「韓国の至宝」ソン・ガンホとの邂逅に是枝裕和監督「今一番撮ってみたい役者さん」 映画『弁護人』初日舞台あいさつ

11月12日、映画『弁護人』が初日をむかえ、東京・新宿武蔵野館で主演の俳優ソン・ガンホとプロデューサーのチェ・ジェウォン氏が登壇。ガンホの大ファンという是枝裕和監督も駆けつけ、作品について語った。
 

『弁護人』は本国・韓国での公開時に3日間で100万人、1ヶ月間で1,000万人を動員したヒューマンドラマ。韓国の故・盧武鉉（ノ・ムヒョン）元大統領の青年弁護士時代、1981年9月に実際に起きた冤罪事件“釜林（プリム）事件”をモチーフにした作品だ。ガンホは同作で、ある事件をきっかけに人情派弁護士へと変わっていく主人公を演じる。また、ZE:Aのメンバー イム・シワンが不当に逮捕されたクッパ店の息子を好演しているほか、2015年に韓国映画史上初の累計観客数1億人を記録した個性派俳優オ・ダルスも出演するなど、韓国映画ファンなら誰もが知る俳優陣が脇を固めている。ガンホは、同作で韓国最大の映画賞・第35回青龍映画賞で最優秀主演男優賞に輝いている。

「韓国の至宝」と呼ばれるガンホの来日は、2006年公開の『グエムル-漢江の怪物』以来約10年ぶり。作品だけでなく、貴重な舞台挨拶を観ようと会場には多数の観客がつめかけ満席となった。ガンホは「韓国ではこの作品は、胸を熱くする映画として認識されて、たくさんの方に愛され、記憶に残る作品になりました」と説明。さらに「この映画が語ろうとしていることは、日本の観客の皆さんにも十分共感していただけると思っています」と自信をのぞかせた。

チェプロデューサーは「勇気を持って製作した作品です。その勇気を韓国の観客のみなさんは受けとめてくださいました。1本の映画が世界を変えることは出来ないと思いますが、この映画をご覧になって日本の皆さんも自分自身を振り返ったり、勇気をもたったりするきっかけになれば嬉しいです」と作品に込めた想いを語る。

是枝監督は、ガンホに花束を渡すと、「『弁護人』はソン・ガンホさんを堪能する映画だと思います。なかなか日本では現代史を扱った映画は企画が通りにくくなっているので監督としてはこういう映画がきちんと作られて大ヒットするという環境がすごく羨ましくもあるし、もっと頑張らなきゃなと思わされる志の高い映画だと思いましたね」と称賛。また、MCにガンホとの映画製作を提案されると、是枝監督は「具体的に何か（計画が）動いているわけではないですが……今一番撮ってみたい役者さんなので、そんな未来が待っていると嬉しいなと思っております」とコメント。ガンホとのタッグに意欲をみせ、会場の観客から拍手を浴びていた。

最後にガンホは「韓国と日本は近い国ですが、やはり文化も違いますし、違う歴史を持っています。でも、映画は一番美しく、そして大きな役割をになっているものだと思います。それは映画を通して皆さんの心が一つになって、触れ合えたり、お互いを理解し合えたり……そして何かを共有できるのが映画だと思います」とコメント。さらに「『弁護人』やあるいはほかの韓国映画を通して韓国のことを知っていただき、わたしたちも日本映画を通して日本のことを知りたいと思います。映画がそういったことのきっかけになれば嬉しいです」と締めくくった。

また、チェプロデューサーは、再びガンホと組み、『甘い人生』『グッド・バッド・ウィアード』のキム・ジウン監督がメガホンを撮る次回作『密偵（原題）』にも言及。「来年日本でも公開される予定ですので、こちらの作品にもたくさんの愛情をおねがいします」と呼びかけていた。

映画『弁護人』は公開中。