有村竜太朗×清春 “唯一の関係”とソロアーティストの魅力
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有村竜太朗×清春 撮影=横井明彦
キャリア初のソロアルバム『個人作品集1996-2013「デも/demo」』を11月23日にリリースしたPlastic Treeのボーカル・有村竜太朗の対談企画。第2回目は、“二人だけで会う唯一の関係”という先輩、清春を迎え、出会いのエピソードから、どうして唯一の関係が築かれたのか、そしてソロアーティストの魅力まで、たっぷりと語り合ってもらった。
清春さんを見ていて“やってみたいな”“やる価値はあるかも”って。
キッカケはいくつもあるんですけど、清春さんは大きなトリガーでしたね。
――お二人はふだんから交流があるんですか?
清春:ありますよ。一緒に飲んだり。
有村竜太朗(以下有村):ゴハン食べたりとか。
清春:ただ竜太朗くんはけっこうアナログなので、連絡手段がね。
有村:僕、LINEやってないんですよ。世の中のシステムから取り残されてるんです(笑)。
清春:いまどきショートメール(笑)。
有村:でも、大事な時にはいつでも馳せ参じますよ。あと、よくライブにも来ていただいて。
清春:数少ないミュージシャンの友達のうちの一人ですよ。
有村:俺にとっては仲良くさせていただいている先輩ですね。二人だけで会うような関係という意味では唯一の。
清春:後輩は増えるけど、先輩はだんだん減っていくからね。
――そもそも仲良くなったキッカケというのは?
清春:生前、仲が良かった編集の人と取材の後に雑談していて「最近、誰に注目してるの?」って聞いたら「Plastic Treeがいいんですよ。このバンド、洋楽なんですよ」って言われて、You Tubeで見たら“カッコいいな”と。たまたま竜太朗くんを知っている共通の知人がいたので、「曲いいし、ライブ行きたいから紹介して」って頼んだんです。そしたら、その人が赤坂BLITZの僕のライブに竜太朗くんを連れて来てくれて、生で見て“おお! 本物だ!”って。それからプラの武道館にも2回ぐらい行ったし。
有村:もちろん僕も清春さんのことは知っていたし、好きな曲もあったし、でも、まさか清春さんがPlastic Treeを気にかけてくれているなんて思いもよらなくて半信半疑で、僕は僕で“わぁ! 本物だ!”ってビビりながら楽屋に入ったのを覚えてて(笑)。その共通の知人から「いいバンドだから紹介して」って清春さんが言ってたっていう話は聞いてたけど、本当のところはどうなのかわからないじゃないですか。
清春:僕はその編集の人の感覚を信じていたので。その前からPlastic Treeの存在は知ってたけど、僕的にはヴェールに包まれていたというか、竜太朗くんも年齢不詳でふんわりしてるイメージだったし。ライブを見てからはまわりの人にもプラのファンだって言ってましたよ。
有村:いやぁ、ありがたすぎて。
――それがいつ頃のことなんですか?
有村:『ネガとポジ』(2007年)ぐらいかなぁ。清春さんとはいろんな音楽の話をして、洋楽もそうだけど、共通の好きな日本のバンドがいて。
清春:(ザ・ストリート)スライダーズね。まさか竜太朗くんから、そのバンド名が出るとは。
有村:僕、ダルなロックンロールバンドでいちばん好きなのがスライダーズなんですよ。(ローリング)ストーンズより好きなぐらい。そういう話を清春さんとしたりとか。それとちょうど清春さんとお近づきになった時に父親が病気になって。
清春:そうだね。
有村:死期が近かったということもあって、その話を清春さんにしたら、清春さんのお父様も。
清春:僕もちょい前に父を亡くしてたからね。先輩、後輩とか関係なく、数年前に先に経験して僕もすごく辛かったので、その時の気持ちだったり「こういうふうに思うようにすれば楽になるんじゃないかな」って話したり。
有村:それはすごく大きかったですね。僕ら、特殊な仕事をしてるじゃないですか。似たような経験をしている先輩は清春さんだけだったので、当時は3日に1回ぐらい会ってたような気もするし。
有村竜太朗 撮影=横井明彦
父親が亡くなった時も実家の千葉から東京に帰る途中、レインボーブリッジで清春さんに電話して、恥ずかしながら号泣したのを覚えてます。
――そんなに頻繁に会ってたんですか?
有村:そうですね。
清春:あと竜太朗くん、入院したよね?
