チーム「竹達」が中野の夜を「あやち」色に染める 竹達彩奈『Lyrical Concerto』ライブレポート

2017.1.25
レポート
アニメ/ゲーム

竹達彩奈

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竹達彩奈 Live 2016-2017 Lyrical Concerto 2017.1.15 中野サンプラザ

「光があれば必ず暗い影があるかもしれない。でも一生懸命前を向いて楽しんでいくのが大切だね!」

アンコールも終わりに差し掛かったMCで、竹達彩奈は少しはにかんだ表情で叫んだ。それが彼女の偽りならぬ正直な気持ちだったのかもしれない。たとえ些細なことでも幸せはあなたにも訪れる。そんなメッセージを感じたのは筆者だけではないはずだ。

中野サンプラザを埋め尽くした約2000人の観衆が色とりどりのサイリウムを嵐のように振り、“あやち”(竹達彩奈の愛称)の歓声で答える。祝祭のコール・アンド・レスポンス。最後には「私のお気に入りで結構気合を入れて作ったぜ」とニット帽を客席に投げ入れ、おもちゃバズーカをぶっとばせば、人生なんて辛いことばかりじゃないことを教えてくれる。そこには今までに感じたことのない高揚感があった。2016年12月25日(日)、大阪・岸和田市立浪切ホールで幕を開けた2016~2017年ライブツアー『Lyrical Concerto』。16年11月にリリースされた同名のアルバムのツアー最終日でもある。

SEとして、「Hey!カロリーQueen」や「Miss.Revolutionist」などのリミックスが流れているのだが、こちらはトラップやEDMといった今の時流のダンスミュージック。なんだかいてもたってもいられないワクワク感がライブの開演前からあった。

17時きっかりに始まった、竹達彩奈『Lyrical Concerto』。徐々に集まりだすチーム竹達のメンバー達。ベースは伊藤千明。キーボードの小林俊太郎。ツインギターでシミズコウヘイと木暮祖。メンバーが集まると場内は暗転。息をつかせぬ歓声とともにステージ上のスクリーンに映し出されたのは、『不思議の国のアリス』を題材にしたムービー(声の出演はもちろん竹達彩奈)が流れ、さらにドット絵のゲーム風に描かれた映像をバックに、ニューアルバムの1曲目に収録されている「JUMP AND DASH!!!」でライブが始まる。これはジャングルっぽいリズムにピコピコシンセが重なってキッチュで可愛い。なんだかイギリスの大ロックバンド・オアシスの4thアルバム『Standing on the Shoulder of Giants』のオープニングナンバー「Fuckin' In The Bushes」級のオープニング・アンセムになっていた。ファンのテンションはマックス状態。サイリウムがここぞとばかりに振られ、嫌が応にも興奮は高まる。

竹達彩奈

「こんにちはー」と紫のドレスを着ていて眩しいぐらいに綺麗な竹達彩奈の声で始まるナンバーは、ドラムスの白根が音頭をとる祝祭感あふれる「SWEETS is CIRCUS」。バンマスの小林の「せーの」で音合わせをした瞬間の一音の高揚感が身を悶えんばかりにたまらなくかっこいい。ツアー最終日だけあって、たった1音なのに音は分厚く、演奏の強度が素晴らしい。もともとチーム竹達は、竹達彩奈を支えるべく結成されたチームで、小林俊太郎と、ベース(今回は参加していなかった)沖井礼二を中心としたメンバー構成なのだ。鳴らされる音はひたすらハードでエッジー。このライブはすべてが人力で、湧き上がる人の温もりを持って竹達彩奈を支えようとするチームなのだ。ちなみに、木暮祖のギターは赤色のレス・ポール、シミズコウヘイは緑色のストラトキャスター。ベースの伊藤もストラト。ドラムはヤマハ。小林はヤマハのCP50。これはロックキッズなら興奮しないわけがない

ステージの中央からせり上がって竹達彩奈が繊細かつシャウトを豪快に歌い上げて、お祭り気分を盛り上げる。すぐにアリスをイメージした水色のエプロンドレスに早着替えすると、その姿で歌うのはジャングリーなピアノと躍動感のあるギターのコード感が爽快なロックナンバー「♪の国のアリス」。「今日が2017年初めてのイベント。気合入ってます。ニューあやちだよ!」と笑顔でアピールし、TBS系列で放送されたテレビアニメ『ランス・アンド・マスクス』のエンディングテーマ「Little*Lion*Heart」。そこから続いてニューアルバムに収録された、クラムボンのベースのミトが編曲した「AWARENESS」へと続くのだが、これらは、8や16ビートなどを基調とした、ロックな曲調である。オープンチューンのギターをバーンと鳴らしたかと思えば、ベースはスラップやチョッパーで答える。凄まじいバンドの統一感だ。

