田 役に立ったかなと思います。
■ 男性ダンサーは本当に美しい
──お話を伺っていて、皆さんがリスペクトし合っていると感じますが、今回ご一緒されるにあたって、特に楽しみにしていることや、期待していることはありますか?
星奈 稽古場で見ているだけで楽しくてワクワクします。自分が出ているシーンでも、他の人が動いている空気感や躍動感がものすごいなと。DIAMOND☆DOGSの公演でも拝見しているんですが、客席でみるのと、稽古場で空気を感じるのは全然違いますね。お客様にもあの空気感を感じて頂けるだろうなと。すごく楽しいです。
原田 ダンス公演ですが、お芝居がメインになっていて、それぞれの役柄があるので、同じ躍りでもそれぞれの役を通して踊ると、全く違う踊り方になってくるだろうし、どうやって色づけされていくのかすごく楽しみです。振りがついてから気持ちと擦り合わせる作業も出てきて、ナンバーが出来上がってから、そこからの色づけが大変な作業になってくると思いますので、皆さんがどういう風に作っていくのか楽しみですね。相手によって変わることもあるでしょうし、皆で作っていけたらと思います。
風花 場面ごとにはそのつもりでやっていても、最後までやってみるとがらっと変わる部分が自分の中にも、皆さんとやる中にもあると思います。練り直す作業が楽しみですね。今回初めてご一緒させて頂く方も多くて、辻本さんと島地さんが2人でずっと踊っているんですよ。組体操みたいな感じでずーっと何かしているんです。なぜずっと動いているのか聞いてみたら、辻本さんが「動きのなかで新たな、誰もやったことがない体の動きが見えたりする」と。ただ遊んでいるんじゃないんだなと。
全員 (笑)。
風花 ずっと見ていようと思って。そういうことをやってきた経験がないんですね。宝塚は時間も決められていますし、振りもすべて先生方が作って、この時間で覚えてという感じなので。時間がないから直しもしない。でも、ちゃんとパターンがあるから、完璧に一度で出来てしまうんです。オリジナルで一からいろんなジャンルの方が集まったカンパニーでは、一度やってみたけれどこっちの方がいいということもたくさんあるので、そういう時間が持てるのもすごく楽しいなと思います。宝塚には宝塚の良さと、作っていくシステムの素晴らしさがありますが、外に出てみるとまた違った稽古場が見れるというのも、すごく楽しいです。
──星奈さんはそういう感覚ありますか?
星奈 感じますね。音も私たちは決まった音のなかでやるのですが、伸ばそう、縮めよう、新しいものを加えようとする。さらに、もしかしたら踊っていて、ここにいるはずの人がいないかもしれないという事態とか、考えられないんですけれど自由だなと。自分は小心者だから、同じように出来る気はしないのですが、自由っていいなと思いながら、そういう人を見ているだけで自分も自由になれそうな気がして楽しいです。美しい動物たちみたいだなと思って見ています。私は女性とばかり踊ることが多いですが、今回、男の人って美しいなと思いました。筋肉や呼吸などが綺麗だなと。日常生活で男の人の美しさを再認識することってあまりないので、やっぱり男性ダンサーは本当に美しいなと。その美しい動物たちが、まるでお互いの匂いを嗅ぎ合うかのようにどんどん変化していくのが、すごく面白いです。
──今のお話を聞いて、東山さんいかがですか?
東山 僕のことじゃないと思いますが…。
星奈 僕のことですよ!
