ビルボードで過ごすスタイリスティックスのクリスマス ビタースウィートな大人の時間
スタイリスティックス 撮影=KenjuUyama
スタイリスティックス大阪公演 2016.12.12 Billboard LIVE 大阪
ビルボードライブの12月・クリスマスシーズンといえばスタイリスティックス。1970年代前半、スウィートフィリーの風と共に登場。程なくやってきたディスコブームにもバッチリはまってヒットを飛ばし、時代を象徴し世代を代表する存在としてお馴染みで、今なお来日し続けてくれている。まず開演前の会場を見渡すと、キャリアが長いからこそのファン層の幅が実に興味深い。1970年代や1980年代に、ディスコを謳歌したであろう世代がほとんどではあるのだが、それよりも少し後追いのクラブ・ヒップホップ世代、20代と見受けられる若い人だけのグループや親子連れの顔もちらほら見られる。おそらく、中高年層は所謂”洋楽世代”のど真ん中を走った人たちで、若者は学校や職場では趣味を共有してくれる仲間が少ない”マニア”なんだと思う。着席して食事を取ることができるため、ネガティブな”待ち時間”という感覚がない、ビルボードならではの和やかな雰囲気の中で、様々な音楽への愛が溶け合う様が見えるよう。
ハロルド・エバン・ブラウン 撮影=KenjuUyama
ベースとギター、ドラムに3台のシンセ、まずはサポートのメンバーが静かに壇上に。照明がゆっくりと落ち「レイディース・アンド・ジェントルメン!」と力強い影アナが入って演奏が始まった「Rock'n Roll Baby」のイントロに乗って、おそろいのジャケットに身を包んだメンバーが登場。オリジナルのリードシンガー、ラッセル・トンプキンスJr.が持つ魅惑のファルセットボイスを若くして引き継いだ、ハロルド・エバン・ブラウンのパフォーマンスは、昨年も見事大役を果たす素晴らしいものだったが、さらに幾分か貫録が増したような気がする。
オリジナルメンバーであるエアリオン・ラブ、ハーバート・マレル、若手のジェイソン・シャープによるコーラス、ダンスの円熟味は、ファンと共に年を重ねてきたソウルミュージックだからこその味。続く「16 Bars」「Sing Baby Sing」のビタースウィートなメロディーと、ジェントルな身のこなしに、うっとりさせられる。その余韻のままに、ハーバートがナビゲーターとなって、スタイリスティックスの大きな看板のひとつ、バラードのエリアへ。イージーイングリッシュによるキラーフレーズがしっかりあるのも彼らの音楽の特徴で、「Stop, Look, Listen」では文字通り目と耳に手をやる振り付けを披露、甘くラブリー且つ一体感のある空気を演出してからの大ヒット曲「You Are Everything」で、会場の至るところから喚起の声が上がる。
スタイリスティックス エアリオン・ラブ(左)ハーバート・マレル(中)ジェイソン・シャープ(奥)撮影=KenjuUyama
フロアの熱が上昇する気流をさらに煽るように、ナビゲーターのハーバートは「バック・トゥ・ディスコ・エリア!」と高らかに声を上げテンポアップし「Lion Sleep Tonight」へ。トーケンズのヒットで知られるポップクラシックだが、パーカッシブで軽快なスタイリスティックスバージョンも良い。そこから「まだまだ」と言わんばかりに計4曲のメドレーで、ファンキーで腰にグッとくる、歌って踊れるナンバーを並べ、席を立った観客のダンスの輪がどんどんと広がっていく。続いては少しブレイク。キャッチーな美メロナンバー「Star On A TV Show」から、女性客をメロメロにせんとばかりの愛の歌「Becouse I Love You, Girl」へ。フィジカルの強いダンスナンバーからチークへと流れるベタな展開も、ミラーボールの輝きや時代の風情や感じさせてくれる。本編のラストは「You Make Me Feel Brand New」。エアリオンの低音ビブラートとハロルドのファルセットとのコントラストが沁み渡る。4人は一旦ステージを後にするが、サポートメンバーの演奏がまだ鳴り続け、一仕切りあって観客がアンコールを求める形式ではなく、熱いバイブがキープされているうちに再登場。
スタイリスティックス ハロルド・エバン・ブラウン 撮影=KenjuUyama
アンコール一発目は「Suddenly」。小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」を英語詞でカバーしたこの楽曲に、観客はほぼ総立ち。続くクリスマスソングメドレーではメンバーそれぞれがリードボーカルを取った。エアリオンが女性客の手を取り見つめながら歌う姿など、シャイな日本人男性にはとうていできない渋さ。最後は「GATSBY(ギャツビー)」のテレビCMに替え歌が起用されたことで、現代の日本においても老若男女にお馴染みの「Can't Give You Anything」で大団円を迎えた。歌が終わってなお膨らむ歓声、観客の求める握手などに、丁寧に応えるメンバーたち。ファン冥利に尽きる親密なコミュニケーションによって溢れる観客の笑い声こそ、最高のハーモニー。……と、少しクサいことを言いたくなった。
取材・文=TAISHI IWAMI 撮影=KenjuUyama
スタイリスティックス 撮影=KenjuUyama
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1. 16 Bars
2. Sing Baby Sing
3. Break Up To Make Up
4. Stop, Look, Listen
5. Never Get To Heaven
6. You Are Everyting
7. Lion Sleep Tonight
8. Disco Baby
9. Heavy Fallin' Out
10. Funky Weekend
11. Star On A TV Show
12. Because I Love You, Girl
13. Stone In Love
14. Betcha By Golly
15. Let's Put It All Toether
16. You Make Me Feel Brand New
[ENCORE]
17. Suddenly
18. X'mas Medley
19.Can't Give You Anything