デザイナー・スズキタカユキが挑戦するステージ「仕立て屋のサーカス」が“棚卸し”ライブ
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スズキタカユキ
photo by Ryo Mitamura
ファッションブランド「suzuki takayuki」のデザイナーで、映画、ダンス、ミュージシャンなどの衣裳も手がけるスズキタカユキ(舞台関連で言えば、森山開次やマームとジプシーなど)。そんなスズキが、二人の音楽家・曽我大穂とガンジー、照明作家・渡辺敬之とともに、布と光と音が交錯しながら時に耽美で、時にダイナミックな世界を即興で構築していく「仕立て屋のサーカス」というプロジェクトを組んでいる。現代サーカスグループを名乗り、あえて“パフォーマー”として参加している思いを聞いた。
−−仕立て屋のサーカスという活動を始めた経緯から教えていただけますか?
スズキ 活動を始めたのは2014年。本当に形容しがたいパフォーマンスで、それこそが僕らの中では現代サーカスだと思っています。もともと僕とダンサーの鈴木陽平さんでルノメーターズというパフォーマンス・プロジェクトを立ち上げました。それは音楽の方をゲストに迎え、とにかく即興で何かをやるという内容でした。音の影響はかなり大きくて、僕らがいろいろ刺激を得ることを考えていたんです。実は即興と言っても、やる人はいるんですけど、100パーセント即興でできる人はあまりいない。その初回と3回目に参加したのがCINEMA dub MONKSの曽我大穂くんでした。僕らの作業を気に入ってくれて、2年後に今度はCINEMA dub MONKSのライブへのオファーをいただいた。そこでお互いしっくりきて、何かできるんじゃないかとスタートしたのが仕立て屋のサーカスだったんです。
ギリギリの限られた時間に身を置くことで、ものづくりの本質を感じていたい
photo by Ryo Mitamura
photo by Ryo Mitamura
−−パフォーマンスでのスズキさんのポジションはどんな感じですか?
スズキ もともと衣裳の仕事をやらせていただくことが多かったんですけど、ミュージシャンもダンサーも、身体だけでドンと表現できて、そのエネルギー、瞬発力がものすごい。逆に洋服の作業は地味というか(笑)、プロセスがかなりあるので10分で何か作ろうと言われてもなかなか難しいんですよね。もともと即興をやろうと思ったきっかけも、ギリギリの限られた時間に身を置くことで、何かもの作りの本質の部分を感じたり、怠けないで勝負していくことが必要だと思って始めたんです。表に出るのとは違うんですけど、自分のかかわりの中で、ちゃんと表現したいという気持ちがすごく大きくて、自分もパフォーマーとして音楽やダンスとパワーバランスが同じくらいの勝負をしたいと思っています。
−−布とミシン、ハサミを駆使して戦うわけですね !
スズキ そうですね。僕自身としては、作る過程を見てほしいという気持ちもあるんですが、長時間かけて積み上げていくのと、とにかく短時間のエネルギーの中で何かを出し切る、その両方が自分がデザイナーとしてものを作るにあたっての大事な要素だと思っています。だから厳密にパフォーマンスかと言われれば難しいんですけど、曽我くんと話すのは、一心不乱になにかを作っている姿はそれだけで美しいというか、見るにたえうる素晴らしいものじゃないかと。だから特別に演出しているということはなくて、必死にこういうイメージを表現します!といった感じです。僕がその瞬間、瞬間にメンバーから感じたエネルギーや感覚を表現する、その時間で洋服を作るというよりはイメージを作っているつもりです。
photo by Ryo Mitamura
仕立て屋のサーカスの誕生から成長を見ていただけると思う。
−−仕立て屋のサーカスも3年目、過去には意外と公演数もやられていますね。
スズキ 結構やっていますね。最初はそんなにやる予定ではなかったんですけど(苦笑)、夏などはいろんなところに呼んでいただいて。バンドみたいになってきました。2017年1月にやらせていただくものは、過去の作品と新作です。即興なので、同じ演目とはいえ「こういうお話です」というものはほぼないんですけどね。ただ僕らの中でイメージは共有していこうとしていて、初期のころからいくつかタイトルをつけていました。それを整理していくと、『シャビの恋』『旅立ちのラウル』『ある一夜の夢のようなはなし』の3演目に集約されるのかなと。それが今回ラインナップされているものです。
−−新作だけは現時点でタイトルはないんですか?
