「モンスト」劇場版は現代版『グーニーズ』&『ファイトクラブ』!?脚本家が込めた映画愛とは?

2016.12.23
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世界累計利用者数3500万人超の大ヒットアプリ「モンスターストライク」から生まれた劇場版アニメ『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』が、12月10日から公開されている。シナリオを手掛けたのは「僕だけがいない街」「ハイキュー!!」などで人物描写に定評あり、アニメ界で活躍する脚本家・岸本卓。「大学時代に、映画をむさぼるように見ていたので、今回『映画のシナリオが書けるチャンス!』と喜んで引き受けさせてもらいました」と言う同氏が、スマホゲーム発のオリジナル劇場作品を、どのようなアプローチで手掛けたのかを尋ねてみた。

物語の舞台は、YouTubeで配信中のアニメ版より4年前の世界。小学4年生の少年・焔レンは、体に蓄積された大量のエネルギーを放出できず苦しむドラゴンを救うため、同級生の水澤葵、若葉皆実、神倶土春馬と共に、“ゲート”と呼ばれる異界への入口を探す冒険に旅立つ――。“子どもたちの冒険”という依頼された大まかなプロットを聞いて、岸本が真っ先に思い浮かんだのは、人生で初めて劇場で観た映画『グーニーズ』(85)だった。

「子どもたちが、“現代世界”で海賊の宝を探すというところが好きなんです。だから『モンスト』も、見慣れた日常のどこかに冒険の入口があり、そこから旅立つワクワクするような物語を考えました」という同氏。さらに、江崎慎平監督との話し合いで『スタンド・バイ・ミー』(86)のような“ひと夏の冒険”を描きたいと意気投合したようで、「困難や障壁に立ち向かい、成長する子どもたちの、道行きの物語を描きたかった。その思いはビジュアルにも表れています」と話す。

そんな岸本が頭を悩ませたのは、レンたちが挑む敵の描き方だった。「いまは、勧善懲悪の物語にリアリティが生まれない時代なんだと思います。一見敵と対峙しているように見えて、実は自分自身と向き合っていたという『ファイトクラブ』(99)なんかが象徴的だと思いますが、だから敵モンスターは、倒すべき相手である事には違いないんですが、それはむしろ、子どもたちが成長したり、絆を育んだりするきっかけとして存在させました。敵との戦い以上に、自分自身を乗り越えることが、大きなテーマですね」と意外な作品を例に挙げた。

キーパーソンとなる14歳の少年・影月明と、小学生時代のレンとの友情も見どころのひとつ。「4年前のレンたちの輪の中に自分だけ存在しなかったことに疎外感を覚えていた明は、父親が行方不明になったという心の傷を抱えるレンに、どこか近しいものを感じます。似た者同士の2人が、どう友情を育んでいくのかも描きたかったテーマです」。

そして冒険に欠かせないものといえば、旅の道具。本作では現実世界と同じように「モンスト」アプリがインストールされているスマートフォンが、彼らを冒険に導く重要なアイテムになっている。「地図とナビが入ったスマホは、“現代の方位磁石”であり、冒険における強力なツールです。でもスマホだけじゃどうにもならないこと、例えば子どもだけで電車に乗る、夜はどう過ごすか、などといったアナログな困難が待ち受けています。そういうデジタルとアナログの落差から生まれるドラマも楽しんでもらいたいです」と締めくくった。

いま持っている道具で、どこまで行けるのか――。『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』は、そんな冒険心を刺激し、世代を超えて心に響くエッセンスを秘めた、親子で楽しめるエンタテインメント作品になっている。物語にあふれる映画愛を、この冬ぜひスクリーンで体感してみてもらいたい。【撮影/ユンジュリ 取材・文/中村美奈子】