もちろん音が大きいから、こういったロックな曲は音に負けないような迫力のある声が必要だが、竹達彩奈にとってそんなことは全く問題にならない。ファルセットから地声よりも低い域まで伸びやかに歌う。その証拠に、ノリノリになったメンバー達の表情、ファンの笑顔、サイリウムの動作の一体感彼女の手のひらで踊らされているような圧倒的な感動がそこにはあった。

「これまで格好いい曲をあまり歌っていなかったから、ロックな曲ってお願いしたら難しい曲で参った参った」と言いつつも、新機軸のアレンジのパフォーマンスをブレずに歌い切ってしまう。そこには彼女のアーティスト魂があるような気がしてしまう。かと思えば荘厳なシンセと打ち込みの曲のニューアルバム収録のバラード「キミイロ モノローグ」。こちらは小林のシンセがぶいぶい言わせる。

竹達彩奈の声を聴きに来ることに変わりはないけど、多くのファンは、凄まじいリハーサルで成り立っている壮絶なチーム竹達の音も聴きにきているのだ。スペイシーなシンセ・リフから始まりチョッパー・ベースの「ナナイロ⇔モノクロ」は筆舌にし難い。この曲では竹達の分身がステージに現れ、2人でパフォーマンスをするというこれまでにない演出。だけど竹達はどこ吹く風と意に返すことなく堂々と「ナナイロちゃんでーす。でも2週間前に振り付けしたからやばいって!」とあどけなく笑っているのが印象的だった。

竹達彩奈

竹達彩奈の声は終始ぶれることなく歌い切る。その都度、ステージ上のスクリーンに不思議の国のアリスをモチーフとした映像が流れる。光に隠された闇のことを。人は誰しもが闇を持っている。恋愛、勉強、スポーツ、家族、自分のコンプレックスのこと。でも、それ以上に光を強く照らせば、やがて、闇は拭われ、新しい一日を始められる。そんなメッセージ性も感じさせる心に残るライブ。竹達は極度の恥ずかしがり屋だったり、自分の声がどうしてもなじめなかった時もあったという。それでも、自分を信じて歌い切る様は圧巻の一言だった。

次の曲は、そうした彼女の人生を後押ししたカバー2曲。「今年がデビュー5周年なんですよ! 節目だからとってもとっても大切な歌を歌うね」と始まったのが、TVアニメ『シスター・プリンセス』エンディングテーマ「翼」。ここで彼女の歌声が少しぶれたように思えたのは、彼女が感極まって泣いていたからだろう。時々目頭をこすってファンに「ごめんね」と言っていた。おそらく彼女を理解してくれた最初の曲なのだ。続いてTVアニメ『けいおん!』中野梓のキャラクターソング「じゃじゃ馬 Way To Go」。この曲で彼女のことを知った人も多いのではないだろうか。もちろんそれだけではない。彼女が「私のライブに来たの初めてな人~?」と言った時、3分の1ぐらいのファンが手を上げていた。彼女が5年という歳月を経て、今なお多くのファンを獲得している証拠だ。

ライブは中盤へ怒涛のように流れていく。シルバーを基調にした中世のゴシック系の衣装へチェンジ。でもギャップは忘れない。ニューアルバムでも優しさが際立つゆったりとしたピアノのバラード「君に恋シテル。」にはじまり、ヘヴィーメタルといっても過言でないツインギターのソロが目を見張る「Starline」、ダメな過去も抱えながら生きる決意を歌った竹達彩奈宣言とも取れる「Miss.Revolutionist」。ハモンドオルガンのシンセのメロディーが美しい「朝焼けと約束の歌」と疲れを感じさせず、彼女の声はよりヒートアップしてノリに乗っていく。

