衝撃の作品とツアーを終えたばかりのandrop、この一年と現在地、この先に見るものは

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androp 撮影=西槇太一

androp 撮影=西槇太一

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前回のインタビュー取材から間もなく1年。image worldの立ち上げ、キャリアを振り返るようなセットリストでのツアー、ベスト盤のリリース――表には見えづらかった部分もあるものの、彼らは精力的に動いていた。そして新たな環境から世に放たれた、これまでの作品とは全く異なる表情を見せる意欲作『blue』。2016年はandropにとって大きな変革をもたらす一年となった。
『"best blueprint"』ツアーを終えたばかりのタイミングで、4人全員から話を訊いた今回のインタビューは、今の、そしてこれからのandropを語る上で必読の内容となった。7年間で築き上げた土台の上で、彼らが表現するものとその真意に触れてみてほしい。

──andropにとって大きな出来事が多く、ターニングポイントになったであろう2016年についてお聞きしていこうと思っているんですが、まず、3月にimage worldの立ち上げを発表されました。設立以前/以降では、やはり大きな変化はありましたか?

内澤崇仁:去年の年末から音楽以外のこともやりつつ、もちろん音楽もやりつつという感じだったので、実際には立ち上げてからガラっと変わったわけでもないんですよ。今もそうですが、いろんな方の力をお借りしつつ、徐々にいろんなことをやりはじめている状況なので、まだまだ足りていないところはあるんですけど、立ち上げを表明してからは、より気持ちが強くなった感じはしますね。

佐藤拓也:立ち上げてみて、僕らの周りに応援してくれるいろんな人達がいるんだっていうのを改めて感じましたし、僕らはこんなことも知らずに音楽をしていたんだって思い知らされたというか。でも逆に言えば、今まで目を向けていなかったところに目を向けることができたし、それを知ることができたと思っていて。今はあれもやりたい、これもやりたいっていういろんな想いがあるんですよ。それを徐々にやっていけたらいいなと思ってますね。

前田恭介:僕としては、最近やっと地に足がついた感じがします。今まではふわふわしてたし、大きくなるにつれて目の届かないところは増えていくものだと思うんですけど、でも今はその贅肉を落として、なるべく自分達が納得のいく形ですべてのことに関わっていこうという気持ちが強くなってきていて。そこはライブのステージングとかにも出ていると思うし、これから作る作品や、インタビューの発言にも意味が生まれてくるんじゃないかっていうことをすごく実感した日々でしたね。

伊藤彬彦:音楽以外のことに目を向けることによって、より自分達の音楽を研ぎすましていかなきゃいけない気持ちがさらに強くなりましたね。今、身近にいるスタッフの人達って、もちろんお仕事としてこちらがお願いしていることもあるんですけど、気持ちでやってくれている方も多いんですよ。それはandropの音楽を応援してくれているから協力してくれるわけであって。だからこそ、僕らは音楽家としてもっと成長していかなきゃいけないなって思いました。

──僕個人としては、そういったDIY精神のある活動はすごくいいことだと思うんですけど、音楽だけやれる環境にいるのになんでわざわざ大変なことをするんだろうって思う人もいらっしゃると思うんですよ。

内澤:そうですよね。僕らは元々そうだったんですよ。自分達がかっこいいと思う音楽、納得出来る音楽ができれば、周りなんてどうだっていいじゃないかって思っていたタイプだったんですけど。でも、そうじゃなかったんですよね。突き詰めれば突き詰めていくほど、やっぱり音楽って人なんだなって思うようになって。自分の成長とか、自分が得た知識とか、いろんな考えを巡らせたものがすべて音楽に変わっていく。それを実感しながら音楽をしていたから、ただ音楽をしているだけでは、自分達が目指したい音楽には辿り着けないなと思って。

──目指したい音楽というと?

内澤:やっぱり人に感動を与えたいということ。それに、新しい音楽を模索してトライしていきたいんですよね。そのためにも、音楽以外のこともやらないといけないなと思った。逆に言えば、僕が今思うのは、音楽だけやっているアーティストはかわいそうだなって思います。それしかさせてもらえていないっていうのは。もちろんいろんな在り方があるとは思いますけど。

──設立するにあたってリスキーな部分もあるわけですけど、そこに怖さとかはありましたか?

