AIR SWELLがリリースした6つのキラーチューンが内包されたアルバムに迫るインタビュー。どこにもないPUNKを打ちだす彼らが放つものとは
-
ポスト -
シェア - 送る
AIR SWELL
約1年10か月ぶりに新譜「SIX KILLS」がリリースとなる、3ピースパンクバンドAIR SWELL。前回の「All Lead Tracks」という彼ららしいビッグマウスなタイトルに引き続き、今回も6曲のキラーチューンをあらわす「SIX KILLS」。ただ前回のアルバムがそうであったように、今回もその名に恥じないマスターピースとなることが期待される。新たにしかける彼らのこれからを直撃した。
AIR SWELL
――AIR SWELLの音楽は、骨太でラウドな音で、でもメロディには“情緒”を感じることができ、スッと入ってくる曲が多いと思いますが、1月25日に発売される1年10か月ぶりの作品、ミニアルバム『SIX KILLS』もそういう曲が揃っています。この作品を作るにあたってのキーワードは何だったのでしょうか?
hamaken:キーワードというよりは、今までとは違う音楽、根っこの部分は変わらないAIR SWELLらしさを残しつつ、前作とは違うものを作ろうという事は毎回意識しています。
――作品を発表して、そこからまた感じた事、影響された事を次の作品の中で、自分達の変わらない、ベースになる部分に乗せていこうという感覚ですか?
hamaken:そうですね。
――オープニングナンバーの「The government knows best」はピアノのイントロから始まる、割とAIR SWELLとしては珍しい感じでした。曲を作っている時に、これはピアノ始まりかなという感じで降りてきたのでしょうか?
hamaken:我々3ピースなのでできる事って限られているじゃないですか。今回5作目で、違う新鮮さが欲しいなと思い、ピアノのイントロってやっていないなと思ったんです。もちろん今までの曲にもピアノは使っていますが、ピアノから始まる曲はありませんでしたから。
――ファンも「おっ」と思いそうですね。
hamaken:そう思って欲しくて1曲目に持ってきました。
hiromitsu:僕が加入して2枚目なんですが、前回のフルアルバムの時はもう曲もでき始めていて、AIR SWELLのレールに乗ろうという感覚で臨みましたが、今回はそのレールに乗った上で何をしようか、自分としてはそのプロセスが変わってきた作品ではあります。
――hiromitsuさんがこれまで積み上げてきたキャリアを、AIR SWELLの中でどう昇華させようかという感じですか?
hiromitsu:そこが難しくて、自分のプレイのスタイルは曲げたくないんですけど、前作ではAIR SWELLのルールに乗っ取って、かつそこで勝負しようという想いがありました。3ピースバンドで一人が抜けて、メンバー変わるという事は大きな事で、それまで築いてきたAIR SWELLの世界、音をメインに考えながら、自分の良さも主張するという微妙な匙加減を考えていた前作と比べると、今回は自由にできました。
――Yudaiさんは?
Yudai:いつもは曲の完成型が見えてきてから、スタジオに入って作り上げていく感じなんですが、今回は僕の好きな感じの曲が多くて、すんなり進めました。どちらかというお客さんの感覚で「今回はどんな曲かなぁ」と楽しみにしながら完成した曲を待ち、作りあげていきます。
――独りよがりにならないように、いつも俯瞰で見る事ができる存在の人が、バンドには必要だと思います。
Yudai:あとは、こんな感じにしたいんだろうなというのはなんとなくわかっているので、それをレコーディングで提案していきます。
hamaken:いつもテーマというよりは、どこを一番目立たせるかを考えていて、例えばこの曲はメロディを強調させ、聴かせたいと思った時は、弾き語りで作りますし、リフが強いものが欲しいなと思った時はリフから作ります。
――曲作りには苦労しないタイプですか?
hamaken:いえ、困ります。似たような感じのものができてしまう事もあります。今回はいつにもましてライブを意識して作りました。アゲやすい、全部がキラーチューンという感じです。前回のツアーは、新作からの曲が思ったより少なかったので、もっと新作で前作のアゲる曲に変わるものを作った方が、ライブで披露できると思い、よりアゲるものを詰め込みました。
――まずはライブを念頭に置いて、という事ですね。曲は作ると決めてひねり出す感じですか?それとも日々浮かんできたキーワードやメロディをメモしておくという感じですか?
