9mm Parabellum Bullet 完遂への執念、最大限の限界値を見せた『太陽が欲しいだけ』ツアー追加公演
-
ポスト -
シェア - 送る
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 "太陽が欲しいだけ"追加公演
2016.11.5(SAT)豊洲PIT
色々な意味で、完遂への執念を感じさせ、全国各所に集まったオーディエンスに向け、最大限の真摯と現在の自身が表せる限界値を見せることができたツアーになったのではないだろうか。
9mm Parabellum Bulletの『TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”』が、追加公演である11月5日の豊洲PITを以て幕を閉じた。
今夏、ギターの滝 善充の負傷を受けて、本来ワンマンとして回る予定であった全国ツアーの前半6公演を中止し、菅原、中村、かみじょうの3人でアコースティック形式でライブを行なった。各夏フェスは、滝のギターとシンセサイザーに加え、サポートギタリストを交えた5人体制で臨んだ彼ら。9月から再開したツアー中盤からは、その体制で挑みつつ、滝のプレイの限界値を省み、自身の出演時間の縮小が余儀なくされた。それに伴い、ツアー中盤からは、代わりにボーカル&ギターの菅原卓郎とゲストボーカリストによるアコースティックユニットでオープニングとして出演しツアーは続行。同ツアー後半の5公演では、ゲストバンドを迎えて敢行された。それらのドラマには、まさに、“現段階で魅せることの出来る最大限にして最高のパフォーマンス”への執念にも似たこだわりが感じられた。
まずは9mmの菅原がステージに立ち、今回のツアーの経緯の説明があった。本来ワンマンツアーの予定が、このような形態に変わるも、各所でサポートしてくれたアーティストやバンド、サポートメンバーも交え、最高のものになったことと、それへの感謝。本日も短い時間で自分たちにとって最大限の曲数しかできないが、スタートからマックスで行くこと等が告げられる。
GRAPEVINE 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
この日のゲストバンドはGRAPEVINEであった。フェスやイベント以外では初めての共演となったこの日、元々、菅原が中学時代、ラジオから流れていたデビュー当時のGRAPEVINEの楽曲をきっかけに彼らのことが好きになり、大学時代に知り合った滝も彼らのファンであったこと。共通して「スロウ」という彼らの楽曲が好きだったことが、先の菅原の説明の中で語られた。
SEもなく、スッとステージに現われたGRAPEVINE。“これが9mmのお客さんか”とボーカル&ギターの田中和将が若干嬉しそうにステージから場内を回視。ギターの西川弘剛が1曲目の「FLY」のイントロを放ち、そこに各音が加わっていき、同曲が形作られていく。生命力たっぷりにダイナミックに場内に音を響かせていった同曲。<飛ばしてくれ~>のフレーズは、“さぁ一緒に最高の空間を作っていこうぜ! ”との誘いのようにも感受した。
GRAPEVINE 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
ドラムの亀井亨のスタックスビートから「EVIL EYE」に入ると、適度なドライブ感が場内に呼び込まれ、アーシーで乾いた雰囲気が場内に広がっていく。「僕ら70年代から活動しているんです」と田中がMCにてジョーク。とは言え、その安定感のある演奏や往年のロックのエッセンスを自己昇華したかのような面もある彼らの楽曲の数々からは、もしかしたら彼らを初見のオーディエンスの中には、額面通りにその言葉を信じてしまった方が居たかもしれない。
GRAPEVINE 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
ほのかなオルガンの音が楽曲にナイスブレンドをみせた「1977」。哀愁さが場内に広がっていった「スレドニ・ヴァシュター」と、ライブは進んでいく。そんな中、会場の多くをグイッと惹き込んでいったのは、深いリバーブのかかった歌い出しから入った「CORE」であった。冷やかさとさりげないダンスビートを有した同曲は、ラストに向かうにつれカオスに豹変。特にアウトロでは、会場にえも言われぬ高揚感を与えてくれた。ラストの「風の歌」では、3声のハーモニーが楽曲にふくよかさを寄与、段々と暖かさを取り戻すかのように会場に安堵感にも似た幸福感を広げていったのも印象的であった。
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
しばしのセットチェンジを経て、赤い照明の中、いつもの緊迫感あふれるSEが流れ出す。9mm Parabellum Bulletの登場だ。
5人一群でステージに現われた彼ら。今回のサポートギタリストは武田将幸(HERE)だ。各位定位置につき、“待ってました!”と、フロア前方の密度もギュッと濃くなる。1曲目は6thアルバム『Waltz on Life Line』のラストを飾り、このツアーのタイトルでもある「太陽が欲しいだけ」だった。<さあ両手を広げて すべてを受け止めろ>と会場に歌い放つ菅原。楽曲に合わせて会場もクラップとコブシ、合唱で呼応し、のっけから一体感をみせる。会場中の気持ちを引き出さんとばかりに、<あらゆる壁をぶち壊して 迷いを蹴散らして おまえの瞳の奥にある 太陽が欲しいだけ>のフレーズが胸に響く。
続いては初期からの代表的ナンバー「Discommunication」が放たれる。滝がシンセで楽曲にライブならではの音色を加え、ベースの中村和彦とサポートギターの武田も各楽器をぶん回しながら、滝の分まで激しいステージアクションをフロアに魅せる。
