jealkb「俺たちのファンであることに自信を持ってください」年内最後のワンマンで示した純粋な音楽の楽しみ方
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jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
「これまで、いくつかテレビ番組にも出させてもらってきました。もちろんそのすべてに感謝しています。でも、僕らの音楽を真っ直ぐに誤解のないように伝えてくれた音楽番組は、先日の『Good Time Music』(TBS 系列 水曜 0:10 - 0:55)だったと思っています。これからもそういう音楽番組と、ありのままのjealkbを伝えていけたらなと思っています」(haderu)
12月2日。渋谷O-EASTで行なわれた2016年最後のワンマンライブ『夢路薔薇ノ誓 2016』の中盤のMCで、haderuはそんな言葉をオーディエンスに伝えた。実に。この言葉は、結成当初から彼らの音に触れてきた私にとっては、とても深く頷けるものだった。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
2005年の結成から数え11年を迎えるjealkb。メンバーがお笑い芸人という職業を持ちながらも、真摯に音楽を続けてきている彼らなのだが、haderuの言葉からも分かるように、“芸人のやっているバンド”という見られ方をし、正直、軽視されている節は残念ながらあった。いや、そして、それはいまだにある。さらに、彼らの名前の由来でもある、ビジュアル系の“ビ”の文字を一番後ろに回し“ジュアル系ビ=ジュアルケービー”としていることからも解るように、彼らは“ヴィジュアル系”というシーンを、自らのバンドスタイルとして選び、現在も名を残すビックアーティストを生み出してきたそのシーンへのリスペクトも込め、自らのコンセプトもそこに的を絞っていたのだが、実は、その選択自体も、さらにjealkbというバンドが軽視される要因となったのである。
言葉を選ばずに本音を書くとするならば、jealkbというバンドの音をちゃんと聴いた者なら、本気で音楽をやっている奴らだということが伝わらないわけはない。もちろん、音楽というのは聴く者の好みもある為、万人が“いいね!”と共感するとは限らない。が、しかし。リーダーであるelsaが生み出す楽曲はどれも、彼自身が音楽好きであることが伝わってくるコアなヘヴィさを軸に感じさせながらも、オナニーになることなく、聴き手に寄り添ったキャッチーさを持つものであり、短く限られた文字数の中で伝えたいことがしっかりとまとめあげられた上に、メロディとのハマりが絶妙な“譜割り”を魅せるhaderuの歌詞も、実に職業作家並み(いや、それ以上かも)のクオリティなのである。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
演奏スキルも、結成当初はお世辞にも上手いとは言えなかったが、バンド経験者であるelsaがしっかりとボトムを支える上に、最近現正式メンバーとなったsapotoを師匠とし、必死でギターを練習してきたedieeの演奏力も目を見張るほど上達し、古くからjealkbの音を認め、対バンを行ってきたMUCCのボーカリストの逹瑯の企画バンド(カラス)のベーシストとして参加し、自覚を高め、さらに練習に励んだdunchのプレイテクニックも当初とは比べ物にならないほどにアグレッシブに変化し、ダンス担当としてライブをリードしてきたhidekiは、いまや最高に切れ味のいいラップもjealkbのフックとなっており、曲によってはhaderuとのツインボーカルを最高の相性でみせつけるのだ。
しかし。“ギターロック万歳!”と言っていることこそが、真の音楽好きだと勘違いしている奴らからしてみれば、彼らの真の音楽性に触れる以前に“聴く価値、触れる価値すらない音楽”なのであろう。そう思うことで自らのプライドを保ち、自らに酔えるのであれば、それもそれでありだろう。だが、ギターロックと呼ばれるシーンの中でも、確実に二番煎じだと思うバンドが絶賛され、ヴィジュアル系と呼ばれるシーンの中で完全に頭1つ抜けた個性を確立したバンドでも、やっぱりヴィジュアル系ということで軽視されている現実を見ると、本当に辟易する。カテゴライズなんて関係ないし、そもそもカテゴライズする意味が解らないし、そこに境界線を引く意味も解らない。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