内澤:だいぶ怖かったです。でも、その怖さよりもやる意味があるなと思って。

佐藤:4人でそういう話をしているときも、やめといたほうがいいんじゃない?っていう空気はまったくなくて、全員がやる方向でしか話をしていなかったんですよね。内澤くんも「自分達がワクワクする方向に突き進むほうが俺は楽しいし、自分達がワクワクしていなかったら、他の人達を感動させることなんて絶対にできない」って言ってて。

前田:僕らとしては、うまくいけば当然嬉しいけど、そこで転ばないと学べないし。わかんないんですよ、誰かに「こうなるよ?」って言われても、そこで実際に転んで痛い!って思わないとわかんなくて。

androp・内澤崇仁 撮影=西槇太一

androp・内澤崇仁 撮影=西槇太一

内澤:頭では理解しててもね。

前田:そう。自分で感じてみないとわかんない。だけど、その痛みを知るとそこにリアルが生まれて、表現が変わってくると思うから、そういう風に4人でやっていこうっていう決断ができたのはよかったです。リスクを背負ってやる覚悟を自分達で持って音楽をすることは、アーティストとしてすごく大きなことなんじゃないかなって感じます。

伊藤:最近、長い期間活動しているバンドの先輩たちと対バンでご一緒させてもらう機会が多くて、長く続いているのはどうしてか?っていう話をしたんですよ。それを言葉にしている人も、言葉にせずとも見ていてわかる人もいたんですけど、やっぱりなにがあってもメンバー全員が同じことを考えているんですよね。それがメジャーだろうがインディーズだろうが、形はどうであれ、結局バンドが固まっていれば続いていくんだなって。

──活動するうえで大事なことだし、今まさにそうやって活動できていると。そして、7月にはベストアルバム『best[and/drop]』をリリースされました。7年間という濃密な期間で作り上げてきた楽曲の中から、30曲に絞るというのはやはり大変でしたか?

内澤:相当悩みましたね。メンバーはもちろんだけど、これまで関わってくれていたスタッフも交えて話し合ってたんですよ。それぞれが自分の入れたい曲を考えてきて。

佐藤:ギリッギリまでやってましたからね。最初は34曲にする?っていう話もあったんですけど。

内澤:それならいける!っていう(笑)。

前田:自分が出した20〜30曲に関しては悩まなかったし、まぁこれは入るだろうっていう曲はだいたいみんな一緒だったんですけど、残りの曲をどうするか?っていうすりあわせが大変で。

内澤:それぞれが入れたい曲をプレゼンしていったんですよ。

佐藤:これだけは譲れねえ!みたいな。

伊藤:僕はわりと速攻で引っ込めましたけどね(一同笑)。元々、ベスト盤に入らなそうな、ちょっとひねくれた曲を入れたいなって思っていたので、「やっぱりね!」って。でも、みんなの中で一回陽の目をみたから良いかぁと(笑)。

佐藤:俺の気持ちは伝わったからいいか、みたいな(笑)。でも、ポジティブな議論だったから楽しかったですね。

内澤:そうだね。それは入れたくない!っていう感じではなかったからね(笑)。僕としては、そのときに初めて「この曲にそこまで思い入れがあったんだ!?」っていうのを知れたから、驚きと嬉しさがありましたね。

androp・佐藤拓也 撮影=西槇太一

androp・佐藤拓也 撮影=西槇太一

──たしかに延々ラブコールをされているような感覚でしょう(笑)。あと、ベストアルバムには「Hana」「Sayonara」という活動初期に生まれた未発表曲を収録されてますね。

内澤:ずっと今まで温めていたというか、出す機会をうかがっていた2曲なんですよ。だから、逆に言ったらこのタイミングで出さなくてどうするんだ?っていう。むしろ、ベストに入れるために眠っていたのかなって思うぐらい。

佐藤:来るべきタイミングが来たんだなっていう感じでしたね。

内澤:曲のメッセージとしても狙っていたかのような感じがあって。特に「Hana」は、別に周りから拍手されなくたって、それを自分がやりたいのであればやるべきだっていうことを歌っているんですけど、この曲は7年前に作ってるんです。それが、これからimage worldという場所から一歩ずつ進んでいく、もしかしたら失敗するかもしれないけど、それでもいいじゃないかっていう今の自分達の気持ちと重なっていたから、タイミング的にも気持ち的にもぴったりでしたね。

──運命めいたものがありますね。そして、10月にはニューアルバム『blue』をリリースされましたが、これが明らかに新たな挑戦をした1枚になっていて。端的に言ってしまうと、暗くて、重くて、息苦しささえある作品になっていたわけですが。

内澤:これまで活動を続けてきたなかで、自分達は音楽で「光」とか「希望」を描いてきたんですよ。それはなぜかというと、やっぱり音楽ってつらいときとか悲しいときに救ってくれたり、なにかにチャレンジしようと思っているときにポンと背中を押してくれたりする力があって。僕はそうやって音楽に何度も救われてきたし、音楽のそういう絶対的な力を信じてるんですよ。だったら、我々の鳴らす音楽も、聴く人にとってそういうものであってほしいと思ったから、光と希望を鳴らしていたんですけど。

