【動画あり】大原櫻子の主演舞台『リトル・ヴォイス』稽古場レポート
大原櫻子初主演舞台『リトル・ヴォイス』
大原櫻子の舞台初主演作『Little Voice リトル・ヴォイス 』が、2017年5月15日より東京・天王洲 銀河劇場で上演される。大原をはじめ、安蘭けい、山本涼介、池谷のぶえ、鳥山昌克、高橋和也が顔をそろえた稽古場にお邪魔した。
<あらすじ>
物語の舞台は、1992年のイギリス。うらぶれた田舎町で母・マリー(安蘭けい)と暮らすリトル・ヴォイス(大原櫻子)は、家にこもりマリーとさえほとんど口を利かない。唯一の楽しみは、部屋で父親の形見の古いレコードを聴くこと。一方、母・マリーは自堕落に酒を飲み男と遊びまわり、娘を本名ではなく「LV(Little Voiceの略)」と小バカした名前で呼ぶ。電話工事にやってきた青年ビリー(山本涼介)はLVのことが気になりそっと会いに来るようになる。ある日、マリーの恋人であり芸能プロモーターのレイ(高橋和也)は、たまたまLVの歌声を耳にして驚く。LVはレコードを聴くうちに、エディット・ピアフ、ジュディ・ガーランド、マリリン・モンローなど往年のスターたちの歌を完璧にマスターしていたのだ。レイは、LVをうまく説得し、町のクラブのステージに立たせることに成功するが……。
初主演舞台×伝説の役への挑戦
舞台『リトル・ヴォイス』
『リトル・ヴォイス』が、日本で舞台化されると知り、驚いた方も多いのではないだろうか。なぜならLVは、もともとスターの歌マネを得意としていた女優・ジェーン・ホロックスのために生まれた役であり、ホロックスありきの作品だったからだ。原作は、1992年にロンドンで初演された舞台だが、日本では1999年公開の映画版『リトル・ヴォイス』でその名が知られるようになった。初演舞台でも映画版でも主人公・LVを務めたのが、ジェーン・ホロックス。その伝説の役に今回挑戦するのが、大原櫻子だ。
舞台『リトル・ヴォイス』
大原にとって、舞台出演3度目にして初の主演舞台となる。すでに多くの場で語られているとおり歌唱力には定評がある。それでもLV役を引き受けるには相当の覚悟がいっただろう。だからこそ歌唱シーンが近づくにつれ、観る側にもいくらかの緊張感があった。しかし大原が歌い始めた瞬間、稽古場の空気が変わった。
ホロックスによる元祖LVは、極めて完成度の高い声帯模写で、往年のスターたちをよみがえらせた。憑依というレベルで、歌う間、LVの顔は消えていた。一方で、大原のLVには血が通っているのを感じさせられた。大原LVのモンローのほうがチャーミングだったし、大原LVのシャーリー・バッシーのほうが覇気があった。大原の生の歌声の魅力は、ぜひとも劇場で体感してほしい。
舞台『リトル・ヴォイス』
もっと嫌な奴に!
見学した第2幕は、大原の歌唱シーンに加え、登場人物たちの人間性が浮き出てくる過程も見どころだ。聞こえてくる役者と演出・日澤雄介 (劇団チョコレートケーキ、第21回読売演劇大賞 優秀演出家賞受賞)のやり取りの中で印象的だったのは、マリーとレイへの「もっと嫌なやつに」という演出だった。
舞台『リトル・ヴォイス』
マリーは、恐ろしくよく喋る。気分の上下が激しく品がない。その役を引き受けたのが、元宝塚歌劇団星組トップスターの安蘭けいなのが面白い。稽古の合間、安蘭は、とあるシーンのウイスキーボトルの扱いについて日澤と意見交換しながら「こうかな? こうもできますよ?」とやってみせ、台詞の意味合いを確かめていた。
その横では、セットの階段で高橋和也が動きを入念に確認し、集中を高めるようにストレッチをする。落ち目の芸能プロモーターという胡散臭い役どころだが、極めてセクシー。役に入っているせいなのか普段からなのか分らないが、高橋が終始大人の男の色気をふりまいているので、それにひっかかり振り回されるマリーに少し同情した。
舞台『リトル・ヴォイス』
鳥山昌克が演じるミスター・ブーには、登場のたびに(そでにいるキャストまで)笑わされた。風変わりなマリーの隣人・セイディ(池谷のぶえ)と、電話会社職員で照明を創るのが好きなビリー(山本涼介)は、レイやマリーのような強さはない。しかしLVに繊細な心で寄り添える人物として劇中のスパイスになっている。
舞台『リトル・ヴォイス』
舞台『リトル・ヴォイス』
緊張の途切れない……かと思えば、休憩になるとキャスト同士が声をかけあい、ふざけたり、大原もLVの表情から一転し手を叩いて笑顔をみせるなど、見学していても休憩中さえ飽きない稽古場だった。
舞台『リトル・ヴォイス』
本作は、ただの「内気な天才少女のサクセスストーリー」ではない。“大原櫻子の生歌が聴きたい”、“映画版のファンだからどんなものかみておこう”どんな動機でも、気持ちよく裏切ってくれる作品になるはずだ。『リトル・ヴォイス』は5月15日(月)より、東京で上演。その後、富山、北九州と巡演の予定。
取材・撮影・文=塚田史香 動画=登坂義之
■作:ジム・カートライト
■演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ) 第21回読売演劇大賞 優秀演出家賞受賞
■配役
リトル・ヴォイス:大原櫻子
マリー・ホフ:安蘭けい
ビリー:山本涼介
セイディ:池谷のぶえ
ミスター・ブー/電話会社職員:鳥山昌克
レイ・セイ:高橋和也
■スタッフ
翻訳:谷 賢一/音楽監督:扇谷研人/美術:原田 愛/照明:原田 保/音響:山本浩一/
衣裳:藤田 友/ヘアメイク:宮内宏明/振付:川崎悦子/歌唱指導:花れん/ 演出助手:和田沙緒理/舞台監督:齋藤英明、八木 智
<東京公演>
■日程:5月15日(月)~5月28日(日)
■会場:天王洲 銀河劇場
■主催:ホリプロ/フジパシフィックミュージック 企画制作:ホリプロ
■問合せ:ホリプロセンター 03-3490-4949 (平日10:00~18:00/土10:00~13:00/日祝 休)
<富山公演>
■日程:6月3日(土) 18:30 、6月4日(日) 13:00
■会場:富山県民会館 大ホール
■主催:イッセイプランニング/富山テレビ放送
■問合せ:イッセイプランニング 076-444-6666 (平日 10:00-18:00)
<北九州公演>
■日程:6月24日(土) 12:00 /17:00
■会場:北九州ソレイユホール
■主催:RKB 毎日放送/キョードー西日本
■問合せ:キョードー西日本 092-714-0159
■公式ホームページ http://hpot.jp/stage/lv