NHK交響楽団などオーケストラで活躍するヴァイオリニスト・大宮臨太郎がデュオ、トリオ演奏で見せた素顔
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大宮臨太郎(ヴァイオリン) 撮影=岩間辰徳
NHK交響楽団で活躍する大宮臨太郎が登場! 第49回“サンデー・ブランチ・クラシック”2016.10.23 ライブレポート
日曜日の午後に渋谷のeplus LIVING ROOM CAFE&DININGにて行なわれている『サンデー・ブランチ・クラシック』。10月の最終週には、NHK交響楽団フォアシュピーラーを務めるヴァイオリニスト・大宮臨太郎が登場してくれた。普段はオーケストラの一員として活躍している大宮だが、この日はピアニストの重松華子とデュオ演奏、さらに大宮と同じくNHK交響楽団に所属するチェリストの山内俊輔を加えたトリオ演奏を聴かせてくれた。
定刻に、重松と共にステージに現れた大宮は、ヴァイオリンの音色を確かめるように数度弓を滑らせると、一呼吸置いてから一気に軽快なメロディを奏で始める。1曲目に演奏されたのは、ファリャ作曲「スペイン舞曲」。もとはオペラ『はかなき人生』の曲であったものを、クライスラーがヴァイオリンとピアノのために編曲したものだ。ピアノの情熱的な伴奏の上で、ヴァイオリンの音色がくるくると踊る。カフェの空気が、一気に華やいだ。
大宮臨太郎 撮影=岩間辰徳
演奏を終え、訪れた観客へ挨拶した大宮は「ブランチって、いいですよね。僕は、留学していた時に毎週土日にしか開いていないブランチのお店に行くのがすごく好きだったんです。ブランチという考え方は、時間をゆったりと楽しむことができて、とても素敵だなと思います。今日は、自分がそのような場にいられることが、個人的にとても嬉しいです」と、自身の思い出を交えて語ってくれた。
「普段は、オーケストラで演奏しているんですが、今日はピアニストの重松さんとお届けしております。後半には、ピアノトリオをご用意していますよ」と予告しつつ、続いて演奏されたのは、フランク作曲「ヴァイオリンソナタ」より第4楽章。
大宮臨太郎(ヴァイオリン)、重松華子(ピアノ) 撮影=岩間辰徳
大宮が一番好きなヴァイオリンソナタだというこの曲は、フランクが友人であったイザイへ結婚の贈り物として書かれた曲であり、フランクが生涯で唯一書き残したヴァイオリンソナタだ。ピアノとヴァイオリンが同じメロディで掛け合いながら紡いでいく音色が想像させる情景は、温かくなんとも言えない幸福感に包まれる。
大宮臨太郎(ヴァイオリン)、重松華子(ピアノ)、山内俊輔(チェロ) 撮影=岩間辰徳
演奏が終わり大きな拍手へ礼を述べると、大宮は先ほどの予告通り、チェリストの山内俊輔を呼び込んだ。ピアノトリオで演奏されたのは、メンデルスゾーン作曲「ピアノ三重奏曲」第1番より第1楽章、第2楽章。「第2楽章まで演奏するのですが、ちょっと静かな終わりなので……第3楽章も用意しています(笑)」と、今度はアンコールの予告をする大宮。
メンデルスゾーンと言えば、明るく華やかな曲調のイメージだが、この「ピアノ三重奏曲」はニ短調で始まり、流れるような美しいメロディラインは、哀愁を漂わせる。優しいピアノソロから始まる第2楽章は、目をつぶってゆったりとその音の流れに身を任せたいような、気にさせられた。そして、なんといっても3人の演奏の確かさと表現力が、一層豊かな時間に感じさせてくれた。
静かに演奏を終えると、割れんばかりの拍手が贈られ、3人が再びステージに戻ってくる。「皆様の熱烈な拍手に応えまして……」と、予告通り第3楽章でアンコールに応え、活発なスケルツォで締めくくった。
食事とともにクラシックをたのしむ 撮影=岩間辰徳
インタビューの様子 撮影=岩間辰徳
「僕らは普段、オーケストラという80人から100人の大所帯の中で演奏をしていますので、すべて自分の好きなように演奏できるわけではないんです。当然、一人では得られない喜びがありますが、オーケストラを離れて気心の知れた仲間と演奏する機会もまた、楽しかったです」と、30分のブランチ・コンサートを振り返った大宮。普段とは違った環境での演奏では、大宮臨太郎という一人のヴァイオリニストの素顔が垣間見えたのではないだろうか。