スズキ はい、だからなんとも言えません(笑)。おそらく少し寒い土地の話になるんじゃないかなと思っています。僕らは、リハーサルという形式をほとんど取らず、基本的にはその場その場のインスピレーションを大切にしています。イメージを共有しながら、いろいろ詰めている状態ですけど、本番にならないとどんな物語になり、どんな風景が広がるかわからない。本当に予想もしなかったエンディングになることが結構あって。だから事前にタイトルはつけられないんです。すり合わせたところからイメージを爆発させるという感じですね。だからいきなり変わってしまうこともあります。特に音は変わります。CINEMA dub MONKSのオリジナル曲を演奏するとしても、アレンジが全然違って演奏されたりするので、この曲だけれどこういうことかな?みたいなことがよくあります。僕が演奏者の二人を布で結んで動けなくしてしまったこともあります。逆に僕が布をすごくたくさん切って、次に動こうとしたら照明が暗くなってなにも見えません、みたいなこともありました。それらはお互いに意思を感じて探り合った結果の表現なんです。
−−作品の世界観は、メンバー同士根底に流れるものは一緒だと思いますが、どういう世界をお客さんに味わってほしいと考えていらっしゃいますか?
スズキ みんなある程度の作家性を持ったうえで集まっているので、世界観は必然的にできあがっている気はします。僕自身は、懐かしくて、切なく、儚い感じだけど、映画で言えばロードムービー風かなあ。わかりやすいオチもなく、人生は続いていくけれど、明日からちょっと頑張っていこうかな、世の中も捨てたもんじゃないと思っていただければうれしいですね。
今回は4作品ありますが、これだけの長い期間の中で複数の作品が並ぶことはこれまでありませんでした。なので、すべて見ていただくと、仕立て屋のサーカスがどんなふうに生まれて、どういう道を歩んできたのかを感じてもらえると思います。さらに言うと、新作のために、今までやったことのない合宿を行いました。何回かパフォーマンスを経験したこと、チームとしてのすり合わせをすることで、今、僕らとして考えられる最高のものを表現したいと思っています。
スズキタカユキ
1975年愛知県生まれ。 東京造形大学在学中に友人と開いた展示会をきっかけに映画、ダンス、ミュージシャンなどの衣裳を手掛けるようになる。 2007年より東京コレクションに参加。2009年には、Milano Unicaでのイベント「オン・ステージ」に世界の新鋭デザイナー10名の中の一人として選ばれ、合同ショーに参加。2012年には、インドにて開催された「Wills Lifestyle India Fashion Week」で合同ショーに参加している。昨年より、インドネシア・ジャカルタファッションウィークに招待デザイナーとして参加し、インドネシア企業2社との共同企画をASEAN内で開始している。近年では、いろいろな企業とのコラボレーションや、BUMP OF CHICKEN、ゆずのツアーなどさまざまなアーティストへの衣装提供、劇団マームとジプシーなど、演劇関係や、ダンス関係の舞台での衣装製作も精力的に行っている。
(取材・文:いまいこういち)
■日程:2017年1月7日(土)~1月15日(日)
曽我大穂(CINEMA dub MONKS) ガンジー(CINEMA dub MONKS)
スズキタカユキ(suzuki takayuki) 渡辺敬之
7・8・10日 / パラダイスアレイ、 9・14・15日 / 植田泰成(つくば食堂 花)、
13日 / eatrip(野村友里、山本有紀子)
「シャビの恋」7日19:00開演 /
「旅立ちのラウル」 8日17:00開演 /
「ある一夜の夢のようなはなし」9日17:00開演、10日19:00開演 /
「新作」13日19:00開演、14・15日17:00開演 ※開場は1時間前
一般3,500円 / 当日3,800円 / 二日券6,000円 / 三日通し券7,500円、
学生2,500円 / 当日2,800円 / 二日券4,000円 / 三日通し券6,000円
※18歳以下無料(要予約)