有村:はい。オヤジが亡くなって2~3ヶ月後に(ギランバレー症候群で)入院しましたね。
清春:ビックリしてお見舞いに行って。
有村:年末の忙しい中、地方から来てくれて。
清春:優しいでしょ?(笑)
有村:優しいですよ~。
――それは感動しますね。
清春:今だから冗談で言えますけど、当時は本当に心配で。Yahoo!ニュースで見て“マジ? せっかく仲良くなれたのに”って。
有村:2日間ぐらい首の下が動かなかったですからね。幸い3日間ぐらいですぐ回復に向かったので、清春さんが来てくれた時には上半身が動くようになったんですよ。で、「あれ? 髪の毛、サラサラじゃん」って言われて。
清春:入院してるクセにサラサラなんですよ。
有村:やー、清春さんがお見舞いに来てくれるっていうから、朝、病院のシャワーの予約とったんですよ。
――清春さんパワーもあって回復も早かったのでは?
清春:いや、いや。お父さんのことも聞いていたから、続いててかわいそうだなと思ったんですよ。精神的にくるじゃないですか。
有村:そうですね。原因不明の神経系の病気だから、そういうのもあったのかなって。父親が亡くなった時も実家の千葉から東京に帰る途中、レインボーブリッジで清春さんに電話したんです。喪主だったので、全部終わった後に話して、恥ずかしながら号泣したのを覚えてますね。
清春:僕も喪主だったからね。
有村:こういう仕事をしていることを(親は)喜んでくれた部分もあるけれど、どこか後ろめたいところもあって。いろんなことを清春さんに相談していて。
清春:環境的に似てたんですよね。僕は先に経験しただけなので。
有村:で、ひと段落してから、お酒の場所だったり打ち上げだったりに一緒にいさせてもらうようになって。
――そういうことがあると関係性も深くなりますよね。
有村:その時期にぎゅっと凝縮された感じだったので。
――心を開いて頼れる兄貴ですか?
有村:頼れる兄貴です(笑)。
清春:ほら、こういう対談って褒め合ったりすることが多いじゃないですか。
有村:あ~。
清春:でも、本当に仲が良かったり、信頼できる人っていうのは実は音楽界ってそんなに多くなくて。彼の場合は安心感がありますね。安定感というか。
有村:安定感……。嬉しいですね。
――どんなところが信頼できるんですか?
清春:音楽をすごく知ってて研究してるし、それが曲に出てる。いろいろ一生懸命ですよね。“こうでもない”“ああでもない”って楽曲を生み続けているし。音楽を長くやっている人は仲良くても悪くても信用できますね。上がりっぱなしじゃなくて、山あり谷ありを繰り返してずっと続けている人は信頼できる。
有村:今回、ソロを出したことも清春さんの存在は大きいんですよ。アーティストって自分にできることがあるなら音楽だけじゃなくてものを生み続けていかなきゃいけないんだって。
清春:ソロの話をしたのってだいぶ前だよね?
有村:そう。いちばん最初に言って。清春さんにも「やったほうがいいよ」って言われてて。
清春:「いつかやろうと思ってるなら早くやったほうがいいよ」って。こんなこと言うとプラのファンの人たちに「(ソロを勧めたのは)オマエか?」って言われそうだけど(笑)、本人がやりたいって言うから。
――先輩としてアドバイスしたまで?