重松は「ピアノは一人で完結することもできるんですけど、人と一緒に演奏すると会話のように相手の反応が分かるのが楽しいです。こういう機会に、クラシックを知らない方にも気軽に音楽を聴いて頂いて、広がっていけばいいなと思いました」と感想を聞かせてくれた。
また、山内は「お子さんもOKというのはいいですね。小さいお子さんの想像を広げるという意味でも、肩肘張らずに聴ける30分というのは、長すぎず聴きやすく、いい機会だなと思いました」と、普段彼らが活動する場とはちょっと違う環境に関心を持ったようだ。
大宮は、最後に「こういった機会をきっかけに、クラシックに限らず、目の前で“生”で行われていることに触れることを、できれば子どもたちに伝えていってほしいなと思います。実際に自分の五感で体感するよさを、身近なことから感じていって頂けたら」とメッセージをくれた。
大宮臨太郎(ヴァイオリン)、重松華子(ピアノ)、山内俊輔(チェロ) 撮影=岩間辰徳
オーケストラを聴きに行く、というと、どうしても構えてしまいがちかもしれないが、一口にクラシックと言ってもその種類は様々。大宮の言うように、ぜひその機会と出会ってほしい。その出会いが、また新たな楽しみや喜びをきっと運んでくれるから。
1981年横浜市生まれ。辰巳明子・堀 正文の両氏に師事。桐朋学園大学在学中にNHK交響楽団のオーディションに合格。2000年、第69回日本音楽コンクール3位。同年、ミレニアム・ニュークラシックオーディション1位並びに審査員特別賞。2001年第1回仙台国際音楽コンクールにおいて5位入賞、併せて聴衆者賞受賞。2002年フランスで行われたメニューイン国際ヴァイオリンコンクールで2位受賞、翌2003年にはプラハの春国際音楽コンクール(チェコ)でファイナリストとしてチェコフィルハーモニーと協演している。小沢征爾音楽塾、同キャラバンコンサート、サイトウキネンフェスティバルなどに参加。国内外のオーケストラ、室内楽と共演している。2005年にウィーン・ヴィルトゥオーゼンと共演、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲を演奏した。これまでにソロ、室内楽と3枚のCDを発表している(「My First Violin」、「パッサカリア~ヴァイオリンとチェロのための作品集」「ドヴォルザーク&チャイコフスキー弦楽四重奏曲」*ストリングカルテット響名義)。NHK交響楽団フォアシュピーラー。ストリングカルテット響、紀尾井シンフォニエッタ東京メンバーとしても活動中。
山内俊輔(チェロ)
1994年、NHK交響楽団に入団。1999年、文化庁在外研修員として渡独、ミュンヘン音楽大学教授ワルター・ノータス氏に師事。またイゴール・オイストラフ氏の室内楽マスタークラスを受講。
第25回かながわ音楽コンクールシニアピアノ部門特選・中田喜直賞受賞。
現在は伴奏やソロ、NHK交響楽団メンバーなどと室内楽で共演、他にはロビーコンサートやパーティー演奏、学校でのアウトリーチ、歌手の伴奏にてテレビ出演、ライブでの歌のサポート、またインストユニットpianotrio chou-chouとしてオリジナルCDを3枚発売している。後進の指導にもあたりながら、クラシックからポップスまで幅広い活動を行っている。
大石将紀/サクソフォン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
米津真浩/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
3月19日
松田理奈/ヴァイオリン&中野翔太/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
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