──なるほど。

内澤:でも、7年間活動してきて、より聴き手に対してもっと強い光を感じてもらいたいし、それを表現したいという想いがあって。そのためにはどうすればいいのかを考えたときに、今までのようにただ光や希望を描くだけじゃなくて、光の真逆にある闇であったり、絶望的な世界を強烈に描くことによって、衝撃を与えられるんじゃないかと。
もしかしたら、これを聴いて「俺はそうは思わない」とか「これは間違っている」と思う人もいるかもしれないけど、そうやっていろんな考えを巡らした中でその人の心に宿ったものが、その人にとっての希望に向かう光であったり、そのキッカケになるんじゃないかなと。それでおもいっきり闇を描いてみました。

──作品のコンセプトはいつ頃決めたんですか?

佐藤:なんとなく世間話をしながら、次に何を作る?っていう話はずっとしてたんですよ。そのなかで曲も作っていたんですけど、当初はもう少し明るいものを入れる予定だったんです。でも、作っていく過程で、闇の度合いというか、深さがどんどん深まっていって。であれば、もっと振り切ったものにしようっていう流れでしたね。

──闇を描くことで、精神的にそっちの方に引っ張られたりとかは?

内澤:僕はなかったですね。そもそも僕はそっち寄りというか、明るい人間ではないんですよ。だからこそ光や希望が眩しく見えて、憧れ的なものとして描けていたところもあったんですけど。だから、今まではネガティブなものをポジティブに変換する行為をしていたんですけど、今回はそれをあんまりしていない感じなんです。無理矢理闇に寄せたという感じはなくて。

──ありのままの自分を出してしまったというか。

内澤:ちょっと出ちゃった感はありますね(笑)。でも、それも角度が違うだけで、言いたいことはこれまでと同じく光であり、希望であるっていう。

androp・前田恭介 撮影=西槇太一

androp・前田恭介 撮影=西槇太一

──『blue』ではメンバーのみなさん全員が作詞作曲をされていますが、これもかなり大きな挑戦だったのでは。

佐藤:これもなんとなく話をしていたときに、伊藤くんが言ったんですよ。「内澤くん以外が曲を書くのってどうなの?」って。そしたら内澤くんが「全然いいよ」って。

伊藤:僕としては特に作るつもりもなかったんで、ものすごく無責任な発言ではあったんですけどね(一同笑)。でも、2人(佐藤と前田)が曲を作っていたのは知ってたから、どうなのかなと思って聞いてみたっていう。

佐藤:でも、これまでは内澤くんが思い描いているものを4人で表現するのがandropのスタイルであって、それが当たり前になってたから、内澤くんが「全然いいよ」って言ったのは、僕としては結構意外だったんですよ。でも、そういう自分にとって当たり前になっていたものをぶっ壊せたのはよかったなと思いますね。

──内澤さんとしては、みんなにも曲を作ってもらいたかった?

内澤:曲を作ってほしいというよりは、僕としては、メンバー全員がそれぞれ素晴らしいミュージシャンでいてほしいし、音楽家として素晴らしい人間になってほしいと思っていて。その強い4人の集合体がandropでありたいと思っていたから、みんなが新しいものにチャレンジするキッカケとか、違う視点で音楽を見れるチャンスを伺っていたところもあったんですよね。そのためにも、曲を作るというのはすごくいいことだなと思って。

伊藤:あと、今までは内澤くんが作ってきたデモをみんなで再現する形だったけど、デモもワンコーラスに留めてもらって、なるべくメンバー個人個人のプレイやフレーズを活かせるようにプリプロをしたんですよ。それは、image worldを立ち上げて、フレキシブルに動けるようになったからできるようになったところでもあるし、全員がバンドに参加するいいキッカケにもなったと思います。

──闇というコンセプト通り、音はもちろんですが、歌詞にもドキっとさせられるものが多くて。個人的にすごく好きだったのが、「Sunny day」の<賞味期限の日付が誕生日と同じ>だったんですけど、なんかすごい嫌な気持ちになるなと思って。

内澤:ははははははは(笑)。でも、これでも一応抑えたところもあるんですよ。元々はもうちょっとえげつなかったけど、ある事件を彷彿させてしまうからよくないとか、本当に大丈夫か?っていう話とかいろいろあって。なんか、表現の自由って意外とないもんなんだなって思ったんですけど。