hamaken:もちろん毎日曲の事は考えていますが、何もしていない時に思い浮かぶ事が多いです。よし!作るぞって思って作る曲は、平均点以上満点未満の事が多いです。逆にテレビを観ていたり、全然違う事をしている時に浮かんできた曲の方が、往々にしていい事が多いです。
――メンバーからはこういう曲が欲しいとか、こんな曲いいんじゃない?というリクエストはありますか?
hiromitsu:僕は新メンバーなので、過去の曲を塗り替えるような新しい曲を作ろうという気持ちが強いです。
hamaken:新メンバーっていうけど、もう2年経ってるし(笑)。
hiromitsu:そうなんだけど…(笑)。やっぱりライブで盛り上がる曲って昔の曲が多いじゃないですか。でも後から入ったメンバーからすると、昔の曲を凌駕するぐらいの新しい曲を作り続けないとバンドとして生きている感じがしないです。
――今はライブがより大切になっていますよね。もちろんCDにも感動を求めていますが、ライブに感動を求めている人がより増えてきている気がします。
hiromitsu:そうですね。ライブのいいところも悪いところも、口コミですぐに広がりますよね。僕らも好きなアーティストのCDを聴いて影響を受けましたが、実際ビビッときたのはやっぱりライブを観てからでした。
――最初にAIR SWELLのメロディには情緒を感じると言いましたが、それはhamakenさんが聴いてきた音楽の影響が大きいのでしょうか?
hamaken:カッコイイんだけど、聴きづらい音楽ってあるじゃないですか。マニアックなものを作るのは簡単ですが、そうではなく、やっぱり日本人なので、日本人が好きな音楽、例えば90年代のJ-POPのメロディは素晴らしいものが多くて、そういうものを聴いてきたので、エッセンスとしては入っているのかもしれません。やっている事はマニアックなんですが、聴きやすいものが理想です。ツアーを回っている時、車の中で流れているのはB’zとかJ-POPばかりです。
hiromitsu:プレイスタイルは、海外のアーティストに影響を受けていますが、歌、メロディに関しては完全に日本人アーティストの影響を受けていると思います。
hamaken:僕も洋楽ライクな曲も作りますが、所詮日本人なので、結局洋楽の真似をしている日本人バンドだったら洋楽を聴くと思います。そのマーケットで勝負しても、今はハーフでネイティブな英語で歌えるボーカルもたくさんいて勝てないと思うので、だったら自分の中にあって、その人達にないものを曲にして、勝負した方がいいと思いました。そういう意味では、今現在は、誰の影響も受けていないと思っています。
――自分達の音楽に確固たるもの、確固たる自信があるからでしょうね。
hamaken:そうだと思います。日本中のこういうマーケットのロックバンドを見ても、AIR SWELLのような音楽をやっているのはAIR SWELLだけという自負があります。なので、あまり見本がないので、毎回実験的に制作している感じです。
hiromitsu:「どんな音楽をやっているの?」って人から聞かれた時に、「〇〇っぽい感じ」と言うと説明しやすいのかもしれませんが、僕達にはそれがないので、説明する時は困ります(笑)。○〇みたいって考えた事がないですし、例えが出てこないのは逆にいい事だと思っています。
――今回の作品も便宜上「パンク」という括りにしているかもしれませんが、いわゆるパンクとは違います。“邪悪なポップス”という感じです。
hiromitsu:それ最高ですね(笑)。
――M4の「Downtown Wakler」も途中、ラテンが入ってきます。
hamaken:サンバですね(笑)。この曲は“歪み”を一切使わないロックを作ろうと思いました。アコースティックギターで曲を作ると、どうしてもしっとりしがちなので、それをアゲる感じで、でも歪んでいないものにしたかったんです。個人的にクラブミュージックも好きなので、今回はそのフレーバーを入れてみました。
――ミニアルバムといいながらも内容が濃く、満足度はフルアルバムに劣らないできだと思います。難しい質問かもしれませんが、このアルバムの中でそれぞれ特筆すべき1曲を挙げていただけますでしょうか?
