観る者すべてを惹きこむシンガーソングライター・カノエラナの個性とリアルとは
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カノエラナ
『とうめいはーん!!! さがすぜ勇者たち。』東京公演 2016.12.2 渋谷CLUB QUATTRO
カノエラナというシンガーソングライターが持つ強烈な個性に誰もがぐいぐいと惹き込まれてしまうライブだった。今年8月に1st mini albun『カノエ参上。』でメジャーデビューを果たし、“前髪ななめ”をトレードマークに、期待の新人として注目を集めているカノエラナ。彼女が渋谷CLUB QUATTROで開催した初のワンマンツアー『とうめいはーん!!! さがすぜ勇者たち。』のセミファイナルは、ときにユーモア溢れる演出でフロアを笑顔で包み込んだかと思えば、次の瞬間にはその真摯な歌声で聴き手の心を強く揺さぶる歌が響かせる瞬間もあった。まだ20歳ながら、すでにカノエラナの全身からはエンターテイナーとしての貫禄が溢れていた。地元・佐賀県のファイナル公演のみを残して、約1年ぶりに渋谷CLUB QUATTROのステージに立ったカノエは、その強い眼差しで遥か先に広がる夢をたしかに見つめていた。
影アナが終わり、まずはサポートメンバーが楽器をスタンバイしたところで、大きな歓声を受けながら、カノエがステージに現われた。「今日は盛り上がっていきますよー!」と元気に叫ぶと、1曲目の「カノエラナです。」から全開のパフォーマンスで会場の熱気をピークへと押し上げていく。おそらくカノエにしか描けないであろう幽霊の切ない恋を描いた「恋する地縛霊」では、コール&レスポンスで会場が一体になる。アコースティックギターを弾きながら、歌謡曲のような懐かしいメロディを紡ぐカノエの芯のある歌声。自由な気風で型破りに我が道をゆくロックガールをがっちりと支えるサポートミュージシャンたちの、骨太で堅実なバンドアンサンブルも頼もしい。
「やっぱりクアトロは広かね~」。佐賀弁のMCでフロアを和ませたカノエが小さな身体を大きく動かしながらハンドマイクで歌った「シャトルラン」では、ベースの木谷将夕が吹く笛の音が楽曲にインパクトを与えていた。そして、アニメ好きなカノエの趣味が暴走した「あたしの彼氏は二次元の人」へ。ポップでキャッチーだが、どこか歪でヘンテコなカノエラナ独特の歌には、妙に耳に残って気になるフレーズが多い。「カノエ幼稚園がはじまります!たぶん預けんほうがいいけど(苦笑)」という、少し自虐気味な曲紹介で披露した「大事にしてもらえよ」では、ピアニカの音色を加えた“みんなのうた”のような楽曲で会場を温かい雰囲気に変えると、「真夏に片想い?」の曲中でメンバー紹介。それぞれのメンバーを魔法剣士、踊り子、バトルマスターと、ドラ〇エ風の職業分担をつけて呼び笑いをとりながら(ちなみにカノエは旅芸人)、みるみる会場をひとつにしていった。
11月25日より配信リリースがスタートした新曲「おーい兄ちゃん」ではカノエ流のブルースとも言えるような哀愁漂うナンバーでステージを真っ赤に染めると、終盤のハイライトになったのは「I」だった。歪んだギターが奏でる混沌がやがて晴れてゆくように解放へと向かうバンドサウンドにのせて、<運命、宿命、私は、負けない>と力強く歌うエモーショナルなロックナンバーは、自らの手で未来を切り拓いていくのだという、カノエラナの決意の歌のようにも聴こえた。明るく元気なロックガールとしてのカノエラナがいる一方で、誰の心にもある葛藤や苦しみをつぶさに代弁する表現者としてのカノエラナもいる。それもまた彼女の大きな魅力であることを思い知らせてくれる瞬間だった。
「テンションあげていきますか? スーパーハイテンションになるまであがっていきたい!」と、クライマックスへ向けては、ますます激しくフロアを煽っていくカノエ。1曲目の「カノエラナです。」に続く、もうひとつの自己紹介ソング「ヒトミシリ」では、みんなで歌を練習したり、「男子ー?」「女子ー?」からはじまり、「メガネー?」など様々なバリエーションで煽るコール&レスポンスでも会場を盛り上げていた。そして、ラストソングは「START」。ピアノの伴奏にのせて、「こんなメロディです」とアカペラで歌い始めると、サビではファンからのサイリウムのサプライズ演出があり、一斉に緑の光で会場を照らした。そして、少しずつ演奏を消して、フロアに響き渡ったお客さんの声。カノエはバンドメンバーと顔を合わせて、とても嬉しそうな表情を見せながらライブは幕を閉じた。