──間違った捉え方をされて、変な騒がれ方をしまう場合もありますからね。

内澤:そうなんですよね。今回の曲は地上波とかラジオでなかなか流せないっていう話もあって。でも、それでもよかったんですよ。今しか歌えないもの、作れないものにしたい気持ちが強かったから、そのまま突っ走ったので。それに、地上波やラジオで流せないとはいっても、流してくれる人もいたんですよ。曲をしっかり理解してくれている人、想いをちゃんと汲んでくれている人は流してくれたりして。

──ちゃんと意図をわかってくれたと。

内澤:そうですね。だから、届くところにはちゃんと届いてるんだなって。上辺だけしか見ていない人が自主規制をして行くものなんだなっていうのはすごく勉強になりました。そういうのってよくないと思うし、変えられないかなって思いますね。

androp・伊藤彬彦 撮影=西槇太一

androp・伊藤彬彦 撮影=西槇太一

──そして10月にはツアー『best blueprint』を行なって、そこで発売前の『blue』を披露されていましたね。

内澤:みんな食い入るように見てくれていたので、ちゃんと届いている感覚はすごく強かったですね。でも、今回のツアーはやっぱり賛否あったんですよ。

──そうなんですか?

内澤:今回のツアーって、ベストアルバムを出してのツアーだから、本来であれば集大成的なライブをやるのがセオリーというか、一般的な形だと思うんですけど。でも、ベストの曲達をやってから、『blue』を1曲目から最後まで通してやる、アンコールもなしで終わるっていうことに賛否があって。

──お得な気もしますけどね。バンドの今までとこれからを同時に観れちゃうっていう。

佐藤:これがまた明るい終わり方だったら違うものになっていたかもしれないんですよね。『blue』の世界で終わって、アンコールもやらなかったわけですから。

──あぁ。なるほど。

佐藤:だから曲順ってやっぱり大事だなって改めて感じましたけど、だからこそ見せることができた表現の方法というか。

内澤:そういう意見がくることを全部想定した上で、このセットリストに決めたんですよ。だから、そこも含めて全部思惑通りだったというか。僕達としては、今までの7年間とこれからの自分達という意味でもそうだし、ライブを通して光と闇を表現したかったから、そこは伝えられたと思います。

伊藤:鍵盤の方にサポートで入ってもらったり、今まではシーケンスで流していたところを生で演奏したりして、いろいろ学べた面もありましたね。

前田:正直、僕としてはいろいろ迷っていたところもあったんですよ。セットリストのこともそうだし、自分が思ってるものと、みんなが思っているものが違うんじゃないか?って勝手に感じてしまったり。でも、そのときにみんながいろいろ話をしてくれて、それこそ音楽って人だな、同じ方向を向いてライブをやるのはいいものだなって改めて思えたし、ためになるツアーでした。

伊藤:それこそベスト盤と『blue』の対比じゃないですけど、いろんな感情も入り交じるなかでツアーをしていたけど、ちゃんと暗い部分を乗り越えていいところに辿り着けた感じはありましたね。今、自分の近くにいる人達と対峙している喜びや幸せを最終的には感じました。やっている曲は暗いんだけど、逆にそれを感じられたツアーだったと思います。

──そして、ツアーファイナルでは「来年は各地を細かくまわりたい」というお話をされていて。

佐藤:そうですね。来年、また2年振りにライブハウスツアーをやろうと思ってます。

内澤:ただ、詳細がまだちょっと詰めきれてない場所が数ヶ所あるんですよ。それが決まれば。

佐藤:そうだね、発表出来るタイミングまでもう少しお待ちください!

──他にも、内澤さんが来年2月公開の映画『君と100回目の恋』の劇中歌として「アイオクリ」を提供されたりと、来年の予定が少しずつ発表されていますが、ターニングポイントの1年を経て、ここからどんなものを伝えて行きたいですか?

内澤:やっぱり聴き手の心に突き刺さるような感動を音楽で届けたい気持ちはずっと変わらずにあって。それプラス、メンバーが作詞や作曲をした曲達をお客さんの前で実際に演奏してみて、反応をもらったことでいろいろ思ったことがそれぞれあったと思うから、そこからまたバンドとしてどんどん進化していく。そこは自分達としても楽しみにしています。


取材・文=山口哲生 撮影=西槇太一

androp 撮影=西槇太一

androp 撮影=西槇太一

リリース情報
new album『blue』
発売中
『blue』通常盤

『blue』通常盤

通常盤(CD): ZXRC-2005 ¥1,852+税
androp 会員サイト限定盤(CD+特殊パッケージ仕様)
ZXRC-2006 ¥4,167+税
※収録楽曲のデモ音源3曲の中からランダムで1曲聴くことができるシリアルナンバー封入の特殊パッケージ仕様
[収録曲]
1. Kaonashi
2. Irony
3. Digi Piece
4. Sunny day
5. Kienai
6. Lost

 

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