hamaken:もちろん全部と言いたいのですが、しいて上げるとしたら「ヘイミスターエンプティ」です。ツインボーカルという新しい試みをやったという意味で、忘れられない一曲です。
hiromitsu:僕も好きな一曲です。hamakenから新しい試みを提案してもらい…。
hamaken:ツインボーカルという試みは、その前のアルバムからやってみたかった事なんです。メンバーが変わったタイミングで、前のベースはマーカス・ミラーとかフュージョンが好きなテクニック系タイプで、hiromitsu君はパンクという、全く違うタイプで、持っている武器が違いました。hiromitsu君は前のバンドではボーカルもとっていて、歌えるベーシストなので、持っている武器を使わないのはもったいないと思ったので、前のアルバムでツインボーカルの曲をやろうと思ったのですが、彼が「今回は今までのスタイルで出さないと、これまで応援してくれたファンがビックリしすぎる」と言ってくれました。
hiromitsu:儀式というか禊は前作で済ませました(笑)。前作の曲のベースラインは、それまでのベースラインを踏襲して弾いています。やっぱりいきなり大きく変わってしまうのは、これまで支えてくれたファンに対して失礼だと思いました。でも新作からはやりたいようにやらせてもらいました。
――AIR SWELLの音楽の進化を提示している作品ですね。hiromitsuさんは「ヘイミスターエンプティ」の他にはどの曲に思い入れが強いですか?
hiromitsu:「Big Bad Wolf」です。僕のベースの武器はライブ力だと思っていて、hamakenが作る曲がいいのはわかっていますし、それが魅力でこのバンドに参加させてもらった部分もあります。その中で、自分が入って何がより強い武器になるのかなと思った時、「Big~」はレコーディングしている時にライブで演奏して、すごく盛り上がっている画が見えて、そういう“ビリビリ感”を大切にしたいと思いました。
――Yudaiさんはどの曲が特にお気に入りですか?
Yudai:僕は「The government knows best」です。単純にピアノが入っている曲が好きなだけなんですけどね(笑)。そんなに激しくない感じが元々好きなんです。
――どういう音楽を聴いてきたんですか?
Yudai:J-POPです。
――この作品も色々な音楽性を感じさせてくれますが、3人とも共通しているのはJ-POPの影響を受けているという事で、それが根底に流れていてバンドしての音、メロディにもにじみ出ているのでしょうか?
hamaken:僕らの音楽を“オルタナティブロック”と紹介される事が多くて、でもオルタナティブって、異端なという意味のはずが、今はUSロックベースのパンクっぽい音楽をやっているとそれがオルタナティブロックと言われて、そうではなくて、我々は本当に異端的な事をやりたいんです。
hiromitsu:オルタナティブロックという言葉を使うと、大体この辺でしょ、こういう感じでしょというのがわかりますよね。
hamaken:USっぽいラウドでしょ、みたいな。
hiromitsu:でもオルタナティブロックという言葉が登場した時は、例えばニルヴァーナとか「なんだこれは!?」という感じの音楽を指すものでしたよね。
hamaken:僕が今でも一番好きなのはナイン・インチ・ネイルズですが、彼らの音楽って彼らにしかできなくて、あの音は彼らにしか出せなくて、そういう意味でも日本のナイン・インチ・ネイルズでありたいと思っています。とはいえ彼らの音楽は難しすぎるので(笑)、聴きやすくはしているつもりです。
――この作品を出してすぐにツアーが始まりますが、ライブを考えて曲を作っているとおっしゃっていましたが、ライブで表現できない事はやらないという考えですか?
hamaken:いえそれはないです。3人の音ありきで最小限の同期を駆使していますので、世界観はライブできちんと伝える事ができていると思います。今回、1曲目の「The government knows best」で、いつもより同期を増やそうと思ったのですが、アニソンのような豪華でキラキラしたものになってしまいそうだったので、やめました。いつかは全部生でやってみたいです。ピアノ、ストリングス、ホーン、パーカッションも入れてやってみたいです。
2月4日(土)高知X-pt.(ワンマン)
2月10日(金)渋谷eggman(ワンマン)
2月26日(日)仙台MACANA
3月18日(土)福岡Queblick
4月1日(土)札幌COLONY
4月8日(土)岡山CRAZYMAMA 2nd room
4月9日(日)大阪DROP
4月21日(金)高松DIME
5月10日(水)金沢VANVAN V4
5月11日(木)名古屋APOLLO BASE
AIR SWELL「SIX KILLS」
AIR SWELL / SIX KILLS
INNO-2012/¥1,600(税別)
[INNOVATOR RECORDS]
2. Big Bad Wolf
3. ヘイミスターエンプティ
4. Downtown Walker
5. アンチスモーカーズレクイエム
6. Current of time