ヴァイオリン小林美恵&ピアノ中野翔太の息の合ったデュオ演奏に鳴り止まぬ拍手
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小林美恵(ヴァイオリン)、中野翔太(ピアノ) 撮影=岡崎雄昌
小林美恵(ヴァイオリン)&中野翔太(ピアノ)「相性がいいってみんなに言われます」 第46回“サンデー・ブランチ・クラシック” 9.25ライブレポート
秋も深まってきた9月末のeplus LIVING ROOM CAFE&DINING。祭りで賑わいを見せる渋谷の喧騒からはちょっと離れ、いつものように『サンデー・ブランチ・クラシック』が開催された。この日登場してくれたのは、ヴァイオリニストの小林美恵とピアニストの中野翔太。これまでにもデュオの機会を重ねてきた2人が、多彩なプログラムを息の合った演奏で聞かせてくれた。
2人が1曲目に選んだのは、クライスラー作曲「愛の喜び」。暖かなメロディが、小林のほがらかなヴァイオリンと中野の繊細で優しいピアノの音色で紡がれていく。心地よい午後の幕開けだ。
演奏中の様子 撮影=岡崎雄昌
1曲目を終え、小林は「普段のコンサートホールとは違った和やかな雰囲気の中で、演奏を聞いて頂けることを私たちも楽しみにしてまいりました。どうぞ、最後までお楽しみください」と微笑みかけける。
そんな小林は、2015年でデビュー25周年を迎えた。それを祝してこの2年間、様々な形で記念リサイタルを行ってきた。その5回目として10月19日(水)に開催された『音の饗宴』が“バッハづくし”のリサイタルということで、その前哨戦としてバッハの「ヴァイオリンコンチェルト」第1番より1楽章が演奏された。
小林美恵(ヴァイオリン) 撮影=岡崎雄昌
ヴァイオリンを始めた人は、2、3年経つとこのバッハのコンチェルトを必ず弾くことになるという。小林は「デビュー25周年ですが、ヴァイオリンを始めてからはもっと年月が経つもので(笑)。今、こうして改めて弾いてみて、この曲の豊かさにびっくりしたんです。子どもの頃にこういった素晴らしい曲に出会えていたということに、とても幸せを感じます」と振り返った。とても緻密に、明晰に書かれたこのバッハの「ヴァイオリンコンチェルト」。演奏者の成長が聴き手の耳も成長させ、新しい発見をもたらしてくれるのだろう。
続いては、秋はお祭りが多いということで「日本に様々な踊りがあるように、世界にもいろいろな民族の踊りがあるんですね」と、バルトーク作曲の「ルーマニア民俗舞曲」が紹介された。この曲は、「棒踊り」「帯踊り」「足踏み踊り」「ブチュム人の踊り」「ルーマニア風ポルカ」「速い踊り」の6曲で構成されている。ダンスで感情を表すように、演奏にも感情が乗る。色とりどりの民族衣装を来た人たちが、6曲6様にくるくると踊る姿が目に浮かぶようだった。
中野翔太(ピアノ) 撮影=岡崎雄昌
ここで、中野のピアノソロが。中野がソロ演奏に選んだのは、ガーシュウィン作曲「ラプソディー・イン・ブルー」。CDでも『ガーシュウィンピアノ曲集』をリリースし、レコード芸術誌の特選盤、優秀録音盤に選出された中野の演奏は、繊細かつ軽快だ。ジュリアート音楽院に留学中、ジャズに興味を持っていたという中野ならではの感性が光る音色を聞かせてくれた。再びステージに戻った小林は「素晴らしかったですね~! 私もお客さんになって聴き入ってしまいました」と中野の演奏を絶賛!
ニコニコと笑顔を交わす2人は、ポンセ作曲「エストレリータ」を再びデュオで披露。小林は、この曲が大好きだそう。メキシコの歌曲で“小さい星”という意味のこの曲。この曲を聴いた後に、歌曲だけれどそういえば歌詞を知らない、ということに気づき調べてみた。なるほど、そんな歌詞が……。気になった方はぜひ、ポンセの想いを読み解いてみてほしい。
MC中の2人 撮影=岡崎雄昌
最後に用意されていたのは、プロコフィエフ作曲のバレエ音楽である「ロメオとジュリエット」。小林は、7月に中野と共に『オールスター・バレエ・ガラ』で共演したマルセロ・ゴメスがこの曲で踊っているのを観て「私も弾きたい……!」と駆り立てられたという。組曲の中から「前奏曲」「少女ジュリエット」「死のダンス」(某携帯電話のCMで使われている曲なのでご存知の方も多いだろう)「マキューシオ」「ティボルトとマーキュシオの決闘」が披露され、ラストを盛り上げた。
素晴らしい演奏に、拍手は鳴り止まない。「皆様、お楽しみいただけましたか? 決闘の曲で終わるのもなんなので……(笑)」と、ドビュッシー作曲「美しい夕暮れ」でアンコールに応え、30分のブランチ・コンサートは締めくくられた。
カフェでの演奏 撮影=岡崎雄昌
大変息の合った、素晴らしいデュオ演奏を聴かせてくれた2人。終演後に話を聞いてみると、相性の良さは「みんなに言われます(笑)」とお互いに笑って答えてくれた。「一緒に演奏すると、いつも『この曲、こんなにいい曲だっけ……』みたいな新しい発見があります」という中野と、「リズム感とか音色とか彼だけの魅力があって……言葉で言い尽くせないぐらい、弾いていて楽しいです」という小林。
25周年の5回目の記念リサイタルを終えた小林は、この後4月15日(土)にHAKUJU HALLで記念リサイタルのエピローグとして、小品を集めたコンサートを行う。
また、中野は2月11日(土・祝)に東京オペラシティ コンサートホールにて松永貴志、金子三勇士と共にピアノ・トリオ・スペクタクルとして『バレンタイン・コンサート』を行う。同じピアニストでも、まったく音色も個性の異なる3人の共演が一体どうなるのか!? 注目の公演だ。
インタビューの様子 撮影=岡崎雄昌
最後に「昼間のカフェでのコンサートは初めてでしたが、アットホーム感が増していて、演奏者としても温かい気持ちで演奏できるので、とても楽しめました。またこういう機会でお会いできたらと思います」(小林)、中野「ホールとは違った雰囲気の中でお客様とお会いできて嬉しかったです。皆様も今日の体験のように気軽にクラシックに触れて、コンサートを聴きにいらして頂けたらと思います。これからもクラシック音楽を存分に楽しんでください」(中野)とそれぞれメッセージをくれた。
素晴らしい演奏家たちの個性が、様々な形で巡り合って合わさり生み出される“音”。無限の組み合わせが生み出す“楽”しさ。音楽の豊かさを感じた回だった。
中野翔太(ピアノ)、小林美恵(ヴァイオリン) 撮影=岡崎雄昌
『サンデー・ブランチ・クラシック』、次回もお楽しみに!
