まるで動物園!? テンションMAXな『プリシラ』稽古場レポート
ドラァグクイーンたちの珍道中を描いた笑いあり涙ありの物語、誰もが耳にしたことのある1970~80年代のディスコチューンが満載の音楽、そして観る者の度肝を抜くド派手な衣裳…! オーストラリア発の世界的ヒット作で、日本版演出を宮本亜門が手がけることや、「2016年のヒット人」山崎育三郎が主演を務めることも話題のミュージカル、『プリシラ』の開幕が迫っている。絶賛進行中の稽古場を覗いてみると、山崎、ユナク(超新星)、古屋敬多(Lead)、陣内孝則らキャスト陣が、テンションMAXでファビュラスな『プリシラ』ワールドを作り上げていた。
若手もベテランもプロフェッショナル!
キャストの有り余るパワーを象徴するような出来事が起こったのは、ティック(山崎)がバーナデット(陣内)とアダム(ユナク/古屋)を誘い、砂漠を縦断するバスの旅に出かけようとする冒頭のシーンの稽古中。宮本は、3人の会話をテンポよく進めるため、また各々の心情をより繊細に伝えるため、その場で台詞をどんどん変えていく。早口の指示に即座に対応してアドリブまで繰り出す山崎たちを、「さすがだなあ」などと思いながら眺めていたのだが、そんな呑気な人間は稽古場には一人もいなかった。
3人が旅に出発したあとに控えるは、アンサンブルが加わって盛大に歌い踊るシーン。そこに出演するキャストが、今か今かと登場を待ち侘びて、ついには宮本が「次のシーン行きましょう」と言う前に飛び出してきてしまったのだ。ピアノ伴奏もない中で、宮本がマイクを取り出して「やめなさい!(笑)」と叫ぶまでノリノリで踊り続ける彼らに、稽古場は大爆笑に包まれたのだった。
だがもちろん、宮本をして「動物園みたい」と言わしめるこの楽しい雰囲気は、あくまで全員がプロフェッショナルであることを前提としたもの。一幕ラストの大ナンバーの稽古では、歌と振付を一刻も早く自分のものにしようと、真剣な表情で取り組むキャストの姿があった。この曲でメインボーカルを務めることが急遽決まったジェニファーは、最初こそ歌詞を書き出したメモを見ながら歌っていたが、短い休憩時間が終わるころには完璧に歌える状態に。「健康だったら難しい振付でもいいんだけどさ、今はほら、骨折してるから簡単なのにしてよ!」と、振付を担当するSHUNに冗談を飛ばしていた陣内も、言葉とは裏腹に“難しい振付”に果敢に挑んでいく。
振付をさらに難しくしているのが、『プリシラ』の象徴ともいえる、歩くだけでも大変そうな巨大な靴。ダンス経験豊富な山崎、ユナク、古屋のステップはさすが、そんな状態でも軽快で、特にアダム役の二人は、そのまま走ったり手を繋いでクルクル回ったりする余裕を見せていた。負けじと陣内も挑戦し、ベテラン俳優の懸命な姿勢が、稽古場に自然と一体感を生み出していく。山崎と陣内の練習に、やがてユナクと古屋も加わり、1時間後にはすっかり習得した4人の姿があった。
そんな過酷な振付稽古中であっても、ダンスだけに集中してはいられないのがミュージカル。ちょっとした隙を見つけては、その日の朝配られたばかりのテキレジ(台詞の変更が書かれたプリント)を台本に貼りつけたり書き写したりと、キャストは次の芝居稽古への準備を着々と進めていた。これだけの労力と熱量をかけて作り上げられた歌・ダンス・芝居に、ゴージャスな衣裳やセットが加わって繰り広げられる本番の舞台が、ファビュラスにならないはずがない!
(取材・文:町田麻子 写真撮影:岩間辰徳)
■日時:2016年12月8日(木)~29日(木)
■会場:日生劇場
■演出:宮本亜門
■出演:
山崎育三郎、ユナク(超新星)/古屋敬多(Lead)(Wキャスト)、陣内孝則
ジェニファー、エリアンナ、ダンドイ舞莉花、大村俊介(SHUN)/オナン・スペルマーメイド(Wキャスト)
石坂勇、和音美桜、キンタロー。/池田有希子(Wキャスト)、はるはる ほか
■公式サイト:http://www.tohostage.com/priscilla/
12月8日(木)18:00開演の部
12月9日(金)13:00開演の部
【2】 初日特別カーテンコール