この日、haderuが「音楽とは、音を楽しむことです! jealkbは、音を楽しめるバンドです」と何度も言い、hidekiに「漢字の意味講座かよ!」と突っ込まれ笑いを取っていたが、間違いなく、haderuが言うとおり、jealkbは、“純粋な音楽の楽しみ方”を教えてくれるバンドなのである。jealkbの音は、もっと高い評価を受けていいと感じているし、その楽曲の良さと歌詞の完成度の高さは、もっと多くの人々に、そして、幅広い世界で認められるべきだと私は思う。
やはり、お笑い芸人の性として、ライブの運びの中にもふんだんに笑いの要素は盛り込まれているのだが、それこそが彼らの個性であり、それを“ロックじゃない”とか“硬派じゃない”とか“本気でバンドやってない”とか言うのはお門違いである。本気でなければ 11年も続けることは出来はしない。まず、一度、彼らの音に触れてみてほしい。そうすれば、そんなくだらない誤解など、一瞬にして吹き飛ぶはずだから。
実際。この日のライブでは、jealkbの本気度と楽曲の良さを熟知したつもりでいた私でさえ、改めて彼らの本気度と楽曲の良さを見せつけられたのである。いやはや。11年目にしてこんなにも成長し続けているバンドも珍しい。いままで影(サポート)でjealkbの音を支えてきたsapotoが正式加入したこともあり、全体的に底上げされたとでも言おうか。バンド全体の音圧が増し、バンドとしての一体感がより一層強くなった印象だった。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
ヴィジュアル系というシーンにこだわり続けてきた彼らでもあるが、そこも、しっかりとメイクや振り付けなどオマージュだけは残し、これまでのデコラティブな衣装はすっかり脱ぎ捨てた“jealkbという個性”を確立させていたのである。
3年ぶりのリリースとなったニューシングル「reboot」(11月2日にリリース)を1曲目に置き、硬派なサウンドとメッセージで幕を開けると、間髪入れずに同シングルのカップリング曲「A ray of hope」へと繋げた。メタル要素を感じるイントロを持つこの曲で盛り上げると、3曲目にjealkbの決意を歌った「jealize」を届けたのだった。
「会いたかった?」というhaderuの問いかけに、オーディエンスは、「会いたかった~っ!」の声を返す。
「ば~か。俺たちの方が会いたかったよ」(hederu)という、jealkbのライブでは“お決まり”の挨拶も忘れはしない。
「ノッケからこんなこと言うのもなんですけど、すごくカッコ良くなったと思うんです。再起を切ったからには、jealkbの新しいサウンドを出していきたいから。まだまだ夢の途中なので、武道館目指して壁ぶち破って行こうぜ!」と畳み掛けたhaderu。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
彼らは昨年、会場限定で、「立体 girl 二次元 boy」、「永遠コロス」、「to 謝謝 BOY」、「Liberty」、「カモンベイベ」、「アイラブアニマル」等の【DEMO CD】を販売したのだが、リスナーは、その日に手にした音源が、早くもその日のライブで聴けてしまうということと、開催都道府県居住者(東京は除く)に、入場時1,000円がキャッシュバックされるという新たな企画を導入した関東圏を中心にまわったツアー『関東制圧薔薇撒キ TOUR』を行ない、動員を確実に取り戻したのである。それこそが、haderuの言う“再起”なのだ。
重心を低く構え、よりヘヴィにアレンジされ、ところどころにマイナーチェンジが施された旧曲たちは、華やかさを失うことなく、よりロックな印象に変化していた。「Liberty」では、edieeとsapotoがギターを弾きじゃくり、dunchのベースとelsaのバスドラを軸としたリズム隊が聴かせどころを担った煽りブロックでオーディエンスを惹き付け、hidekiがスタッフに肩車され、フロア後方まで煽りにいくというjealkbならではの聴かせ方、魅せ方で会場を盛り上げていったのだった。
「Packya Ma Lad」では、hidekiが先導する振り付けに合わせ、オーディエンスがGO GOダンスしながらその場で一周するという、これも前代未聞、唯一無二なjealkbのライブの盛り上げ方である。が、これも、“カッコイイ音楽をやりつつも、楽しませることを忘れない”彼らならではの魅力がふんだんに詰め込まれた1曲なのである。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