清春:経験者として。
有村:黒夢、Sads、清春さんのソロ、弾き語りといろいろ見させてもらって、自分もボーカリストで演者だから単純に“楽しそうだな。いろんなことができていいな”っていうのがあったんです。同時に“絶対、大変だよな”って。だっていっぱい曲書かないとならないし、ライブもいっぱいやらなきゃいけないしって。でも、清春さんを見ていて“やってみたいな”“やる価値はあるかも”ってぼんやり思ったんですよね。だから相談もしてたし。キッカケはいくつもあるんですけど、清春さんは大きなトリガーでしたね。前回、対談した志磨遼平くん(ドレスコーズ)に初めて会った時にも“へえ。こんなに面白い若者がいるんだな”と思ったこともそうだし、Plastic Treeが武道館でライブをして今のメンバー全員が曲を書けるようになった時に“俺、違うところでも曲書いてみたいな”と思ったのも事実だし。いろんなことの組み合わせなんですけど、清春さんはバンドもやっているソロのボーカリストで1人しかいない先輩っていうのがデカいんですよね。例えば僕、たまに人の曲の弾き語りとかやるんですけど、それも清春さんの影響ですからね。
清春:言い方は乱暴だけど、もともとソロというか、Plastic Treeというブランドがあるとしたら、彼がデザイナーでしょ? GUCCIもDiorもデザイナーってどんどん変わっていく。独立して自分のブランドを持ったとしても、そのテイストが好きな人はそのデザイナーが関わってる新しいブランドを見たら同じ匂いを感じるとかってあるじゃない。だから、バンドとソロの違いってみんな気にしてると思うけど、竜太朗くんのソロアルバム(『デも/demo』)を聴いて思ったのはソロっぽいところもあるけど、バンドっぽいところも多い。“これプラじゃん”と思う曲もあるかもしれないし、“これソロっぽくて寂しいな”と思う曲もあるかもしれないんだけど、Plastic Treeと有村竜太朗の違いを探すほうが無駄だと思うんだよね。なぜなら彼はデザイナーだから、同じじゃないと嘘じゃないかと。たぶん、竜太朗くんも同じ匂いを出そうとか考えてないんじゃないかな。10回ぐらい聴いたけど、有村竜太朗全開だと思いましたね。イコールPlastic Tree。
有村:デザイナーっていうのはすごくわかりますね。もともとPlastic Tree用に作っていた曲だったし、清春さんがおっしゃる通り、バンドで形にできなかったものを仕上げることだけに特化してやっていたので、あまり何も意識してなかったし。いかに自分の理想に近づけることができるか、モチベーションを保てるか。レコード会社と契約して出すとかも決まってなかったので時間は山ほどあると思っていたし。
――長いバンドなだけにソロに対してのファンの反応はどうなんですか?
清春:気になるところだよね。
竜太朗:喜んでもらえたのかなぁって。最初、何も考えてなかったと言ったら嘘になりますけど、Plastic Treeのファンは曲ファンが多いから、作品が好みな人にはあまり抵抗はなかったみたいですね。
清春:今回、有村竜太朗名義で出したじゃない? 僕は初めて清春としてソロを出した時、嬉しかったんです。バンドでデビューして10年後ぐらいにソロデビューして、自分の歴史の中のターニングポイントだったと思うんですよね。今、竜太朗くんは1stアルバムだからソロということに戸惑いを感じる人もいるかもしれないけど、何枚か出していったらファンの人も今、気づかないことに5年後、10年後に気づくと思うんですよ。ピーター・マーフィー(ex.バウハウス)だってそうだろうし、みんな、そう。ずーっと同じバンドでやる場合もあるけど、そういうタイプじゃなかっただけの話なんじゃないかな。
有村:逆にそういうタイプじゃなかったから、バンドが長く続いたんですよ。ほかのメンバーも含めて作っていくことが好きだから、バンドを閉じる意味もないし、たまに違うところで表現するのも必然だなって。作った後に思うのは自然の摂理に近いというか。
清春:だから、ファンの人も楽に考えたほうがいいね。シンプルにプラも聴けるし、竜太朗くんのソロも聴けるし。僕にしても彼にしてもソロの欲求はあったのかもしれないけど、そういう気持ちを育ててくれたのはファンのみなさんが愛し続けてくれたからだとも言える。
有村:そうだと嬉しいですね。そのアーティストが目指すものが好きなら生み出す曲を聴けないより絶対に聴けたほうがいいじゃないですか。ライブだってたくさん見られたほうがいいし。そんなに人の一生は長くないし、アーティストもモチベーションがいつまで続くかわからないような生き方だと思うんですよね。自分の意志もあるだろうけど、そうじゃない意志も働いているのかなと思うぐらいにアーティストって無形なのかなって。だから生み出せるものがあるなら絶対、いっぱい生み出したほうがいいし、発表する環境があればいいし。
清春 撮影=横井明彦
竜太朗くんは酔っぱらうと僕の膝に頭乗せてきたりして。
1回じゃないですからね。かわいいですけど。
――ふだんもこういう真面目な話をしてるんですか?
清春:しますよ。好き嫌いとかこう見えて彼はハッキリ言いますからね。ふわっとしてるように見えるけど、繊細なところと力強いところ、ロックなところ、アートなところ、全部持ってる。ロックなところしかない人とか繊細なだけの人はつまらないの。
――なるほどね。意外性があるんですね。話すテンポからしてふわっとしたイメージはありますけど。
有村:物腰は柔らかいほうだとは思うけど(笑)。
清春:ガンコだよね。表現方法が。
有村:(笑)ガンコですね。
――へえ~。いろいろ共通項がありそうですよね。お互いにファッションセンスにも長けているし。
有村:いや、いや、僕は盗んでばっかりで(笑)。
――飲みに行くと長~く飲んでるんですか?
