『時かけ』スタッフ語る細田守監督のバイタリティ「画が表現している」
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筒井康隆の同名小説をアニメ化した『時をかける少女』が2006年に公開されてから10周年を迎えた。それを記念した、10th Anniversary BOX(ブルーレイ)が11月25日(金)に発売される。
発売日を前に11月11日、テアトル新宿で同作のリバイバル上映が行われ、ミニトークショーを開催。プロデューサーの齋藤優一郎氏、パッケージ プロデュサーの菊池剛氏が登壇し、公開当時の様子を振り返り、細田守監督の印象などを語った。
公開時のメイン映画館である同劇場で、 35ミリフィルムを使用したアナログ上映となった今回。観客の約1割が当時も劇場で同作を見た、約8割は劇場で初めて同作を見た様子だった。
公開から10年が経った今もなお、支持を受ける同作だが、菊池氏は「『この映画本当に当たるんですかね!?』と不安でしかたなかった」と公開時の心境を明かし、封切りされるや見渡す限りの列と、超満員の劇場に安堵したことを脳裏に浮かべ懐かしんだ。2007年に販売されたDVD 限定版の価格は約1万円。破格の金額となったが、菊池氏は「ヒットしたと言っても興行成績が2.6億円で、DVD換算すると2万6000枚売れると考える。当時、1万円で5000枚売れたらいいんじゃないかなと冒険しようかなと思った」と言い、「細田さんが絶対にネクストに来る人だと応援しようと、特典ディスクでも細田さんがどういう思いで作っているのかを見せていった」と心意気を覗かせた。最終的に5万枚が売れ、「受注とった時に、我が目疑うとはそのことかと」と売れ行きに驚きを隠せなかったようだ。
同作のヒットに、齋藤氏は「作家って1周したら、いつかまた恋愛ものを描いたり、そういう時が来るかもしれない。けど『時をかける少女』は二度と作れない」と言い切った。
主人公の声を演じていたのは女優の仲里依紗。齋藤氏は「(主人公と同年代の)16歳ぐらいだったのが、今やお母さんですからね。当時はお芝居の経験がほぼなくて、そのあと時をかけるように大きくなっていった」と仲の活躍ぶりに目を細めた。
同作の公開以降も『サマーウォーズ』(09)、『バケモノの子』(15)などヒット作を世に送り出している細田監督。菊池氏は「当時、細田さんは知る人ぞ知るという存在の方だった。初号試写を半信半疑で見て、作品の潮目が変わる瞬間に立ち会うというか…細田さんは“ここで笑ってほしい、泣いてほしい”っていうのをコントロールして、シナリオの隙間を考えて、計算していると思うんですけど、そこに見る人全員が気持ちよく手のひらで踊らされている感じが掴めた」と作品の第一印象を思い返した。
一方、齋藤氏は「将来性を感じたから一緒にやったっていうことではなくて。細田監督を未だにいいなと思うのは、常にチャレンジャーであるってこと。同じような作品はあの時代にしか作れないかもしれないけど、当時から今もなお、“こんな風になった”とふんずり返らないで、新しいことにチャレンジしている。アニメーションという可能性を信じて、チャレンジし続けている。『時をかける少女』と同じで未来に向かって走り続けている。そのバイタリティは、(同作のポスターなどに描かれた主人公)真琴の画が表現している」と、細田監督の信念と作品のリンクを語った。
『時をかける少女』 10th Anniversary BOX(ブルーレイ)は、DVD プレミアムエディションにのみ収録されていた映像特典がブルーレイ画質で復刻される他、200分を超えるボリュームの映像特典を収録。さらに、7月に行われた東京国立博物館での10th Anniversary 野外シネマ上映イベントや、トークショーなどの映像も収録される。【Movie Walker】