MUCC 20周年の集大成ライブとなる武道館2daysを前に、自らへの挑戦を課したツアーが残したものとは
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」
2017.4.14、15 Zepp DiverCity Tokyoから武道館ヘ
4月14日と15日。MUCCは、過去作と最新作を共存させたツアー『MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」』をZepp DiverCity Tokyoで締めくくった。
まさしく20周年という節目に相応しいツアーであったこのツアーは、2月4日のTSUTAYA O-EASTから21ヶ所23公演というスケジュールで全国をまわり、4月14日、15日のZepp DiverCity Tokyo 2days公演でファイナルを迎えたのだが、今回は“周年ツアー”であったのはもちろんのこと、1月25日にリリースされた通算13枚目の最新フルアルバム『脈拍』を引っさげてのアルバムツアーも兼ねていた。そんなこともあり、セットリストには軸として『脈拍』が置かれていたのだが、その他に、もう1枚過去のアルバムが偲ばせてあるという構成になっていたのである。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
これまでも毎回1本ごとに異なるセットリストを組み、オーディエンスを飽きさせないライブを届けている彼らではあるが、今回はさらにいつもとは志向の違う“仕掛け”が加えられていたのだ。
その仕掛けというのは、ライブに足を運ぶオーディエンスが、『脈拍』の他に偲ばせてあったもう1枚のアルバム要素を、1本前のライブで予測出来るという“方程式”が設けてあったことだ。つまり、一つ前のライブでその方程式が解けるという仕掛けになっていたのである。
“ただやるだけじゃつまんねぇ”という、咄嗟の思いつきから、いつも突拍子もない企画を立ち上げるMUCCなのだが、今回の“方程式”も、ただ単に過去曲たちと対面するというだけでは物足りないという自らへの挑戦でもありつつ、20周年という節目を、オーディエンスと共に楽しみたいという想いからであったことだろう。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
毎回セットリストを組み立てているのはリーダーでメインコンポーザーのミヤであるのだが、ミヤは、この1年を“過去の自分たちとの対峙”とし、ツアー中にオーディエンスのTwitterやブログなどの書き込みを細かくチェックし、ファンたちの感想や意見をしっかりと受けとめた上で、そこを配慮しつつ、最新の自分たちで居続けながらも、ありのままの今の自分たちと過去の自分たちを対面させ、そこに共存させたのである。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
逹瑯、YUKKE、SATOちの3人は、ミヤの感覚的なインスピレーションにより、ほぼ突発的といっても過言では無いタイミングで提示されるセットリストを受け、それぞれが過去曲と真正面から対面し、ライブに向き合っていた。セットリストが直前で変更されることは、MUCCにおいては日常茶飯事ではあるが、今回は相当な過去曲を引っ張り出してきているだけに、それなりの準備という時間が必要となる。しかも、なにせ感覚的なミヤの一言で決まるとあって、3人はセットリストが決まった時点でかなりの集中力を持って自らの中に過去曲たちを叩き込み、ライブに挑むことになるのである。そんな緊張感もあってだろうか、今回のツアーは1本1本の中に、彼らの“ギリギリの生き様”を見ていた、そんな気がする。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
しかし。音楽をファッションと捉えていない、人間の業を赤裸々に歌うバンドであるMUCCには、そんなギリギリの人間らしさが必要なのかもしれない。むしろ、そここそを、オーディエンスは彼らに求めていると言っても言い過ぎてはいないだろう。MUCCのライブに集まるオーディエンスは、そんな彼らの生き様を、自分の生きる糧としているに違いないと私は思っている。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
このツアーは、“過去との対峙”でもありながら、『脈拍』の曲たちを育てるツアーでもあったことから、頭の4曲はツアーを通してアルバムの並びと同じ順番で届けたこともあり、初日、中盤、ファイナルと、ハッキリと成長の過程を見ることが出来た。
それは実に、1秒ごとに現在(今)が過去になっていく流れの中で、瞬間瞬間の過去と戦い続けていた彼らの等身大そのものであった。
やがて“歴史”と呼ばれるようになる、その時々の“現在”は、後に古さを感じさせるようになったり、過去を振り返った時、現在の自分たちの進化と当時の未熟さが上手く重なり合わず、そこに違和感が生まれてしまう場合もある。が、しかし。MUCCというバンドは、アルバム毎に毎回驚くほどの変化を重ね、ジャンルという垣根をほぼ取っ払ってきたと言ってもいい進化を遂げて来ているというのに、何故か後に振り返ったとき、その進化はとても自然とMUCCの音に馴染み、MUCCの個性となっているのだ。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