アンコールでは、男子が「カノエ!」、女子が「ラナ!」と叫んで、お客さんはカノエの再登場を待っていたが、それは次第に「ハッピーバースデートゥーユー」の大合唱に変わっていった。このライブの2日後に21歳の誕生日を迎えるカノエを一足早く祝福する歌声に包まれて、ツアーTシャツに着替えたカノエが再びにステージに登場。「私もあと2日で21歳になりますけど、全力をもって生きたいです!」と、カノエらしく宣言。来年2月15日に2nd mini album『カノエ上等。』をリリースすることを発表すると、そのなかから新曲「トーキョー」を初披露した。軽やかなビートにのせた陽性のロックンロールナンバーには、高校卒業と同時に10代で上京してきたカノエだからこそ歌える東京へのリアルな想いが綴られていた。そして、最後は「この私が新曲で終わるわけないだろうがー(笑)!」と叫んで、「夏の祭りのわっしょい歌(か)」でフィニッシュ。お客さんがタオルを頭上で一斉にぐるぐる回すという最高の景色を作り上げて、約2時間のライブを締め括った。
前髪が斜めだったり、自己表現が苦手な自分をあえて曝け出したり、二次元の彼氏を歌ったり。カノエの作風は“イマドキのちょっと不思議チャンな女の子”という印象もあるが、ステージに立つ彼女は、ときに誰もが胸に抱く悲しみや葛藤をリアルに代弁することもできるシンガーソングライターだった。その両方を自分の歌として表現するバランス感覚は、まだカノエが21歳であることを忘れるほどミュージシャンとしての成熟を感じる。そんなカノエラナがここからどんなふうに自分の道を切り拓いてゆくのか、とても楽しみだ。
取材・文=秦理絵
1. カノエラナです。
2. 恋する地縛霊
3. シャトルラン
4. あたしの彼氏は二次元の人
5. こまか
6. 大事にしてもらえよ
7. YES WOMAN
8. 真夏に片想い?
9. My World
10. おーい兄ちゃん
11. 星と太陽
12. I
13. ヒトミシリ
14. モットアタシヲ
15. START
[ENCORE]
16. トーキョー
17. 夏の祭りのわっしょい歌(か)
WPZL-31266/7
¥2,000+税
WPCL-12513
¥1,500+税
01. トーキョー
02. おーい兄ちゃん [MV]
03. マネキネコ
04. ひとりかく恋慕
05. ピザまん
06. 恋とか愛とかそーいうの
2016年12月2日カノエラナ 初ワンマンツアー「とうめいはーん!!! さがすぜ勇者たち。」渋谷CLUB QUATTRO公演ライブ映像
*収録楽曲未定
3月18日(土)
埼玉・さいたま新都心HEVEN'S ROCK
15:30 / 16:00
福岡・Queblick
18:00 / 18:30
大分・Club SPOT
15:30 / 16:00
熊本・Django
15:30 / 16:00
長崎・STUDIO Do!
18:00 / 18:30
鹿児島・SR HALL
15:30 / 16:00
宮崎・SR BOX
15:30 / 16:00
佐賀 RAG・G
18:00 / 18:30
石川・金沢ミリオンシティ
15:30 / 16:00
大阪・南堀江knave
15:30 / 16:00
宮城・仙台enn 3rd
15:30 / 16:00
北海道・札幌COLONY
15:30 / 16:00
静岡・浜松FORCE
18:00 / 18:30
広島・SECOND CLUTCH
15:30 / 16:00
岡山・CRAZY MAMA 2nd
15:30 / 16:00
香川・高松TOONICE
15:30 / 16:00
*各会場、ドリンク代別途必要
*未就学児入場不可、12才以下は保護者同伴の上