次は6thアルバムから「モーニングベル」。ドラムのかみじょうちひろによる、カウパンクなビートも交わった同曲。とは言え、決してそれらは牧歌的には響かず、むしろの色々なエッセンスを融合した叩き分けと、独特の歌謡性とスリリングさが加わり、不思議な緊迫感が生み出されていく。
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
MCを挟み、ブラストビートも印象的な最新作8thシングルの「インフェルノ」、滝もステージ前方のステップに乗りギターソロを披露し、その健在ぶりに会場から一際大きな歓声があがった「ロンリーボーイ」が立て続けに放たれる。
「ツアータイトルのわりには、あまり太陽に出会えなかったけど、今日は出会えた。終わり良ければ全て良し。最高です」とは菅原。「9mmは雨の曲が多いんだけど、自分は雨のあとの光景が好きだったりする」と続け、「スタンドバイミー」をプレイ。杞憂な雨が上がったからこそ感じられる開放感や、まるで空気や周りの景色までも洗われたかのような爽快感が、クリアで新鮮な光景と共に眼前に広がっていった。
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
ここからは後半戦。「山あり、谷あり、海ありで色々あるけど、これからもみなさんの力を貸して下さい」の菅原のMCから怒涛のラストスパートへ。
ラテンポップなビートに会場中がハネた「反逆のマーチ」、続いても土着的なビートながら、こちらはどこか和を感じさせ、間のストーナーロック性を交える辺りでは、中村、菅原、武田、滝のフロントの4本のネックが綺麗に揃い、魅せる場面も印象的であった「Lost!!」と、6thアルバムからのナンバーが立て続けに放たれる。また、会場、ステージ一体となって駆け抜けた「The Revolutionary」、そして、メランコリックなイントロから本編ラストの「生命のワルツ」へ。歌を武器に今後も会場も交え共闘していくことを高らかに宣言したかのような同曲が、更に会場とステージとのアライアンスを強めていった。
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
アンコールに登場したのはメンバー4人のみ。この4人だけで1曲プレイするという。曲は「Talking Machine」。太陽きっかけで始まり、太陽もフレーズとして出てくる曲で終わるところに、この日の彼らの粋(いき)を感じた。同曲では滝のカッティングやフレーズも健在。もう少し待てば、万全な4人によるフルスケールの勇姿が見れることを確信させてくれた。ラストはかみじょうによる怒涛の地鳴りのようなツーバスも炸裂。終演の際には、会場の一人ひとりに、明るく、生命力に溢れ、明日への活力となる、“自身の中の太陽”を巡り合わさせた。
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
もしかしたらメンバーにとっては、多少不本意なツアーだったのかもしれない。しかし、ファンやオーディエンスにとっては、ワンマンと同様の充実感と改めて彼らの底力や真摯さ、このような局面だからこそ垣間見れた、“この4人でライブを演ることの大切さと尊さ”を、改めて感じることができた想い出深いツアーとなった。
今回はツアー再開以降、各箇所、大体が10曲で1時間ちょっとのステージであったと聞く。普通、サポートメンバーを入れたのであれば、滝を休ませる場面を作ったり等で、お茶を濁してでもワンマンフルで2時間のライブを敢行するところだ。しかし彼らは違った。あえて滝も含め、4人+サポートで、自身もオーディエンスも満足できるギリギリのプレイ可能な時間の方を選び、あとは朋友とも呼べるアーティストやバンドと共に、このツアーを成功させた。事実、彼らの全力且つ満身創痍、まさに演り切った感あふれるライブは正味1時間ながら、とても充足したものだった。加え、後から知って驚いたのは、その各地でのセットリストだ。この東京を含め、各箇所、主要な数曲のポジションを除き、その土地土地で曲順も曲種も違っているものばかりだったのだ。トータルすると6thアルバムからの曲は全曲プレイされ、演じた曲種を並べると、ゆうにワンマンの曲数を超過していた。そこには彼らが本気で、各箇所、短い時間ながらもワンマンの気概で臨んでいた執念にも似た気概が伺えた。
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
終演直後のステージ後方のスクリーンには、「2017年春、7thアルバム発売決定!」の文字が誇らしげに映し出された。
この窮地を乗り越え、更なる互いの必要性を感じたのではないかと思われる今回のツアーを経た次作が、どのような9mm Parabellum Bulletとして表れるのか? そして、彼らはそれをどのようなパフォーマンスとして展開していくのか? ツアーが終わって早々、気が早い話だが、私は既に今からそれが愉しみでならない。
取材・文=池田スカオ和宏(LUCK’A Inc.) 撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)
9mm Parabellum Bullet 撮影=橋本 塁 (SOUND SHOOTER)
2016.11.5(SAT)豊洲PIT
◆GRAPEVINE
01.FLY
02.EVIL EYE
03.1977
04.スレドニ・ヴァシュター
05.MISOGI
06.CORE
07.風の歌
◆9mm Parabellum Bullet
01.太陽が欲しいだけ
02.Discommunication
03.モーニングべル
04.インフェルノ
05.ロンリーボーイ
06.スタンドバイミー
07.反逆のマーチ
08.Lost!!
09.The Revolutionary
10.生命のワルツ
<Encore>
11. Talking Machine