東京藝術大学附属音楽高校を経て、同大学を首席で卒業。在学中に安宅賞、福島賞を受賞。1983年第52回日本音楽コンクール第2位。1984年海外派遣コンクール河合賞受賞。1988年にはシュポア国際ヴァイオリン・コンクール第2位、あわせてソナタ賞を受賞。1990年、ロン=ティボー国際コンクール ヴァイオリン部門で日本人として初めて優勝。以来、国内外で本格的な活動を開始する。これまでに、NHK交響楽団、東京都交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢等の国内の主要オーケストラ、ハンガリー国立交響楽団、プラハ交響楽団のソリストとして、充実した演奏を高く評価される。
また、静岡のAOI・レジデンス・クヮルテットのメンバーをはじめ、数多くの共演者と室内楽の分野においても活動を広げ、軽井沢国際音楽祭に毎年出演するなど音楽 祭にも積極的に参加している。CDは、「プレイズ・クライスラー」、パスカル・ロジェとのデュオ「フォーレ」「ラヴェル&エネスコ ヴァイオリン・ソナタ集」、ツィゴイネルワイゼンなどを収録した「ヴァイオリン名曲集」など多数リリース。デビュー20周年を迎えた2010年に、紀尾井ホールで記念リサイタルを好演、同年ロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門の審査員として招かれた。2012年には、パキスタンで行われた日パキスタン国交樹立60年の記念演奏会に出演。そのほか、フランス、イギリス、タイ、中国、韓国、ニュージーランド等でも公演を行い、洗練され、しかもダイナミックに奏でられる重厚な演奏が、多くの聴衆を魅了した。今後も、日本を代表するヴァイオリニストとしてリサイタル、室内楽、オーケストラとの共演など全国各地で公演が予定されている。2015年はデビュー25周年を迎え、2年間で6回の記念リサイタルのほか、全国各地で公演が予定されている。 現在、昭和音楽大学客員教授。
中野翔太(ピアノ)
茨城県つくば市生まれ。江戸弘子に師事し、1999年からジュリアード音楽院プレ・カレッジに留学。その後、同音楽院に進み、ピアノをカプリンスキーに、室内楽をパールマンに師事、2009年に同大学院を卒業。これまでに明治安田生命クオリティオブライフ文化財団、財団法人江副育英会の助成やソニー・フェローシップ・グラントを受けている。1996年第50回全日本学生音楽コンクール小学生の部で全国1位および野村賞受賞。これまでにデュトワ指揮/N響、小林研一郎指揮/読響、小澤征爾指揮/ウィーン・フィル等と多数共演。リサイタルでは、2004年第20回<東京の夏>音楽祭、2006年東京オペラシティ主催「B→C」、2007年トッパンホール、2009年紀尾井ホール、2012年、2015年東京文化会館小ホールなど毎年意欲的な活動を続けている。最近では、ジャズの松永貴志と即興も交えた2台ピアノの演奏で、各地で好評を得ている。CDは、オクタヴィア・レコードより、「シューマンピアノ曲集」「ガーシュウィンピアノ曲集」「ラ・ヴァルス~ラヴェル&コリリアーノ:ピアノ作品集」を3枚をリリース。いずれもレコード芸術誌の特選盤、”ガーシュウィン”は、あわせて優秀録音盤に選出された。2014年6月には、アシュケナージ指揮/NHK交響楽団と共演、豊かな表現力と透明感のある響きで好評を得る。第15回出光音楽賞受賞
■日程:2017年3月11日(土)
■会場:HAKUJU HALL
大萩康司(ギター)、川本嘉子(ヴィオラ)、小林美恵(ヴァイオリン)、長谷川陽子(チェロ)、林美智子(メゾソプラノ)、三舩優子(ピアノ)、平野公崇、田中拓也、西本淳、東涼太(サクソフォン・カルテット)
■日程:2017年4月15日(土)
■会場:HAKUJU HALL
■出演
小林美恵(ヴァイオリン)
上田晴子(ピアノ)
■曲目・演目
クライスラー:ウィーン奇想曲
サン=サーンス:序奏とロンドカプリチオーソ
■日程:2017年2月11日(土・祝)
■会場:東京オペラシティ コンサートホール (東京都)
■出演:中野翔太/松永貴志/金子三勇士(全てピアノ)
■曲目・演目
チック・コリア:スペイン
ジョン・ウィリアムズ:スターウォーズのテーマ
安藤赴美子/ソプラノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
3月19日
松田理奈/ヴァイオリン&中野翔太/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業