早池峰岳神楽 バリ島のバロンダンスと競演
早池峰岳神楽デンパサール公演のポスター
早池峰岳神楽の権現様とバリ島の聖獣バロンがついに競演! 日本の神楽とバリ島のダンスが、この8月末にインドネシアのバリ島で共演する。神楽とバリのダンスに、共通点なんてあるのだろうか。はたして共演は可能なのか?
今回、日本からバリ公演に向かうのは、世界遺産指定(無形文化)、重要無形民俗文化財の、岩手県・早池峰岳神楽。2つの神楽座があるうち、早池峰神社の奉納神楽である「岳神楽」が参加する。テンポが速く、舞いが勇壮。おはやしに合わせて踊るというよりは、何かがのりうつったような激しい動きが特徴だ。
早池峰山は大昔から山岳信仰の霊場だったので、早池峰神楽は修験山伏たちが舞い継いできたといわれ、舞のなかに祈祷の型も取り入れられている。神楽を奉納する季節や催事などによって、40番以上ある演目の中からさまざまな組み合わせで上演されるが、最後に必ず「権現舞」を舞う。神仏が獅子の姿で舞台にあらわれ、あらゆる災厄をはらい、人々の幸せを祈祷する、とても重要な舞だ。
いっぽう共演相手のバリのダンスは、「バロンダンス」。これは、どんな踊りなのだろう。
バロンとは、これまた大きなお獅子のような伝説の動物。バリの寺院祭でチャロンナランという悪魔祓いをするときに「善」を表す聖獣とされる。鉦(かね)や太鼓が激しく打ち鳴らされる舞台で、バロンは「悪」の象徴である魔女ランダと闘いの舞いを繰り広げる。おもしろいことに、この舞いには終わりの形がなく、いきなり打ち切られる。善と悪の闘いは終わらない、という意味だそうだ。
バリ島での共演を企画した町田ももみさんは、じつはバリではなくパリ在住。パリで毎年行われている世界各国の郷土芸能を紹介するイベントで、なんの予備知識もなく偶然、岳神楽に出会った。
「衝撃でした。いきなり大音響の太鼓と鉦のメッタ打ち! 不思議な装束や、お面をかぶった舞手の動きなど、とにかく全部『ヘン』! 最後まで唖然としつつ、舞台に釘付けでした」
こんなにすごい伝統芸能が日本にあることを知らなかったなんて、と、憤りに近い興奮を感じたという。インドネシアの人々だけでなく現地在住の日本人にも、彼女がフランスで感じたのと同じ驚きをもたらすことができれば、と期待している。
岳神楽保存会会長の小国朋身さんは、以前バリ島でバロンダンスを見たとき、バロンにお供えをしたり、面や装束がふだんは寺院に大切にしまわれたりしている点が、岳神楽の「権現様」に似ているし、バリの人々の神々への信仰が暮らしの中に根付いていることも、自分たちの集落と似ている、と感じたそうだ。次の海外公演の機会にはぜひインドネシアで、と思っていたとのこと。バリ島で、すばらしいスパークが起きそうだ。
インドネシア公演で岳神楽は、バリ島のインドネシア国立芸術大学デンパサール校でバロンダンスとの競演やワークショップを行い、その後、ジョクジャカルタで開かれる「2015年ジョクジャカルタ・ジャパンウィーク」に、メインゲストとして登場する予定。
これらの公演を日本から見に行くツアーも企画されている。
詳しくは、公式サイトへ。
http://takekagura.wix.com/takekagura-indonesia
日時:2015年8月31日〜9月6日
会場:インドネシア・バリ島、ジョグジャカルタ
出演:早池峰岳神楽保存会