ミオヤマザキ 自分たちを本気で愛してくれるすべての人の光と未来を背負う覚悟
ミオヤマザキ
ミオヤマザキ ワンマンスレTOUR 2016「Seven Pistols」
2016.12.10(SAT)赤坂BLITZ
「膝を突き合わせて本音で語る」とかとは違う。かと言って、正義をかざして土足で上がりこむわけでもない。当然、エキセントリックに感情をぶん投げるようなぶしつけなことは絶対にしない。ミオヤマザキというバンドに痛みを感じるとしたら、それは彼らが一切の綺麗ごとを排除しているから。そして日常生活において見過ごせない光景、胸に刺さった出来事、こびりついて消えない誰かの言葉、持て余す自分のセンチメンタルと向き合って、向き合って、ホントにもうイヤんなるくらいに向き合って、メロディを生み出し、言葉を綴り、より多くの人に届く音楽にして届けているから。
至極冷静に間合いを計り、一気に懐に潜り込み、生きることの難しさと生きることの大切さを喉元に突きつけるからだ。
ミオヤマザキ 『ミオヤマザキ ワンマンスレTOUR 2016「Seven Pistols」』2016年12月10日 赤坂BLITZ
『SEVEN PISTOLS』ツアー最終日、赤坂BLITZ。開演前から満員御礼の観客の熱気が立ち込め、セットリストには、「メンヘラ」、「オカルティック69」、「正義の歌」……やましいことがなくともドキリとするタイトルが並ぶ。3曲目でステージを覆っていた紗幕が降りても照明は終始逆光で、シルエットは見えるが表情までは確認できなかった。それでも生身の歌声が、全身全霊のパフォーマンスがフロアを激しく揺らす。
不倫を題材にした2014年発表のデビュー曲「民法第709条」は、期せずして2016年とリンクしてしまったけれど、今年も、5年後も、10年後も、きっと意外と身近にある問題で。バレたら最後、当事者全員が一生消えない傷を負うという意味では犯罪で。それを妻から送りつけられた内容証明通知書を読み上げる歌詞を歌いながら、ビリビリと破り捨てるパフォーマンスで聴き手の心に刻みつける。<バカアホドジマヌケ死ね>の連呼に、頭がもぎれるほどのヘドバンで応えるオーディエンス。それでもボーカル・mioは「もう一回」「もっと」「ラスト一回にしようと思う」「ツアーファイナルのラスト一回、わかってんの?」と容赦なくたたみかけ、やる方もやられる方も必死。そうしてみんな一緒に辿り着いたのは限界の先、恍惚&開放の世界だった。その一方では、装飾を極力削ったシンプルな演奏で、今にも消え入りそうな歌声で、気づかぬふりをするしかない女心「聞けない理由」をそっと届けたりもする。ラストナンバー「山崎美央」は彼女が歌う理由であり、4人が今ステージに立つ意味であり、ミオヤマザキというバンドの存在意義であり、自分たちを本気で愛してくれるすべての人の光と未来を背負う覚悟だった。
ミオヤマザキ 『ミオヤマザキ ワンマンスレTOUR 2016「Seven Pistols」』2016年12月10日 赤坂BLITZ
「もう止まれないんだよ。なりたい自分には指咥えて待ってたってなれない。捕まえに行かなくちゃなれるわけない。私たちはお前らを世界一シアワセなファンにしてやりたいって思ってるんだよ。半端じゃない景色を見せてやるから、黙ってついて来いって言ってんだよ!」
4月1日に日比谷野外音楽堂でワンマンライブを開催することが発表された瞬間、カチッ! ギアの上がる力強い音がした。この日、赤坂BLITZで作り上げた最高の景色を栄養に、2017年、加速度と繁殖力を増したミオヤマザキの快進撃が始まる。
取材・文=山本祥子
ミオヤマザキ 『ミオヤマザキ ワンマンスレTOUR 2016「Seven Pistols」』2016年12月10日 赤坂BLITZ
2016.12.10(SAT)赤坂BLITZ
01.メンヘラ
02.オカルティック69
03.正義の歌
04.婚活ハンター
05.いつか当たり前の様にあったモノが無くなったら
06.ズルい人
07.聞けない理由
08.シブヤノウタ
09.生きる
10.死二DIE
11.(インスト)
12.バンドマン
13.民法第709条
14.Hのすゝめ
15.童貞ハンター
16.バカアホドジマヌケ死ね
17.ド・エ・ム
18.叫ビ
19.水商売
20.山崎美央
2017年4月1日(土)日比谷野外大音楽堂