数あるアルバムの中で、今回の『脈拍』は、コアなMUCCファンたちにとっては“これぞMUCC!”な、MUCCというバンドの原点を感じさせるアルバムであったに違いない。しかし、単純に原点回帰を目指したアルバムではなく、この1枚の中にも新たなチャレンジは盛り込まれていたし、プロデューサーとしてL’Arc~en~CielのKenが参加していることでのプラスαも感じることが出来た、まさしく“最新のMUCC”であったのだが、いつものように、新たなジャンルをMUCCに落とし込んだという意味でのチャレンジは感じられなかった。言うなれば、自らの過去とこれまでの進化の追求であったように思えてならない。
このツアーで、ライブ中に客席から「ヤバイ。何十回とMUCCのライブ観てきてるのに、今日、初めてMUCCを観た感覚に戻れた! なんでだろう? ヤバイ。この気持ちなんだろう?」というオーディエンスの言葉が耳に飛び込んできたのが、とても印象的だった。まさに、この言葉こそ、『脈拍』というアルバムが、結成から20年のMUCCのバックボーンを追っていくアルバムであったことを意味していた気がしてならかった。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
14日は、9日のZepp Osaka Baysideのアンコールの1曲目であった「誰も居ない家」を受けての方程式により、頭の「脈拍」「絶体絶命」「CLASSIC」「KILLEЯ」という固定の4曲から、「路地裏 僕と君へ」と繋がれ、そこから「未完の絵画」「濁空」「幻燈讃歌」といった、2004年にリリースされた4枚目のアルバム『朽木の灯』からの楽曲たちと『脈拍』の楽曲たちを同居させ、15日は、14日のアンコールの1曲目に置いていた「絶望」を受け、「絶望」「君に幸あれ」「黒煙」と、2002年にリリースされた2ndアルバム『葬ラ謳』からの楽曲たちを届けたのだった。
2日目の15日のライブで、とても印象的だったのは、強い透明な光に包まれたステージの中で、ほとんどシルエットしか見えない状態の4人が懇々と「君に幸あれ」を届ける様を、フロアのオーディエンスが微動だにせず受けとめていた景色だった。説得力が増したスキルと表現力は、そこに描かれた葛藤を、よりリアルに浮かび上がらせていたと感じた。そして、さらに過去と現在の異なるテイストが、心地良い違和感で繋がっていった「黒煙」からの「BILLY×2 ~Entwines ROCK STARS~」も、周年ライブだからこそ魅せることが出来た、最高の演出となっていたのだった。
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 「羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-」撮影=西槇太一
そしてMUCCは今、20周年の集大成ライブとなる6月20日、21日に控える日本武道館へと歩みを進める。
フルアルバムは、2014年の6月25日にリリースされた『THE END OF THE WORLD』以来3年ぶりとあって、今ツアーは久しぶりのアルバムツアーとなった訳だが、メンバーもこのツアーでアルバムの楽曲たちが育っていった手応えを大きく感じ取っていたようだったことから、日本武道館では、このツアー以上に、さらに積み上げられた20年の歴史を色濃く魅せてくれることになるだろう。
ジャンル問わず様々な音楽シーンのフェスにも参加してきたMUCCの名を知る者は、この20年で確実に増えたと言っていいだろう。しかし。まだ単独ライブは見たことが無いというリスナーは多いはずである。ここまでジャンルレスに振り切っている今のMUCCならば、きっとどのジャンルのオーディエンスも納得させられるライブを魅せてくれるはずだ。一般的に“周年ライブ”というものは、コアファンの為にあるお祭的ライブと思われがちで、初見で周年ライブに参戦するというのは、なかなか敷居が高いと思う人もいるかもしれないが、MUCCは違う。この機会だからこそ触れてみて欲しい。MUCCというバンドがいかにジャンルレスであるか、という証明になるであろう武道館ライブは、20年の片鱗を楽しみながら、コアなMUCCファンたちに、“MUCCというジャンル”の魅力と楽しみ方を教えてもらってほしいと思うのだ。どの曲で何を感じ、どの曲で涙するか、感じ方楽しみ方はそれぞれだが、様々なジャンルの音楽ファンたちを唸らせるサウンドが、必ずそこに在ると断言しよう。きっと、フェスで見た印象とは違うと感じるMUCCがそこには居ることだろう。
武道館のは一般発売も開始されている。気になった人はこの機会にMUCCというバンドを是非とも体感してもらいたい。そして、そこに、“MUCCというジャンル”を見つけ、自分に響くMUCCを見つけてみてほしい。
取材・文=武市尚子 撮影=西槇太一
第Ⅰ章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6
2017年6月20日(火)
日本武道館
OPEN PM5:00 START PM6:09
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
第Ⅱ章 06-17 極志球業シ終T
2017年6月21日(水)
日本武道館
OPEN PM5:00 START PM6:09
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
【料金】
アリーナスタンディング ¥6,920(税込・粗品付)
指定席 ¥6,920(税込・粗品付)
※粗品は当日会場にお越しの方へのみのお渡しとなります。