全員 (笑)。
東山 今回は色々な面がありまして、もちろん1回目に初めてやった『BOLERO』もすごく大変な作品でしたが、2回目を出来るという喜びと挑戦があります。DIAMOND☆DOGSが今年で丸14年経つんですが、森新吾が振付にも参加してくれたり、今のメンバーもひとり参加していたり、ずっと大事にしている(長澤)風海が参加していたり。島地とも知彦ともダンスをやっていたからまた集まれました。あの2人もじゃれ合っているけれど、今までやってきたことを、お互いがお互いを観察し合っているというか。僕はダンスの他にお芝居や歌を好きでやっていたんですが、自分の表現の手段としてはダンスが一番早く失われていくであろう言語だと思っていて、毎回最後かもしれないと思いながらやっています。でも、色んなことがあっても、色んなことを与えてくれているのがダンスだなと思うと、ダンスをやっていて良かったと思います。この舞台のリハーサルで、他のメンバーがバーレッスンしてたり、ストレッチしたり、走り回っているのを見ていて、誰ひとり欠ける人がいてもこの舞台がなかったと思うと本当に嬉しい。アンサンブルがいなくて皆で作る公演ってあまりないんですよね。普通は演者とクリエイターに別れています。具現するために踊りや芝居をやるという意味では、その方が今のオーソドックスな形だと思うんですが、今回の『BOLERO』に関しては、それぞれのキャストが振付もしますし、それぞれがその動きは僕の役では出来ないとか考えるんです。そういうダンサーってあまりいないじゃないですか? 皆さんがダンサーを通り越したエンターテイナーとして、パフォーマーとしてここに集ってくれている。皆の挑戦に毎回のリハーサルが不安でドキドキしますが、終わった後に「やった!」と感動しています。香さんを筆頭とした『BOLERO 2016 -モザイクの夢-』という作品で、リハーサルで日々受けている感動を、お客さんに届けられるんじゃないかと思います。
■ BOLEROカンパニーの礎にしなければ
──最後に、この作品で挑戦したいことをお聞かせください。
星奈 すべてですね。ダンスも、お芝居でも新しい私が出てくるといいなと思いますし、自分でも見たことがない自分を出したいと思います。
風花 今回、皆に役があり、その人の夢とそれを乗り越えるための壁を持っているんですが、私の役が担っているのは「何が幸せかというのはその人にしかわからない」という。端から見たらおかしい人なんですが、根本的には多分一番幸せな人だなと思っています。そういう役の持っているものを、言葉がないから伝えるのが難しいなと思うんですね。言葉がないから伝えやすいこともあるけれど、結構複雑なので、見る方がこういう情報を知らないで見にきたら、どこまで伝えられるのだろうかと思うと、ある程度わかりやすく、底辺はちゃんと伝えなければいけないと思っています。それをいかにお客様に伝えられるのかが挑戦。特にひとりでいることが多く、いつもはあまり困ることがないので、壁ですね。
星奈 私もよくわかります(笑)。
原田 今回出演と振付をさせて頂きますが、踊り手としては、テーマがなく音で普通に踊るよりは、テーマや役があって踊る方が好きなので、すごく楽しみでしかたないです。振付に関しては、香さんの台本が難しくて、それをどう表現するのか色々考えながら、いいものが出るのを願うだけです。
東山 こうやって4人でお話して、それぞれの思いを聞けたのが良かったです。今までのダンサーとしての時間も濃かったと思いますし、ミュージカル俳優としての時間も濃かったと思います。本当にすべてのことをやりきってきたプロフェッショナルな方々が集まっていると思うので、僕も広く浅く色んなことをやってきましたが、演者としての経験をフル動員して向っていきたいです。ダンスだけの公演がなかなかないというのが、BOLEROを作ったきっかけでしたが、他のダンサーメンバーから「次は俺が作る」という声が中からも外からも出てくるように、僕たちがやってきた2回が、3回、4回と続けるようなBOLEROカンパニーの礎にしなければと思っています。DIAMOND☆DOGSを14年間やってきたことの力や我慢強さなど、色んなことを動員して、絶対に成功させようと思っています。
(取材・文・撮影/岩村美佳)
『BOLERO 2016-モザイクの夢-』
■出演◇東山義久/辻本知彦、島地保武/穴井豪、橋田康、神谷直樹、田極翼、長澤風海、中塚皓平、畠山翔太 、NAOKI/風花舞、星奈優里/原田薫/Shiho(Fried pride)
■11/2~6◎銀河劇場
〈料金〉S席9.000円 A席6.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉公演事務局 03-3492-5300(平日14:00~18:00)
■公式サイト:http://www.gingeki.jp/archives/2910