そして、ムービーで進んでいた物語もハッピーエンドを迎えたあと、ニューアルバムから一段とロックなテイストで迫力ある音と声がきらびやかに輝く「パルス通信」、竹達彩奈の作詞で等身大の自分を軽やかにラップも披露するニューアルバム最終曲の「ユメイロソレイユ」と続く。ここで終わりかなと思いきや、「普段はだいたい16曲ぐらいだけど、今日は史上最大に曲をドロップします。まだ疲れてない?」と観客にコールを投げれば、サイリウムと歓声の嵐でレスポンス。そしてドロップされたのが、MVでも実際に持っていたクイーンの杖を手に、女の子のちょっとした恋の冒険を歌ったTVアニメ『だがしかし』のエンディング曲「Hey!カロリーQueen」。この曲は、ドラムの白根が超絶ブレイクビーツを奏でて、ギターがギュンギュン鳴り、おまけに泣きメロが絡んでひたすら感動的。そしてニューアルバムから「らっきーちゅーん♪」では怒涛のドラム・ビートに乗せて、〈1、2、3、GO!〉と歌う。本編のラストは、「Happy Future」。恋に夢中になるも叶えられず諦めるという悲しい曲をバイバイと印象的な歌詞のリフレインを繰り返しながら、次第に声は小さくなり、下手にはけて本編は興奮のまま終わりを迎えた。

鳴り止まない拍手と中野サンプラザを揺るがす「あやち」コール。だけどそっとバンド達と彼女が出てくると「アンコールありがとう。でも、毎回帰られたらどうしようって不安になるんです」と不安な心情を吐露する。彼女が広く愛されているのは、ちょっとした彼女の中にある内気な一面と、それでもそれを振り払おうとする元気な側面が常に同居していることだろう。それをファンは分かっていて支えたくなるし、メンバー竹達もサポートをするのだ。そして誰よりも竹達自身が強くあろうとしているのだ。その相乗効果が渦のようになってポジティブな空気が中野サンプラザに舞い上がっていた。

竹達彩奈

アンコール1曲目は、「齧りかけの林檎」。恋愛がうまくいかない気持ちを直球でさらけ出したこの曲は彼女の転機の一つで、TVアニメ『デンキ街の本屋さん』で初めてタイアップを獲得した曲でもある。ここでもギターがみせる。ディストーション・ギターが彼女の不安を宇宙の彼方までぶっ飛ばす。ファンはチーム竹達の姿に感動して応援する。MCで竹達彩奈から、2017年4月よりリニューアルされる新ファンクラブ・あやな公国や、文化放送 超!A&Gにて配信が開始された『「ひみつのラジオ」~あやラジ~』の紹介がなされ、歓声は大きくなるばかり。アンコール2曲目は、ロックであり、パンクでファンクとも例えられないほど踊れる「CANDY LOVE」。最後はメンバー紹介をしながらの「ライスとぅミートゅー」。「食べることが好き」という彼女の性格をそのまま体現したかのような横揺れのノリノリな曲。サビでは大合唱と打ち振られるサイリウムの嵐になり、メンバーのシミズコウヘイは、ギターをジミ・ヘンドリックスばりに歯でかき鳴らし、もう1人の木暮祖は即興メロディーを奏で、ベースの伊藤千明はなんでもありの超絶テクニックの演奏、ドラムの白根はジャズの即興のように叩くと、それに小林が熱狂的に答える。

竹達彩奈はにっこり笑いながら、踊りながら、歌いながらメンバーへの労いの言葉をかけていく。このツアーとこれまでの5年の道のりに対する感謝を。最後にファンへの挨拶をなんども繰り返し、丁寧にしばらくお辞儀をしていた彼女。ファンやメンバーに支えられることで成立する、本当の意味でのチーム竹達が結成された気がする。そうして彼女はピンスポットがゆっくりと暗くなるなか、晴れやかな表情で舞台を去っていった。気づけばあっという間の濃密な2時間半、20曲。外は真冬なのに、中野サンプラザの熱気はいつまでも冷めやらぬままチーム竹達「愛」に満たされていた。

取材・文=竹下力

セットリスト
Lyrical Concerto​
 
OC.JUMP AND DASH!!!
01.SWEETS is CIRCUS
02.♪の国のアリス
03.Little*Lion*Heart
04.AWARENESS
05.キミイロ モノローグ
06.ナナイロ⇔モノクロ
07.翼(TVアニメ『シスター・プリンセス』エンディングテーマ/堀江由衣)
08.じゃじゃ馬 Way To Go(TVアニメ『けいおん!』中野梓キャラクターソング)
09.君に恋シテル。
10.Starline
11.Miss.Revolutionist
12.朝焼けと約束の歌
13.パルス通信
14.ユメイロソレイユ
15.Hey!カロリーQueen
16.らっきーちゅーん♪
17.Happy Future
アンコール
EN1.齧りかけの林檎
EN2.CANDY LOVE
EN3.ライスとぅミートゅー
 
公式サイト:http://ayanataketatsu.jp
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