そして彼らは中盤に、オーディエンスが胸の前で灯す、透明なルミカの光に包まれながら、“いつまでも夢を一緒に追いかけられたら――”という願いを込めて作られたというスローチューン「by your side」を届けたのだった。
さらに、斬新なノリとパフォーマンスを見せつけられたのは、新曲「Reverse Bonito」である。ナント、ここでは、“カツオ入れ”と書かれたダンボール箱の中に入ったカツオのぬいぐるみがステージへと持ち込まれ、haderuとhidekiがカツオをフロアに投げ込み、オーディエンスがそれをステージへと返す、“戻りカツオ”なるノリで楽曲を盛り上げたのだった。まさに。カツオの逆ダイ、モッシュの応酬である(笑)。後にも先にもロックバンドでカツオの乱舞が見られるのは、此処だけだろう。
「すげぇ素晴しい夜でした。本当に今日来てくれてありがとう。迷いに迷った11年間でしたけど、こっからはもう大丈夫。jealkbって何をしたらいいのかが解ったから。俺たちは迷わないし、みんなも迷わせない。だから、2017年は、安心してjealkbに付いて来て下さい。俺たち、絶対に大きくなるから! この時から支えてくれたみんなのこと、絶対に忘れないから! 絶対行こうな武道館!」(haderu)
そんな力強い言葉を残し、本編を締めくくった彼らだったが、鳴り止まぬアンコールの声に、edieeがボーカルを務める「マラチータ」を1曲目に「恋する日曜日」「Sadistic Maria」「FIREBIRD」「Reverse Bonito」を届け、ステージを後にしたのだった。
この日は純粋に音楽を楽しめた時間でもあったが、彼らの“本気”が伝わってきた言葉も心に残ったライブだった。印象的だったのは、この日のライブの為にビラ配りをした時の話をしたdunchのMCも、とても胸を打つものだったことを加えて記しておこう。
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
「今日は本当にありがとうございます。きっとお友達を誘って来てくれた方もいらっしゃると思います。ここからの景色最高です! この前、ビラ配りをしたとき、“jealkb”というバンド名を言うと反応してくれる人も中にはいたんですけど、“まだやってたんですか!?”とか“懐かしい!”という言葉が正直とても多くて。僕たち、ずっと止めることなく活動して来たんですけど、世の中的にはそういう認識なんだなと……。でも、最近本当に久々に「reboot」をリリースしたことで、聴いてくれた人も多くいて、“最近リリースしてましたよね! 頑張って下さい!”って、中には、“頑張って下さい! ライブ、絶対に行きますから!”って、温かい飲みものを買って来てくれたりする人も居て……(涙ぐむ)。なので、武道館を目指してこれからも頑張って行きたいと思っています」(dunch)
そして。最後にhaderuが残した言葉。
「jealkbは音を楽しむバンドです。jealkbのファンであることに自信持って下さい!」(haderu)
その音に心を動かされ、人生までも変わる力を持っているのが音楽であり、バンドであると思う。故に、「俺たちのファンであることに自信を持ってくれ」と言い切ってくれるバンドであって欲しいと願っている。まさに、haderuはこの日、その言葉を、ライブの最後にオーディエンスに言ったのだ。
結成から11年。新体制になったjealkb。彼らは今、本当の意味でスタート地点に立てたのかもしれない。2017年はニューアルバムをリリースする予定だという彼らは、いったいどんなjealkbを魅せてくれようとしているのだろう。
今からでも遅くはない。是非、まだ音を楽しむことを知らないロックファンと、ロックには馴染みが無いと敬遠する人たちは、彼らの音に一度触れてほしい。
やり続けることの意味。音楽の楽しさ。本当の意味でのロック。そして、人間のあらゆる感情と業。とにかく、彼らから届けられる音と歌には、数えきれないほど学ぶ事がたくさん詰まっているということを、是非とも知ってもらいたい。そして。彼らをここまで支えてきたジュアラー(彼らのファン)には、これまでと変わらぬ愛で彼らを支えていってほしい。
もちろん。私も、今後の彼らには期待しかない。何故なら、彼らの本気の勝負はここからだと思っているから。そして。いつか、彼らと共に、屋根の上に光る大きな玉ねぎの下へ――。
取材・文=武市尚子 撮影=Chika
jealkb 2016.12.2 TSUTAYA O-EAST『夢路薔薇ノ誓 2016』撮影=Chika
2016年11月2日(水)発売
¥1,200(税込)
<収録曲>
1. reboot
2. by your side
3. System
4. A ray of hope