島田彩乃(ピアノ) パリの景観が私にドビュッシーのイメージを与えてくれました
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島田彩乃(ピアノ)©Kazuto Shimizu
横浜ならではの文化芸術を国内外へ発信する「横浜芸術アクション事業」の一環として、2017年1月、横浜みなとみらいホールにて島田彩乃のリサイタルが行われる。島田はフランスで10年、ドイツで3年学んだ国際色豊かなピアニスト。一夜でドビュッシーの前奏曲全24曲をすべて取り上げるという意欲的なプログラムで臨む。
「以前から大切に弾いてきた作品で、いつか全巻を同時にやりたいと思っていたところ、今回のお話をいただいたので、是非にと決めました」
第1巻については2006年にCDをリリースし、第2巻もリサイタルで度々演奏してきたという島田だが、この大きな作品を一夜で同時に演奏するというのはピアニストにとってかなりの“挑戦”であり、また意外にも珍しい試みでもある。
「リサイタルでは毎回何らかのチャレンジを行うようにしています。これまでは新しい曲に取り組むことでそれを行ってきたのですが、今回は大作を同時に演奏する、というハードルを自分に課しました」
島田がピアニストとしてのキャリアの大きな局面で取り上げてきたという「前奏曲集」だが、取り組み始めたのはフランスに行ってからだという。
「留学する前はどちらかといえばドイツの作曲家の作品が好きで、フランスものには難解さを感じていました。パリに行ってからも、先生からの指摘がうまく理解できず、レッスン後はよくうなだれていました(笑)」
特に苦労したというのが、今ではすっかり十八番となった第1巻の第5曲「アナカプリの丘」。ドビュッシーの作品を理解するのに苦心していた島田に光を与えてくれたのは、パリの景色であった。
「ある日、レッスン後の散歩中にセーヌ川の橋を渡ったとき、川に反射する光や新緑の時期の並木の美しさに“ハッ”としたんです。パリは景観を保たなければならない街なので、100年くらい前にもしかしたらドビュッシーも同じ景色を見ていたかもしれないと思った途端、こういう音で弾けばいいのかも、と音色に対するイメージが一気に固まったんです。パリの景色や空気感から教わったことは本当に私にとって大きいものでした」
演奏においては感覚やイメージを大事にしているという島田。フランスでの経験や10年という滞在の中でその土地の景色や空気から感じた印象を音色に託し、フランスでの成果を発揮したいと語ってくれた。彼女にとって一つの大きな節目となるコンサートを見届けながら、ドビュッシーの音楽の魅力を存分に堪能して欲しい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
島田彩乃 ピアノ ドビュッシー 前奏曲集 全2巻
2017.1/26(木)19:00
横浜みなとみらいホール(小)
問合せ:横浜みなとみらいホール
http://www.yaf.or.jp/mmh/