水野美紀が脚本・演出も手掛けるプロペラ犬『珍渦虫』観劇レポート
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プロペラ犬第7回公演『珍渦虫(ちんうずむし)』
プロペラ犬第7回公演『珍渦虫(ちんうずむし)』が、下北沢のザ・スズナリにて11月8日(火)まで上演されている。プロペラ犬とは、女優の水野美紀が主宰する劇団ユニットで、2007年に旗揚げ。本作では、水野自身が演出に加え、劇団居酒屋ベースボールのえのもとぐりむと共に脚本も手掛けている(脚本は連行おい名義)。
出演者には、水野の他、ノゾエ征爾(はえぎわ)、伊藤修子(拙者ムニエル)、猪塚健太(劇団プレステージ)、福永マリカ、井内ミワク(はえぎわ)、福澤重文(かくたすのいるところ)、宮下貴浩、米村拓彰、平竜、坊屋たいとが名を連ねた。
プロペラ犬第7回公演『珍渦虫(ちんうずむし)』
ライトノベル作家の桐生たくみ(ノゾエ)は、本名も素性も明かさない謎に包まれた作家。その実態は、引きこもりの清水太郎だった。桐生は、引きこもりのヒーロー・影山たぎり(猪塚)と恋人のうずみ(福永)のラブストーリーを描いた「影山たぎりインサイドハウス」で人気を博す。しかし、ある時から桐生はスランプに悩まされていた。桐生の才能を見出した編集者・沼袋ふみこ(水野)はなんとか物語を完結まで書かせようと、新人編集者・吉川麗子(伊藤)を伴い彼の元を訪れるが・・・。
自身も演出家として活躍するノゾエは、内向的な青年を絶妙な間合いで表現。そんなノゾエと出会う伊藤は、青年の心の中にぐいぐいと入り込んでいく。いたって普通の台詞も、伊藤が口にするだけでおもしろく感じてしまうのだから、これはすごい才能だ。二人のやりとりは観客を笑いの渦に巻き込んでいくが、その明るさに照らされるように、引きこもり青年の心の闇が浮かび上がってくる。
プロペラ犬第7回公演『珍渦虫(ちんうずむし)』
一方で、猪塚の演じる物語の中のヒーローは、格好良さが突き抜けている。同じく、ヒロインを演じる福永も清々しいほどの振りきれっぷり。コミカルという概念の枠を大幅にはみ出た二人のキャラクターは必見だ。また、水野は作中で数役を演じ分け、熱演している。演出面では歌やダンスが物語にアクセントを付けていたほか、“スズナリ”という空間を駆使した映像演出が光った。
本作のタイトルで“珍渦虫”という生き物の名前を初めて知った。それは、深海に人知れず存在している謎の生物の名前だそうだ。水野は、その秘めた存在に人間の心の奥に潜むトラウマをなぞらえて、この物語を創ったという。冒頭から繰り広げられる一見何の関係もないように見える事柄が、物語の核心が徐々に明らかになるにつれ、一筋の光となっていく。その光は、きっと物語の中だけでなく、観る者の心の奥にもほのかな明かりを届けてくれるだろう。
プロペラ犬第7回公演『珍渦虫(ちんうずむし)』
プロペラ犬 第7回公演『珍渦虫』は、11月8日(火)までザ・スズナリにて上演。
■会場:下北沢 ザ・スズナリ
■作:連行おい/えのもとぐりむ
■演出:水野美紀
■出演
ノゾエ征爾(はえぎわ)
伊藤修子(拙者ムニエル)
猪塚健太(劇団プレステージ)
福永マリカ
井内ミワク (はえぎわ)
水野美紀
福澤重文(かくたすのいるところ)
宮下貴浩
米村拓彰
平竜
坊屋たいと
■プロペラ犬『珍渦虫』特設WEBサイト:http://www.pragmax.co.jp/propeller/