清春:まぁ、竜太朗くんは飲んでますね。
有村:僕はピッチが早い分、壊れるのも早いんです(笑)。
――清春さんはファンが知らない面も知ってるんですね。
有村:やー、ファンも知ってますからね。
清春:そうなの?
有村:FC旅行で平気で潰れて途中で退場とか(笑)。
清春:(笑)そうなんだ。竜太朗くんは酔っぱらうと僕の膝に頭乗せてきたりして。
――(!)膝枕ですか。
清春:僕は面白がってるんですけど、まわりが気を使ってくれたり。
有村:後からまわりに言われるんだけど、僕は「清春さんに膝枕なんか、するわけないです!」って(笑)。
清春:1回じゃないですからね。かわいいですけど。
――そんなに甘えているとは。
有村:(笑)やー、「清春さん、聞いてくださいよ~」って言ってるうちに気を失ってるんでしょうね(笑)。
――今後は共演もありえそうですね。
有村:したいと思ってます。
清春:MORRIE(DEAD END/Creature Creature)さんとかバンド出身でカッコいいソロ出してる人と集まって何かやりたいですね。しかも芸能人っぽくない人のみ。今の“大勢VS大勢”みたいなフェスじゃなくて、1対何百人とか何千人みたいな関係のライブが何組も観れるっていう。
――今のうちに清春さんに主催頼んでおいたほうがいいんじゃないですか。
清春:や、せっかくソロ出したんだから竜太朗さん主催で(笑)。
有村:いやいや(笑)。ソロ出すずいぶん前に清春さんから、そういうことを言われたことがあったんですよ。いいなぁって。
清春:実はそういうイベントをやりたくてイベントタイトルとして『SOLOIST』というのを考えたんです。結果、それがソロアルバム(2016年)のタイトルにもなったんですけどね。
有村:ギターと歌でも、ピアノと歌でも、歌だけでもいいし、シンプルな表現で声を届けられるような人たちが集まって、いつか、そういうことがやれたらいいですね。
取材・文=山本弘子 撮影=横井明彦
【第1回】有村竜太朗(Plastic Tree)×志磨遼平(ドレスコーズ)“バンドのフロントマンがやるソロ” を語る
『CARMEN'S CHARADE IN DESPAIR』
1/15 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE(FC ONLY)
1/26 恵比寿 LIQUIDROOM
1/28 名古屋 BOTTOM LINE
2/04 岐阜 club-G
2/05 岐阜 club-G
2/09 梅田 CLUB QUATTRO
2/10 梅田 CLUB QUATTRO
2/12 仙台 Rensa
2/25 新宿 ReNY
2/26 新宿 ReNY
2016年11月23日発売
【初回盤A】IKCB-9550~1 ¥3,700+税
初回盤A
-CD-
01. 幻形テープ / genkeitêpu
02. 浮融 / fuyuu
03. 魔似事 / manegoto
04. また、堕月さま / mata,otsukisama
05. うフふ / ufufu
06. 猫夢 / nekoyume
07. 鍵時計 / kagidokei
08. 恋ト幻 / rentogen
op.1
op.2
op.3
-DVD -
「有村 竜太朗 映像作品集 2016」
【初回盤B】IKCB-9552~3 ¥3,700+税
初回盤B
-CD-
01.幻形テープ / genkeitêpu
02.浮融 / fuyuu
03.魔似事 / manegoto
04.また、堕月さま / mata,otsukisama
05.うフふ / ufufu
06.猫夢 / nekoyume
07.鍵時計 / kagidokei
08.恋ト幻 / rentogen
op.4
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有村 竜太朗 映像作品集 2016」
【通常盤】IKCB-9554 ¥2,500+税
通常盤
01.幻形テープ / genkeitêpu
02.浮融 / fuyuu
03.魔似事 / manegoto
04.また、堕月さま / mata,otsukisama
05.うフふ / ufufu
06.猫夢 / nekoyume
07.鍵時計 / kagidokei
08.恋ト幻 / rentogen
Tour2017「デも/demo」
2017/1/12(木)大阪梅田AKASO
2017/1/13(金)名古屋ボトムライン
2017/1/23(月)品川ステラボール
開場/開演 18:00 / 19:00
入場時別途ドリンク代必要、3歳以上有料、3歳未満入場不可
一般発売日 2016年12月18日(日)