オレリー・デュポン(ダンサー、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督) 新・芸術監督デュポンが目指す“バレエの殿堂”の未来

2016.11.18
インタビュー
クラシック
舞台

オレリー・デュポン Photo:Sophie Delaporte


 来年3月、パリ・オペラ座バレエ団を率いて、オレリー・デュポンが芸術監督として来日する。急遽辞任を決めたバンジャマン・ミルピエの後を継いで彼女が現ポストについたのは、今年の8月1日。2017~18年期からが彼女によるプログラムなのだが、クラシック作品を増やすことをすでに公言している。

「なぜって、オペラ座バレエ団はクラシック・バレエの学校を持つ、クラシック・バレエのカンパニーなのですから。もちろんコンテンポラリー作品についても、オープンであり続け、過去にここで踊られたことのない振付家の作品を迎えます。ハイレベルのクラシックと最先端のコンテンポラリーを、観客に提案したいと思っています。両方に優れたダンサーをエトワールに任命することになりますね」

 学生時代から42歳での引退まで、人生の長い時間を過ごしたオペラ座。350年以上の歴史をもつバレエ団のフランス文化における位置を、彼女は正しく理解し、敬意を払う。だからこそ近代化は必要だが、急激に行うことをせず、時間をかけて進めてゆく。また、バレエ団を愛し、団員を愛する彼女は、芸術監督の権限をダンサーにとって有益と信じることのために発揮するつもりでいる。この美しく、頼もしい監督にダンサーたちは、すでに厚い信頼を寄せている。要求の高い彼女の期待に応える必要があることは、ダンサーたちにとって刺激的な挑戦でもあるようだ。

 エトワール・ダンサーとして圧倒的人気を誇っていたオレリー。今も毎朝若い団員とともに朝のクラスレッスンをとり、時々海外の舞台に立っている。オハッド・ナハリンの振付作品を、11月にディアナ・ヴィシュネヴァと一緒に踊り、また、モーリス・ベジャールの『ボレロ』を東京で2月に、というように。芸術表現の場を持つことで、監督業という仕事と良いバランスがとれるのだろう。3月の来日公演でも、バンジャマン・ミルピエの『ダフニスとクロエ』を創作ダンサーとして、エルヴェ・モローと舞台に立つ。

「ミルピエの振付はオーガニックで体にとても自然なので、好きです。ダンサーの個性を尊重して振り付けるので、踊るのがとても快適。東京でも一緒ですが、フランソワ・アリューとも踊ることが楽しく、コール・ド・バレエと一丸となっての良い雰囲気…といった思い出がこの作品にあります。ダニエル・ビュランによる舞台装置も、意外性に富んでいますね」

 なおこの『ダフニスとクロエ』を踊るもう1組は、ジェルマン・ルーヴェとアマンディーヌ・アルビッソン。ジェルマンは若手の中で、次期エトワールとの呼び声の最も高いダンサーである。

 2つのプログラムで構成される来日公演。まずは〈グラン・ガラ〉。前述『ダフニスとクロエ』を含む、ネオ・クラシック3作品で、ほかにジョージ・バランシンの『テーマとヴァリエーション』、ジェローム・ロビンスの『アザー・ダンス』という内容。

「リュドミラとマチアス、そしてドロテとジョシュア。この2組を『アザー・ダンス』に配役しました。ダンサーに何よりも要求されるのは音楽性。そして技術的難しさを感じさせず、ユーモアとフレッシュさを保ちながら、まるで即興で踊っているかのように見せる、という作品なんですよ。『テーマとヴァリエーション』は見た目のシンプルさの裏に、複雑なテクニックがこめられていてハードですが、ダンサーたちは素晴らしくやり遂げるはずです」

〈グラン・ガラ〉に先立つプログラムは、ロマンティック・バレエの傑作『ラ・シルフィード』である。19世紀にオペラ座で踊られ、それをパリ・オペラ座のためにピエール・ラコットが復元した名作だ。

「主役を踊る二人が良い組み合わせであること。それだけで公演の半分はうまくいった、といえるほど大切です。今回の3組は、ミリアムとマチアス、アマンディーヌとマチュー、そしてリュドミラとジョシュア。個性の異なる3組ですが、それぞれ美しいカップルなので、ぜひ楽しみにして欲しいですね」

取材・文:濱田琴子
(ぶらあぼ 2016年12月号から) 


パリ・オペラ座バレエ団 2017年 日本公演

『ラ・シルフィード』

ラ・シルフィード:ミリアム・ウルド=ブラーム、アマンディーヌ・アルビッソン、リュドミラ・パリエロ
ジェイムズ:マチアス・エイマン、マチュー・ガニオ、ジョシュア・オファルト
2017.3/2(木)18:30、3/3(金)18:30、3/4(土)13:30 18:30、3/5(日)15:00 東京文化会館

 
〈グラン・ガラ〉
『テーマとヴァリエーション』 ローラ・エッケ、マチュー・ガニオ、ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン 他
『ダフニスとクロエ』 ダフニス:エルヴェ・モロー、ジェルマン・ルーヴェ クロエ:オレリー・デュポン、アマンディーヌ・アルビッソン
『アザー・ダンス』 リュドミラ・パリエロ、マチアス・エイマン、ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト 他
2017.3/9(木)18:30、3/10(金)18:30、3/11(土)13:30 18:30、3/12(日)15:00 東京文化会館

 
オレリー・デュポンの「ボレロ」 東京バレエ団〈ウィンター・ガラ〉
2017.2/22(水)、2/23(木)各日19:00 Bunkamuraオーチャードホール

演目:『ボレロ』『中国の不思議な役人』『イン・ザ・ナイト』

 
※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
問合せ NBSセンター03-3791-8888 
http://www.nbs.or.jp/